Artist: Earl Sweatshirt (feat. Tyler, The Creator)
Album: Doris
Song Title: Sasquatch
概要
2013年にリリースされたEarl Sweatshirtのデビューアルバム『Doris』に収録されている本作は、Odd Future(OFWGKTA)のリーダーであり盟友であるTyler, The Creatorを客演に、そしてプロデューサーにも迎えた一曲だ。Tylerが手掛けた、不気味で重苦しいベースラインと変則的なシンセサイザーが絡み合うホラーコア的なビートの上で、二人の対照的なラップスタイルが鮮やかに交錯する。前半のTylerのバースは、自身に向けられたミソジニーや過激な表現への批判を逆手に取り、ポップカルチャーやセレブリティを容赦なく嘲笑する、初期Odd Future特有のブラックユーモアに満ちている。一方後半のEarlは、複雑な多音節(マルチシラブル)のライムスキームを駆使しながら、LAのスケートカルチャー、ストリートでの暴力、そしてドラッグへの依存といった自身の冷酷な日常を、映画のような情景描写とともに淡々と綴っている。無軌道な若者たちから脱却しつつあったOFの過渡期における、悪童たちの相性の良さを改めて証明したクラシックである。
和訳
[Verse 1: Tyler, the Creator]
After filling my reputation of whore beaters
女を殴るクズだっていう俺の評判を満たした後で
※Tylerの初期の過激な歌詞(女性への暴力描写など)に向けられた批判やメディアのレッテル貼りを、自ら進んで体現してみせるという強烈な皮肉。
Soared to Taco Bell and I ordered some gorditas (Mmm, that's good!)
タコベルに飛んで行って、ゴルディータをいくつか注文した(うーん、美味いね!)
Wanted four more, ordered 'em, didn't eat 'em
あと4つ欲しくなって注文したが、食わなかったぜ
Then head to Thebe's house for some gymnastics
それから体操でもしようと、シービーの家に向かったのさ
※「Thebe」はEarl Sweatshirtの本名(Thebe Neruda Kgositsile)。
Fantastic, I backflip on this beat, B
素晴らしい、俺はこのビートの上でバク宙を決めるぜ、兄弟
Cause we running shit like the Dingleberries on four cheetahs
俺たちがこの場を支配してるからな、4頭のチーターのケツについたクソみたいにな
※「Dingleberries」は肛門の周りにこびりついた大便のこと。地上最速の動物であるチーターのケツに引っ付いていることで、自分たちも猛スピードで駆け抜けているという下品でばかばかしい例え。
Flow colder than Papa Joe's, old Domino's
パパ・ジョンズや、古くなったドミノ・ピザよりも冷たいフロウだ
※「Papa Joe's」はピザチェーン「Papa John's」の言い間違い、もしくは意図的な改変。冷め切ったピザよりも自身のフロウが「冷たい(cold=イケている)」という言葉遊び。
Fuck it, whatever
クソ、まあいいや
Um... Trashwang scratched inside the knucks
ええと…トラッシュワングって言葉をメリケンサックの内側に刻んだぜ
※「Trashwang」はOdd Futureのメンバーたちが使うスラングであり、Tylerの楽曲タイトルでもある。
Got some One Direction tickets, I should hit that up
ワン・ダイレクションのチケットを手に入れた、あそこに行かなきゃな
Drive by with puppy signs plastered on the truck
トラックに子犬のポスターを貼り付けて、ドライブバイするのさ
Then see how many of they fans could fit inside the trunk
それから、奴らのファンが何人トランクの中に詰め込めるか試してやるよ
※当時の大人気アイドルグループの若い女性ファンたちを、子犬で釣って誘拐するというTyler特有の悪趣味なホラーコア・ジョーク。
Move over the microwave and the cannabis
電子レンジと大麻をどかせ
Try to take the van and the whole band to Canada
バンに乗って、バンド全員でカナダへ行こうとするんだ
Fuck the block news and the venues, they can't handle us
地元のニュースもライブハウスもクソくらえだ、奴らには俺たちを扱いきれない
They can't stand us including fruits that Frank's channeling
奴らは俺たちに我慢できないんだ、フランクが交信しているフルーツも含めてな
※「fruit」はゲイを指すスラングであり、Frank Oceanのアルバム『Channel Orange』と彼のカミングアウト(バイセクシャル)を掛けたワードプレイ。
The Ku Klux Klan see me and my managers
クー・クラックス・クランが、俺とマネージャーを見てる
※KKKは白人至上主義の秘密結社。TylerのマネージャーであるChristian Clancyは白人であり、黒人と白人が組んでいることに対するレイシストの視線を皮肉っている。
But thank me when they ask where the Five Panels is
でも奴らが5パネルキャップはどこで買えるか聞いてきた時は、俺に感謝するんだぜ
※KKKでさえも、Odd FutureやSupremeの象徴である5パネルキャップを欲しがるという、ポップカルチャーにおける自分たちの影響力を誇示したライン。
Man, I suck now, I ain't still dope
あーあ、今の俺はクソだ、もうヤバくなんかないよ
※ファンやヘイターからの「昔のTylerの方が良かった」という批判の声を、わざと自虐的に真似ている。
But Chris and Rihanna's fuckin' again so there's still hope
でもクリスとリアーナがまたヤッてるみたいだから、まだ希望はあるな
※DV事件を起こしたChris BrownとRihannaが復縁したという当時のゴシップを引き合いに出し、世の中は相変わらず狂っているというブラックジョーク。
Oh fuck, I went there, balling bitch, I'm Ben's hair
あーあ、言っちまった、ボーリングしてるぜビッチ、俺はベンの髪の毛だ
※「Balling(成功する、バスケをする)」と「Bald(ハゲ)」を掛け、セレブ御用達の有名ジュエリーデザイナーであるBen Baller(スキンヘッド)の髪の毛(存在しないもの=常軌を逸している)に例えている。
Y'all barely breaking like Taco's self-esteem in a thin chair
お前らはかろうじて壊れかけてる、細い椅子に座ったタコの自尊心みたいにな
※Odd FutureのメンバーであるTacoが太っていた頃の体重ネタ。細い椅子が壊れそうな様子と彼の自尊心を掛けている。
Old Navy bitches love this gap, yeah this grin's rare
オールドネイビーのビッチどもはこのギャップが大好きだ、ああ、この笑顔はレアだからな
※アパレルブランドの「Old Navy」と「Gap」、そしてTylerのトレードマークである「すきっ歯(gap)」を掛けた秀逸な言葉遊び。
Watch a nigga smile like five-year-old child
俺が5歳の子供みたいに笑うのを見てな
I'm kicking it with Nak and the nigga from Green Mile, it's
ナックと、グリーンマイルの黒人と一緒につるんでるんだ、これは
※「Nak」はプロスケーターのNa-Kel Smith。そして「グリーンマイルの黒人」とは、俳優のマイケル・クラーク・ダンカンに体格が似ているOdd Futureのメンバー、Lionel Boyce(L-Boy)のこと。
Red Bull in this cup so a nigga may seem wild but
このカップにはレッドブルが入ってるから、俺はワイルドに見えるかもしれないが
That's just all the sherm I was burning a little while ago (Oh no)
それはただ、俺がさっき吸ってたシャームのせいだ (Oh no)
※「sherm」は動物用麻酔薬PCP(フェンサイクリジン)を染み込ませたタバコやマリファナのこと。レッドブルのせいではなく、強力なドラッグでハイになっているというオチ。
Don't let me get hold of that rifle
俺にそのライフルを持たせるなよ
Shout my nigga Sage Elsseser and Sean Pablo
俺のダチ、セージ・エルセッサーとショーン・パブロにシャウトアウト
※Supremeのライダーとしても知られる有名な若手スケーターたち。
Surrounded by them niggas that skate with a sick style
ヤバいスタイルでスケートをする連中に囲まれて
And some freckled bitches with giant peaches that's vile
巨大な桃尻を持った、そばかすだらけのえげつないビッチたちもいる
They never did catch that rhino
奴らは結局、あのサイを捕まえることはできなかったのさ
[Verse 2: Earl Sweatshirt]
Squadron full of some lost souls
迷える魂だらけの部隊だ
Sergeant of all, it's autumn and Nak just nollied a pothole
全員の軍曹さ、今は秋で、ナックがポットホールをノーリーで越えたところだ
※Earlがスケーターたちを率いるリーダー(軍曹)のような立場であることと、Na-Kel Smithが道路のくぼみ(ポットホール)をスケートボードのトリック(ノーリー)で飛び越える情景。
Non-cooperative with his momma's wishes for college
母親の「大学に行ってほしい」という願いには非協力的で
And coppers labeled a problem since paying for Damianos
ダミアノスでの支払いの頃から、サツには問題児としてレッテルを貼られてる
※地元の店(Damiano's)で悪さをしていた頃から警察にマークされている不良少年としての生い立ち。
So shimmy through the swamp, nigga, follow me through the foxholes
だから沼地をすり抜けて、タコツボ壕を通る俺についてきな
※前述の「部隊」のメタファーを引継ぎ、過酷なストリートを戦場に見立てている。
Moral Orenthal with a pretty bitch in a Bronco
道徳的なオレンサルだ、ブロンコに乗った可愛いビッチと一緒にな
※「Orenthal」はO.J.・シンプソンの本名(Orenthal James Simpson)。彼が殺人容疑で白いフォード・ブロンコに乗って警察から逃走した有名な事件に、自身を例えている。
Hopped right off the seven and stumbled into some Vatos ('Sup, loco?)
7番バスを降りてすぐ、バトスの連中に出くわした ('Sup, loco?)
※LAの7番路線のバス。「Vatos」はラテン系のギャングを指すスラング。(「調子はどうだ、イカれ野郎?」という絡まれる際のアドリブ)
Threw a punch, got jumped, dusted off and then walked home
パンチを繰り出し、ボコられ、服の土を払って歩いて家に帰った
※ストリートでギャングに袋叩きにされても、平然と日常に戻っていく冷淡な描写。
Shit, it's like 6 P.M. and his temple throbbing
クソ、まだ午後6時だってのに、こめかみがズキズキ痛むぜ
Hand in the cabinet by seven, sniff the prescription oxies
7時までにはキャビネットに手を入れ、処方薬のオキシコンチンをスニッフする
※暴力による痛みを和らげるため、あるいは精神的な逃避のために、強力な医療用麻薬であるオキシコンチンを粉末にして鼻から吸い込む依存症の現実。
Logo in the boxes, all my niggas hostile
箱の中のロゴ、俺のダチはみんな敵対的だ
Cautious of your crosses, scoffing at your doctrines
お前らの十字架を警戒し、お前らの教義を鼻で笑う
※宗教的な偽善や、社会の押し付けるルール(教義)を拒絶する姿勢。
Bitches augmented, stupid, as the group is, only slightly
ビッチどもは豊胸手術をしてて、バカだ、このグループ全体と同じようにな、ほんの少しだけだが
Write precise to get a pussy nigga tooth chipped
臆病な野郎の歯を欠けさせるために、的確にリリックを書く
Man these stitches shut the loose lips, stumbled in a Ruth's Chris
なあ、この縫い目が緩んだ口を塞ぐんだ、ルースクリスに転がり込む
※「Snitches get stitches(密告者は縫うハメになる=報復される)」というストリートの掟と、高級ステーキハウスであるRuth's Chris Steak Houseを対比させている。
Slid into a booth and hid the luggage from his shroom trips
ブースに滑り込み、マジックマッシュルームのトリップから持ち帰った荷物を隠す
See, Lionel ball with Leonardo on the weekend now
見ろよ、ライオネルは今じゃ週末にレオナルドと遊んでるんだぜ
※Odd FutureのメンバーであるLionel Boyceが、ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオと実際につるむようになったという、彼らの急速な名声の拡大を示すライン。
And Maui on a scenic route, we on the second season now
そしてマウイ島の絶景ルート、俺たちは今シーズン2に突入したところだ
※彼らの冠番組『Loiter Squad』の第2シーズンが決定し、順風満帆であることを示唆している。
Small fry got 'em seasons salty, weeded, coughing
ザコどもは季節をしょっぱくさせちまった、ウィードを吸って、咳き込む
Ease up off me, end is breathing easy as bulimics barfing
俺から離れろ、最後は過食症の奴がゲロを吐くのと同じくらい簡単に呼吸できるんだ
※ラップをスピット(吐き出す)する行為が、過食症(bulimic)の嘔吐のように自分にとって病的ながらも容易で自然なことであるという、ダークで鮮烈な比喩。
From a different breed of doggy, from a different seed and cloth
犬種が違うんだ、生まれた種も、作られた生地も違う
※他有象無象のラッパーたちとは根本的に格が違うという宣言。
And teeing off, believe it's Golf Wang, nigga
そしてティーオフだ、信じろ、これがゴルフ・ワングだぜ
※ゴルフの「ティーオフ(第一打を打つ)」と、Odd Futureのブランド/合言葉である「Golf Wang」を掛けた締めくくり。
