Artist: Black Thought (feat. ScHoolboy Q)
Album: Streams of Thought, Vol. 3: Cane & Able
Song Title: Steak Um
概要
Black ThoughtのソロEPシリーズ第3弾『Streams of Thought, Vol. 3: Cane & Able』に収録された本作は、西海岸のTDE(Top Dawg Entertainment)からScHoolboy Qを客演に迎えた強烈なバンガーだ。プロデューサーはSean C。イントロにはコメディアンのデイヴ・シャペルがジョージ・フロイド事件直後に発表したスピーチ「8:46」がサンプリングされており、奴隷制から続く400年の黒人の受難と、国歌斉唱時の膝つき(コリン・キャパニックの抗議行動)がいかに白人社会を動揺させたかという皮肉を語る重厚な幕開けとなっている。そこからBlack Thoughtは映画『グッドフェローズ』や古代エジプト神話を引き合いに出し、自らを神の領域にまで高める超絶技巧のリリックを展開。対するScHoolboy Qは、LA・フィゲロアストリートのリアルなギャングスタの視点から、ドラッグと裏切りの現実を冷徹に描写する。東海岸の究極のリリシストと西海岸のストリートの代弁者が交差する、歴史的かつヒップホップ純度の高い一曲である。
和訳
[Intro: Dave Chappelle]
Don't forget who I am, don't forget what I am
俺が誰か忘れるな、俺が何者か忘れるな
I am a black dude
俺は黒人の男だ
And don't ever forget how I got here
そして俺がどうやってここへ来たか、絶対に忘れるな
My ancestors were kidnapped
俺の祖先は誘拐されたんだ
I don't even know where the fuck I'm from
自分が一体どこの出身なのかさえ俺にはわからない
They were put on the bottom of boats
彼らは船の底に押し込まれ
They sailed them across the Atlantic
大西洋を渡らされた
Many of them died, only the strongest survived
多くが死に、最も強い者だけが生き残った
And once they got here, they beat the humanity out of my people
そしてここへ着くと、彼らは俺の同胞たちから人間性を叩き出した
They turned us into beasts of burdеns
俺たちを荷獣に変えたんだ
※荷物を運ぶ家畜のように扱われた奴隷制の歴史。
They made us do their work, and thе irony is
俺たちに彼らの労働をさせ、そして皮肉なことに
Hundreds of years later they're calling us lazy
何百年も経った今、彼らは俺たちを怠け者と呼んでいる
We fought in the Civil War, we damn near freed ourselves
俺たちは南北戦争で戦い、自らの力で自由を勝ち取りかけた
Now here we all are, 400-year nightmare
そして今、俺たちはここにいる。400年続く悪夢の中だ
Took us 400 years to figure out as a people
一つの民族として、答えを見つけ出すのに400年もかかった
That white people's weakness the whole time
白人たちの弱点が、このずっとの間
Was kneeling during the national anthem.
国歌斉唱中に膝をつくことだったなんてな
※コメディアンのデイヴ・シャペルのスピーチからのサンプリング。NFL選手コリン・キャパニックの人種差別抗議行動(国歌斉唱時の膝つき)がいかに白人社会を動揺させたかを突きつける痛烈なメッセージ。
[Verse 1: Black Thought]
Hahahaha, heh, heh, heh, aw shit
ハハハハ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ああクソ
Yo, give my regards to Paris
ヨォ、パリによろしく伝えてくれ
I make 'em go bananas for the noble savage
俺は高貴な野蛮人のために奴らを熱狂させる
※「go bananas」は熱狂する。「noble savage(高貴な野蛮人)」は西洋の文学で使われる、文明に毒されていない原住民の理想化された概念。自分たちのルーツの誇示。
Steak 'em, let 'em have it, allow me to establish
奴らを切り刻め、食らわせてやれ、俺に確立させてくれ
※タイトルの「Steak Um」。Steak-umm(アメリカの薄切り肉ブランド)と「Stake 'em(杭を打つ/処刑する)」のダブルミーニング。フェイクなMCたちを料理するという宣言。
The tone from a holdin' pattern above Saturn
土星の上空の旋回待機から、このトーンをな
Listen, they told me I was bound to lose
聞け、奴らは俺が負ける運命にあると言った
I had the crown to prove and fucked around and found the tools
俺には証明すべき王冠があり、動き回って道具を見つけ出した
Coulda failed, but I'm more compelled, I torched the trails
失敗したかもしれないが、俺はさらに突き動かされ、道を燃やして進んだ
Of an Orson Welles, rock jewels big as oyster shells
オーソン・ウェルズのようにな、牡蠣の殻ほどもあるデカい宝石を身につけて
※オーソン・ウェルズは映画『市民ケーン』などで知られる伝説的映画監督・俳優。圧倒的な存在感と歴史的な偉業の象徴。
To go from showman to shaman is not common
ショーマンからシャーマンへと成り上がるのは、よくあることじゃない
※単なるエンターテイナー(ショーマン)から、人々の精神を導く呪術師・預言者(シャーマン)へと昇華した、自身のリリシストとしての進化。
What's a goon to a goblin? What's a goblin to Amen Ra
ゴブリンにとってならず者とは何だ? アーメン・ラーにとってゴブリンとは何だ?
※Lil Wayneの「A Milli」の有名なライン「What's a goon to a goblin?」のオマージュ。さらにその上の存在として、古代エジプトの太陽神アーメン・ラー(Amen Ra)を配置し、自身を神の領域に引き上げている。
When the God's been a problem? Now get your fuckin' shine box
神が問題になったことなんてあるか? さあ、お前のクソみたいな靴磨き箱を持って家に帰りな
※映画『グッドフェローズ』でビリー・バッツがトミー・デヴィートに言い放った屈辱的なセリフ「Now go home and get your fuckin' shine box」の引用。格下のラッパーを小僧扱いしている。
Before I put your party in a pine box
俺がお前らのパーティーを松の箱にぶち込む前にな
※「pine box」は松の木で作られた棺桶のこと。リリカルな殺しの宣告。
Remember we was broke as a promise
俺たちが破られた約束みたいに一文無しだったことを覚えておけ
※「broke a promise(約束を破る)」と「broke(金がない)」を掛けたワードプレイ。
Let's be honest, them hard times scattered behind us
正直に言おう、あの苦しい時代は俺たちの背後に散らばっている
Yachting through the Bahamas, 'bout to play St. Thomas
バハマをヨットでクルージングし、セント・トーマス島で遊ぼうとしている
Cabernet Sauvignon with Fabergé egg omelets
カベルネ・ソーヴィニヨンと、ファベルジェの卵で作ったオムレツを楽しみながらな
※「ファベルジェの卵」はロシア皇帝が作らせた数億円の価値がある超高級な宝飾品。それを割ってオムレツにするという、ヒップホップ史上最も洗練された究極の贅沢・ボースト。
[Verse 2: Schoolboy Q]
Uh, slide down
アー、滑り降りるぜ
Nigga gon' slide down Fig' like
俺たちはフィグ通りを滑り降りるんだ
※「Fig'」はLAのフィゲロア・ストリート。ScHoolboy Qの地元周辺であり、売春やギャング活動が盛んな過酷なエリア。
I parked the crooked 'cause the Sig pokin', ayy
車を斜めに停めた、シグが突き出てるからな、エイ
※「crooked」は曲がって停めること。「Sig」はシグ・ザウエル社の拳銃。銃を腰に差しているため真っ直ぐ座れず、斜めに駐車するというリアルなギャングの描写。
Eye for an eye, gon' keep the tears rollin', yeah
目には目を、涙を流し続けさせてやるぜ、イェー
※「目には目を」の復讐の連鎖が、ストリートで絶え間ない悲しみ(涙)を生み出している。
I'm Beethoven to the bass swollen, yeah
俺は膨れ上がったベース音にとってのベートーヴェンさ、イェー
Starin' in the mirror, I was God's bonus
鏡を見つめる、俺は神からのボーナスだったんだ
Yeah, I ain't ask for shit, I was chose for this
イェー、俺は何も頼んじゃいない、このために選ばれたんだ
Plot twist, one day if my gifts got the homies chillin'
どんでん返しさ、ある日俺の才能がダチたちをリラックスさせられるようになったらな
Grooviest, hood politics, the Crips scholarships
最高にグルーヴィーだ、フッドの政治、クリップスの奨学金さ
※ScHoolboy Qは52 Hoover Gangster Cripsの出身。ストリートの掟と、ギャングから抜け出して音楽で稼ぐ(奨学金)ことの対比。
Gang foul, equal noose now, it ain't the same 'round
ギャングの反則、今じゃ首吊り縄と同じだ、この辺りも昔とは違う
※ストリートでの掟破りは死(首吊り)に直結する。
Aw yeah, this lifestyle we livin', ayy
オゥ・イェー、これが俺たちの生きるライフスタイルさ、エイ
Niggas turn to base heads from picture, ayy
連中は写真を撮る側からベースヘッドに変わっちまう、エイ
※「base head」はクラック・コカインの中毒者のこと。
And leaned into the crack, got out of business, huh
そしてクラックにのめり込み、ビジネスから脱落していった
Now blacks doin' coke, what's the difference now?
今じゃ黒人がコカインをやってる、今となっては何の違いがある?
※かつて80〜90年代の黒人ゲットーでは安価なクラックが蔓延し、粉末のコカインは白人の富裕層のものというイメージがあった。しかし今は黒人もコカインを吸うようになり、状況が変質しているというストリートの観察。
Pigs turn my loc' to a witness now (Shit, fuck, fuck)
サツどもが俺のダチを証人に変えちまった(クソ、ファック、ファック)
※「Pigs」は警察。「loc」はCripsの仲間のこと。警察の圧力によって、かつての仲間が密告者(証人)に寝返ってしまったというギャングのリアルな悲劇。
The stakes raised, well done, salute, uh
賭け金は上がった、よくやった、敬礼だ、アー
※「stakes raised(賭け金/ステーキが上がった)」と「well done(よくやった/ウェルダン)」を組み合わせ、タイトルの「Steak Um」に呼応する巧みなワードプレイ。
This young loc done popped out the blue, uh
この若いダチは青の中から飛び出してきたんだ、アー
※「out the blue(突然に)」と、Cripsのシンボルカラーである「青(Blue)」を掛けている。
Die young, I keep peace to shoot
若くして死ぬ、俺は撃つためにピースを保つ
※「peace」は平和と「piece(銃)」のダブルミーニング。
We all knew this sixteen's the truth, yeah
俺たち全員が分かっていた、この16が真実だってことをな、イェー
※「sixteen」はヒップホップにおける16小節のヴァース、またはM16アサルトライフルのこと。
Blacked out and I find out the scoop, brrt, ayy, woo
意識を失い、そしてスクープを見つけ出す、ブルル、エイ、ウー
