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Chum - Earl Sweatshirt 【和訳・解説】

Artist: Earl Sweatshirt

Album: Doris

Song Title: Chum

概要

2012年にリリースされた「Chum」は、サモアの更生施設から帰還したEarl Sweatshirtが、シーンへの本格的な復帰を飾った決定的な一曲である。プロデューサーデュオのChristian RichとEarl自身が手がけた、重く沈み込むようなベースラインとメランコリックなピアノループが特徴的なこの楽曲は、彼が抱える深いトラウマとアイデンティティの葛藤を容赦なく暴き出す。実の父親である南アフリカの著名な詩人Keorapetse Kgositsileの不在、兄代わりとなったTyler, the Creatorとの出会い、そして人種間の狭間で揺れる孤独といった内面が、圧倒的なライミングスキルとともに吐露されている。さらに、彼を施設から「発見」して世間の注目を集めたメディアに対する怒りや、予期せぬ名声と母親との確執までが赤裸々に語られ、若き天才ラッパーのアンチ・ヒーロー的なペルソナを決定づけた、内省的ヒップホップの歴史的クラシックである。

和訳

[Chorus]

Something sinister to it, pendulum swinging slow
何か不吉な感じがする、振り子がゆっくりと揺れている

A degenerate moving through the city with criminals, stealth
退廃した奴が犯罪者たちと一緒に街を移動する、隠密にな
※「degenerate(退廃した奴、問題児)」は彼自身の自己卑下。Odd Futureのメンバーたち(犯罪者と自嘲)と夜の街を徘徊する情景を描いている。

Welcome to enemy turf, harder than immigrants work
敵の縄張りへようこそ、移民の労働よりもハードだぜ

"Golf" is stitched into my shirt
俺のシャツには「Golf」と刺繍されている
※彼が所属するクルー、Odd Futureのブランド「Golf Wang」を指す。

Get up off the pavement, brush the dirt up off my psyche
舗装道路から立ち上がり、俺の精神に付いた泥を払い落とす

Psyche, psyche
精神、精神

[Refrain]

Can I get that, oh… let me get that beat in my headphones, louder
それをもらえるか、ああ…ヘッドフォンのビートをもっと大きくしてくれ

[Verse 1]

It's probably been 12 years since my father left
親父が出て行ってから、たぶん12年が経つ

Left me fatherless
俺を父親のいない子供にしてな

And I just used to say I hate him in dishonest jest
俺はただ、嘘の冗談で親父が嫌いだって言いふらしてたんだ

When honestly, I miss this nigga, like, when I was six
本当のことを言えば、俺はあいつが恋しいんだよ、自分が6歳だった頃とかな

And every time I got the chance to say it, I would swallow it
そしてそれを言う機会があるたびに、俺は言葉を飲み込んでいた

Sixteen, I'm hollow, intolerant, skip shots
16歳、俺は空っぽで、不寛容で、ショットグラスなんてすっ飛ばす

I storm that whole bottle, I'll show you a role model
ボトルごと一気飲みして、ロールモデルってやつを見せてやるよ
※アルコールに溺れる非行少年の姿を、皮肉を込めて「ロールモデル(模範)」と呼んでいる。

I'm drunk, pissy, pissing on somebody front lawn
酔っ払って、不機嫌で、誰かの家の前の芝生に立ちションしてる

Trying to figure out how and when the fuck I missed moderate
いつ、どうやって俺が「適度」って言葉を失っちまったのかを考えながらな

Momma often was offering peace offerings
母さんはよく仲直りの印を差し出してくれていた

Think, wheeze, cough, scoffing and he's off again
考えて、喘いで、咳き込み、冷笑して、そしてあいつはまたどこかへ行ってしまう
※父親が自分たちを残して去っていく様子を回想している描写。

Searching for a big brother, Tyler was that
頼れる兄貴分を探していた、タイラーがまさにそれだった
※Odd FutureのリーダーであるTyler, the Creatorが、父親不在のEarlにとって兄や父親代わりのような存在だったことを示している。

And plus he liked how I rap, the blunted mice in the trap
それに彼は俺のラップを気に入ってくれた、罠にかかったハイなネズミさ
※マリファナ(blunted)でハイになった自分が、Odd Futureという罠(居場所)を見つけた比喩。

Too black for the white kids, and too white for the blacks
白人の子供たちにとっては黒人すぎたし、黒人たちにとっては白人すぎた
※中産階級の知的な家庭環境とストリートの狭間で、自身のアイデンティティがどこにも属せなかった疎外感。ヒップホップファンの間で名ラインとして語り継がれている。

From honor roll to cracking locks up off them bicycle racks
成績優秀者のリストから、自転車置き場の鍵を壊すような不良にまでな
※真面目な優等生(honor roll)から非行に走った自身の過去のコントラスト。

I'm indecisive, I'm scatterbrained, and I'm frightened
俺は優柔不断で、注意散漫で、そして怯えているんだ

It's evident in them eyes, where he hiding all them icicles at
その目を見れば明らかだ、あいつがその氷柱をどこに隠しているのかがな
※冷たく凍りついた感情(icicles)を瞳の奥に隠しているという、自身の精神状態の客観的な描写。

[Chorus]

Something sinister to it, pendulum swinging slow
何か不吉な感じがする、振り子がゆっくりと揺れている

A degenerate moving through the city with criminals, stealth
退廃した奴が犯罪者たちと一緒に街を移動する、隠密にな

Welcome to enemy turf, harder than immigrants work
敵の縄張りへようこそ、移民の労働よりもハードだぜ

"Golf" is stitched into my shirt
俺のシャツには「Golf」と刺繍されている

Get up off the pavement, brush the dirt up off my psyche
舗装道路から立ち上がり、俺の精神に付いた泥を払い落とす

Psyche, psyche
精神、精神

[Refrain]

Can I get that, oh… let me get that beat in my headphones, louder
それをもらえるか、ああ…ヘッドフォンのビートをもっと大きくしてくれ

[Verse 2]

Uh… time lapse, bars rotten, heart's bottomless pit
あぁ…時間が経過し、鉄格子は腐り果て、心は底なし沼だ

Was mobbin' deep as '96 Havoc and Prodigy did
96年のハヴォックとプロディジーみたいに、深く徒党を組んでた
※クイーンズの伝説的ヒップホップデュオ、Mobb Deep(HavocとProdigy)の1996年頃の全盛期(Mobbin' Deep)と、Odd Futureとして集団で暴れ回っていた様子を掛けている。

We were the pottymouth posse, crash the party and dip
俺たちは口の悪い集団で、パーティーに乗り込んでは立ち去っていた

With all belongings then toss em out to the audience
そこにある持ち物を全部持って、観客に向かって投げ捨ててな

Nothing was fucking awesome
何もかもが最高じゃなかった

Trying to make it from the bottom
どん底から這い上がろうとしていたんだ

His sins feeling as hard as Vince Carter's knee cartilage is
あいつの罪は、ヴィンス・カーターの膝の軟骨くらい硬く感じられる
※NBAの伝説的ダンカー、Vince Carterがキャリアの蓄積で膝の軟骨をすり減らし硬直化させていたことと、自身の背負う罪の重さや心の硬直を掛けた見事なパンチライン。

Supreme garment and weed gardeners garnishing spliffs
シュプリームの服と、ウィードの栽培者たちがスプリフに飾り付けをする
※Odd Future周辺のスケートカルチャー(Supreme)とマリファナを吸う日常。

With Keef particles and entering apartments with 'zine article
キーフの粒子をまぶして、雑誌の記事を持ってアパートに入る
※「Keef」はマリファナの粉末結晶。

Tolerance for boundaries, I know you happy now
境界線に対する忍耐力さ、あんたが今幸せなのは分かってる
※非行に走ったEarlがサモアの更生施設に隔離されたことで、母親や関係者が安心している状況への皮肉。

Craven and these Complex fuck niggas done track me down
クレイヴンとComplexのクソ野郎どもが、ついに俺を突き止めやがった
※音楽メディアComplexの記者たちが、更生施設にいるEarlの居場所を勝手に特定し、ネット上で「Free Earl」運動を扇動した事件に対する痛烈なディス。

Just to be the guys that did it, like, "I like attention"
「俺たちがやったんだ」って手柄にするためだけに、「注目されたいんだ」ってな具合にな
※メディアが彼を救うためではなく、単なるアクセス稼ぎと自己顕示欲のために彼を探し出したという偽善を批判している。

Not the type where niggas trying to get a raise at my expense
俺をダシにして昇給しようとするような奴らのやり方はお断りだ

Supposed to be grateful, right?
感謝すべきなんだよな?
※ファンやメディアは彼を探し出して「助けた」と思い込んでいるため、感謝しろと言わんばかりの世間の態度への強烈な皮肉。

Like, "Thanks so much," you made my life harder
「本当にありがとう」ってな、お前らのせいで俺の人生はもっとハードになったんだよ

And the ties between my mom and I are strained and tightened
そして母さんと俺の絆は、さらに緊張して張り詰めている

Even more than they were before all of this shit
このクソみたいな騒動が起きる前よりもさらにな

Been back a week and I already feel like calling it quits
戻ってきてまだ1週間なのに、もう全部終わりにしたい気分だぜ

[Chorus]

Something sinister to it, pendulum swinging slow
何か不吉な感じがする、振り子がゆっくりと揺れている

A degenerate moving through the city with criminals, stealth
退廃した奴が犯罪者たちと一緒に街を移動する、隠密にな

Welcome to enemy turf, harder than immigrants work
敵の縄張りへようこそ、移民の労働よりもハードだぜ

"Golf" is stitched into my shirt
俺のシャツには「Golf」と刺繍されている

Get up off the pavement, brush the dirt up off my psyche
舗装道路から立ち上がり、俺の精神に付いた泥を払い落とす

Psyche, psyche
精神、精神

[Outro]

Can I get that, oh… let me get that beat in my headphones, louder
それをもらえるか、ああ…ヘッドフォンのビートをもっと大きくしてくれ