Artist: Kid Cudi
Album: Man on the Moon: The End of Day
Song Title: Simple As...
概要
Kid Cudiのデビューアルバム『Man on the Moon: The End of Day』の第1幕(Act I: The End of Day)を締めくくる本楽曲は、彼のポップで風変わりな精神性が存分に発揮された一曲だ。イギリスのシンセポップバンド、Orchestral Manoeuvres in the Darkの1983年の楽曲を大胆にサンプリングし、無機質なロボットボイスと跳ねるようなビートの上で、Cudiは自らのスタンスを軽快に提示する。当時のヒップホップシーンにおいて、ストリートのタフさを競う風潮がある中、彼はあえて「負け犬(アンダードッグ)」であることを受け入れ、旧世代の価値観をアップデートする新時代のカリスマとしての自負を歌い上げている。SNS(Twitter)への言及や、オタク気質と反逆的なアティチュードの混在は、のちのヒップホップにおける「等身大のペルソナ」の先駆けとなった。同時に、楽曲の最後にはナレーターのCommonによって、次なる暗黒の幕開けが宣告され、アルバムのコンセプチュアルなストーリーテリングの巧みさが光る構成となっている。
和訳
[Intro: Kid Cudi]
A-B-C, A-B-C, A-B-C, A-B-C
※Orchestral Manoeuvres in the Darkの「ABC Auto-Industry」のコーラスをサンプリングしている。反復されるアルファベットと数字は、機械的でシステマチックな世界観を構築するためのギミックである。
1-2-3, A-B-C, A-B-C, 1-2-3, A-B-C, A-B-C
1-2-3, A-B-C (Robotics, tried in some)
Yeah (Robotics), yeah (Tried in some)
Yeah (Robotics), yeah
[Verse 1: Kid Cudi]
Simple as that for your simple ass
お前みたいな単純な奴には簡単なことさ
※型にはまった古いヒップホップの価値観しか持たないリスナーや批評家たちに向けた皮肉。
Ask about that, pretty simple, man
聞いてみろよ、かなりシンプルだぜ
I'm dreamin' on good for a sicker plan
俺はもっとヤバい計画のために素晴らしい夢を見ている
Sicker than any other nigga could be thinkin', and
他のどんな奴らが思いつくよりも、ずっとヤバい計画をな
I can't be a loser, could've figured that
俺が負け犬になるはずがない、それはわかってたはずだ
I can't be a lame, I'm cooler than that
ダサい奴になんてなれない、俺はもっとクールだからな
I feel I love the fame, then I hate it back, hmm
名声を愛している気がするけど、その反面憎んでもいる
Thinkin' now what I should be Twitterin' (1-2-3)
今はTwitterで何を呟くべきか考えているところだ
※2009年当時、まだアーリーアダプターのツールであったTwitterに言及している。彼がいかにネットカルチャーに早くから適応し、ファンと直接的なコミュニケーションを取ろうとしていたかがわかる。
Why'd big bro take all the hot bitches?
なぜ兄貴分たちはイケてる女を全部持っていっちまうんだ?
※「兄貴分」はKanye WestやJay-Zなどのメンターやスターラッパーたちを指している。彼らのようなスーパースターには及ばないという自嘲気味なぼやき。
Dear God, me too, I like the hot bitches
神様、俺だってイケてる女が好きなのに
I'll be the underdog, all along, 'til I'm gone
俺が死ぬまで、ずっとアンダードッグのままでいるさ
※勝者であることを誇示するヒップホップにおいて、あえて弱者(アンダードッグ)としてのアイデンティティを貫くという宣言。
I will live through a song, I'll be strong through the haters
俺は歌を通して生き続ける、ヘイターたちのおかげで強くなれるんだ
[Chorus: Kid Cudi]
As simple as that, as simple as that (Robotic)
ただそれだけのこと、すごくシンプルなことさ
As simple as that for your simple ass (Tried in some)
お前みたいな単純な奴には簡単なことだ
As simple as that, as simple as that (Robotic)
ただそれだけのこと、すごくシンプルなことさ
As simple as that for your simple ass (Tried in some)
お前みたいな単純な奴には簡単なことだ
As simple as that, as simple as that (Robotic)
ただそれだけのこと、すごくシンプルなことさ
As simple as that for your simple ass (Tried in some)
お前みたいな単純な奴には簡単なことだ
As simple as that (Robotic)
すごくシンプルなことさ
As simple as (1-2-3)
シンプルな…
[Verse 2: Kid Cudi]
Uh, simple as that for your simple ass
あぁ、お前みたいな単純な奴には簡単なことさ
Simple way I wish you would've called it how it should've been
本来あるべき姿で呼んでくれたらよかったのに、というシンプルなやり方だ
They try to tell me they don't get it, they don't underdig
奴らは俺に理解できない、わかってないと言い張る
※彼のエキセントリックなファッションや音楽性が、旧来のヒップホップコミュニティから理解されなかった経験を語っている。
Now I'll be damned, I came this far to let a fool live
冗談じゃない、馬鹿な奴らをのさばらせるためにここまで来たわけじゃない
I gotta terminate the hate, spread the positive
ヘイトを終わらせて、ポジティブなものを広めなきゃいけないんだ
Without it bein' wack and cheesy to the little kids
幼い子供たちにとってダサくて安っぽくならないようにな
So I curse like a sailor and I smoke weed
だから俺は船乗りのように汚い言葉を使い、マリファナを吸う
※ポジティブなメッセージを伝えるためであっても、綺麗事ばかりを並べる「良い子」にはならない。自身のリアルな生態(言葉遣いの悪さやドラッグ)を隠さないことで、若者からの本物の信頼を得ようとする彼なりの美学。
I am exactly who an older rapper's kids be
俺こそが、年老いたラッパーの子供たちが憧れる存在そのものだ
※ファンの間で高く評価されるパンチライン。ベテランラッパーたちの子供たちは、親の世代の古いヒップホップではなく、自分のような新時代のアーティストの音楽を聴いて育つはずだという強烈な自信の表れ。
And who they love, hands to the universe
彼らが愛する存在なんだ、宇宙へと手を掲げる
Probably think they drug addicts if they spit a Cudi verse
彼らが俺のヴァースを口走ったら、周りはヤク中だと思うだろうな
※Cudiの歌詞はサイケデリックで内省的なため、それを歌う子供を見た大人たちは心配するだろうというブラックジョーク。
Mad lil' mama switch to Converse without a purse
怒った小さな女の子は、財布も持たずにコンバースに履き替える
Long as the booty lookin' juicy and he stylin' on 'em
お尻がジューシーで、彼がスタイリッシュにキメている限りはな
[Chorus: Kid Cudi]
As simple as that, as simple as that (Robotic)
ただそれだけのこと、すごくシンプルなことさ
As simple as that for your simple ass (Tried in some)
お前みたいな単純な奴には簡単なことだ
As simple as that, as simple as that (Robotic)
ただそれだけのこと、すごくシンプルなことさ
As simple as that for your simple ass (Tried in some)
お前みたいな単純な奴には簡単なことだ
As simple as that, as simple as that (Robotic)
ただそれだけのこと、すごくシンプルなことさ
As simple as that for your simple ass (Tried in some)
お前みたいな単純な奴には簡単なことだ
As simple as that (Robotic)
すごくシンプルなことさ
As simple as (1-2-3)
シンプルな…
[Outro: Common]
As our hero seems to be dreaming in peace
我らがヒーローは安らかに夢を見ているように思えるが
※ここまでがアルバムの第1幕(Act I)であり、比較的明るいトーンで進行していた主人公(Cudi)の夢の状態を説明している。
A dark chapter unfolds
暗い章が幕を開ける
Throwing Scott into the most eerie
スコットを最も不気味で
And unstable part of his imagination
不安定な想像の領域へと放り込むのだ
So intense he cannot tell his dreams from reality
その激しさゆえに、彼は夢と現実の区別がつかなくなる
This is the Rise of the Night Terrors
これより「夜驚症(ナイト・テラーズ)の台頭」が始まる
※ここからアルバムは第2幕「Act II: Rise of the Night Terrors」へと突入する。安らかな夢から一転して、孤独、被害妄想、ドラッグの恐怖といった彼の精神の深淵を巡る悪夢への案内役として、Commonが重厚な語りを響かせている。
