UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

UGMKM ARCHIVE

Find Music By Artist, Genre.

和訳・解説記事を、アーティスト名・ジャンルから探せます。

The New Grit - Black Thought 【和訳・解説】

Artist: Black Thought

Album: Streams of Thought, Vol. 2

Song Title: The New Grit

概要

The Rootsの絶対的フロントマンであり、ヒップホップ界で最も畏敬の念を集めるMCの一人、Black Thought。彼が名プロデューサーSalaam Remi(サラーム・レミ)とタッグを組んで2018年にリリースしたEP『Streams of Thought, Vol. 2: Traxploitation』に収録されたタイトな一曲である。演奏時間はわずか1分半程度と短いが、そこに込められたリリシズムとワードプレイの密度は驚異的だ。タイトルの「The New Grit」は、名作映画『True Grit(勇気ある追跡)』をもじりつつ、フィラデルフィアのストリートで培われた「Grit(不屈の精神、泥臭い根性)」を新次元へと昇華させた彼のスタイルを意味している。一切のフック(サビ)を持たず、最初から最後まで息継ぎすら感じさせない怒涛のスピットで、自らを王や神話の怪物に例えながらシーンの頂点に君臨する揺るぎない自信を見せつけている。

和訳

[Intro]

Uh-huh, yeah, two-fifteen
アーハッ、イェー、215
※「215」はBlack Thoughtの地元、ペンシルベニア州フィラデルフィアの市外局番。

[Verse]

I get on my jawn, when I perform I grab the bull by the horns
俺は自分のジョーンに乗り込む、パフォーマンスする時は困難に正面から立ち向かう
※「Jawn」はフィラデルフィア特有の万能スラング(あらゆる人や物を指す)。「Grab the bull by the horns(雄牛の角を掴む)」は、困難に勇敢に立ち向かうという意味の慣用句。

You probably should try to do it, I body you maricóns
お前らもやってみるべきだ、俺がお前らみたいな弱虫どもを完全に打ち負かしてやるからな
※「Body」はラップで相手を完全に圧倒する(殺す)こと。「Maricóns」はスペイン語の蔑称で、弱虫や同性愛者を意味し、相手を貶めるためのストリートの言葉。

My dynasty alliance, full of firearms, carriers
俺の王朝の同盟は、火器で満たされ、運び屋たちで溢れている

Kings who pull strings like a Stradivarius
ストラディバリウスのように弦を操る王たちさ
※「Pull strings(糸を引く/裏で操る)」という表現と、世界最高峰のバイオリン「ストラディバリウス」の弦(Strings)を掛け合わせた極めて秀逸なワードプレイ。

His imperial highness is smart as smart appliances
この帝国殿下は、スマート家電と同じくらいスマートだぜ

Sharper than the academy of arts and sciences
芸術科学アカデミーよりも鋭敏さ
※グラミー賞やオスカーを主催する権威あるアカデミー(The Academy of Arts and Sciences)よりも、自分のアートと頭脳の方が鋭利であるという誇示。

Thought's a scientist, plus what tragedy to triumph is
ソートは科学者であり、悲劇から勝利への道のりそのものだ
※自身の名前「Black Thought」を挙げ、言葉を科学的に組み立てるスキルと、ストリートの悲劇を乗り越えて勝利を手にした体現者であることを示している。

Try, try again, I rule the night with an iron fist
何度でも挑戦してみな、俺は鉄の拳でこの夜を支配している

An indication that you’re close to dying, I am this
お前が死にかけているという兆候、それが俺という存在だ

The black Moses, black roses, black violins
黒いモーセ、黒い薔薇、黒いバイオリン
※「Black Moses」はソウルの巨匠アイザック・ヘイズの異名であり、人々を導く指導者の比喩。黒い薔薇は死や追悼を、黒いバイオリンはクラシックな美と悲哀の象徴。

When niggas go up against the choir, the sire wins
奴らが聖歌隊に立ち向かおうとも、陛下であるこの俺が勝つ
※「Choir(聖歌隊)」はBlack Thoughtを支持する群衆やバックアップ。「Sire」は王や陛下への敬称。

It ain't no way to try and cleanse true leviathans
真のリヴァイアサンを浄化しようなんて、どうやっても無理な話だ
※リヴァイアサンは旧約聖書に登場する巨大な海の怪物。絶対に制御不可能な絶対的権力や、彼自身の圧倒的な存在感を指す。

I'm hard-wired but it’s barbed wire
俺は生まれつきだが、それは有刺鉄線なんだ
※「Hard-wired(生まれつき備わっている/回路が組み込まれている)」と、危険で近寄りがたい「Barbed wire(有刺鉄線)」を掛けたライン。

I took that vanity, threw it into the bonfire
その虚栄心を掴み取り、焚き火の中へ放り込んでやった

Some iffy shit transpire, them guns gon' fire
何か怪しい事態が起きれば、あの銃が火を噴くぜ

I never see my reflection, I'm like a vampire
自分の反射を見ることはない、俺は吸血鬼みたいなもんさ
※吸血鬼は鏡に映らない。ヒップホップシーンにおいて、自分と比肩する存在(反射)は誰もいないという唯一無二であることの表現。

Your empire expired, don't test the Esquire
お前の帝国は期限切れだ、このエスクワイアを試すんじゃない
※「Esquire」は紳士や弁護士への敬称。ここではシーンにおける高い地位と権威を持つ自分自身への言及。

I'm blessed, the messiah, no less than fresh
俺は祝福されたメシア、どこまでもフレッシュだ

I am the best, you just tired, the fuck, is you stupid?
俺が最高なんだ、お前はただ疲弊してるだけだ。クソ、お前はバカなのか?

This is true grit, I'ma call it the new shit
これが真の根性だ、俺はこれを新しい代物と呼ぶぜ
※映画『True Grit(トゥルー・グリット)』を引き合いに出し、フィラデルフィアのストリートで培った「Grit(不屈の精神)」を、誰も到

達したことのない新しい次元(The New Grit)へと押し上げたことを宣言している。