Artist: Earl Sweatshirt
Album: Doris
Song Title: Uncle Al
概要
2013年にリリースされたデビューアルバム『Doris』に収録されている「Uncle Al」は、わずか53秒という極めて短いランニングタイムの中に、Earl Sweatshirtの卓越したリリシズムが凝縮された小品である。タイトルの「Uncle Al」が示す通り、プロデュースを手掛けたのはヒップホップ界の生ける伝説であるThe Alchemistだ。彼が提供した、ドラムが極限まで削ぎ落とされたノイズまみれの不穏なループ・ビートは、後のEarlの作品群(特に『Some Rap Songs』以降)で顕著となる「アヴァンギャルドなループ上で意識の流れを吐き出す」というスタイルの強烈な萌芽と言える。サモアの更生施設から帰還し、重圧と戦いながらも、ベテランプロデューサーのビートを軽々と乗りこなすEarlの硬質なフロウと、ストリートの冷徹さを描く緻密なワードプレイが光る、ファンからの人気も高い隠れた名曲である。
和訳
[Verse]
Salmon skin Band-Aid help with recovery
サーモンスキンの絆創膏が回復の助けになる
※「Salmon skin」は白人や明るい肌の色に合わせた絆創膏の色合いを指す。精神的・肉体的な傷をどうにかして塞ごうとする自虐的で皮肉なジョーク。
Diction buttery, grass depending
言葉遣いはバターみたいに滑らかだ、吸ってる草にもよるがな
※「Diction(言葉遣い、フロウ)」が上質であることをアピールしつつ、「grass(マリファナ)」の質次第で調子が変わるというラッパー特有の表現。
Your nigga was switching passed depending on where the rudder swings
お前のダチは、船の舵がどっちに切られるかによってコロコロと態度を変えていた
※「rudder」は船の舵。状況や有利な方に合わせて風見鶏のように態度を変える、ストリートのフェイクな人間たちへのディス。
Snapping like the shutter speed, pucker up, kiss of death
シャッタースピードみたいにキレてるぜ、唇を尖らせな、死の接吻だ
※「Snapping」は写真を撮る(シャッター)ことと、ブチギレる(キレのあるラップをする)ことのダブルミーニング。「kiss of death」はマフィアの世界で裏切り者や標的に下される死の宣告。
Tell your men to hit the deck or hit the dirt
お前の手下どもに、甲板に伏せるか泥にまみれるかして身を隠せと伝えておけ
※「hit the deck」「hit the dirt」は共に、銃撃戦などで地面に伏せて身を守ることを意味する軍隊・ストリートの慣用句。
Killing who you send in first, verse wintergreen spit it, show 'em that I meant it
お前が最初に送り込んできた奴から殺る、ウィンターグリーンのバースを吐き出し、俺が本気だってことを見せつけてやる
※「wintergreen」はミントの一種。息が爽やか(fresh)であることと、冷酷(cold)なラップスタイルであることを掛けている。
Ho, I'm rolling with my niggas, find a gold and call the chemist
ホゥ、俺は仲間とつるんでる、金を見つけたら化学者を呼べ
※「chemist(化学者/錬金術師)」は、この曲のプロデューサーであるThe Alchemistへの見事なネームドロップ。金(gold)を見つけて錬金術師にビートを作らせるという構造。
Show up solo to the scrimmage, throw a brick and pour the Henny
スクリメージに一人で現れ、レンガを投げつけ、ヘネシーを注ぐ
※「scrimmage」は乱闘や練習試合。「throw a brick」はバスケでシュートを大きく外すこと、またはストリートでコカインの塊(brick)を捌くことの隠喩。「Henny」はヒップホップでお馴染みのコニャック、ヘネシー。
Don't defend it, it's useless nigga
防御しようとするなよ、無駄だぜ
Up to my wrist in the cooler gripping the brew in this music shit
この音楽のクソみたいな世界で、クーラーボックスに手首まで突っ込んでビールを掴むんだ
※「brew」はビール。音楽業界の冷酷な環境(cooler)の中で、自分の取り分やリラックスを掴み取る姿を描写している。
For Versace suicidal, I hit the Jake, threw the rifle
ヴェルサーチのために命を懸ける、俺はサツを撃ち、ライフルを投げ捨てる
※「the Jake」は警察を意味するストリートスラング。高級ブランド(成功)を手に入れるためには、警察と撃ち合うような危険なライフスタイルも厭わないというギャングスタ・ペルソナの表現。
And tell her open that mouth for deposit, leave the bank broke
そして女に預金のために口を開けろと言い、銀行をすっからかんにする
※「deposit(預金)」と精液を出すこと(オーラルセックス)のダブルミーニング。ストリートの享楽的な一面。
Sliding in, she smiling and fidgeting, pull my face close
滑り込む、彼女は微笑んでモジモジしながら、俺の顔を引き寄せる
Streaming down the street from what 'roma was stank though
ストリートを流れ下っていく、どれだけ悪臭を放つアロマからでもな
※「'roma」はaroma(香り)。「stank」は強烈な匂い。ストリートの悪臭や、強力なマリファナの匂いが漂うゲットーの空気感。
Product of the villainy, product capable, plainclothes
悪行の産物、有能な産物だ、私服警官のようにな
※「plainclothes」は私服警官(アンダーカバー)。ストリートの悪事を吸い込んで育った存在でありながら、一見するとそれと分からないように巧みに立ち回る自分の姿。
Rhyme with no niggas who probably was gonna remain broke
ずっと一文無しのままでいるような奴らとは、絶対にライムしないぜ
※才能がなく、フェイクで将来性のないラッパーたちとは決して共演しないという、Earlのアーティストとしての強烈なプライドと選民意識。
