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Dostoyevsky - Black Thought (feat. Rapsody) 【和訳・解説】

Artist: Black Thought (feat. Rapsody)

Album: Streams of Thought, Vol. 1

Song Title: Dostoyevsky

概要

The RootsのフロントマンであるBlack Thoughtと、サンプリング・ヒップホップの巨匠9th Wonderがタッグを組んだ2018年のコラボレーションEP『Streams of Thought, Vol. 1』のハイライトとも言える一曲。ノースカロライナのJamla Recordsから気鋭のフィメールMCであるRapsodyを客演に迎え、9th Wonderのタイトでソウルフルなループ上で高次元のライムの応酬を繰り広げる。タイトルの「Dostoyevsky(ドストエフスキー)」は、ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの名著『罪と罰』をメタファーとしており、ヒップホップシーンにおける真の芸術の探求と商業主義との対立、そして自身が築き上げてきた揺るぎない地位と精神性を確信に満ちたラップで描き出している。Black Thoughtのストイックで高尚なリリシズムと、Rapsodyのタフで知的なパンチラインが見事に共鳴し合う、ヒップホップというカルチャーの中で「誰が真に評価されるべきか」という重厚な問いを投げかける文学的傑作である。

和訳

[Verse 1: Black Thought]

Yeah, the universe let the planets align
宇宙が惑星を一直線に並ばせた
※占星術において「Planets align(惑星が直列する)」は完璧なタイミングや運命的な出来事を意味する。長年のキャリアを経て、すべてが自分の思い通りに運んでいる無双状態を示唆している。

Spent 10k and the card didn't decline
1万ドルを使ったが、カードは切れなかった
※若い頃の貧困から抜け出し、現在ではクレジットカードの限度額を気にせずに高額な買い物ができるようになった成功の証。

Bartender, one Casamigos and lime
バーテンダー、カーサミーゴスとライムを一杯
※ジョージ・クルーニーらが設立した高級テキーラブランド「Casamigos」。

I'm celebrating gracefully, getting better with time
優雅に祝杯を挙げている、時が経つほどに良くなっていくんだ
※酒の熟成と、自らのラップスキルの進化を掛けている。

I ain't even halfway through this incredible ride
この素晴らしい旅はまだ半分も終わっちゃいない

But like, I'm kind of doing an incredible job
だが、俺はかなり凄まじい仕事をしてきたと思ってるぜ

When I was 18 living beyond my means
18の頃は身の丈に合わない生活をしていて

I was afraid of my dreams, looking at the finer things
良いものを眺めながら、自分の夢に怯えていた

Wishing I could l flip to a microchip from a paper clip
ペーパークリップからマイクロチップへとのし上がれたらと願ってた
※何もない(ペーパークリップ)状態から、高度で価値のある存在(マイクロチップ)へと成長したいというハスラーの願望。また、「flip」にはドラッグの転売や金を増やすという意味も含まれる。

Upgrade to a spaceship from a basic whip
ただの車から宇宙船にアップグレードするようにな
※「whip」は車のスラング。成功によって乗り物が飛躍的に高級になることの比喩。

Cash Rules Everything, I just wanted a taste of it
現金が全てを支配する、俺はただその味を占めたかっただけさ
※Wu-Tang Clanのクラシック「C.R.E.A.M. (Cash Rules Everything Around Me)」からの引用。ヒップホップの黄金律を掲げている。

Fast food hurrying, saving time, not wasting it
ファストフードで急いで、時間を節約し、無駄にはしない

Self-saboteur, speaking it to my paramour
自己破壊的な俺、愛人にそれを語りかける

Torch rappers like I'm igniting the aerosol
エアロゾルに火をつけるように、ラッパーどもを焼き払う
※ヘアスプレーやスプレー缶(エアロゾル)に火をつけて即席の火炎放射器を作るストリートの危険な遊びと、マイク一本で他のMCを圧倒する比喩。

Maintaining the wherewithal that embarrass y'all
お前らを辱めるほどの資金と実力を維持しているのさ
※「wherewithal」は目的を達成するための手段、特に資金力を指す。

Game-changer, the way I shredded your cabbage off
ゲームチェンジャーさ、お前らの頭を切り刻んでやったようにな
※「cabbage」はスラングで「頭(脳みそ)」を意味する。また、千切りキャベツを作る(シュレッドする)ことと、ラップで相手の頭を吹っ飛ばすことを掛けている。

Explaining is changing apples to applesauce
説明するってのは、リンゴをアップルソースに変えちまうようなもんだ
※自分の高度なリリックをバカにでもわかるように噛み砕いて説明するのは、本来のシャープな魅力をドロドロのペースト(アップルソース)にして台無しにすることだという、無知なリスナーへの皮肉。

When we were young, innocence was ours, but that was lost
若かった頃、俺たちには純真さがあったが、それは失われた

Where I reside is the dark side of the glory
俺が住むのは、栄光のダークサイドだ

The fury I manipulate is the arc of the story
俺が操る怒りこそが、この物語の核心なんだ

Written without a ghostwriter to author it for me
ゴーストライターに書かせたものじゃない
※他人にリリックを書かせるメインストリームのラッパーたちを暗にディスしている。

This is Crime and Punishment, I'm the judge and the jury
これは「罪と罰」だ、俺が裁判官であり陪審員さ
※ドストエフスキーの代表作『罪と罰』を引き合いに出し、シーンにはびこる「罪(フェイクなMCたち)」を自らが裁き、「罰」を与える絶対的権限を持っていると宣言している。

Listen, Dostoyevsky
聞けよ、ドストエフスキー

[Verse 2: Rapsody]

I swam with crocs, fished with sharks
ワニと一緒に泳ぎ、サメと一緒に釣りをしてきた
※ワニやサメは危険な人物や過酷な環境のメタファー。厳しいヒップホップ業界やストリートを生き抜いてきたことを意味する。

May never pop charts, but I know I'm popular
チャートには入らないかもしれないが、自分が人気者だってことはわかってる
※ポップ(Pop)チャートに乗るような商業的成功と、本当のヒップホップファンからの支持(Popular)を対比させている。

I was built to run the game, I came up playing guard
このゲームを支配するように作られたんだ、ガードとしてプレイしながらのし上がってきた
※バスケットボールのポイントガード(PG)のように、ゲームメイクしシーンを牽引してきたという比喩。

With young niggas between 5'5" and 6 foot 4
5フィート5インチから6フィート4インチの若い黒人たちと一緒にな

I banked over both, tryna bank over some more
両方の上からバンクシュートを決め、さらに稼ごうとしてるんだ
※「bank」はバスケのバンクシュートと、銀行(Bank)で金を稼ぐことのダブルミーニング。身長の大小(あるいは業界の大小様々な壁)に関わらず、すべてを乗り越えて成功するという意味。

And ball out in something gorgeous that'll keep me in court
そして、俺をコートに留まらせるほど豪華なもので贅沢に遊ぶのさ
※「ball out」はバスケで活躍することと、派手に金を使うこと。「court」はバスケのコートと、法廷(訴訟やトラブル)のダブルミーニング。金遣いが荒すぎて裁判沙汰になるほどの勢いを示唆している。

Where they'll judge like y'all does, y'all don't know me enough
お前らがそうするように法廷でも裁かれるんだろう、お前らは俺のことを十分にわかっていない
※人々が表面的なイメージで彼女を評価(ジャッジ)することへの苛立ち。

Y'all still owe us for what all y'all did to the Cold Crush
お前らがコールド・クラッシュにしたことのツケを、まだ払ってもらってないぜ
※伝説的なオールドスクール・グループ「Cold Crush Brothers」のこと。ヒップホップの創世記に貢献した先人たちが、業界に搾取され正当な対価を得られなかった歴史を指し、業界の不正義を非難している。

To my donuts, I'm shooting J Dillas and what
ドーナツのように、J・ディラのビートを撃ちまくってるんだ、どうだ
※J・Dillaの傑作インストゥルメンタル・アルバム『Donuts』と、バスケットボールのフープ(ドーナツ型)、さらに銃を撃つ(Shooting)ことを掛けている。

I wanna cop when I get loot and recoup
稼いで回収した時には、いろいろ手に入れたい

I had to go through hella doors so in short that's why I only want two
多くのドアをくぐり抜けてきたからこそ、俺はたった2つのドアを持つ車が欲しいんだ
※苦労して数々の障害(Hella doors)を乗り越えてきたから、成功の証として2ドア(Two)の高級スポーツカー(クーペ)を求めているという巧みなワードプレイ。

But I ain't got Jay number, I CC 'em the proof
でも俺はジェイ・Zの番号を知らないから、証拠をCCで送ってやる
※Jay-Zの電話番号を知らないため、直接は連絡できないが、自分の実力(Proof)をメールの「CC」のように業界中に知らしめるというライン。CCはChanel(シャネル)のロゴの暗示とも取れる。

'Cause everything I pictured in my head has always come true
だって、頭の中で描いたことはすべて現実になってきたから

They say you need vision to see eye to eye with the Druids
ドルイド僧と目を合わせるにはビジョンが必要だと言う
※古代ケルトの神官「ドルイド」のように、真の知識や深い洞察を持つ者と対等に渡り合うには、同じレベルのビジョン(先見の明/霊視力)が必要だということ。

Spent 25 hundred on sheep skin, let it seep in
シープスキンに2500ドル使った、その事実を染み込ませろ
※高級なシープスキン(羊革のコートやブーツ)を購入できるほどの成功。同時に、「狼が羊の皮を被る」というような業界の欺瞞に対する皮肉を含んでいる可能性がある。

I ain't turn starboy in a weekend
週末だけでスターボーイになったわけじゃない
※The Weekndのアルバム『Starboy』を引いた言葉遊び。一朝一夕でスターになったわけではなく、長い時間をかけて今の地位を築いたという苦労の強調。

It took more like 7 years, make a sane man drink Everclear
正気な男でさえエバークリアを飲みたくなるような、7年以上の歳月がかかった
※「Everclear」はアルコール度数が極めて高い(最高95%)強烈なスピリッツ。業界での苦労やストレスが、強い酒に溺れたくなるほど過酷だったことを示している。

It ain't ever clear if we ever guaranteed a year
俺たちに1年の保証があるかどうかなんて、決して明らかじゃない
※前の行の「Everclear」と「Ever clear(決して明らかではない)」で踏んでいる。明日をも知れぬ厳しい業界の現実。

Fruits of your labor, huh, you work hard to get it
労働の果実か、手に入れるために一生懸命働くんだな

Jamla stitched on the motherfucking ROC fitted
ROCのフィッテッド・キャップにJamlaのロゴを縫い付けてやったぜ
※Rapsodyの所属レーベル「Jamla Records」と、Jay-Z率いる「Roc Nation」(彼女は2016年にRoc Nationと契約)の融合。フィッテッドはサイズの決まったベースボールキャップ。

Before the big lights it had to start with the scrimmage
大きな脚光を浴びる前は、スクリメージから始めなきゃならなかった
※スクリメージはスポーツの練習試合のこと。大きなステージに立つまでの下積みの長さを表す。

Know that it'd come sooner or later, I'm Trae Young, nigga
遅かれ早かれ来るってわかってたんだ、俺はトレイ・ヤングさ
※NBAアトランタ・ホークスのスター選手、トレイ・ヤング。大学時代から圧倒的なシュート力を見せつけ、プロでも即座に大成功を収めた彼のように、自分も成功を約束された才能だという自負。

Huh, I'm Trae Young, nigga
ああ、俺はトレイ・ヤングさ

[Verse 3: Black Thought]

Uh, I said Dostoyevsky meets Joe Pesci
あぁ、ドストエフスキーがジョー・ペシに出会ったようなもんさ
※ロシアの文豪の深い知性(Black Thoughtのリリシズム)と、マフィア映画で狂犬のような役を演じる名優ジョー・ペシ(ストリートの凶暴性)の融合。

Tired of staring at a glass half empty
グラスが半分空になっているのを見つめるのにはうんざりだ
※「Glass half empty」は悲観的な見方(まだ半分しかないと考える)の比喩。ネガティブな状況に甘んじるのはやめたということ。

Turning me from Dr. Sebi to cocking semi
Dr.セビからセミオートの銃を構える男へと俺を変えちまう
※「Dr. Sebi」は自然療法で様々な病気を治すと主張したホンジュラスの薬草医。平和的で自然治癒的な存在から、怒りに任せて銃(Semi-automatic)をぶっ放す危険な男への豹変。

It got me clutching my machete from the Serengeti already
俺はもうセレンゲティのマチェーテを握りしめている
※アフリカのセレンゲティ国立公園。野生の弱肉強食の世界(ストリート)で生き残るために、すでに鉈(マチェーテ)を構えて臨戦態勢であるという比喩。

Wild Styles and Fab Five Freddy
ワイルド・スタイルとファブ・ファイブ・フレディ
※1983年のヒップホップ映画の金字塔『Wild Style』と、その立役者でありヒップホップ黎明期の重要人物であるFab 5 Freddyをネームドロップ。カルチャーのルーツへの深いリスペクト。

I'm a stranger in Moscow, don't ask how deadly is the ummah
俺はモスクワの異邦人だ、ウンマがどれほど致命的かは聞かないでくれ
※マイケル・ジャクソンの曲「Stranger in Moscow」の引用と、ドストエフスキー(ロシア)のテーマの継続。「Ummah(ウンマ)」はイスラム教の共同体・同胞を意味する。イスラム教徒としての連帯の強さと、それに手を出した時の恐ろしさを示唆している。

Patrice Lumumba, Kwame Nkrumah
パトリス・ルムンバ、クワメ・ンクルマ
※コンゴの初代首相ルムンバと、ガーナの初代大統領ンクルマ。共にパン・アフリカニズムを推進した偉大なアフリカの指導者たちを並べ、自身の誇り高きブラック・アイデンティティを提示。

To the Tripoli shores from the halls of Montezuma
モンテスマの殿堂からトリポリの海岸まで
※アメリカ海兵隊讃歌の一節「From the Halls of Montezuma to the shores of Tripoli」。アメリカの武力と歴史的な覇権主義の象徴を引用しつつ、自分が地球規模で影響力を持っていることを示す。

Stop intruder, I'm built on facts, I'm not your rumor
止まれ侵入者、俺は事実の上に築かれている、お前らの噂話なんかじゃない

A malignant tumor, slid through in a suede Puma
悪性腫瘍さ、スエードのプーマを履いて滑り込む
※社会やシーンにとって排除しきれない危険な存在(悪性腫瘍)でありながら、B-Boyの象徴であるPUMAのスエード・スニーカーをクールに履きこなす。

The steady heavy legendary, all praise is overdue
揺るぎなくヘヴィーな伝説だ、全ての賞賛はとっくに遅すぎるくらいさ

Same cloth as the chosen few, rap Noble Drew
選ばれし少数の者たちと同じ布で作られている、ラップ界のノーブル・ドリューさ
※「Same cloth」は同じ性質やルーツを持つこと。「Noble Drew(ノーブル・ドリュー・アリ)」はムーアッシュ・サイエンス・テンプル・オブ・アメリカの創始者であり、初期のブラック・ナショナリズムの指導者。自分はラップシーンにおける精神的指導者だという宣言。

I guarantee you know more music by the suckers
お前らがサツカ―ども(偽物のラッパー)の音楽の方をよく知ってることは保証するぜ
※大衆が真のアート(Black Thought)よりも、中身のない商業的ラッパー(Suckers)の曲ばかりを聴いている現状への強烈な皮肉。

It's not a victimless crime if anybody suffers
誰かが苦しんでいるなら、それは被害者のいない犯罪なんかじゃない

In a system that was designed for them to try to cuff us
奴らが俺たちに手錠をかけるよう設計されたシステムの中でな
※「cuff(手錠)」は黒人を不当に逮捕し投獄するために作られたアメリカの司法・警察制度(System)の隠喩。

Well, what's the use of 'em trying when can't nobody touch us?
誰も俺たちに触れられないってのに、奴らが努力したところで何になる?

Unless it's fabricated, probably drug related
でっち上げられたか、たぶん薬物関連じゃない限りな
※警察が証拠を捏造(fabricate)したり、ドラッグの罪を不当に着せたりしない限り、自分たちを捕まえることはできないという警察の腐敗に対する告発。

But love or hate it, I will not be subjugated
だが愛そうと憎もうと、俺は決して屈服しない

When they screamin' “You the greatest that did it,” what's underrated?
奴らが「あなたは史上最高だ」と叫ぶとき、何が過小評価されているって言うんだ?

As if every other player who spit it was unrelated
まるでラップを吐く他のすべてのプレイヤーが、俺とは無関係であるかのように
※人々は彼を「史上最高(GOAT)」と称賛するが、それでも真の評価(メインストリームでの扱いや影響力)が伴っていないという矛盾を突いている。

If every man's a temple, the circumstance is simple
もしすべての人間が神殿であるなら、状況はシンプルだ

So to be transcendental, I do enhance the mental
だから超越的な存在になるために、俺は精神を強化するんだ
※自身の肉体を神聖なもの(神殿)と捉え、精神性(Mental)を磨き上げることで物理的な現実を超越(Transcendental)するという哲学。

This is elder statesmen conversation
これは長老の政治家同士の会話さ
※ベテランのトップMCとしての威厳。シーンの重鎮としての言葉の重みを示している。

Take a look into them books from down in the basement, yeah
地下室にあるあいつらの本の中を覗いてみな、そうだ
※知識の源泉やアンダーグラウンドのヒップホップ、忘れ去られた歴史の真実(地下に隠された本)に目を向けるよう促している。