Artist: Black Thought
Album: Streams of Thought, Vol. 2
Song Title: Get Outlined
概要
2018年にリリースされたBlack Thoughtと名プロデューサーSalaam Remi(サラーム・レミ)のコラボレーションEP『Streams of Thought, Vol. 2: Traxploitation』に収録された一曲。フィラデルフィアをはじめとする全米のゲットーにはびこる暴力、警察の怠慢、ドラッグ、そして貧困の連鎖を、ベテランの冷徹な目線から生々しく描き出している。タイトルの「Get Outlined」は、殺人事件の現場で路上に横たわった死体がチョークで縁取られる(アウトラインされる)という凄惨な日常のメタファーだ。ストリートで次々と命を落としていく若者たちへの哀悼と、黒人コミュニティを搾取するシステムそのものへの根強い不信感を、硬派なブーンバップ・ビートに乗せて淡々と吐き出す姿は圧巻の一言。死と隣り合わせの環境でサバイブする精神的苦痛を浮き彫りにした、コンシャス・ヒップホップの真骨頂である。
和訳
[Intro]
Uh, LA, uh huh, Chi Town, Philadelphia, PA
アー、LA、シカゴ、ペンシルベニア州フィラデルフィア
Hey now, uh, LA, yeah, Chi Town, Philadelphia, PA
ヘイ、アー、LA、イェー、シカゴ、ペンシルベニア州フィラデルフィア
[Verse 1]
Listen, pick any city, the South side, the outside
聞いてくれ、どこの都市でもいい、サウスサイド、あるいは郊外
It isn't pretty, the tots cryin’ and shots fired
綺麗なもんじゃない、赤ん坊が泣き叫び、銃声が鳴り響く
Protection there be the lopsided, cop kind
そこにある保護ってのは、不公平な警察のもんさ
You see the scene of a crime like every stop sign
どこの一時停止標識でも犯罪現場を目にするような状態だ
My section of twenty-one pound is downtown
俺のいる21ポンドの区画はダウンタウンだ
※「21ポンド(Twenty-one pound)」はBlack Thoughtの地元フィラデルフィアの市外局番「215」のストリートな言い換え表現。
They walkin' 'round wit’ the guns out, it's wild how
連中は銃をむき出しにして歩き回ってる、本当に荒れてるぜ
The youngings dumb proud, followin' the crowd now
若え奴らは無駄に誇り高くて、今は群衆に流されている
Leading the blind with they minds up in the Soundcloud
Soundcloudに心を奪われながら、盲目が盲目を導いている状態さ
※目先の承認欲求(Soundcloudラッパーとしての成功など)に囚われた若者たちが、互いに間違った道へと引きずり込んでいることを批判している。
Ain't a lotta sunshine when you on a frontline
最前線にいる時、太陽の光なんて多くは拝めない
Listenin' to that ghetto drumline, duckin' one-time
ゲットーのドラムラインを聴きながら、ワンタイムから身を隠す
※「One-time」は警察を指す西海岸発祥のスラング(一度見たらすぐに姿を消すべき存在だから)。また、「ゲットーのドラムライン」とは絶え間なく響く銃声やサイレンの音を指す。
Thinkin' how the Devil doesn't tire, even sometimes
悪魔はどうして疲れないのかと考えちまうよ、時折な
Wonderin’ how the fuck could one’s rhyme be this unkind
どうして個人のライムがここまで無慈悲になれるのか不思議に思う
Everybody cold to me, seeming through this bullshit
誰もが俺には冷たい、このクソみたいな状況を透かして見ているようで
The only thing that sold to me bein' told, we should hold on
俺に押し付けられた唯一の教えは「持ちこたえるべきだ」ってことだけ
Gettin’ old to me I'm about to buckle
そんな言葉も俺には古臭くて、今にも膝から崩れ落ちそうだ
'Cause holdin' tight got my hands fully white-knuckled
なぜなら、強くしがみつきすぎて両手が真っ白に力んでしまっているからな
And to be honest, tomorrow is not promised
正直なところ、明日なんて約束されちゃいないんだ
Whether you on the streets of Chicago or Botswana
シカゴのストリートにいようが、ボツワナにいようがな
You gotta be rock solid, not to be outsmarted
出し抜かれないように、岩のように強固でいなきゃならない
The rise from rock-bottom to one of the top scholars
どん底から這い上がり、トップクラスの学者の一人になることさ
I never ask what’s the secret of success
俺は成功の秘訣なんて尋ねたことはない
With a target on your back and a scarlet on your chest
背中に標的を背負い、胸に緋色の文字を刻みながらな
※「Scarlet on your chest」はナサニエル・ホーソーンの古典小説『緋文字(The Scarlet Letter)』からの引用。社会的な罪の烙印や不名誉を背負って生きるゲットーの黒人の現実を表している。
Listen, just get it, not a minute to rest
聞いてくれ、ただ手に入れろ、1分たりとも休む暇はない
This is not a test, settle for the best, nothin' less, dig it
これはテストじゃない、最高のものだけを受け入れろ、それ以下はない、わかったか
[Bridge]
Pick any city, the South side, the drought side
どこの都市でもいい、サウスサイド、干ばつに見舞われた場所
Where E-M-S has arrived, well, it's about time
救急隊がようやく到着した、まあ、そろそろってところだ
※「E-M-S」は救急医療サービス。ゲットーでは救急車の到着が意図的に遅らされることが多いという社会問題を皮肉っている。
People who just get they tops fried get outlined
頭を吹っ飛ばされた奴らが、白線で縁取られていく
※「Get outlined」は殺害現場で死体の形をチョークでなぞられる(アウトライン)こと。楽曲のタイトル回収であり、ストリートの日常的な死の描写。
Minutes and seconds go clockwise but not mine
分も秒も時計回りに進んでいくが、俺の時間は違う
[Verse 2]
Where I'm from it's a war scene
俺の地元じゃ、まるで戦争の光景だ
Where more fiends scream for Morphines, Zoloft and Thorazine
薬物中毒者たちがモルヒネ、ゾロフト、ソラジンを求めてさらに悲鳴を上げている
※ゾロフト(抗うつ薬)やソラジン(抗精神病薬)など、精神的な苦痛や現実逃避のための処方薬乱用がコミュニティに蔓延している状態。
We don't subscribe to the grand scheme
俺たちは奴らの壮大な計画になんて同意しない
The plans seems to be keepin' us all sick, sellin' them vaccines
その計画ってのは、俺たち全員を病気にしておいて、ワクチンを売りつけることらしいからな
※システム(政府や製薬会社、ドラッグディーラー)が黒人コミュニティを意図的に病ませ、その治療法で搾取しているというコンシャスな陰謀論的視点。
Ain't a lot of fun time when your only son dyin'
一人息子が死にかけている時、楽しい時間なんて多くはない
And the world's comin' untied from the inside
そして世界は内側からほどけ始めている
That's between affection and depression, it's a thin line
愛情と鬱の狭間、それは紙一重の境界線だ
Stress and pressure here is multiplied ten times
ここでのストレスとプレッシャーは10倍に膨れ上がる
Everything is blurred to me, lessons deferred for me
何もかもが俺にはぼやけて見える、教訓は先送りされた
Fam said it's been a long term since they heard from me
家族は「お前から連絡をもらうのは久しぶりだ」と言った
My lil' homie never made it out of surgery
俺の若いダチは、手術室から生きて出てくることはなかった
Sometimes I feel like South Philly tryna murder me
時々、サウス・フィリーが俺を殺そうとしているように感じるよ
※サウス・フィリーはフィラデルフィア南部の過酷なエリア。自分が生まれ育ったフッドそのものが自分の命を奪おうとしているかのような絶望感。
[Interlude]
First, everybody's upset 'cause you died
まず第一に、お前が死んだことでみんな動揺する
They like, "Wait a minute, man
連中はこんな感じだ、「ちょっと待てよ、おい
I ain't the ones who's dead, he's the one that's brown bread"
俺が死んだわけじゃない、死んでるのはあいつの方だ」
※「Brown bread」はロンドンの下町で使われるコックニーのライミング・スラングで「Dead(死)」を意味する。
Hah, so in comes the second lie, ya dig?
ハッ、そこで2つ目の嘘が入り込んでくるわけだ、わかるか?
