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Thought vs Everybody - Black Thought 【和訳・解説】

Artist: Black Thought

Album: Streams of Thought, Vol. 3: Cane & Able

Song Title: Thought vs Everybody

概要

The Rootsの絶対的フロントマンであり、ヒップホップ史上最も偉大なリリシストの一人であるBlack Thoughtが、Sean Cのプロデュースで2020年にリリースしたアルバム『Streams of Thought, Vol. 3: Cane & Able』に収録されたマニフェスト的な一曲。「Black Thought対全員」というタイトルが示す通り、シーンの全ラッパー、そして腐敗した社会システムそのものに対して彼一人が立ち向かうという、凄まじい気迫とスキルが込められている。トランプ政権下の政治的混乱、警察の暴力、SNSによる真実の歪曲といった現代アメリカの暗部を、ジョージ・オーウェルや哲学的な問い、さらには「ペンと刑務所」といったヒップホップ史に残る完璧なワードプレイで切り裂いていく。誰一人として自分と同じ土俵に立てないという王者の孤独と、ブラックコミュニティの真の歴史を取り戻すという革命的な使命感が見事に結実した、コンシャス・ヒップホップの最高到達点である。

和訳

[Intro]

In just a few moments
あと数分のうちに

We will hear from the most powerful black man in America today
今日のアメリカにおいて、最もパワフルな黒人男性の言葉を聞くことになるだろう

Uh (Everybody)
アー(誰も彼も)

(I don't think you heard me) Ayo
(俺の言葉が聞こえてないようだな)Ayo

The most powerful black man in the world
世界で最もパワフルな黒人男性の言葉をな

[Verse]

Ayo, they ask why I seem so solemn
ヨォ、なぜ俺がそんなに厳粛に見えるのかと奴らは聞いてくる

On the throne between three stone columns
三つの石柱の間に置かれた玉座の上でな
※エジプトやギリシャの神殿のような荘厳な権力の座の比喩。

You know the name, fuckin' up the game, no condoms
名前は知ってるだろ、コンドームなしでこのゲームをめちゃくちゃにしてやる
※「fuck the game up(ゲームを制覇する/破壊する)」とコンドームなしの性行為を掛けた荒々しいボースト。

Everybody goddamn first world problem
誰も彼も、いまいましい第一世界の悩みばかりだ
※「First world problem」は豊かで平和な国の人々が抱える些細な悩みのこと。ゲットーの切実な問題との対比。

The truth is inconvenient as non-believers
真実は、無信仰者と同じくらい不都合なものだ

Fearing DACA dreamers instead of FEMA
FEMAの代わりにDACAのドリーマーたちを恐れている
※「FEMA」はアメリカ連邦緊急事態管理庁。「DACA」は若年移民に対する国外退去延期措置。自然災害などの真の脅威(FEMAが対応するもの)ではなく、無害な若き移民(ドリーマー)を恐れるアメリカ社会の歪みへの批判。

Bentley, Benz, or a Beamer, Fiji or Aquafina (Everybody, every goddamn body)
ベントレー、ベンツ、ビーマー、フィジー、あるいはアクアフィナ(誰も彼も、クソったれな誰もが)
※高級車やブランド水(Fiji)と大衆水(Aquafina)を並べ、物質主義にまみれた現代を皮肉っている。

We fuck around and be the next Iwo Jima
俺たちはふざけ回って、次の硫黄島になろうとしている
※「硫黄島の戦い」のような血みどろで壊滅的な戦争・分断状態にアメリカ社会が陥るという警告。

The tides risin' at the same time like they synchronized
潮の満ち引きは、まるで同期しているかのように同時に起こる

For makin' art, for makin' love, for makin' Hajj
アートを作るため、愛を育むため、ハッジを行うためにな
※「Hajj」はイスラム教におけるメッカへの大巡礼。

The home is where the hatred lies, they takin' lives
家とは憎悪が潜む場所だ、奴らは命を奪っている

But everybody just so saved and sanctified
だが誰もが、ただ救済され神聖化されていると思い込んでいる

Then they rely upon, we the few defiant ones (Everybody, every goddamn body)
そして奴らは頼ってくる、俺たち少数の反逆者たちにな(誰も彼も、クソったれな誰もが)

Communicating in higher forms than Viacom
バイアコムよりも高次元な形態でコミュニケーションをとる
※「Viacom」はMTVなどを所有する巨大メディア企業。大衆メディアよりもヒップホップ(俺たちの言葉)の方が高次元なメッセージを伝えているという自負。

To dialogue before the roar of the riot horn
暴動の警笛が鳴り響く前に、対話をするためにな

I wonder on which side of the lines I belong?
俺は境界線のどちら側に属しているのだろうか?

Lady Liberty face full of concealer
自由の女神の顔はコンシーラーで塗りたくられている
※アメリカの象徴である自由の女神(アメリカの理想)が、自らの醜い現実や歴史の傷を化粧(コンシーラー)で隠し、欺瞞に満ちているという強烈なメタファー。

I'm half Masta Killa and half Hugh Masekela
俺は半分がマスタ・キラで、半分がヒュー・マセケラさ
※Wu-Tang Clanの静かで鋭いリリシスト「Masta Killa」と、アパルトヘイトと闘った南アフリカの伝説的ジャズ奏者「Hugh Masekela」。ストリートの殺傷能力と、ブラック・コンシャスな音楽性の融合。

Latrophobia, that's a fear of the healer
医者恐怖症、それは癒やし手に対する恐怖だ

Kaepernick is an activist, y'all in fear of the kneeler
キャパニックは活動家だ、お前らは膝をつく者を恐れている
※NFL選手のコリン・キャパニックが人種差別に抗議して国歌斉唱中に膝をついた(Kneel)こと。社会を癒やそうとする者(ヒーラー/活動家)を逆に恐れ、拒絶するアメリカの病理を「医者恐怖症」に例えている。

Everything's obtuse, nothin' is obscene
何もかもが鈍感で、卑猥なものなど何一つない

Another young life was lost on live stream
また一つの若い命が、ライブ配信上で失われた
※警察の暴力やストリートの殺人がSNSでリアルタイムに消費される異常な現代社会の描写。

Another great fell from grace in high esteem
また一人の偉人が、高い評価から転落した

Then the clock struck thirteen, we in some kind of dream
そして時計が13時を打った、俺たちは何かの夢の中にいる
※ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』の冒頭の引用(狂った時代の始まり)であり、現実がシュールな悪夢に変わってしまったことを示唆する。

First I'm handling first things, decipher what it means
まず俺は最優先事項を処理し、その意味を解読する

To a planet of earthlings, where the question remains
地球人たちの惑星に向けてな、そこには疑問が残されたままだ

Am I a journal or journalist? Herbal eternalist
俺は日記なのか、それともジャーナリストなのか? ハーブの永遠主義者か
※自分が記録される側(日記)なのか、記録する側(ジャーナリスト)なのかという自己認識の問い。また「Herbal eternalist」は大麻による精神の拡張や、自然と永遠性の探求を意味する。

Olympic tournament level genius author, affirmative
オリンピックのトーナメントレベルの天才作家だ、その通りさ

Though turnin' back and returnin', I'm not concerned with it
だが引き返すことや戻ることなんて、俺の知ったことじゃない

The permanent ink paved the way out the turbulence
消えないインクが、乱気流から抜け出す道を舗装してくれた
※ラップの歌詞(インク)が、過酷な環境(乱気流)から抜け出し成功を掴む道を作った。

My hands against the wall outside a billiards hall
ビリヤード場の外で、俺は壁に手をつかされている

I hear police discussin' whether to try and kill us all
警察が、俺たち全員を殺そうかどうするかと相談しているのが聞こえる

I questioned if that'd matter, life is like a tree that falls
それが重要なのかと俺は疑問に思った、人生は倒れゆく木のようなものだ

In the woods, even with iPhone footage to see it fall
森の中のな、たとえそれが倒れるのを見るiPhoneの映像があったとしても
※「誰もいない森で木が倒れたら、音はするのか?」という哲学的な問いと、黒人が警察に殺害される映像(iPhone footage)が世間に出回っても、システムが変わらなければ意味がないという絶望と冷笑。

Great men chose the Papermate Pen or State Pen
偉大な男たちは、ペーパーメイトのペンか、州立刑務所かを選んできた
※「Papermate Pen」は有名なボールペンのブランド、「State Pen(State Penitentiary)」は州立刑務所。知性(ペン)で戦うか、犯罪に手を染めて刑務所(ペン)に入るかという、ゲットーの黒人が直面する究極の二択を鮮やかに踏んだ名パンチライン。

The firin' pin of a pistol aimed at a playpen
ベビーサークルに向けられたピストルの撃針

We go from musket to a missile to a revelation (Everybody, every goddamn body)
俺たちはマスケット銃からミサイル、そして黙示録へと向かう(誰も彼も、クソったれな誰もが)

Between Heaven and Satan, while I'm steady creatin'
天国とサタンの間で、俺は着実に創造を続けながら

And try to separate the truth from the lies that they told us
奴らが俺たちに語った嘘から、真実を切り離そうと試みる

I even heard the Soviet's, the 45th POTUS
ソビエトのものだという噂さえ聞いたぜ、第45代アメリカ合衆国大統領がな
※第45代大統領ドナルド・トランプとロシア(旧ソビエト)の結託疑惑(ロシア疑惑)への言及。

That ain't the photo they showed us, or acceptin' the onus
それは奴らが俺たちに見せた写真とは違うし、責任を受け入れることでもない

Did they Washington us? My condolence to y'all diplomas
奴らは俺たちをワシントンしたのか? お前らの卒業証書にはお悔やみ申し上げるよ
※「Washington us」は、初代大統領ジョージ・ワシントンのように歴史を白人にとって都合よく美化・偽造し、洗脳したのではないかという意味。そんな偽りの歴史を学んだ卒業証書など無価値(お悔やみ申し上げる)だという痛烈な皮肉。

Here's a bonus, the point of view to make things see through
おまけだ、物事を見透かすための視点をくれてやる

If I'm a walking institution, I'm a HBCU
もし俺が歩く機関だとするなら、俺はHBCUさ
※「HBCU」は歴史的黒人大学(Historically Black Colleges and Universities)。自分自身がブラックカルチャーと知識の宝庫であり、教育機関そのものであるという矜持。

Face the music, keepin' it moving's one of the great things we do
現実を直視しろ、前へ進み続けることこそが、俺たちの行う偉大なことの一つだ
※「Face the music」は「自分の行動の報いを受ける、現実を直視する」という慣用句。

Yo, the devil's tryna put together his gang, me too
ヨォ、悪魔が自分のギャングをまとめようとしている、俺も同じさ

And whether you come from Lagos or Trinidad and Tobago
お前がラゴスの出身だろうが、トリニダード・トバゴの出身だろうが関係ない

You can either stay broke or be wealthy as Jeff Bezos
一文無しのままでいるか、ジェフ・ベゾスのように裕福になるかだ

If you just stay woke, I was in the dark then day broke (Everybody, every goddamn body)
お前がただ目覚めたままでいるならな、俺も暗闇の中にいたが、やがて夜が明けた(誰も彼も、クソったれな誰もが)

Directin' questions to my ancestors until they spoke now
俺の祖先たちが語り出すまで、彼らに問いを投げかけ続けていたんだ

Inherently rockin' the disco currently
本質的に、俺は現在ディスコを揺らしている

Bars is cryptocurrency, hypnotherapy
俺の小節は暗号資産であり、催眠療法だ
※自らのリリック(Bars)が、これから価値が爆上がりする仮想通貨のような資産であり、同時に人々の精神を癒やすセラピーであるという比喩。

Shittin' on everything, 5'9", 6'4" lyrically
すべてを見下してやる、身長は5フィート9インチだが、リリカルには6フィート4インチさ
※実際の自分の身長に関わらず、マイクを持てば大男のように他を圧倒するというヒップホップのボースト。盟友Royce da 5'9"へのサブリミナルなリスペクトも含まれている。

Crystal clarity, wonder how I spit so thoroughly
水晶のような透明度、どうして俺がここまで徹底的にラップを吐けるのか不思議だろう

Stay so hungry, rappers can't get no mercy (Everybody, every goddamn body)
底知れぬハングリー精神を保っている、ラッパーどもに慈悲なんて与えやしない(誰も彼も、クソったれな誰もが)

That's the reason any other one who spit won't versus me
それが、ラップを吐く他の奴らが誰一人として俺と対決しようとしない理由さ
※ヒップホップのバトル企画「Verzuz」などを念頭に、誰も恐れて自分とは勝負(Versus)できないという絶対王者の宣言。

It's so lonely in my own class "Formerly known as"
「かつて〜として知られていた」という俺自身の階級は、とても孤独だ
※自分のレベルに到達している者が誰もいないため、独自のクラス(階級)に属しており、比較対象がない孤独感。プリンスの「The Artist Formerly Known As Prince」のオマージュ。

And the inscription that your headstone has
そしてお前の墓石に刻まれる碑文

On my own path, in my own world like Disney's
俺は俺自身の道を歩む、ディズニーのように俺自身の世界の中でな
※ウォルト・ディズニーが独自の世界(ディズニーランド)を創り上げたように、ヒップホップ界で誰にも干渉されない独自の帝国と世界観を築き上げていること。

I feel the fuckin' system fail just like kidneys
俺はクソみたいなシステムが、腎臓のように機能不全に陥っているのを感じる
※「Kidney failure(腎不全)」という医学用語を用いて、アメリカの社会システムの崩壊を強烈に表現。

Up steps the one who upsets all carriages
すべての馬車をひっくり返す男が、階段を上っていく
※「upset the apple cart(計画を台無しにする、現状を打破する)」という慣用句の変形。凝り固まった現状のシーンや社会構造を根底から覆す革命児(Black Thought)の登場。

'Cause it's imperative we change the narrative
なぜなら、俺たちがこの物語(ナラティブ)を変えることは不可欠だからだ

[Outro]

(Everybody) Yeah, and that's Thought vs Everybody
(誰も彼も)イェー、そしてそれが「ソート対全員」ってことさ

(Everybody) Listen, check it out, that go to everybody
(誰も彼も)聞け、チェックしな、これは全員に向けたものだ

(Everybody) Yo, I got myself over everybody
(誰も彼も)ヨォ、俺は全員の上に立っている

(Everybody, every goddamn body) Yeah, every goddamn body
(誰も彼も、クソったれな誰もが)イェー、クソったれな誰もがな