Artist: Earl Sweatshirt
Album: Earl
Song Title: Kill
概要
2010年にリリースされたOdd Future(OFWGKTA)の天才、アール・スウェットシャツのデビューミックステープ『Earl』の5曲目に収録された楽曲。前曲「Couch」の最後にタイラー・ザ・クリエイターによって「殺害」されたアールが、息を吹き返して報復を宣言するというストーリー的な繋がりを持っている。タイラーが手掛けた不気味でミニマルなピアノループの上で、当時わずか16歳のアールは、驚異的な多音節ライム(マルチ)とホラーコア的なゴア表現、そしてブラックユーモアを縦横無尽に展開する。ジャスティン・ビーバーやマイリー・サイラスといった当時のポップアイコンを標的にした過激なジョークから、リル・B(Based God)へのシャウトアウトまで、当時のインターネット・ヒップホップ黎明期特有のカオスな空気が濃縮された一曲である。圧倒的なワードプレイとライミングの技術は、彼が単なるショック・バリューを狙っただけの悪ガキではなく、世代を代表するリリシストであることを明確に証明している。
和訳
[Intro]
Aw, nigga thought he killed me?
ああ、あいつは俺を殺したとでも思ってたのか?
※前曲「Couch」の終盤でタイラー・ザ・クリエイターに殺害された展開を受けてのメタ的なセリフ。
Alright, that's cool, we'll see
わかったよ、上等だ、今に見てろ
[Verse 1]
Strict top of the crop shit
厳選された最高級のクソヤバい代物だ
※「cream of the crop(最高級のもの)」を変形させた表現。自身のラップスキルが最上級であることを示している。
Crushin' mo'fuckers like moths in a mosh pit
モッシュピットの中の蛾みたいに、クソ野郎どもを押し潰してやる
Dollar cents sin shit, sense, I ain't lost it
ドルとセントの罪深い戯れ、感覚、俺はそれを見失っちゃいないぜ
※「cents(小銭)」と「sense(感覚・理屈)」の同音異義語を用いた見事な言葉遊び。
It's in a fuckin' jar with guitar picks and bar spit
ギターピックと吐き出した小節と一緒に、瓶の中に突っ込んであるんだ
Bar spat, past tense, warriors of radness
吐き出された小節、過去形さ、過激さの戦士たちだ
※「spit(ラップを吐く)」の過去形「spat」。1980年代のサーフ・スケートアパレルブランド「Warriors of Radness」をネームドロップし、初期OFのスケーターカルチャーのルーツを示している。
Fuck lame, get it through your brain like dad's dick
ダサい奴らはクソ食らえだ、親父のチンコみたいにお前の脳天まで貫通させてやる
Go ahead, stab a friend, tell him that I'm back, bitch
さあ、友達を刺してこい、俺が戻ってきたってそいつに伝えな、ビッチ
Earl leave bastards with milkiest asses
アールはろくでなし共を最高にミルキーなケツにしてやる
※暴行を加えて相手を青白く(milky)させるという意味や、性的・屈辱的な暴行を含意したOdd Future特有のショック・バリュー表現。
Take a firm standin', nine on the tracklist
どっしり構えな、トラックリストの9番目だ
※「nine」はミックステープ内の通し番号(スキット等を含む実質の並び順)であると同時に、9mm口径の拳銃を意味するダブルミーニング。
Earl half the reason the reviews fantastic
レビューが大絶賛されてる理由の半分はアールのおかげだ
Niggas gettin' comfy on the couch, I ain't havin' it
ソファでくつろいでる奴ら、俺は許さねえぞ
※「couch(ソファ)」は前曲のタイトル「Couch」にかかっている。気を抜いているリスナーや他のラッパーたちへの警告。
Kickin' gluteus maximus, killin' niggas on accident
大臀筋を蹴り上げ、うっかり奴らを殺しちまう
※「gluteus maximus」は解剖学用語で大臀筋(お尻の筋肉)。つまり「kick ass(ケツを蹴り上げる=ぶっ飛ばす)」というスラングを、難解な医学用語を用いて表現する極めて高度なライミング。
[Chorus]
Just watch, I'ma kill 'em all
見てな、俺が全員殺してやる
Just watch, I'ma kill 'em all
見てな、俺が全員殺してやる
Just watch, I'ma kill 'em all
見てな、俺が全員殺してやる
Just watch, off 'em
見てな、消してやる
※「off」はスラングで「殺す、消す」の意味。
[Verse 2]
Off 'em, no off days, no debates, bitch
消してやる、休日なしだ、議論の余地もねえぞ、ビッチ
Box logo switchblade and cocaine
ボックスロゴの飛び出しナイフとコカイン
※「Box logo」はストリートブランドSupremeの象徴的なデザイン。初期OFメンバーとSupremeコミュニティの深いつながりを示すフレーズ。
In my back pocket, take Jade on vacation
後ろのポケットに入れて、ジェイドを休暇に連れて行くんだ
The hotel switch from Heartbreak to Bates quick
ホテルは「ハートブレイク」から「ベイツ」にあっという間に早変わりだ
※エルヴィス・プレスリーの「Heartbreak Hotel」のようなロマンチックな空間から、アルフレッド・ヒッチコックの映画『サイコ』に登場する連続殺人の舞台「Bates Motel」へ急転換するという狂気的なホラーリファレンス。
Rippin' out braids with bare hands amazes
素手でブレイズの髪をむしり取る様には驚くぜ
The crowd go crazy, hands raised, I'm laced with
観客は熱狂して両手を挙げる、俺には混ざってるんだ
Swag by the eighth in case you wanna taste it
味わいたい時のために、8分の1オンスのスワッグがな
※「eighth」はマリファナの一般的な取引単位(約3.5グラム)。自身の持つ圧倒的なカリスマ性(Swag)をドラッグに見立てて売り捌くという表現。
Faggots wear Prada, Satan wears RMK shit
オカマ共はプラダを着るが、サタンはRMKを着るんだ
※映画『The Devil Wears Prada(プラダを着た悪魔)』をもじったパンチライン。「RMK」はアールやOFのクルーが着ていたマイナーなブランドや特定のデザインを指す隠語、もしくは多音節ライムの響きを優先したフレーズであるとヒップホップファンの間では解釈されている。
Hell's angel, crack Christ 'cross the face
地獄の天使、キリストの顔面を殴りつける
With erasers and use Based God as his replacement
黒板消しでな、そして代わりにベースド・ゴッドを据え置くんだ
※伝統的な宗教であるキリスト教を否定し、ネット上でカルト的な人気を誇っていたラッパーLil B(Based God)を新たな神として崇拝するという、当時のインターネット・ヒップホップ黎明期特有のミーム的かつ反逆的な思想。
Super Saiyan with ruthless slayings
無慈悲な殺戮を繰り広げる超サイヤ人だ
※アニメ『ドラゴンボールZ』の引用。圧倒的な戦闘力と、金髪(ここではドラッグによる錯乱やハイな状態を暗示)の象徴。
Eat puss', sweet puss' got my tooth decayin'
マンコを食う、甘いマンコのおかげで俺の歯は虫歯になっちまった
[Chorus]
Just watch, I'ma kill 'em all
見てな、俺が全員殺してやる
Just watch, I'ma kill 'em all
見てな、俺が全員殺してやる
Just watch, I'ma kill 'em all
見てな、俺が全員殺してやる
Just watch (Off 'em)
見てな(消してやる)
[Verse 3]
Now pan the cameras back to me and Pamela's
さあ、カメラを俺とパメラに向けろ
※「Pamela」はポルノ女優やプレイメイトを暗示した名前。
Amateur threesome with Hannah Montana's manager
ハンナ・モンタナのマネージャーと、アマチュアの3P中だ
※ディズニー・チャンネルの国民的スター「Hannah Montana(マイリー・サイラス)」のマネージャーという、当時のティーン・ポップカルチャーを標的にした悪趣味なジョーク。
And Miley feedin' me sandwiches for my stamina
スタミナをつけるために、マイリーが俺にサンドイッチを食わせてくれてる
And Santa's in the back laughin' cause my back's crampin' up
後ろでサンタが笑ってる、俺の背中が攣りそうになってるからな
Mrs. Claus trippin' balls, think she had enough
サンタの奥さんはガンギマリだ、もう限界だと思ってるぜ
※「trip balls」は強烈な幻覚症状を見ている、またはひどくドラッグでハイになっている状態。
And by enough, I mean we dope as fuck, she had a gram of us
限界ってのは、俺たちが最高にヤバいってことさ、彼女は俺たちを1グラム吸ったんだ
Flyer than your man because I'm lampin' up
お前の男より高く飛んでるぜ、俺はくつろいでるからな
※「lampin'」は冷戦期のニューヨーク・ヒップホップスラング「Cold Lampin'(街灯の下でチルする)」から来ており、リラックスしてくつろいでいる状態を意味する。
At the airport smokin' hash with all the fuckin' baggage handlers
空港でクソ手荷物係どもと全員でハシシを吸いながらな
Flowin' like the motherfuckin' aqueducts
クソヤバい水道橋みたいにフロウするんだ
※ローマの水道橋(aqueduct)のように、決して途切れることなく滑らかに言葉が溢れ出る自身の卓越したラップスキルを誇示している。
Odd Future Wolf Gang, fag damagers, bitch
Odd Future Wolf Gangだ、オカマどもにダメージを与えてやるよ、ビッチ
Eat a dick
チンコでも食ってろ
