Artist: Earl Sweatshirt (feat. Mac Miller)
Album: Doris
Song Title: Guild
概要
2013年にリリースされたEarl Sweatshirtのデビューアルバム『Doris』の7曲目に収録された本作は、盟友であるMac Millerを客演に迎えた、極めてダークでドラッギーな一曲である。プロデュースはEarl自身(randomblackdude名義)が手がけており、最大の特徴は両者のボーカルにかけられた極端なピッチダウン(チョップド&スクリュード)のエフェクトだ。これは、コデインシロップ(リーン)や強力なマリファナによる酩酊状態、つまり曲の冒頭で「液状のヘロイン」と称されるような重く引きずり込むような高揚感を音響的に表現している。Mac Millerにとっては、初期のポップで大衆的な「フラット・ラップ」のイメージから脱却し、より実験的で内省的な『Watching Movies with the Sound Off』や『Faces』へと向かう過渡期のマインドセットが赤裸々に綴られている。一方のEarlは、サモアの更生施設から帰還した後の鬱屈とした感情や音楽業界の常識への反抗を、不気味で緻密なライミングで描写している。互いの痛みを共有する二人の天才が、ストリートの闇の奥深くで共鳴したヒップホップ・クラシックである。
和訳
[Verse 1: Mac Miller]
Uh, said this a hit of liquid heroin
ああ、これは液状のヘロインの一撃だ
※「液状のヘロイン」とは、ヒップホップシーンで蔓延するプロメタジン・コデインシロップ(リーン)のこと。オピオイド系の強力な鎮静作用をヘロインに例え、この曲の極端にピッチダウンされたボーカルエフェクトの理由を提示している。
Marilyn Manson channelin', panickin'
マリリン・マンソンを降霊させて、パニックになってる
Spar with Anakin 'til one of us leave in a ambulance (Hoo)
どっちかが救急車で運ばれるまで、アナキンとスパーリングするぜ (Hoo)
※『スター・ウォーズ』のアナキン・スカイウォーカー(ダース・ベイダー)の暗黒面と、自身のダークな精神状態を掛けている。
Blow the smoke of the spliff in your eyes (Hoo)
スプリフの煙をお前の目に吹きかける (Hoo)
You ain't gon' live 'til you die (Hoo)
お前は死ぬまで「生きる」ことなんてないのさ (Hoo)
Intelligent bitch on my side
知的なビッチが俺のそばにいる
She bitchin', I'm spittin' habitual lies
あいつは文句を垂れ、俺は癖のように嘘を吐く
I hit her up when my jet land (Call her)
ジェット機が着陸したら彼女に連絡する (Call her)
Got a Swisher tucked in my headband (Baller)
ヘアバンドにはスウィッシャーを挟んでる (Baller)
※「Swisher」はブラント(マリファナの葉巻)を巻くための安葉巻スウィッシャー・スイーツ。
Front page news, I'm young Jesus
一面のニュースだ、俺は若きジーザスさ
Eatin' bagels with no cable on (Let's go)
ケーブルテレビも点けずにベーグルを食ってる (Let's go)
Been fuckin' hoes since when Mase was on (Okay)
メイスが全盛期だった頃から、女たちとヤッてきたぜ (Okay)
※1990年代後半に一世を風靡したハーレムのラッパー、Maseへの言及。
I hope the Based God hear my prayers (Pray)
ベースド・ゴッドが俺の祈りを聞き届けてくれることを願うよ (Pray)
※「Based God」はラッパーLil Bの神格化されたペルソナであり、インターネット・ヒップホップにおける象徴的な存在。
One day you're here, the next day you're gone
ある日はここにいても、次の日にはいなくなる
So me and Earl smokin' weed on Jay-Z lawn
だから俺とアールは、ジェイ・Zの家の芝生でウィードを吸うのさ
※ヒップホップの頂点であるJay-Zの権威を小馬鹿にするような、若く無軌道な彼らのアティチュード。
Some dope rap on your ho ass, Tony Womack
お前のビッチなケツにヤバいラップをかます、トニー・ウォーマックだ
※MLBの元選手トニー・ウォーマック。盗塁王として知られる彼のスピード感と、自身がビート上でラップを乗せるスキルを重ねている。
Don't hold back, no, feed your girl Cognac (Woah)
遠慮はしない、いや、お前の女にコニャックを飲ませてやる (Woah)
Meet a bitch, sleepin' wit' her, feverish, diva chick
ビッチに出会い、そいつと寝る、熱っぽくて、ディーバみたいな女だ
Met her off Twitter, even Schindler keep a list (Okay)
Twitterで知り合ったんだ、シンドラーだってリストを持ってるだろ (Okay)
※映画『シンドラーのリスト』を引き合いに出し、Mac自身も関係を持った女性(あるいは熱狂的なファン)のリストを持っているというブラックジョーク。
Pittsburgh, broke down somewhere in a Fisker (Uh-huh)
ピッツバーグだ、フィスカーに乗ってどっかでエンストした (Uh-huh)
※Macの地元ピッツバーグ。「Fisker」は高級プラグインハイブリッドカーのフィスカー・カルマ。
I could pull your bitch with a whisper (Uh-huh), then diss her (Woah)
ささやくだけでお前のビッチをお持ち帰りできる (Uh-huh)、そしてディスってやる (Woah)
Dumbass ho (Ho)
マヌケなビッチめ (Ho)
She only dumb 'cause she love that dough (Okay)
あいつがマヌケなのは、金が大好きだからさ (Okay)
Somewhere gettin' high readin' Juxtapoz (Yeah)
どっかでハイになりながら『Juxtapoz』を読んでる (Yeah)
※アンダーグラウンドのアートやストリートカルチャーを扱う雑誌『Juxtapoz』。
Hit her up, she come through, watch Adjustment Bureau (That's a good movie)
連絡すれば彼女はやって来る、『アジャストメント』を観るのさ (That's a good movie)
※2011年のSFスリラー映画『The Adjustment Bureau』。
Moms love me 'cause I'm so commercial ('Mercial)
俺はすごくコマーシャルだから、ママたちは俺が大好きなんだ ('Mercial)
※初期のMac Millerの大衆向けでキャッチーな「フラット・ラップ」のパブリックイメージに対する、自覚的かつ自虐的なライン。
I fuck 'em raw 'cause I know they fertile (Fertile)
あいつらは妊娠しやすいって分かってるから、生でヤッてやる (Fertile)
In Myrtle Beach with a purple fleece (Fleece)
マートルビーチで紫のフリースを着てる (Fleece)
Hotel lobbies playin' Für Elise (Yeah)
ホテルのロビーでは『エリーゼのために』が流れてる (Yeah)
I'm Ron Burgundy mixed with Hercules
俺はロン・バーガンディとヘラクレスを混ぜたような男さ
※コメディ映画『俺たちニュースキャスター』の主人公ロン・バーガンディの傲慢なユーモアと、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスの力強さを兼ね備えているという例え。
Slap a bitch in the mouth if she curse at me (Ow)
もし女が俺に暴言を吐いたら、その口をビンタしてやる (Ow)
Said Josh beard is like Paul Revere
ジョッシュの髭はポール・リビアみたいだって言ったんだ
※ジョッシュはおそらくMacの長年のエンジニアであるJosh Berg。アメリカ独立戦争の英雄ポール・リビアの立派な髭に例えている。
When he walk in the room it's like God is here
あいつが部屋に入ってくると、まるで神がそこにいるみたいだ
I'm at a prop shop in Montauk throwin' tomahawks at civilians
モントークの小道具屋で、一般人にトマホークを投げつけてる
※NY州のモントーク。ドラッグによる幻覚のような、シュールで無軌道な暴力のイメージ。
I'm chillin', yeah
俺はチルしてるぜ、イェー
[Verse 2: Earl Sweatshirt]
I'm on the monitor, nigga
俺はモニターに映ってるぜ
She takin' it like a champ and I'm proud of her, nigga
あいつはチャンピオンみたいに受け入れてる、誇りに思うぜ
I'm on the couch where that loud is burnin'
俺は強烈なウィードが燃えているカウチに座ってる
※「loud」は匂いの強い上質なマリファナのこと。
I'm shoutin', "I don't fuck with you," 'cause I don't
「お前らとは関わらねえ」って叫んでる、だって本当にそうだからな
※音楽業界や群がるフェイクな人間たちへの拒絶。
Never love a ho
ビッチを愛することなんて絶対にない
But we could play doctor, ma, open wide for thermometer
でも医者ごっこならできるぜ、なぁ、体温計のために大きく口を開けな
※オーラルセックスの生々しい隠喩。
Your cowgirl is crotch ridin' (Nigga)
お前のカウガールが股間に跨ってる (Nigga)
With a clean, faded fro, lopsided (Uh)
綺麗にフェードしたアフロが、傾いてるぜ (Uh)
Tell the label that I want a white driver (Uh)
レーベルには白人のお抱え運転手が欲しいって伝えておけ (Uh)
※アメリカ社会における「裕福な白人が黒人の運転手を雇う」という歴史的な人種的ステレオタイプを逆転させ、レーベルの上層部に対して自分の権力を誇示する痛烈な皮肉。
And tell him give me space, I don't know that nigga (Nigga)
それに、俺から距離を置けとも伝えろ、俺はあいつを知らねえんだから (Nigga)
Bold-ass little fuckin' low-class villain (Villain)
ふてぶてしい、クソ下層階級の小さな悪党さ (Villain)
Whole van tinted (Tinted), nope, can't kill him (No)
バンは全面スモークガラスだ (Tinted)、いや、あいつを殺すことはできない (No)
It's the Trashwang nigga (Nigga), that's what's up (Nigga)
トラッシュワングだぜ (Nigga)、そういうことだ (Nigga)
※「Trashwang」はOdd Future(Tyler, the Creatorら)の仲間内で使われるスラング。
Half pint of hope in that plastic cup (Come on)
そのプラスチックのカップには、ハーフパイントの希望が入ってる (Come on)
※「ハーフパイント(約240ml)」は、コデインシロップ(リーン)をスプライト等で割る際の一般的なボトルサイズ。「希望」とは、過酷な現実から逃避するためのドラッグのこと。
Real nigga from the start 'til the casket shut (Uh)
最初から棺桶が閉まるまで、本物の男さ (Uh)
Present his own case, he's a basket one (One)
自分自身で弁護する、あいつはバスケットケースだ (One)
※「Present his own case(法廷で自己弁護する)」と「basket case(頭のイカれた奴)」を掛けたワードプレイ。
Present-day based nigga, smack the judge (Judge)
現代のベースドな男だ、裁判官をひっぱたいてやる (Judge)
Ridin' with them same niggas, ashin' blunts
いつものダチと車を流して、ブラントの灰を落とす
While that bass make his face like he mad or somethin' (Uh)
ベースの重低音のせいで、あいつは怒ってるみたいな顔をしてる (Uh)
※ビートのベースが強烈すぎるため、自然と顔が歪んでしまう「stank face(ヒップホップ特有のしかめっ面)」を描写している。
Slide in the safe, take the cash and run (Run)
金庫に滑り込み、現金を奪って逃げる (Run)
Know that if he fake, I'm harrassin' him (Him)
あいつがフェイクなら、俺が執拗に嫌がらせしてやるって知っとけ (Him)
Took the big toe so they tagged the tongue (Yeah)
足の親指を持っていかれたから、奴らは舌にタグを付けたんだ (Yeah)
※遺体安置所(モルグ)では通常、死体の足の親指に認識タグ(トゥータグ)を付けるが、足の指が吹き飛ぶほど凄惨な殺し方をしたため、舌にタグを付けるしかなかったというダークなホラーコア表現。
Out here stuntin' like I'm supposed to, dog (Dog)
ここで当然のように見せびらかしてるぜ、兄弟 (Dog)
Blowin' more smoke than a broke exhaust
壊れた排気管よりも多くの煙を吐き出してる
Pipe only spirit that I hold menthol (Uh)
パイプ、俺が抱く唯一の精神はメンソールだ (Uh)
※「spirit」は魂や幽霊を意味すると同時に、酒(スピリッツ)の意味も持つ。マリファナのパイプとメンソール・タバコしか信じるものがないという虚無感。
It's Wolf Gang, bitch, like you know these paws
ウルフ・ギャングだぜ、ビッチ、お前らもこの肉球を知ってるだろ
※自身の所属するクルー、Odd Future Wolf Gang Kill Them All (OFWGKTA) の誇示。狼の足跡(肉球)に例えている。
Livin' like it's '62 (Uh), spit and grip my genitals (Uh)
62年みたいに生きてる (Uh)、ツバを吐いて自分の股間を掴む (Uh)
My bitch just split the Swisher, my niggas split them residuals
俺のビッチがスウィッシャーを割いて、俺のダチが印税を分け合うのさ
※女がブラントを巻くために葉巻(スウィッシャー)を縦に裂くことと、仲間たちと楽曲の印税(residuals)を分配することを見事に掛けている。
[Outro: Earl Sweatshirt]
Hey, it's marijuana fields, pot growin'
なあ、ここはマリファナ畑だ、ウィードが育ってる
Blarin' Gil Scott Heron while we pill pop
錠剤をキメながら、ギル・スコット・ヘロンを大音量で流す
※ヒップホップのゴッドファーザーとも呼ばれる偉大な詩人・ミュージシャンでありながら、生涯重度のドラッグ依存症に苦しんだGil Scott-Heron。彼らの尊敬と、同じようにドラッグに溺れる現状を重ね合わせている。
Errand run and kill cop
お使いに行って、サツを殺す
Niggas know I feel not for 'em, stop bitchin', bruh
俺が奴らに同情しないことはみんな知ってる、グチグチ言うのはやめな
Stare and get that grill knocked open
ジロジロ見やがって、そのグリルをぶっ壊してやるよ
※「grill」は歯(あるいは金歯などの装飾)のこと。
Hey, it's marijuana fields, pot growin'
なあ、ここはマリファナ畑だ、ウィードが育ってる
Blarin' Gil Scott Heron while we pill pop
錠剤をキメながら、ギル・スコット・ヘロンを大音量で流す
Errand run and kill cop
お使いに行って、サツを殺す
Niggas know I feel not for 'em, stop bitchin', bruh
俺が奴らに同情しないことはみんな知ってる、グチグチ言うのはやめな
Stare and get that grill knocked open... nigga
ジロジロ見やがって、そのグリルをぶっ壊してやるよ…
