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Pre - Earl Sweatshirt (feat. SK Do Magic) 【和訳・解説】

Artist: Earl Sweatshirt (feat. SK Do Magic)

Album: Doris

Song Title: Pre

概要

2013年にリリースされたEarl Sweatshirtのデビューアルバム『Doris』のオープニングを飾る重要曲である。本作の最大の特筆すべき点は、待ち望まれた天才ラッパーのデビュー作の1曲目でありながら、Earl自身ではなく無名のSK La' Flare(本作ではSK Do Magic名義)に長大なファーストバースを丸ごと委ねている点だ。SK La' FlareはFrank Oceanのいとこであり、Odd Future周辺の人物として知られている。ヒップホップにおける「主役が前に出るべき」という伝統的なエゴや商業的期待を真っ向から裏切るこの構成は、Earlのアンチ・ポップスター的なアティチュードと、身内を重んじるコミュニティ精神の表れである。不穏でミニマルなビートの上で、SKのストリート志向なハスラーラップと、Earlの極めて複雑なライムスキームと内省的かつ暴力的なリリシズムが鮮烈なコントラストを描き、アルバム全体のダークな世界観を見事に提示している。

和訳

[Intro: SK Do Magic]

Uh-huh, uh-huh, uh-huh

Uh-huh, uh-huh, uh-huh

It's money, it's money, it's money
金だ、金だ、金なんだよ

It's money, it's money, all day, all day
金だ、金だ、一日中ずっとだ

Ugh

[Verse 1: SK Do Magic]

Baby girl, what you want to do? (Do)
ベイビーガール、お前はどうしたいんだ? (Do)

Hop in this 'Cedes, girl (Girl)
このベンツに乗りなよ、ガール (Girl)
※ストリートのハスラーにとっての成功の象徴であるメルセデス・ベンツのこと。

She like, "Where we going to?"
あいつは「どこへ行くの?」って聞いてくる

A new life, new world (World)
新しい人生、新しい世界さ (World)

Pop that molly, we hardbody (Body)
モリーをキメて、俺たちは無敵だ (Body)
※モリー(MDMA)による高揚感と、ストリートで鍛え上げられたタフな肉体(hardbody)を表現している。

Glocks hot as Kemosabe ('Sabe)
グロックはキモサベみたいに熱を帯びてる ('Sabe)
※「キモサベ」は西部劇『ローン・レンジャー』の相棒トントが主人公を呼ぶ名前。同時に、銃を撃ちすぎて銃身が熱くなっている状態と掛けている。

He said that he wanted beef
あいつはビーフを望んでるって言ってたな

So we fed him hollows and got it poppin' (Got it)
だからホローポイント弾を食わせてやって、事を起こしたのさ (Got it)
※ビーフ(抗争)に対し、人体に入ると拡張して殺傷能力が高まるホローポイント弾を撃ち込むことでケリをつけたという暴力的な描写。

Fear and ego is the enemy (Uh-huh)
恐怖とエゴが敵なんだ (Uh-huh)

You ain't got to pretend with me
俺の前で強がる必要はないぜ

I need the wool (Wool), I'ma skin the sheep (Sheep)
ウールが必要だから、羊の皮を剥ぐんだ (Sheep)
※金やリソースを容赦なく絞り取るストリートの隠喩。

And take the bull, skin it to the meat
そして雄牛を捕まえて、肉になるまで皮を剥ぐ

You full of shit, we in too deep
お前は戯言ばかりだ、俺たちは深みにはまりすぎてる

I do this, she knew the deep
俺はこれをこなす、あいつはその深さを知っていた

Like two feet, Flare two-time
両足のように、フレアは二股をかける
※SKの別名義「SK La' Flare」へのネームドロップ。

She wanna kick it like Bruce Lee (Ugh)
あいつはブルース・リーみたいにキックしたがってる (Ugh)
※「kick it(リラックスして遊ぶ)」とブルース・リーの「キック(蹴り)」を掛けたヒップホップ定番のパンチライン。

Brought you in, I'll take you out (Out)
お前を連れ込んだんだ、俺がお前を消してやる (Out)

Ball like Tim then I weighed it out
ティムみたいにボールを操って、それから重さを量ったんだ
※NBAの伝説的プレイヤーであるティム・ダンカンのように「ball(成功する、バスケをする)」しつつ、ドラッグの重さを量るハスラーの日常を掛けている。

It's no work, we sling through droughts
仕事なんてない、俺たちは枯渇した時期でも売りさばく
※ストリートにドラッグが不足している時期でも、うまく立ち回って商品を捌く能力を誇示している。

The life of me, I'm just hangin' out
俺の人生、ただつるんでるだけさ

Don't get comfortable and lay on the couch
くつろいでソファーで寝そべってんじゃねえぞ

I don't wanna see your ass layin' down
お前が横になってる姿なんて見たくないんだ

Pop that pussy, twerk somethin'
その股を開いて、トワークしろよ

'Cause most of these bitches work for nothin'
ここらのビッチの大半はタダ働きしてるようなもんだからな

Paid your dues, while you paid in full
お前が借りを返してる間に、こっちは全額支払われたぜ
※ヒップホップにおける「Pay dues(下積みを経てリスペクトを得る)」と、Eric B. & Rakimの名盤『Paid in Full』を引用した表現。

I can't wait to win, you wait to lose
俺は勝つのが待ちきれないが、お前は負けるのを待ってるだけだ

Your mind of a failure, hate rules
失敗者のマインドには、憎悪が支配している

When you settle for what you hate to do
自分が嫌いなことで妥協する時にな

I go the extra mile, I'm with the extras
俺は一歩先を行く、エキストラたちと一緒にいるんだ
※「go the extra mile(一層の努力をする)」と、映画などのエキストラを掛けている。

Extended clips shoot through your necklace
拡張マガジンがお前のネックレスを撃ち抜く

Leave you breathless, that Tec is restless
お前の息の根を止める、あのテックは休むことを知らない
※「Tec」は半自動拳銃TEC-9のこと。ストリートで頻繁に用いられる武器。

'Cause all my children need the best, bitch
俺の子供たちには最高の環境が必要だからな、ビッチ

I need that Rothschild money (Money), the top is sunny (Sunny)
ロスチャイルド家の金が必要だ (Money)、頂上は晴れ渡っている (Sunny)
※ロスチャイルド家は莫大な富と権力の象徴として、ヒップホップで究極の成功の代名詞として頻繁に引用される。

I seen the light (Light), and you blocked it from me (Light)
俺は光を見た (Light)、なのにお前はそれを俺から遮った (Light)

But I found my way (Way) to the top, I'm comin' (Comin')
だが俺は頂上への道を見つけた (Way)、今行くぞ (Comin')

Got that smack-dab base (Base), like a rockstar drummer
ど真ん中にベースがある (Base)、まるでロックスターのドラマーみたいにな
※「smack(ヘロイン)」と「base(コカインのベース)」というドラッグの隠語を、ドラムの「ベースドラム」に掛けている。

[Verse 2: Earl Sweatshirt]

I'm a problem to niggas
俺は奴らにとっての厄介者だ

Pop artillery, the carbon is with 'em
重火器をぶっ放す、カーボンが奴らと共にある
※「artillery(大砲、重火器)」と、アサルトライフルAR-15の派生銃であるカーボン15を指している。暴力的なリリシズムの幕開け。

Starving to hit 'em, spar with a nigga
奴らを打ち負かしたくて飢えている、俺とスパーリングしてみろ

Just watch, I'ma kill 'em all in a minute
見てな、1分以内に全員殺してやるから
※ラップのスキルでシーンの同業者たちを圧倒するという宣言。

It's the ticket-dodgin' aristocrat
チケットをかわす貴族のお出ましだ
※「ticket」は駐車違反などの切符。サモアの更生施設から帰還し、名声を得ながらもシステムを軽視する自身のペルソナを貴族に例えて皮肉っている。

New bitch, whip with the system slaps
新しい女、カーステレオがガンガン鳴る車
※「whip」は高級車、「system」は重低音を響かせるオーディオシステムのこと。

Mister slide in and skimp the sack
滑り込んでは、サックの量をちょろまかすミスターだ
※マリファナの袋(sack)の量をケチる(skimp)という、自身のセコい一面を自虐的に描写している。

Nigga hit the function with a pick and axe
ツルハシと斧を持ってパーティーに乗り込むぜ
※「function」は集まりやパーティーのこと。Odd Future特有の、場違いで破壊的なエネルギーを持ってシーンに乱入する様を表現。

My nigga, miss me with the bullshit
なあ、くだらねえ戯言は俺から遠ざけてくれ

Right here, right ear got a pesto blunt
まさにここ、右耳にはペストのブラントが挟まってる
※「pesto」はジェノベーゼソースのような緑色を指し、上質なマリファナの比喩。

Why that shit got a young nigga Velcro stuck?
なんでそのブツは、若い黒人をマジックテープみたいに固定しちまうんだ?
※強力なインディカ種のマリファナを吸って体が動かなくなる状態(カウチロック)を、マジックテープ(Velcro)に貼り付いた状態に例えている。

Why your bitch go down when the sess go up?
なんでウィードの煙が上に昇る時、お前の女は下に行くんだ?
※「sess(上質なマリファナ)」の煙が上に昇る(highになる)ことと、女がオーラルセックスをするために下を向く(go down)ことを対比させた秀逸なパンチライン。

Hard as armed services, y'all might have heard of him
軍隊みたいにハードだ、お前らも彼の噂を聞いたことがあるだろ

Escobarbarian, best call the lawyers up
エスコバーバリアンだ、弁護士を呼んでおいた方がいいぜ
※コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルと、野蛮人(Barbarian)を組み合わせた造語。自らの無慈悲なラップスタイルを誇示している。

Bruh, the broad Aryan, know the squad loiterers
なあ、その白人の女は、うろつく連中の集団を知ってるんだ
※「Aryan」はアーリア人(白人)を指し、ここでは熱狂的な白人のグルーピーを意味する。「squad loiterers」は彼が所属するOdd Futureの冠番組『Loiter Squad』への言及。

Not with the grain and these bitch niggas' wishes
世間の流れや、あのビッチな野郎どもの願いとは逆を行く

Dealt with addiction
依存症と向き合ってきた

Fell for the bitch with the pale butter skin who just packed up and dipped
荷物をまとめて去っていった、青白いバター色の肌をしたビッチに惚れちまったんだ
※「pale butter skin」のビッチとは実際の女性のこととも取れるが、ヒップホップファンの間では白っぽい色をした強力なドラッグ(マリファナの結晶など)への依存と、それがもたらす喪失感を擬人化していると解釈されている。

In the land of the rent-less
家賃のない土地でな
※「rent-less」は、ホームレス状態、精神的に居場所のない状態、あるいは強制的に送られたサモアの更生施設での日々を暗喩している。

Stand with my chips in a stack and a grin, fuck 'em
チップを山積みにしてニヤリと笑いながら立ってる、奴らなんてクソ食らえだ
※カジノのチップ(大金)を積み上げ、自分を批判する者たちに対して中指を立てるEarlのニヒリズムと成功の事実が同居した締めくくり。

[Outro]

*A man getting viciously stabbed to death*
※不気味な効果音の描写。男性が刺殺されるようなサウンドが挿入され、アルバム全体のダークで不穏なトーンを強調して曲が終わる。