Artist: Earl Sweatshirt (feat. RZA)
Album: Doris
Song Title: Molasses
概要
2013年にリリースされたEarl Sweatshirtのデビューアルバム『Doris』に収録されている「Molasses」は、Wu-Tang Clanの首領であるRZAを客演に迎えた、ザラついた90年代ブーンバップの香りを残すトラックだ。ビートはChristian RichとRZAの共同プロデュースであり、Lennie Hibbertの「Rose Len」をサンプリングした不穏かつソウルフルなループが特徴的である。楽曲のハイライトは何と言っても、RZAが放つ「顔のそばかすが消え失せるほどヤッてやる」という強烈かつ不条理なコーラスだろう。これはスタジオでのRZAの即興から生まれたフレーズであり、そのワイルドなエネルギーが楽曲全体のトーンを決定づけている。若きリリシストであるEarlの緻密で皮肉に満ちた多音節ライミングと、レジェンドRZAの制御不能な狂気が激しくぶつかり合いながらも奇跡的な調和を見せる、アルバムの中でも特異な存在感を放つ一曲である。
和訳
[Intro: RZA]
Search inside my purse to buy something worthless
財布の中を探して、無価値なものを買う
※「purse」は通常女性のハンドバッグを指すが、ここでは大金が入ったバッグや現金の比喩。ストリートで得た金をくだらないものに浪費する虚無感を表している。
[Verse 1: Earl Sweatshirt]
99 problems all gone in that one joint
99個の問題も、あの1本のジョイントですべて消え去った
※Jay-Zのヒット曲「99 Problems」への言及。マリファナ(ジョイント)を吸うことで日常のあらゆるストレスから逃避している状態。
And that neck gold froze like he held it at gunpoint
そして首元のゴールドは、まるで銃を突きつけられた時のように凍りついている
※「froze」はダイヤモンド等で装飾された高価なジュエリー(ice)を指すと同時に、銃口を向けられて身動きが取れない(フリーズする)状態と掛けた巧妙なワードプレイ。
I'm a bubble in the belly of the monster
俺は怪物の腹の中にある泡だ
※「monster」はヒップホップ業界や名声、あるいはロサンゼルスという巨大な街の比喩。その中でまだ弾けていない小さな存在(bubble)であることを示唆している。
With a duffel full of troubles, trunk rattle in the Mazda
トラブルが詰まったダッフルバッグを持ち、マツダのトランクが鳴り響く
Ragged with the contra, "Phantom of the Opera"
コントラでボロボロになり、「オペラ座の怪人」だ
※「contra」は禁制品(contraband)や武器。ボロボロの服を着て顔を隠す様子を、顔の半分を覆う「オペラ座の怪人」に例えている。
And I'm standing on the cop's truck, stacking for the long run
そして警察のトラックの上に立ち、長期戦のために金を積み上げている
The bags packed, roadside with the thumb out
バッグに荷物を詰め、道端で親指を立てている
※ヒッチハイクの描写。ストリートでのサバイバルや逃避行を暗喩している。
Toe-tagged, don't gag, spit your gum out
足指にタグを付けられる、むせるな、そのガムを吐き出せ
※「Toe-tagged」は死体安置所で遺体の足の指に付けられるタグ。死の暗示と暴力的な情景。
Nomadic, chrome-grabbing when it's danger
遊牧民さ、危険な時にはクロームを掴む
※「chrome」はクロームメッキの銃のこと。一定の場所に留まらず(Nomadic)、常に武装して警戒している。
I'm a manger-born puppy, holding flight like a hangar do
俺は飼い葉桶で生まれた子犬だ、格納庫みたいにフライトを抱え込んでいる
※「manger-born」はキリストの誕生(飼い葉桶)のような謙虚な出自を示す。「flight(フライト)」と「hangar(格納庫)」を掛け、マリファナでハイになっている状態(flight)を維持していることの比喩。
Knife to the trachea, spit scabies and bet
気管にナイフを突きつけ、疥癬を吐き出し、賭けに出る
※「trachea」は気管。「scabies(疥癬)」という感染症を吐き出すように、有毒で危険なラップをスピット(吐き出す)すること。
The label don't like me, but they pay me a grip
レーベルは俺を気に入ってないが、大金を支払ってくれる
※「a grip」は大金のスラング。
And you see how his day going by the state of his wrists
そして奴の1日がどう進んでるかは、手首の状態を見れば分かるさ
※手首の高級時計を見て充実した1日だと解釈するか、あるいは手首の自傷行為の跡を見て鬱屈した1日だと解釈するか。ヒップホップファンの間で解釈が分かれる深いライン。
Y'all niggas busy Play-Dohing, bet the baker came swinging like
お前らはプレイ・ドーで遊ぶのに忙しい、パン屋がバットを振り回してやって来たみたいにな
※「Play-Doh」は粘土のおもちゃ。フェイクな連中が粘土のように自分を偽って形作っていること。「baker」は金を稼ぐ者(bread=金)を指す。
What the fuck you saying? All that aiming and miss
一体何を言ってやがる? あれだけ狙いを定めておいて外すとはな
※口先ばかりで何も命中(達成)させられない他のラッパーたちへの嘲笑。
[Chorus: RZA & Earl Sweatshirt]
Ayy, I'ma fuck the freckles off your bitch
エイ、俺はお前のビッチのそばかすが消え失せるほどヤッてやる
※RZAによる強烈なアドリブ。激しい性行為を不条理に誇張した表現。
I'll fuck the freckles off your face, bitch
お前の顔のそばかすが消え失せるほどヤッてやるぜ、ビッチ
We could do this shit all night
俺たちは一晩中だってできるぜ
I'll fuck the freckles off your face, bitch
お前の顔のそばかすが消え失せるほどヤッてやるぜ、ビッチ
[Verse 2: Earl Sweatshirt]
You know me, drugs out, front the telly
俺のこと知ってるだろ、ドラッグを出して、テレビの前さ
I'm couch-drunk and ready to fuck, count fetti and bucks
ソファで酔い潰れ、ヤる準備はできてる、フェティと札束を数えるんだ
※「fetti」は金(紙幣)を意味するスラング。
Pack loud as that slap 'cross the belly
腹へのビンタと同じくらい強烈なウィードのパックだ
※「loud」は匂いの強い上質なマリファナ。強烈な匂いや効き目を、腹を引っ叩かれた時の衝撃に例えている。
What's up? Fuck nigga, what's up? I'm at the deli
調子はどうだ? クソ野郎、どうした? 俺はデリにいるぜ
Scheming on a Fanta and a Camel Crush, screaming, "Saddle up!"
ファンタとキャメル・クラッシュを手に入れようと企みながら、「馬にまたがれ!」と叫んでる
※「Camel Crush」はタバコの銘柄。ストリートの若者の日常的な細部を切り取った情景。
Like, "Fuck is beef?" Get your cattle cut, pansy
「ビーフって何だ?」ってな具合だ、お前の牛を切り刻んでやるよ、弱虫め
※ヒップホップにおける「ビーフ(抗争)」と、実際の牛肉(cattle=牛)を掛けたワードプレイ。
If them fans only local, why them flights transatlanti'ed up?
もしファンが地元にしかいないなら、なんでフライトが太平洋を越えてるんだ?
※「transatlanti'ed」は大西洋横断(世界的なツアー)。自分の名声がすでにローカルに留まらず、世界規模になっていることの証明。
The rice and the patties cooked nice for the chancellor
首相のために、ライスとパティが美味く調理されている
※成功を収め、高級な食事(またはジャマイカ料理のビーフパティなど)を楽しんでいる様。自分を「chancellor(首相/トップ)」と呼んで権力を誇示している。
Them teeth with the gold bright, the light switches mad at us
歯のゴールドが輝き、照明のスイッチが俺たちに怒っている
※金歯が眩しすぎるため、照明(電気のスイッチ)が自分の役割を奪われて嫉妬し、怒っているというユニークな擬人化表現。
Snapchatting panty-clad baddies, I'm a bachelor
パンティー姿のイカした女たちとスナップチャットしてる、俺は独身さ
I'm high and polite 'cause po-lice is in back of us
俺はハイで礼儀正しくしてる、サツが後ろにいるからな
※マリファナでハイになっているため、後ろにいる警察(po-lice)に目をつけられないよう過剰に大人しく振る舞っているストリートのリアルな描写。
And write with the same hand I smack 'em up with
そして奴らをひっぱたくのと同じ手でリリックを書くんだ
Stretching out the fifteen I had initially
最初から持っていた15分を引き伸ばしている
※アンディ・ウォーホルの「15分間の名声(誰もが15分間は有名になれる)」という有名な言葉を引き合いに出し、自分の名声が一時的なものではなく、長く続いていることを意味する。
Icky Thump, sticky kush lit up in a rental Jeep
イッキー・サンプだ、レンタルのジープで強烈なクッシュに火をつける
※The White Stripesの楽曲「Icky Thump」と、不快で強烈な匂いを放つ上質なマリファナ(sticky kush)を掛けている。
[Chorus: RZA & Earl Sweatshirt]
We could do this shit all night
俺たちは一晩中だってできるぜ
I'll fuck the freckles off your face, bitch
お前の顔のそばかすが消え失せるほどヤッてやるぜ、ビッチ
We could do this shit all night
俺たちは一晩中だってできるぜ
I'll fuck the freckles off your face, bitch
お前の顔のそばかすが消え失せるほどヤッてやるぜ、ビッチ
