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Artist: Earl Sweatshirt (feat. Tyler, The Creator)
Album: Doris
Song Title: Whoa
概要
2013年にリリースされたEarl Sweatshirtのデビュー・スタジオ・アルバム『Doris』からのセカンドシングル。サモアの更生施設から帰還後、リードシングル「Chum」で内省的かつパーソナルな弱さを曝け出したEarlに対し、一部のファンからは「かつての狂気的で猟奇的なスタイルは失われたのではないか」という懸念の声が上がっていた。本作は、そうした世間の反応に対する回答であり、Tyler, The Creatorが手掛けた重低音の効いたミニマルで不気味なビートの上で、Earlが全盛期を凌駕するほどの複雑怪奇な多音節ライムとダークなユーモアを披露している楽曲である。イントロでTylerがメタ的な視点からヘイターを一蹴し、Earlが圧倒的なワードプレイでねじ伏せる構成は、Odd Future(OFWGKTA)結成当初の2010年頃の荒々しいバイブスを意図的に再現したものであり、彼らの揺るぎない結束と圧倒的なスキルの健在をシーンに見せつけた重要作だ。
和訳
[Intro: Tyler, the Creator]
Nah, no, nah, nah, fuck that
いや、違う、ダメだ、クソ食らえ
※Tylerが、Earlの復帰後のスタイルに対するリスナーの不満や批判に対して直接的に噛み付いている。
Niggas think 'cause you fucking made "Chum" and got all personal that niggas won't go back to that old fucking 2010 shit about talking 'bout fucking everything-all
お前が「Chum」を作ってすっかりパーソナルになったからって、連中は俺たちが2010年当時のあの何でもかんでもぶち撒けるような昔のクソヤバいスタイルに戻らないと思い込んでやがる
※「Chum」はEarlが父親の不在や自身の孤独について赤裸々に語った楽曲。ファンは彼が成熟し、初期の無軌道なスタイルを捨てたのだと誤解していたが、それをここで明確に否定している。
No, fuck that, nigga, I got you
いや、ふざけんなよニガ、俺に任せとけ
※TylerがEarlの背中を押し、本来の狂気的なラップスキルを解放させようとしている。
Fuck that
クソ食らえだ
[Verse 1: Earl Sweatshirt]
Grab mittens, who have to spit blizzardous
手袋を用意しな、誰かがブリザードを吐かなきゃならない
※「ブリザードのように冷たく(ドープで)、激しいラップ」をカマすため、聴き手に防寒具(mittens)を用意しろという比喩。
Actually, flick cigarette ash at bitch niggas
実際、ビッチな奴らにタバコの灰を弾き飛ばす
※ヘイターやフェイクなラッパーたちに対する軽蔑のジェスチャー。
Harassment, eight nickels of hash, delay quick, and then
ハラスメント、8枚のニッケル分のハッシュ、すぐに遅らせて、それから
※「eight nickels」は40(5セント×8)を意味し、40ドル分のハッシュ(大麻樹脂)のストリートスラング。極めて複雑な多音節ライムの始まり。
Dash to Saint Nicholas pad to taste venison
サンタクロースの家にダッシュして鹿肉を味わう
※「Saint Nicholas(サンタクロース)」の家(北極)に突撃し、彼が飼っているトナカイ(鹿肉=venison)を食べるというEarl特有の猟奇的でブラックなジョーク。
Still in the business of smacking up little rappers with
今でも小物のラッパーたちを引っぱたくビジネスをやってる
※自分より劣るラッパーたちを容赦なく打ちのめす姿勢。
Racquets you play tennis with, hated for bank lifting and
お前らがテニスで使うラケットでな、銀行強盗の件で嫌われながら
※前の行から繋がり、テニスラケットでラッパーを叩きのめすという暴力的なイメージ。「bank lifting」は銀行強盗、もしくは預金を空にするほど金を稼ぐことの隠喩。
Spraying then hide away in the shade of his maimed innocence
乱射して、傷ついた無邪気さの影に身を潜める
※サモアの更生施設へ送られた経験や、メディアに消費されて失われた自身の青春(maimed innocence)の陰に隠れているという、パーソナルな痛みと暴力を交錯させた表現。
Suitcase scented with haze and filetted sentences
ヘイズの匂いが染み付いたスーツケースと、切り身にされた文章
※「haze」は強力な大麻の一種(Purple Hazeなど)。「filetted sentences」は、魚を三枚におろすように言葉を鋭く解体し、再構築した自身の複雑なリリックを指す。
Advanced apathy, smashing the man cameras up
高度な無関心、連中のカメラをぶち壊す
※パパラッチやメディア、あるいはシステム(the man)に対する敵意。過剰な注目に対する冷めた態度(apathy)。
Tan khakis, an antagonist Dan-dappered up
タンカラーのカーキ、ダッパー・ダンのように着飾った悪役
※「Dan-dappered up」は、ハーレムの伝説的デザイナーDapper Danの仕立てた服のように小綺麗に着飾るという意味の造語。上品な身なりをした悪党というペルソナ。
Ha, vagabond, had it since a Padawan
ハッ、放浪者、パダワンの頃からこいつを持ってたぜ
※「Padawan」は『スター・ウォーズ』におけるジェダイの修行僧。自分が子供(修行中の身)の頃から並外れたラップスキルを持っていたことを示している。
Rapping hot as fucking cattle brands wearing flannel thongs
フランネルのTバックを穿きながら、牛の焼き印くらいクソ熱いラップをする
※「cattle brands」は家畜に押す焼き印。火傷するほど熱いラップを「フランネル生地のTバック」という滑稽で馬鹿げたイメージと対比させるOFWGKTA特有のユーモア。
Grab a bong, mama and some food, beer, tag along
ボングを掴め、ママと食べ物、ビールも連れてこい
※享楽的な日常の描写。「bong」は水パイプ。
Get a nice spanking, uh, new Sears catalog
いい感じにお尻ペンペンを食らう、あー、新しいシアーズのカタログで
※アメリカの家庭でかつて分厚いSearsの通信販売カタログが子供の尻を叩く体罰の道具として使われていたという、レトロで自虐的なジョーク。
Send them nettled critics to the bezel stop, dead and wrong
苛立つ批評家どもをベゼルの端まで送り込む、完全に間違ってる
※自分を批判するメディアや批評家を時計の文字盤(bezel)の限界まで追い詰める、あるいは沈黙させるという宣言。
Get 'em higher than the pitch of metal tea-kettle songs
金属のやかんが鳴る曲のピッチよりもハイにさせてやる
※沸騰したやかん(tea-kettle)の「ピー」という超高音よりも、聴く者をハイ(興奮状態、あるいは大麻でキマった状態)にさせるという比喩。
(Bitch-ass niggas!)
[Chorus: Tyler, the Creator]
Four deep in a Rover cannon
ローバーのキャノンに4人乗り込んで
※「Rover」はランドローバーなどのSUV。仲間たちと車に乗り込む情景。
Riding dirty through a Saugus canyon
ソーガスの峡谷を違法なモンを積んで駆け抜ける
※「Riding dirty」は違法薬物や銃器を車に積んで走るという南部のヒップホップスラング(Chamillionaireの曲名でも有名)。「Saugus canyon」はカリフォルニア州サンタクラリタにある実際の地名。
Niggas know that it's the G-O-L-F-dub-A-N-G
これがG-O-L-F-W-A-N-Gだってことは連中も分かってる
※「Golf Wang」は「Wolf Gang」(OFWGKTA)の頭文字を入れ替えた彼らのアパレルブランドおよびクルーの呼称。「dub」はWのこと。
G-O-L-F-dub-A-N-G
G-O-L-F-W-A-N-G
50k for the last check
前回の小切手は5万ドルだった
※大金(50,000ドル)を稼げるようになったというフレックス(自慢)。
But the Dollar Menu still be on deck
でも1ドルメニューはまだ手元にある
※大金を稼いでも、マクドナルドの1ドルメニューを食べるようなストリートのガキのメンタリティは変わっていないというスタンスの表明。
Nigga it's the mothafuckin' G-O-L-F-dub-A-N-G
ニガ、これがクソヤバいG-O-L-F-W-A-N-Gだ
※クルーへの絶対的な忠誠と誇り。
G-O-L-F-dub-A-N-G
G-O-L-F-W-A-N-G
[Verse 2: Earl Sweatshirt]
Yeah, the misadventures of a shit-talker
イェー、口の悪いクソ野郎の不運な冒険だ
※自分自身を厄介事を引き起こす「shit-talker」と定義し、ここからさらなる物語(悪ふざけ)が始まることを示唆。
Pissed as Rick Ross's fifth sip off his sixth lager
リック・ロスの6杯目のラガーの5口目くらいムカついてる
※「Pissed」には「怒っている(pissed off)」と「酔っ払っている/尿意を催している」のダブルミーニングがある。Rick Rossをネームドロップしつつ、複雑な韻を踏むための言葉遊び。
Known to sit and wash the sins off at the pitch alter
マウンドの祭壇に座って罪を洗い流すことで知られてる
※「pitch」は野球のピッチャーマウンド、あるいは音楽のピッチ(音程)を指す。音楽を作ること(ピッチを操ること)が、自身の内なる罪やトラウマを浄化する儀式(alter=祭壇)であるという隠喩。
Hat never backwards like the print off legit manga
本物の漫画の印刷みたいに、帽子は絶対に後ろ向きには被らない
※日本の「Manga」は英語圏のコミックとは異なり「右から左」へ読む(逆方向)ため、それに掛けて「俺はキャップを逆(後ろ向き)には被らない」という高度なオタク的ワードプレイ。スケーターやオタクとしての彼らのルーツを反映している。
Get it? Like a blue pill, make ya stick longer
分かるか? ブルーピルみたいに、お前を長く立たせてやるよ
※「blue pill」はバイアグラのこと。「stick longer」は勃起を長持ちさせることと、シーンに長く留まり続ける(サヴァイヴする)ことのダブルミーニング。
Or a swift fist off your chin from his wrist-launcher
それか、あいつのリストランチャーから放たれる顎への素早い拳か
※コミックのヒーローや悪役の武器(手首からロケットパンチを放つ装置)のような勢いで、ライバルの顎を打ち砕くというパンチライン。
Chick, chronic thrift shopper, thick like the Knicks roster
女、極度の中古品買い漁り魔、ニックスのロスターみたいに分厚い
※「thrift shopper」はスリフトショップ(リサイクルショップ)に通う人。「thick」は女性の体が豊満であることを指すが、ここではNBAのニューヨーク・ニックス(Knicks)の選手層(roster)の厚さに掛けている。
Stormed off and came straight back like fixed posture
嵐のように立ち去って、矯正された姿勢みたいにまっすぐ戻ってきた
※怒って出て行った女が、姿勢を直す(fixed posture / straight back)ように「真っ直ぐ(straight)」戻ってきたという言葉遊び。
Pen? Naw, probably written with some used syringes
ペン? いや、たぶん使用済みの注射器で書かれたんだろ
※自分のリリックは普通のペンではなく、ジャンキーが使った汚い注射器で血で書かれたかのような、病んでいて狂気的なものであるという主張。
From out the rubbish bin at your local loony clinic
近所のイカれた精神科クリニックのゴミ箱から拾ってきたやつでな
※自身のメンタルヘルスの問題や狂気を、ホラーチックな表現でエンターテインメントに昇華している。
Watching movies in a room full of goons he rented
雇ったチンピラどもでいっぱいの部屋で映画を観てる
※一人でいる孤独を埋めるために、金で雇った取り巻き(goons)と一緒にいるという、セレブの空虚さを皮肉った描写。
On the hunt for clues, more food, and some floozy women
手がかりと、もっと多くの食べ物と、ふしだらな女たちを探し求めて
※探偵気取りで享楽的な生活(暴食と女遊び)を追求している姿。
Bruising gimmicks with the broom he usually use for Quidditch
あいつがいつもクィディッチに使ってる箒でギミックどもを打ち身にしてやる
※『ハリー・ポッター』の魔法のスポーツ「クィディッチ」を引用。ギミック(偽物のペルソナ)に頼るフェイクなラッパーたちを、魔法使いの箒で叩きのめすというナード全開の脅し。
Gooey writtens, scoot 'em to a ditch, chewed and booty-scented
ドロドロに溶けたリリック、溝に蹴り落とす、噛み砕かれてケツの匂いがする
※他人のつまらない歌詞(writtens)を物理的なゴミのように扱い、不快な描写(booty-scented)で徹底的に貶している。
Too pretentious, do pretend like he could lose with spitting
気取りすぎだ、ラップで負けるかもしれないなんてフリをしてやがる
※自分がラップのスキルにおいて絶対に誰にも負けないという自信の裏返し。わざと負けるふりをする余裕があるというフレックス。
Steaming tubes of poop and twisted doobies full of euphemisms
湯気の立つウンコのチューブと、婉曲表現でいっぱいに巻かれた大麻
※ヒップホップ業界に蔓延する「クソみたいな音楽(poop)」と、直接的な表現を避ける「言い回し(euphemisms)」ばかりの状況を軽蔑している。「doobies」は大麻のジョイント。
Stupid, thought it up, jot it quick
バカめ、思いついたら、すぐに書き留めろ
※湧き上がる天才的なインスピレーションを逃すなという、自身への命令。
Thaw it out, toss it right back like a vodka fifth
解凍して、ウォッカのフィフスみたいに一気に飲み干す
※凍りついた(ドープな)フロウを溶かし、「fifth(約750mlの酒瓶)」のウォッカのように一気に吐き出す(あるいは飲み干す)様。
Spot him on a rocket swapping dollars in for pocket lint
ロケットに乗ったあいつを見つけな、ドル札をポケットの糸くずと交換してるぜ
※ロケットで飛び立つほど成功しているのに、大金をポケットのゴミ(lint)のように無頓着に扱う、あるいは金銭感覚が狂っている様子。
Then lob a wad of chicken at a copper on some Flocka shit
それからフロッカみたいに、サツに向かってチキンの塊を投げつけるんだ
※「copper」は警察官。「Flocka shit」はラッパーのWaka Flocka Flameのこと。彼の反逆的で野蛮なエネルギーに影響され、警察に食べかけのチキンを投げつけるというアナーキーな行動。
[Chorus: Tyler, the Creator]
Posing nigga try to disrespect
ポーズキメてるニガがディスろうとしてきやがる
※見掛け倒しのフェイクな連中がOFWGKTAを舐めている状況。
Get a fucking thunder to his neck, shout out to Nak
首にクソみたいな雷を落としてやる、Nakにシャウトアウト
※「Nak」はプロスケーターでありOFWGKTAのメンバーでもあるNa-Kel Smithへの言及。彼らの仲間への強い絆と、敵に対する容赦ない制裁の意志。
'Cause it's the G-O-L-F-dub-A-N-G
だってこれがG-O-L-F-W-A-N-Gだからな
※クルーの結束を再確認。
G-O-L-F-dub-A-N-G
G-O-L-F-W-A-N-G
Looking bummy, posted on the block
ホームレスみたいに見えるだろ、ブロックに立ってると
※「bummy」は身なりが汚いこと。大成功を収めても、地元のストリートでボロボロのスケーターファッションでたむろしている彼らのスタイル。
Like I ain't make a quarter million off of socks, nigga
俺が靴下だけで25万ドル稼いでないみたいにな、ニガ
※Tylerのブランド「Golf Wang」のアパレル(特に靴下)が爆発的に売れ、莫大な富を築いた事実。「ホームレスのような格好をしているが、実はとんでもない金持ちである」という、最高のアイロニーとフレックス。
'Cause it's the G-O-L-F-dub-A-N-G
だってこれがG-O-L-F-W-A-N-Gだからな
※彼らの成功とアイデンティティの証明。
G-O-L-F-dub-A-N-G
G-O-L-F-W-A-N-G
[Outro: Tyler, the Creator]
Bitch niggas
ビッチなニガども
※ヘイターへの吐き捨て。
Wolf Gang (Motherfucker)
ウルフ・ギャング(クソ野郎ども)
※クルー名(OFWGKTA=Odd Future Wolf Gang Kill Them All)のシャウト。
Golf Wang, nigga (Lil' bitch-ass niggas)
ゴルフ・ワンだ、ニガ(小せえビッチみたいなニガども)
※ブランド名とヘイターへの嘲笑。
Trashwang, Loiter Squad
トラッシュワン、ロイター・スクワッド
※「Trashwang」はTylerが結成したハードコアパンク/トラップのサブプロジェクト。「Loiter Squad」はAdult Swimで放送されていたOFWGKTAによるコメディ番組の名前。
(This motherfuckin’ nigga)
Yeah (Can't hang with us, nigga)
イェー(俺たちとはつるめないぜ、ニガ)
※外部の人間やフェイクな連中に対する明確な線引き。
Stay off the block, niggas
俺たちのブロックに近づくんじゃねえぞ、ニガども
※縄張り(ストリートやシーンにおける自分たちのポジション)からの排除。
(You not welcome)
You not welcome (Motherfucker)
お前らは歓迎されてないんだよ(クソ野郎)
※アンダーグラウンドの覇者としての排他性とプライド。
Circa ’08, bitch! Yeah
2008年頃のバイブスだ、ビッチ! イェー
※Odd Futureが結成された2008年当時の、何者にも媚びない初期衝動と反逆精神が今も全く変わっていないことの宣言。
(O.F., nigga)
