Artist: Lupe Fiasco
Album: Lupe Fiasco’s Food & Liquor
Song Title: Kick, Push
概要
Lupe Fiascoの記念すべきデビューアルバム『Food & Liquor』(2006年)からのリードシングルであり、メインストリームのヒップホップシーンに「スケートボード・カルチャー」を本格的に持ち込んだ革命的な一曲である。プロデューサーのSoundtrakkは、フィリピンの歌手Celeste Legaspiの楽曲の壮大なオーケストラアレンジをサンプリングし、優雅でありながらもストリートの土臭さを残す独特のビートを構築した。当時のヒップホップはギャングスタラップやサウスのクランクが猛威を振るっていたが、Lupeはバックパックを背負ったオタク的(スケーター)なペルソナを提示し、黒人コミュニティにおける「アウトサイダー」たちに強烈な共感を呼んだ。さらにヒップホップファンの間では、本作におけるスケートボードの描写が、ストリートでドラッグを捌く「ハスラー」たちの過酷な生活と巧妙に重ね合わされたダブルミーニング(隠喩)であるというディープな考察も交わされており、彼のリリシストとしての恐るべき才能を世に知らしめた金字塔である。
和訳
[Intro]
Ugh! (Woo!)
What up, y'all? Yeah
調子はどうだ、お前ら?イェー
(Soundtrakk, what's poppin', baby?)
(サウンドトラック、調子はどうだ、ベイビー?)
※この曲のビートを手掛けた盟友のプロデューサー、Soundtrakkへのシャウトアウト。
Woo! (Ugh)
If y'all ain't know
もし知らない奴がいるなら教えてやる
I go by the name of Lupe Fiasco
俺の名前はルーペ・フィアスコだ
(Kick, push, coast)
(蹴って、プッシュして、進んでいく)
Representing that 1st & 15th, yeah, uh (Coast to coast)
1st & 15thをレペゼンしてるぜ、イェー、アー(西海岸から東海岸まで)
※「1st & 15th」はLupe自身が主宰するレーベルの名前。
And this one right here (Woo!)
そして今ここにあるこの曲を (Woo!)
I dedicate this one right here (Uprise...)
俺はここにいる奴らに捧げるぜ(立ち上がれ…)
To all my homies out there grinding (What up?)
外の世界でグラインドしてる俺のホーミーたち全員にな(調子はどうだ?)
※「grinding」はスケートボードで手すりなどを滑るトリック「グラインド」と、ストリートで「必死に金を稼ぐ(ハスリングする)」ことの高度なダブルミーニング。本作の根底にあるテーマを提示している。
You know what I'm saying? Legally and illegally, haha
俺の言ってる意味が分かるか?合法的なやり方でも、非合法なやり方でもだ、ハハ
※ここで「非合法」と言い切ることで、この曲が単なるスケートの歌ではなく、ドラッグディーラーなどのフッドのハスラーたちにも向けられたアンセムであることをサブリミナルに宣言している。
You know what I'm talking about? (Woo!)
俺が何を言ってるか分かるだろ? (Woo!)
So, check it out, uh
だから、よく聴いてくれ、アー
[Verse 1]
First got it when he was six, didn't know any tricks
彼が初めてそれを手に入れたのは6歳の時、トリックなんて一つも知らなかった
Matter of fact, first time he got on it, he slipped
実際のところ、初めてそれに乗った時、彼はすべって転んだんだ
Landed on his hip and busted his lip
腰から落ちて、唇を切ってしまった
For a week he had to talk with a lisp, like this (Ugh)
1週間のあいだ、彼はこんな風に舌足らずな喋り方をしなきゃならなかった (Ugh)
Now we can end the story right here
さて、ここでこの話を終わらせることもできる
But shorty didn't quit, it was something in the air (Ugh)
だが少年は辞めなかった、そこには何か特別な空気があったんだ (Ugh)
Yeah, he said it was something so appealing
ああ、彼はそれがすごく魅力的なものだと言っていた
He couldn't fight the feeling, something about it
その衝動には抗えなかったんだ、それに関する何かが
He knew he couldn't doubt it, couldn't understand it
彼はそれを疑うことができないと分かっていたし、理解もできなかった
Branded, since the first kickflip he landed, ugh (Woo)
初めてキックフリップを成功させた時から、完全に烙印を押されたのさ、アー (Woo)
※スケートの魅力に一生取り憑かれてしまった状態の表現。
Labeled a misfit, a bandit
はみ出し者や、無法者というレッテルを貼られた
Ka-kunk, ka-kunk, ka-kunk
カクン、カクン、カクン
※スケートボードのウィールがコンクリートの継ぎ目を越える時の特有の音の擬音。
His neighbors couldn't stand it, so—
近所の連中はそれに耐えられなかった、だから—
He was banished to the park
彼は公園へと追放されたんだ
Started in the morning, wouldn't stop 'til after dark, yeah
朝から始めて、暗くなるまでずっと辞めようとしなかった、イェー
When they said "It's getting late in here
大人たちが「もう遅い時間だぞ」と言うまでな
So I'm sorry, young man, there's no skating here"
「だから悪いね若いの、ここではスケート禁止だ」
※「スケート禁止(There's no skating here)」は、社会に自分たちの居場所がないアウトサイダーとしての疎外感を象徴するフレーズとして曲中で繰り返される。
[Chorus]
And so he kick, push, kick, push
だから彼は蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュする
※フッドの隠語として解釈すると、「kick(ドアを蹴破る、またはコカインの純度を落とす)」、「push(ドラッグを売りさばく)」というドラッグディーラーの日常の動作のメタファーにもなっている。
Kick, push, kick, push; coast...
蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュして、滑っていく…
And away he rolled
そして彼は転がるように離れていった
Just a rebel to the world with no place to go
行くあてのない、ただの世界への反逆児さ
And so he kick, push, kick, push
だから彼は蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュする
Kick, push, kick, push; coast...
蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュして、滑っていく…
So come and skate with me
だから俺と一緒にスケートしようぜ
Just a rebel looking for a place to be
ただ自分の居場所を探しているだけの反逆児さ
So let's kick... (Ugh)
だから蹴って… (Ugh)
And push (Y-yeah, y-yeah-yeah)
そしてプッシュして (Y-yeah, y-yeah-yeah)
And coast
滑っていこう
Uh, uh, uh (Y-yeah, y-yeah-yeah)
[Verse 2]
My man got a little older, became a better roller
俺のダチは少し大人になり、さらに上手いスケーターになった
Yeah, no helmet, "hell-bent on killing himself"—
イェー、ヘルメットも被らない、「あの子は自殺する気だわ」—
Is what his mama said, but he was feeling himself
それが彼のママの言葉だったが、彼は自分のスタイルに酔いしれていた
Got a little more swagger in his style
彼のスタイルには少しばかりスワッグが増していたんだ
※「swagger」は自信に満ちたクールな態度や歩き方。
Met his girlfriend, she was clapping in the crowd
彼はガールフレンドに出会った、彼女は群衆の中で拍手をしていた
Love is what-what was happening to him now, ugh!
今、彼に起きていたのは恋というやつさ、アー!
He said "I would marry you
彼は言ったんだ「君と結婚したいよ」
But I'm engaged to these aerials and varials
「でも俺は、このエアリアルやバリアルと婚約中なんだ」
※「aerials」と「varials」はスケートの高度なトリック名。スケートボードへの異常な愛情をプロポーズの言葉に掛けたユーモア。
And I don't think this board is strong enough to carry two"
「それに、このボードは二人を乗せるほど頑丈だとは思えないしな」
She said, "Bow! I weigh a hundred and twenty pounds" (Woo!)
彼女は言った「バーン!私の体重は120ポンド(約54kg)よ」 (Woo!)
"Now, let me make one thing clear
「さて、一つだけはっきりさせておくわ」
I don't need to ride yours, I got mine right here"
「あなたのボードに乗る必要なんてない、私のはここにあるから」
So she took him to a spot he didn't know about
そうして彼女は、彼が知らないスポットへと連れて行った
Some modern apartment parking lot
とある近代的なマンションの駐車場さ
She said, "I don't normally take dates in here"
彼女は言った「普段はここでデートなんてしないんだけどね」
Security came and said, "I'm sorry, there's no skating here"
警備員がやって来て言った「悪いが、ここではスケート禁止だ」
※居場所を見つけたと思っても、システム(警備員)によって排除されるストリートキッズの現実。
[Chorus]
And so they kick, push, kick, push
だから彼らは蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュする
※ここから主語が「He(彼)」から「They(彼ら・恋人たち)」に変化している。
Kick, push, kick, push, coast
蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュして、滑っていく
And away they roll
そして彼らは転がるように離れていく
Just lovers intertwined with no place to go
行くあてもなく、ただ絡み合う恋人たちさ
And so they kick, push, kick, push
だから彼らは蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュする
Kick, push, kick, push, coast
蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュして、滑っていく
So come and skate with me
だから俺と一緒にスケートしようぜ
Just a rebel looking for a place to be
ただ自分の居場所を探しているだけの反逆児さ
So let's kick (Ugh, ugh)
だから蹴って (Ugh, ugh)
And push, yeah, yeah (Woo, woo)
そしてプッシュして、イェー、イェー (Woo, woo)
And coast (Yeah, ugh!)
滑っていこう (Yeah, ugh!)
(Haha, swanky)
(ハハ、イカしてるぜ)
Yeah, yeah!
[Verse 3]
Before he knew, he had a crew that wasn't no punk
いつの間にか、彼には弱虫じゃないクルーができていた
※「punk」は刑務所スラングで弱虫や言いなりになる奴のこと。ストリートでナメられないタフな仲間たちであることを示している。
In they Spitfire shirts and SB dunks
スピットファイアのシャツを着て、SBダンクを履いた連中さ
※「Spitfire」はスケートボードのウィールブランド。「SB dunks」はNike Skateboardingの人気スニーカー。当時の黒人コミュニティにおいて、これらのスケートブランドを着用することはまだメインストリームではなく、Lupeがいかに先見の明を持っていたかが分かるネームドロップ。
They would push 'til they couldn't skate no more
彼らはもうスケートができなくなる限界までプッシュし続けた
Office building lobbies wasn't safe no more
オフィスビルのロビーも、もはや安全な場所ではなくなった
※スケートスポットとして目を付けられたビル側が対策を強化し、警備員や警察に追われるようになった状況。
And it wasn't like they wasn't getting chased no more
それに、彼らがもう追いかけられなくなったというわけでもなかった
Just the freedom was better than breathing, they said (They said)
ただ、この自由は呼吸することよりも素晴らしいんだと、彼らは言った(彼らは言った)
An escape route they used to escape out
彼らが外へ逃げ出すために使っていた逃げ道
When things got crazy, they needed to break out
現実が狂い始めた時、彼らはそこから抜け出す必要があったんだ
※ゲットーの過酷な生活、家庭内の問題、あるいはギャングの抗争などから、スケートボードを通して精神的に逃避していたことへの言及。
They'd head (They'd head) to any place with stairs
彼らは向かった(彼らは向かった)、階段がある場所ならどこへでも
Any good grinds, the world was theirs, ugh! (Theirs)
良いグラインドができる場所ならどこでも、世界は彼らのものだったんだ、アー! (彼らのもの)
And their four wheels would take them there
そして、彼らの4つのウィールがそこへと連れて行ってくれた
Until the cops came and said, "There's no skating here"
サツがやって来て「ここではスケート禁止だ」と言うまではな
※最後は警備員ではなく警察(cops)が登場する。スケートという表現行為が、社会システムや権力と衝突する運命にあることを示唆して曲を締めくくっている。
[Chorus]
And so they kick, push, kick, push
だから彼らは蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュする
Kick, push, kick, push, coast
蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュして、滑っていく
And away they rolled
そして彼らは転がるように離れていった
Just rebels without a cause with no place to go
行くあてのない、ただの理由なき反抗者たちさ
※ジェームズ・ディーン主演の映画『理由なき反抗(Rebel Without a Cause)』からの引用。若者の社会への漠然とした怒りと疎外感を表現している。
And so they kick, push, kick, push
だから彼らは蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュする
Kick, push, kick, push, coast
蹴って、プッシュして、蹴って、プッシュして、滑っていく
So come roll with me
だから俺と一緒に転がろうぜ
Just a rebel looking for a place to be
ただ自分の居場所を探しているだけの反逆児さ
So let's kick (Ugh, ugh)
だから蹴って (Ugh, ugh)
And push, yeah, yeah (Woo, woo)
そしてプッシュして、イェー、イェー (Woo, woo)
And coast
滑っていこう
Ah-ha, swanky (Mm, mm)
