UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

UGMKM ARCHIVE

Find Music By Artist, Genre.

和訳・解説記事を、アーティスト名・ジャンルから探せます。

Hive - Earl Sweatshirt (feat. Vince Staples & Casey Veggies) 【和訳・解説】

Artist: Earl Sweatshirt (feat. Vince Staples & Casey Veggies)

Album: Doris

Song Title: Hive

概要

2013年にリリースされたEarl Sweatshirtのデビューアルバム『Doris』からの先行シングルである本作は、西海岸の若き才能たちがストリートの冷酷な現実と複雑な内面を叩きつけた、ヒップホップ史に残る暗黒のクラシックである。プロデュースはOdd FutureのMatt MartiansとEarl自身(RandomBlackDude名義)が手掛け、不気味にうねる重低音とミニマルなビートが終始不穏な空気を醸し出している。前半ではEarlが、サモアの更生施設から帰還した自身の特異な境遇と圧倒的な多音節(マルチシラブル)のライミングを見せつけ、フックではCasey Veggiesが荒々しい情景を描写する。そして特筆すべきは第3バースのVince Staplesだ。彼の極めて冷徹で暴力的なリリシズムと卓越したワードプレイは、フェイクなギャングスタラッパーたちを嘲笑し、シーンにおいて彼自身の存在感を決定づけるブレイクスルーとなった。

和訳

[Verse 1: Earl Sweatshirt]

Promise Heron I'll put my fist up, after I get my dick sucked
ヘロンに誓うぜ、フェラしてもらった後に拳を突き上げるってな
※「Heron」は黒人解放運動にも関わった詩人・音楽家のGil Scott-Heronのこと。彼の象徴的なブラックパワー・サリュート(拳を挙げる行為)を引き合いに出しつつ、その前にオーラルセックスを要求するというEarl特有の不遜な態度を示している。

Quick buck, maybe a gold chain
手っ取り早く稼いで、おそらくゴールドチェーンでも買うさ

With that fuckin' flow that's-s so belittles, man
相手をちっぽけに感じさせるような、このヤバいフロウを使ってな

They tentatively tend to turn and go when I am finished
俺がラップを終えると、奴らは気後れして背を向けて逃げ去っていく

Stone cold, hardly fucking with these niggas – nigga, listen
冷徹なんだ、こんな連中とつるむ気はさらさらない、なあ聞いてくれ

The description doesn't fit, if not a synonym of menace
「脅威」の同義語じゃないなら、俺への説明としては不適切だ

Then forget it – in turn, these critics and interns
だったら忘れな、その代わり、この評論家やインターンどもは

Admittin' the shit spitted, just burn like six furnaces
俺の吐き出したライムを認めざるを得なくなる、6つの炉のように燃え盛るぜ

Writ, it affixed, learnin' them digits and simultaneously
書き留められ、固定される、その数字を学びながら同時に
※「digits」は自身の銀行口座の残高(稼いだ金額)を指している。

Dispellin' one-trick-pony myths, isn't he?
「一発屋」の神話を打ち消してるんだろ?

One adolescent, fuckin' six-nigga energy
たった一人の若者が、6人分のクソデカいエネルギーを持ってるんだ

And crawlin' down 'fax like a rich nigga centipede
そして金持ちのムカデみたいにフェアファックス通りを這い進むのさ
※「'fax」はOdd FutureがたむろしていたLAのフェアファックス・アベニュー。仲間たちとぞろぞろと大名行列のように歩く様をムカデに例えている。

Crack ceramic and slap a hand out of cash account
セラミックを割り、キャッシュ口座から手を叩き落とす

Stamp and shoutin', thrashin', these niggas done let the kraken out
足を踏み鳴らして叫び、暴れ回る、奴らはついにクラーケンを解き放っちまった
※映画『タイタンの戦い』の有名なセリフ「Release the Kraken」の引用。抑え込んでいた自らの怪物的な才能が世に放たれたことを意味する。

Crack-a-lackin' like snap, crackle, poppin' your ammo off
スナップ、クラックル、ポップみたいに調子よく、お前の弾丸をぶっ放せ
※「What's crack-a-lackin?(調子はどう?)」というスラングと、ケロッグのシリアル「ライスクリスピー」のキャラクター(Snap, Crackle, Pop)、さらに銃声の擬音を掛けた複雑なワードプレイ。

Hide your face, and throw your flannels off, Sweatshirt, nigga
顔を隠して、そのネルシャツを脱ぎ捨てろ、スウェットシャツの出番だぜ
※自身のラップネーム「Sweatshirt」と衣類を掛けた秀逸なパンチライン。

[Chorus: Casey Veggies & Earl Sweatshirt]

'87 rooftop, Bronson
87年の屋上、ブロンソンだ
※アクション俳優チャールズ・ブロンソンのようなハードボイルドな世界観。

Whippin' hoopties, tryna boost raw chronic
ボロ車を乗り回し、極上のクロニックを手に入れようとしてる
※「hooptie」はオンボロ車、「chronic」は上質なマリファナ。

Brutus in that booth, double scoop, hock, vomit up
ブースの中のブルータスだ、ダブルスクープ、咳き込んで、吐き出す

Subrockin' thud, knockin' niggas teeth-loose
サブウーファーの低音が響き、連中の歯を揺るがす

Bruh, I don't fuck with no cop – rollin' with that flow swamp
なあ、俺はサツとは一切関わらねえ、この沼のようなフロウで乗り込むぜ

Catch me over stove top – rappin' to that coke rock
コンロの上の俺を見な、コカインの塊に向かってラップしてるぜ
※コンロで粉末コカインを熱してクラック・コカイン(ロック)を精製するストリートの描写。

Passionless in old Jive clothin', with them doors wide open
古いジャイブの服を着て情熱もなく、ドアを全開にしてな

Dim the floor lights, focused like it's nothin', 'cause it's nothin', bitch
フロアの照明を落とせ、何事もないかのように集中してる、大したことじゃないからな、ビッチ

[Verse 2: Earl Sweatshirt]

From a city that's recession-hit
不況の直撃を受けた街から来た

Stress niggas could flex metal with peddle to rake pennies in
ストレスを抱えた奴らは、小銭をかき集めるために自転車を漕ぎながら銃をチラつかせる
※「metal」は銃のこと。

Desolate testaments, tryin' to stay Jekyll-ish
荒涼とした証言だ、ジキル博士のままでいようとしてる

But most niggas Hyde, and Brenda just stay pregnant
でも大半の奴らはハイド氏になっちまうし、ブレンダは妊娠したままだ
※二重人格の「ジキルとハイド」に例え、善良であろうとしてもストリートの環境が人を悪(ハイド)に変えてしまう現実。また、2Pacの社会派楽曲「Brenda's Got a Baby」(未成年の妊娠問題)を引き合いに出し、ゲットーの悲劇が変わっていないことを示唆している。

Breakin' News: Death's less important when the Lakers lose
臨時ニュースだ、レイカーズが負けた時の方が、人の死よりも重大事として扱われるんだ
※地元LAの人々にとって、バスケチームの勝敗が日常の殺人事件よりも重要視されている異常なメンタリティへの皮肉。

It's lead in that baby food, heads try to make it through
ベビーフードには鉛が入ってる、ジャンキーたちはなんとか生き延びようとしてる

Fish-netted legs for them eyes that she cater to
彼女が相手にする客の視線を惹きつけるための、網タイツを履いた脚

Ride dirty as the fuckin' sky that you prayin' to
お前が祈りを捧げているあのクソみたいな空と同じくらい、汚れた状態で車を走らせる
※「Ride dirty」は車内に銃やドラッグを隠し持ったまま運転すること。LAのひどいスモッグ(汚染された空)と掛けている。

So here I sit, eye in the pyramid
だから俺はここに座ってる、ピラミッドの中の目としてな
※プロビデンスの目(万物を見通す目)。シーンの頂点から俯瞰しているという比喩。

God spit it like it's truth serum in that beer and then
神がそのビールに自白剤を入れたかのように言葉を吐き出し、そして

*blow* – disappear again, reappear bearded
(フッと息を吹きかけて)また姿を消し、髭を生やして再び現れる
※サモアの更生施設に送られてシーンから姿を消し、成長して帰還した自身の体験。

On top of a Lear, steerin' it into the kid's ear again
リアジェットの頂上で、再び子供たちの耳へと操縦していく

Provider of the backdrop music
背景音楽の提供者さ

For the crack rock user and the mascot, Earl
クラック中毒者とマスコットのためのな、アールだ

Rawer than a skinned knee cap on a blacktop
アスファルトで擦りむいた膝小僧よりも生々しいぜ

Salivary glands, lighter fluid for the matchbox
唾液腺からは、マッチ箱に注ぐライターのオイルが出る
※自身の口から出るラップが引火性が高く危険であることのメタファー。

Strikin' – wait, wait, who the fuck you badder than?
火をつけるぜ、待てよ、お前は一体誰よりもワルだっていうんだ?

Boy, oh boy, I'm bad as burnt – pollo off the grill and shit
やれやれ、俺の悪さは焦げたグリルチキン並みだぜ
※「pollo」はスペイン語で鶏肉。

Spitter of the Little Nick, nimble, rickrollin'
リトル・ニックのスピッター、素早くて、リックロールしてるぜ
※ネットミームである「Rickroll(釣り動画)」のように、予想を裏切るトリッキーなフロウ。

Bitch niggas pick litter, piff-blower, plus I pillage shit
ビッチな奴らはゴミ拾いでもしてな、こっちは上質なウィードを吹かし、さらに略奪もするんだ
※「piff」は上質なマリファナの隠語。

[Chorus: Casey Veggies & Earl Sweatshirt]

'87 rooftop, Bronson
87年の屋上、ブロンソンだ

Whippin' hoopties, tryna boost raw chronic
ボロ車を乗り回し、極上のクロニックを手に入れようとしてる

Brutus in that booth, double scoop, hock, vomit up
ブースの中のブルータスだ、ダブルスクープ、咳き込んで、吐き出す

Subrocin' thud, knockin' niggas teeth-loose
サブウーファーの低音が響き、連中の歯を揺るがす

Bruh, I don't fuck with no cop – rollin' with that flow swamp
なあ、俺はサツとは一切関わらねえ、この沼のようなフロウで乗り込むぜ

Catch me over stove top – rappin' to that coke rock
コンロの上の俺を見な、コカインの塊に向かってラップしてるぜ

Passionless in old Jive clothin', with them doors wide open
古いジャイブの服を着て情熱もなく、ドアを全開にしてな

Dim the floor lights, focused like it's nothin', 'cause it's nothin', bitch
フロアの照明を落とせ、何事もないかのように集中してる、大したことじゃないからな、ビッチ

[Verse 3: Vince Staples]

Quit with all that tough talk
タフぶった口を叩くのはやめな

Bro, we know you niggas ain't about shit
なあ、お前らが口先だけだってことは分かってるんだ

Come around, we gun 'em down
こっちに来てみろ、撃ち殺してやるから

Bodies piled, Auschwitz
死体の山だ、アウシュビッツみたいにな
※ナチスの強制収容所を引き合いに出した、Vinceの極めて冷酷で暴力的なパンチライン。

Bulletproof outfits, weapons concealed
防弾仕様の服を着込み、武器は隠し持ってる

I'm ready to kill – so test it, all my weapons is real
殺る準備はできてる、試してみろよ、俺の武器は全部本物だ

Sellin' thizz, couldn't tell 'em what the recipe is
ティズを売ってるが、そのレシピは奴らには教えられなかった
※「thizz」はエクスタシー(MDMA)を指すカリフォルニア特有のスラング。

Got 'em wishin' that they never gave these weapons to kids
ガキどもにこんな武器を与えなきゃよかったと後悔させてやるよ

Cheers, send chills up spines of fat bitches
乾杯だ、太ったビッチどもの背筋を凍らせてやる

After shows throwin' out sandwiches
ライブの後にはサンドイッチを投げ捨ててな
※Odd Futureの悪ふざけやグルーピーに対する無礼な振る舞いの描写。

Niggas get it how they live and I live for money
連中はそれぞれの生き方で稼ぐが、俺は金のために生きてるんだ

Other words, I'm gettin' money
言い換えれば、俺は金を稼いでるってことさ

Lil Boy told me when it's time to ride, they'll send up for me
リル・ボーイが言ってたぜ、抗争の時間が来たら俺に迎えを寄こすってな

Ain't nobody scarin' me, niggas ain't prepared for heat
誰も俺をビビらせることはできない、奴らは銃火器への備えができてないからな

Tools hit like pool sticks, the way I cue shit
俺の操り方なら、道具はビリヤードのスティックみたいに命中するぜ
※「Tools(銃)」と「pool sticks(ビリヤードのキュー)」、そして「cue(狙い打つ/合図する)」を掛けたワードプレイ。

If this was '88, I would have signed to Ruthless
もしこれが88年なら、俺はRuthlessと契約してただろうな
※1988年にN.W.A.が所属していたEazy-Eの伝説的レーベル「Ruthless Records」。自身の冷酷(ruthless)なスタイルと掛けている。

'94, would've had 'em walkin' down death row
94年なら、奴らに死刑囚監房を歩かせてただろうよ
※1994年全盛の「Death Row Records(2PacやSnoop Doggら)」への言及であり、同時に敵を死刑(death row)に追いやるというダブルミーニング。

First is when the best go, hate is what the rest do
最高な奴が最初に行き、残された奴らはヘイトするだけだ

Voice inside my head told me, "Wet 'em if they test you"
頭の中の声が俺に言ったんだ、「ナメてきたら血祭りにあげろ」ってな
※「Wet 'em」は撃って血で濡らす(殺す)というストリートスラング。

So it's Raging Waters season
だから今はレイジング・ウォーターズの季節だ
※カリフォルニアの巨大なウォーターパークの名前。銃弾の雨を降らせて血の海(水浸し)にするという比喩。

That yomper big as Larry Johnson, leave your momma seedless
ラリー・ジョンソンくらいデカい銃で、お前の母親を種無しにしてやるよ
※「yomper」は大型の銃器。元NBAの屈強なスター選手Larry Johnsonに例え、敵を殺してその親から子供(種)を奪い去るという残酷なライン。

Everybody hard until it's only God they seein'
誰もが神の顔しか見えなくなる直前までは、ハードなフリをするんだ

Kitten soft but in they songs be trappin' hard as Jeezy
本当は子猫みたいにソフトなくせに、曲の中ではJeezyみたいにハードなトラップをやってる
※アトランタのトラップのパイオニアであるYoung Jeezyを引き合いに出し、フェイクなスタジオギャングスタたちをディスっている。

I don't believe it, but to each his own
俺はそんなの信じないが、まあ人それぞれだ

I ain't trippin' long as I can reach the chrome
俺はクロームに手が届く限りは取り乱したりしないぜ
※「chrome」はクロームメッキの銃。

Heat your home like Southern California Gas, police pass
サザン・カリフォルニア・ガスみたいに家を暖めてやる、警察は素通りだ
※地元のガス会社(SoCalGas)の名前を出し、敵の家に銃撃を浴びせて「熱く」する(heat)ことの隠喩。

Tell 'em "Free Smalls," off Palm with the heat drawn
「スモールズを解放しろ」と伝えな、パーム通りで銃を抜いたままだ

Strapped up long as the chief of police armed
警察署長が武装している限り、俺も銃を手放さない

Raised where the beasts are, north of the Beach
野獣たちがいる場所で育ったんだ、ビーチの北側でな
※Vinceの地元であるロングビーチの北側(ノース・ロングビーチ)、あるいはコンプトンなどの危険地帯。

A couple streets past Baby J, bony niggas sprayin' K's
ベイビー・Jから数ストリート過ぎた場所で、ガリガリの奴らがAKを乱射してる

Ruger with the pork face, Jewish for the court case
豚の顔が描かれたルガー、法廷にはユダヤ系の弁護士をつける
※「Ruger」は銃のブランド。警察(豚)に向ける銃、あるいはレーザーサイトの比喩。そして裁判になれば優秀なユダヤ人弁護士を雇って逃げ切るというハスラーの生々しい処世術。

Here to save you niggas from the sorbet, Coldchain
お前らを冷たいシャーベットから救ってやるためにここに来たんだ、コールドチェーンさ
※「sorbet(シャーベット)」とVinceのミックステープシリーズ名義である「Shyne Coldchain」を掛けた、自身の冷徹なペルソナによる締めくくり。

[Outro: Casey Veggies]

Like it's nothin', 'cause it's nothin', bitch
何事もないかのように、大したことじゃないからな、ビッチ