Artist: J. Cole
Album: KOD
Song Title: Window Pain (Outro)
概要
J. Coleの5作目のスタジオアルバム『KOD』の事実上のエンディングを飾るアウトロトラックである(次曲の「1985」はボーナストラック的な位置づけ)。「Window Pane(窓ガラス)」と「Window Pain(窓越しに見る痛み)」をかけたタイトルが示す通り、成功を収め高級車(レンジローバー)の窓から地元フェイエットビル(The Ville)の現状を憂うColeのコンシャスな視点が描かれている。楽曲の冒頭と結末には、Coleがサマーキャンプで出会ったという実在の少女の肉声がサンプリングされており、いとこが銃撃された生々しい体験と、神の救済に対する純粋な信仰が語られる。LA発祥のギャングカルチャーがノースカロライナにまで蔓延し、若者たちがドラッグに溺れて無責任に命や子供を使い捨てていく負の連鎖に対し、Cole自身の無力感と罪悪感が痛切に吐露される。アルバム全体を貫く「人生の痛みにどう向き合うか」という問いに対する、一つの哲学的な着地点となっている。
和訳
[Intro]
One night
ある夜のこと
When me and my mom was about to go to bed
私とママが寝ようとしていた時
All the doors was locked
ドアは全部鍵がかかってた
Then when I had fell asleep
それから私が眠りに落ちた時
My mom had heard three gun shots
ママが3発の銃声を聞いたの
It was to my cousin, his name was Rod
それはいとこに向けられたものだった、彼の名前はロッド
The one that came to pick me up
私を迎えに来てくれた人
He had been shot right through the face, right in the neck
彼は顔面と首を撃ち抜かれて
And he got shot right in the stomach
お腹の真ん中も撃たれたの
※J. Coleが実際にサマーキャンプで出会ったという少女の肉声。身内が凄惨な銃撃事件に巻き込まれた体験を、子供ならではの淡々とした口調で語ることで、フッド(貧困層の地域)における暴力の日常化を残酷なまでに浮き彫りにしている。
[Chorus]
I put my hand to the sky, I sing
両手を空へと掲げ、俺は歌う
Grateful for the blessings you bring
あなたがもたらす恩恵に感謝している
Thank you for the ones I love
俺の愛する人たちを守ってくれてありがとう
Forgive me for the times I was
俺がこんな状態だった日々を許してほしい
Down and confused, I know
落ち込み、混乱していた日々を。分かっているんだ
What I reap is what I will sow
自分が蒔いた種は、自分で刈り取ることになるって
※新約聖書・ガラテヤ人への手紙の「人は自分の蒔いたものを、また刈り取ることになる」という言葉の引用。カルマや因果応報を示している。
Once again I find myself
再び俺は自分自身に気付く
Back with you from my hell
地獄から抜け出し、またあなた(神)の元へと戻ってきたことに
All I ever wanted was to hear them bitches holler back
かつて俺が望んでいたのは、ビッチたちが俺の呼びかけに答えてくれることだけだった
Get some money plus respect and now look, I got all of that
金とリスペクトを手に入れること、そして見てみろ、今はその全てを手に入れた
All I wanna do is see my granny on the other side
今俺が望むのは、あちら側(天国)でばあちゃんに会うことだけだ
All I wanna do is kill the man that made my momma cry
俺の母さんを泣かせたあの男を殺すことだけだ
All I wanna do is touch a platinum plaque and celebrate
プラチナディスクの盾に触れて、祝杯をあげることだけだ
All I wanna do is keep my niggas out the yellow tape
俺のダチらが黄色いテープの内側に入らないようにすることだけだ
※「yellow tape」は警察が殺人事件などの犯罪現場に張る黄色い規制線のこと。仲間が殺害されたり事件に巻き込まれたりするのを防ぎたいという切実な願い。
All I wanna do is see my granny on the other side
今俺が望むのは、あちら側でばあちゃんに会うことだけだ
All I wanna do is kill the man that made my momma cry
俺の母さんを泣かせたあの男を殺すことだけだ
[Verse]
Right now I'm starin' out the window of my Range and contemplating, am I sane?
今、俺はレンジローバーの窓の外を見つめながら考えている、俺は正気なのか?と
Have I sacrificed for fame?
名声のために何かを犠牲にしてきたのか?
My occupation's on my brain
自分の職業のことが頭から離れない
Thought that I could change it all if I had change
小銭さえあれば、すべてを変えられると思っていた
※「change(変える)」と「change(小銭・金)」をかけたワードプレイ。
But the niggas that I came up with way back is still the same
だが、昔から一緒に育ってきたダチらは未だに何も変わっていない
I be tryna give 'em game like Santa did when Christmas came
クリスマスが来た時のサンタのように、俺は奴らに知恵を与えようとしている
※「game」はストリートを生き抜くための知識やアドバイスのこと。サンタがプレゼント(おもちゃ/ゲーム)を与えることとかけている。
They be listenin' but it's clear to me they did not hear a thing
奴らは聞いているフリをしているが、何も理解していないのは明らかだ
It go in one ear and out the other like a bullet out the muzzle of a pistol shot by brothers standin' point-blank range
右から左へ抜けていく、まるで至近距離で同胞が撃ったピストルの銃口から飛び出す弾丸のようにな
Niggas bang in the Ville, I always thought that shit was strange
ヴィルで奴らがギャングをやっている、俺はずっとそれが奇妙だと思っていた
How you claim blood or cuz when that was just a LA thing?
どうしてブラッズやクリップスを名乗るんだ?あれはLAだけのものだったのに
※「Ville」はノースカロライナ州フェイエットビル。「blood or cuz」はロサンゼルスを拠点とする二大ストリートギャング(ブラッズとクリップス。「cuz」はクリップスメンバー同士の呼称)。LA特有のカルチャーが遠く離れた地元にまで形骸化して広まっていることへの違和感を指摘している。
I don't mean no disrespect towards your set, no, I'm just sayin'
お前らのセット(派閥)をディスってるわけじゃない、ただ言ってるだけだ
That it seem like for acceptance niggas will do anything
仲間に認めてもらうためなら、奴らは何でもするように見えるってな
Niggas will rep any gang, niggas will bust any head
どんなギャングでもレペゼンし、誰の頭でもカチ割る
Niggas will risk everything, point him out and then he dead
すべてを危険にさらし、ターゲットを指差せば奴は死ぬ
Shootin' up where his granny live, "blaow, blaow!", his granny duck
ターゲットのばあちゃんが住んでいる場所を撃ちまくり「ブラウ、ブラウ!」、ばあちゃんは身をすくめる
He don't give a fuck, he's on Henny and Xanny'd up
あいつは何も気にしちゃいない、ヘネシーを飲み、ザナックスでキマっている
※アルバムのテーマである薬物・アルコール依存の描写。「Henny」は高級コニャックのヘネシー、「Xanny」は抗不安薬ザナックス。
Blowin' Tammy up, bitch, when you gon' give them panties up?
タミーに電話をかけまくって、「ビッチ、いつになったらパンティーを脱ぐんだ?」と迫る
He gon' plant a seed, but best believe he ain't man enough
あいつは種を植え付けるだろうが、父親になるほど男らしくないことは明白だ
※無責任な妊娠(plant a seed)と、その結果生まれる子供の不幸を予見している。
Just because yo' dick can spray semen, it don't mean that you ready to let go of yo' childish ways
お前のイチモツが精液をばら撒けるからといって、子供じみた振る舞いを捨てる覚悟ができているわけじゃない
The results are deadly
その結果は致命的なものになる
Because that child will suffer and that's what can most affect me
なぜならその子供が苦しむことになり、それが俺の心を一番痛めつけるからだ
The little girl I met this past summer said, "Don't forget me"
去年の夏に出会った小さな女の子は「私のことを忘れないで」と言った
I won't forget you, how could I with all you went through?
君を忘れるわけがない、あれほどの悲劇を経験した君をどうして忘れられる?
A bullet hit yo' cousin in Temple while he was with you
君と一緒にいた時、銃弾が君のいとこのこめかみを撃ち抜いた
※「Temple」は頭のこめかみのことだが、「神殿・寺院」という意味もあり、無垢な子供や神聖なものが暴力によって冒涜されたというダブルミーニングとしてヒップホップファンの間で解釈されている。
And while you was talkin', I was tearin' up, where's the tissue?
君が話している間、俺は涙ぐんでいたよ、ティッシュはどこだ?
If you was my sister then I would kiss you and tell you that I'm sorry for the pain you had to live through
もし君が俺の妹だったなら、キスをして、君が背負わなければならなかった痛みを謝っていただろう
I know I'm blessed because yo' stress is realer than anything I done been through
俺は自分が恵まれていると分かっている、君の抱えるストレスは俺が経験してきた何よりもリアルだからだ
[Chorus]
I put my hand to the sky, I sing
両手を空へと掲げ、俺は歌う
Grateful for the blessings you bring
あなたがもたらす恩恵に感謝している
Thank you for the ones I love
俺の愛する人たちを守ってくれてありがとう
Forgive me for the times I was
俺がこんな状態だった日々を許してほしい
Down and confused, I know
落ち込み、混乱していた日々を。分かっているんだ
What I reap is what I will sow
自分が蒔いた種は、自分で刈り取ることになるって
Once again I find myself
再び俺は自分自身に気付く
Back with you from my hell
地獄から抜け出し、またあなたの元へと戻ってきたことに
All I ever wanted was to hear them bitches holler back
かつて俺が望んでいたのは、ビッチたちが俺の呼びかけに答えてくれることだけだった
Get some money plus respect and now look, I got all of that
金とリスペクトを手に入れること、そして見てみろ、今はその全てを手に入れた
All I wanna do is see my granny on the other side
今俺が望むのは、あちら側でばあちゃんに会うことだけだ
All I wanna do is kill the man that made my momma cry
俺の母さんを泣かせたあの男を殺すことだけだ
All I wanna do is touch a platinum plaque and celebrate
プラチナディスクの盾に触れて、祝杯をあげることだけだ
All I wanna do is keep my niggas out the yellow tape
俺のダチらが黄色いテープの内側に入らないようにすることだけだ
All I wanna do is see my granny on the other side
今俺が望むのは、あちら側でばあちゃんに会うことだけだ
All I wanna do is kill the man that made my momma cry
俺の母さんを泣かせたあの男を殺すことだけだ
[Outro]
It's not that big
そんなに大したことじゃないよ
Well at least, um
えっと、少なくとも
God had saved him 'cause he still alive
彼はまだ生きてるから、神様が彼を救ってくれたんだと思う
So why do y'all think that bad stuff happen?
じゃあ、どうしてみんなは悪いことが起きると思うの?
Like why can't the world just be all nice things?
どうして世界は良いことばかりじゃないのかな?
Because God is tryna, um
それはね、神様が私たちに
Warn-warn us or teach us a lesson that we need to learn
警告しようとしたり、私たちが学ぶべき教訓を教えようとしているから
Or He's tryna warn us of He's comin' back to, um, see us and take us home and redo the world
あるいは、神様が戻ってきて私たちに会い、私たちを家に連れて帰って、世界をやり直すってことを警告しようとしてるの
He's comin' back to, um, have us be His children and for us to see Him for the first time so we can rejoice with Him and have our time
神様が戻ってきて、私たちが神様の子供になり、私たちが初めて神様を見て、一緒に喜んで、一緒に過ごすために
And after we do that, He's gonna restart the world
そしてそれをした後に、神様が世界をやり直してくれるの
K.O.D
Choose wisely!
賢明な選択を!
※アルバムのイントロ「Intro」から繰り返されてきた「人生の痛みにどう対処するか賢く選べ」というメッセージが、暴力の犠牲になりながらも神への純粋な信仰を失わない少女の言葉と重なることで、アルバム全体を見事に締めくくっている。
