Artist: Earl Sweatshirt & BADBADNOTGOOD
Album: Doris
Song Title: Hoarse
概要
2013年にリリースされたデビューアルバム『Doris』の終盤に配置された本作は、カナダ出身のジャズ・ヒップホップ・バンドであるBADBADNOTGOODをフィーチャーした特異な一曲である。ヒップホップの定型的なサンプリング・ビートとは異なり、生のドラム、うねるようなベースライン、そしてサイケデリックなギターが織りなすザラついたバンドサウンドが、Earlの極めてダークで内省的なリリシズムを引き立てている。さらに、コーラス部分ではクレジットされていないものの、盟友Frank Oceanがボーカルで参加しており、楽曲に冷酷でブルージーな奥行きを与えている。暴力、ドラッグ、精神的な不安定さ、そして中産階級的価値観への反抗といったテーマが、荒々しくも緻密な言葉遊びと多音節ライムによって描写される。生楽器の生々しいグルーヴとEarlのダウナーなフロウが見事に融合した、アルバムの中でも異彩を放つオルタナティブ・ヒップホップの傑作である。
和訳
[Intro]
Uss, uss, uss, uss, uss, uss, uss, uss, uss-uss, uss
[Verse 1: Earl Sweatshirt]
Gorgeous, chrome-plated horse whip
豪華な、クロムメッキの乗馬用ムチ
Home, making paintings for poor-quality porn flicks
家で、低品質なポルノ映画のために絵を描いている
Court adjourned and the verdict's still saucy
裁判は休廷、判決はまだ生意気なままだ
Sack swinging like Dub-D40 on a door hinge
ドアの蝶番に差すWD-40みたいに袋を揺らしている
※「Dub-D40(WD-40)」は有名な防錆潤滑剤。「Sack(陰嚢)」が滑らかに揺れる様を下品かつユーモラスに例えている。
Good Lord, walk light like the floor slick
ああ神よ、床が滑るかのように身軽に歩く
Look bored, hoard all mics in a force grip
退屈そうに見せながら、フォースの力ですべてのマイクを独占する
※『スター・ウォーズ』のフォース・グリップのように、強力な力でマイクを握って離さない(シーンを支配する)様子。
Pro-abortion, endorsing his own importance
中絶賛成派、自分自身の重要性を支持している
Or leaving opponents floating with paper and dirty porcelain
それか、トイレットペーパーと汚れた便器と一緒に敵を浮かばせたままにしておく
※敵のラッパーたちを排泄物に例え、水洗トイレに流したままにするというダーティな表現。
Pinnacle of titillating, crisp spit
興奮の頂点、歯切れの良いラップ
Fist clenched, emulating '68 Olympics
拳を握り締め、68年のオリンピックを真似ている
※1968年メキシコシティ五輪での、黒人アスリートによる「ブラックパワー・サリュート(人種差別への抗議)」の象徴的なポーズへの言及。
Rock it from the cradle 'till he middle-age and limp-stick
ゆりかごの中から、中年になってアソコが立たなくなるまでロックし続ける
Coughing from the stable probably indicating spliff's lit (Lit)
馬小屋から聞こえる咳き込みは、たぶんスプリフに火が点いた証拠だ (Lit)
Dismissed, feel it in that saturated cranium
却下だ、その飽和した頭蓋骨で感じとれ
Heavy as insurance off a spanking-new laser gun
真新しいレーザーガンの保険料くらい重いぜ
Crazy heart, hazy lung, making art, raking funds
イカれた心臓、霞んだ肺、アートを生み出し、資金をかき集める
Crowd going dumb like Palin's son, ugh
観客どもはペイリンの息子みたいにバカ騒ぎしてるぜ、ウッ
※「dumb(バカになる、熱狂する)」と、アメリカの政治家サラ・ペイリンのダウン症の息子を掛けた、Earlの極めて不謹慎でダークなパンチライン。
[Chorus: Frank Ocean]
And it always follows autumn (Autumn, um)
そしてそれはいつも秋の後にやってくる (Autumn, um)
No home for the weak, no insurance for your pride (Pride)
弱者のための家はない、お前のプライドにかける保険もない (Pride)
Jive (Jive), Jive (Jive)
ジャイブ (Jive)、ジャイブ (Jive)
And it always follows autumn (Uh)
そしてそれはいつも秋の後にやってくる (Uh)
[Verse 2: Earl Sweatshirt]
I sit in thought 'till the flow is right (Right)
フロウがしっくりくるまで座って考え込む (Right)
Then throw some D onto all available open mics (Mics)
それから、利用可能なすべてのオープンマイクにDを投げつける (Mics)
※Rich Boyのヒット曲「Throw Some D's」の引用と、「D(Dick=ペニス)」を掛けたダブルミーニング。
Smoke it right, proposing these niggas over
上手く吸い込み、こいつらに提案を持ちかける
Wipe more because I normally toilet-bowl with a broken pipe
もっと拭き取れ、俺は普段パイプの壊れた便器を使ってるからな
※「pipe」が壊れている=クソみたいな状況で用を足している(あるいはラップをしている)という自嘲的な比喩。
Tch, the former soloist who flow was sick
チッ、フロウがヤバかった元ソリストさ
The token sober kid stressed, so the role was switched
真面目でシラフだったガキがストレスを抱え、役割が逆転した
※サモアの更生施設に送られる前と後での、自身の精神状態やグループ内での立ち位置の変化を示唆している。
Four Lokos down the hole and a loaded spliff
フォー・ロコを喉の奥に流し込み、中身の詰まったスプリフを吸う
※「Four Loko」はアルコール度数が高くカフェインを含むため、若者の間で問題となった危険な酒。
And who was useless as a broken wrist when tryna open shit
何かを開けようとする時の折れた手首くらい、役に立たなかった奴だ
Nigga, cold is what you need to keep the poultry in
なあ、家禽を保存しておくには冷たさが必要だろ
※「cold(冷徹さ)」がないと「poultry(チキン=臆病者)」どもを閉じ込めて(または鮮度を保って)おけないという言葉遊び。
Resulting in me rolling slick as bottom of the bowling kicks
結果的に、俺はボウリングシューズの裏みたいに滑らかに転がることになる
Early Man, you posers know me as the troll
アーリー・マンだ、ポーザーどもは俺のことを荒らしだと思ってる
※「Early Man」はEarlの別名の一つ。「troll」はネット荒らしやいたずら者のこと。
Throwing moldy donut holes at your grody ho from his cronies' whip
仲間の車から、お前の薄汚いビッチに向かってカビの生えたドーナツホールを投げつける
Eating like the kids when you take ‘em off Ritalin
リタリンを取り上げられた子供たちみたいに食いまくる
※「Ritalin」はADHDの治療薬。薬が切れて制御不能になった子供のような狂気的な食欲(野心)を表している。
Throwing temper tantrums at the window of your whip again
またお前の車の窓に向かって癇癪を起こして暴れる
Sweeping up the glass to use it as a garnish over tracks
割れたガラスを掃き集め、トラックの上の飾り付けとして使う
※暴力や破壊(割れたガラスの破片)すらも、自身の音楽(トラック)を彩るアートにしてしまうというリリシストとしての矜持。
Damaged like the leg he limping to the barn with
彼が納屋へと足を引きずって向かう時の、その脚みたいにダメージを受けている
Chickenshits
臆病者どもめ
Temper 'bout as thick as tips of pencils is
鉛筆の芯の先っぽと同じくらい、気性が荒い
※鉛筆の先のように細い(=余裕がない、すぐ折れる)短気さを表している。
Missiles to the picket fence
ピケットフェンスに向かってミサイルを撃ち込む
※「白いピケットフェンス」はアメリカの平穏な中産階級の象徴。そこにミサイルを撃ち込むという社会への反抗と破壊衝動。
Who spit as good as finger-lickin’, bitch?
指を舐めるほど美味くラップを吐き出せる奴が、他に誰かいるか、ビッチ?
※KFCの有名なキャッチコピー「finger-lickin' good」と掛けたパンチライン。
Bet it's thirty-six fish netted like the hook was inefficient
釣り針が使い物にならなくて、網で36匹の魚を捕らえたようなもんだぜ
※「hook」は釣り針と曲のフック(サビ)を掛けており、キャッチーなフックがなくても、リリックの網目だけで大量にリスナー(魚)を捕らえることができるというボースト。
[Chorus: Frank Ocean]
And it always follows autumn
そしてそれはいつも秋の後にやってくる
No home for the weak
弱者のための家はない
No insurance for your pride
お前のプライドにかける保険もない
Jive, Jive
ジャイブ、ジャイブ
And it always follows autumn
そしてそれはいつも秋の後にやってくる
