Artist: Lupe Fiasco (feat. Sarah Green)
Album: Lupe Fiasco’s Food & Liquor
Song Title: Real
概要
シカゴ出身の稀代のリリシスト、Lupe Fiascoの歴史的デビューアルバム『Food & Liquor』(2006年)に収録された、彼のコンシャスなスタンスを象徴する重要曲である。盟友Soundtrakkがプロデュースを手掛け、Harvey Masonのメロウな名曲「How Does It Feel」を巧みにサンプリングしたソウルフルなビートに乗せ、フェイクや物質主義が蔓延していた当時のメインストリーム・ヒップホップシーンに対する強烈なアンチテーゼを提示している。タイトル通り、リスナーやフッドの仲間、そして自らの母親が渇望する「本物の価値」やメッセージを届けるという彼の決意表明だ。ギャングスタ・ペルソナを演じることなく、ストリートの痛み、欲望の恐ろしさ、そして神からの試練を描き出す彼の知的な筆致は、後のKendrick LamarやJ. Coleらにも多大な影響を与えた。真理を追求するLupeの美学が凝縮された傑作である。
和訳
[Intro]
Food & Liquor
フード・アンド・リカー
※アルバムのタイトルであり、Lupeが提示する「善(Food)」と「悪(Liquor)」の二面性というテーマ。
[Chorus: Lupe Fiasco]
Yeah, my man said he wanted something real
イェー、ダチは何か本物が欲しいと言っていた
※作り物のギャングスタ・ラップではなく、人生のリアルな描写を求めていること。
Real, real, real, real
本物を、本物を
Something he could recognize, something he could feel
奴が認識できる何か、奴が感じ取れる何かを
Feel, feel, feel, feel
感じ取れるものを
Baby girl said she was in the mood for something real
あの娘も本物を求めている気分だと言っていた
Real, real, real, real (FNF)
本物を、本物を (FNF)
※「FNF」はLupeが主宰するレーベル「1st & 15th」の略称。同時に「Food & Liquor」の頭文字も含意している。
Something that could make her move, something she could feel
彼女の心を動かす何か、彼女が感じ取れる何かを
Feel, feel, feel
感じ取れるものを
[Verse 1: Lupe Fiasco]
Lust, sometimes can override trust
欲望は時に、信頼を打ち負かしてしまうことがある
※肉欲や金銭欲が人間関係を壊すフッドの現実。
She said that's why she gave it up
だから彼女は体を許したんだと言っていた
My man said blood spilled out of everything he touched
ダチは自分が触れたものすべてから血が流れたと言っていた
※ストリートでの暴力や犯罪行為が、意図せず周囲の人間を傷つけてしまう連鎖を表現している。
He crushed everything, he crushed
奴はすべてを壊してしまった、破壊したんだ
Ruined everything he loved, he just wanted the rush
愛するものすべてを台無しにした、奴はただスリルが欲しかっただけなのに
※「rush」はドラッグによる快感や、犯罪の瞬間のアドレナリンを指す。
Blamed it on the times being rough
時代が過酷だったせいにしてな
※自己の責任を、ゲットーという環境のせいにして逃避する姿勢。
Doing dirt with the devil, chasing after the dust
悪魔と共に悪事に手を染め、粉を追いかけている
※「dust」はコカインなどの粉末ドラッグを指すストリートスラング。同時に、結局は「塵」でしかない無価値なものを追い求めているという痛烈なダブルミーニング。
Make a fuss if it's them, but we hush if it's us
他人のことなら大騒ぎするくせに、自分たちのこととなれば口をつぐむんだ
※ストリートにはびこる自己中心的な偽善と、都合の悪い事実は隠蔽するコミュニティの暗部への批判。
[Chorus: Lupe Fiasco]
That's why, my momma said she wanted something real
だからこそ、母さんは何か本物が欲しいと言ったんだ
Real, real, real, real
本物を、本物を
Something she could be proud of, something she could feel
母さんが誇りに思える何か、母さんが感じ取れる何かを
Feel, feel, feel, feel
感じ取れるものを
She said they so used to not having nothin' real
母さんは言った、みんな本物を持たないことに慣れきってしまっていると
※メディアが流すフェイクな価値観に洗脳されている大衆への嘆き。
Real, real, real, real
本物が何かも
That they don't know how to act, they don't know how to feel
だからどう振る舞えばいいのかも、どう感じればいいのかも分からなくなっているんだ
Feel, feel, feel
どう感じるべきかも
[Verse 2: Lupe Fiasco]
Life, ain't meant to come around twice
人生というものは、二度も巡ってくるようにはできていない
Yeah, that's why I gotta get it right
イェー、だからこそ俺は正しくやらなきゃいけないんだ
They said I got it honest, now I gotta give it light
みんな俺が誠実さを持っていると言ってくれた、だから今は俺が光を与えなきゃならない
※自身が持つ才能と誠実さを、コミュニティを導くための光として使うという使命感。
But sleep on it, that's why God give you night
だが一晩よく考えろ、だから神は夜を与えたんだ
※急いで間違った行動を起こす前に、冷静に熟考する時間(夜=暗闇の試練)が必要であるという教え。
I mean, I had a dream that God gave me flight
つまり、俺は神が飛ぶ力を与えてくれた夢を見たんだ
Too fly for my own good, so God gave me plight
自分の手に負えないほど高く飛びすぎたから、神は俺に苦境を与えた
※「fly」は「空を飛ぶ」ことと「イケてる・調子に乗る」ことのダブルミーニング。「plight(苦境)」は、エゴの肥大化を防ぎ、地に足を着かせるための神からの試練であるという敬虔なムスリムとしての死生観。
If I wake up in the morning now I gotta give 'em sight
朝目を覚ましたのなら、今度は俺があいつらに視界を与えなきゃいけない
※無知という暗闇の中にいるフッドの若者たちに、真実を見る目を開かせるという決意。
Make 'em see, break 'em free, ain't a G, show you right
目を覚まさせ、解放してやる、俺はギャングスタじゃないが、正しい道を見せてやる
※「G」はGangstaのこと。ヒップホップにおいてリスペクトを得るためにギャングを気取る必要はないという、彼自身のアイデンティティの宣言。
[Chorus: Lupe Fiasco & Sarah Green]
The game is not to give 'em nothing real
この業界のやり方は、あいつらに本物なんて一切与えないことだ
※「The game」は音楽業界やエンタメ産業のシステム。真実を隠し、表面的な享楽だけを消費させる構造への批判。
Real, real, real, real
本物なんて
Nothing that they could use, nothing that they could feel
奴らの役に立つものなんて何もない、奴らが心から感じ取れるものなんてない
Feel, feel, feel, feel
感じ取れるものなんて
Give 'em a bunch of lies and teach 'em that it's real
大量の嘘を与え、それが本物だと思い込ませるんだ
Real, real, real, real
それが本物だと
So that's all they'll know, that's all that they'll feel
そうすれば奴らはそれしか知らなくなる、それしか感じなくなるんだ
Feel, feel, feel
それしか感じられなくなる
[Verse 3: Lupe Fiasco]
Struggle (Yeah, yeah, yeah), another sign that God love you
苦闘 (Yeah, yeah, yeah)、それも神が愛してくれている証拠だ
※逆境は神が与えた成長のためのテストであるという解釈。
'Cause on the low, being poor make you humble
なぜなら、ここだけの話、貧乏でいることは人を謙虚にするからだ
※「on the low」は内緒の話、正直なところ、といったニュアンス。
Keep they names in my rhymes to try and keep 'em out of trouble
あいつらがトラブルに巻き込まれないように、俺のライムの中にあいつらの名前を刻み続ける
'Cause being poor also teach you how to hustle
なぜなら、貧乏でいることはハッスルする術も教えてくれるからだ
※「hustle」はストリートで生き抜くための金稼ぎ。ここでは犯罪ではなく、ラップという正当な手段で成功を掴み取る野心に転化されている。
All they want is some shoes or some rims for they bubble
あいつらが欲しがるのは靴か、バブルのためのリムだけだ
※「bubble」は丸みを帯びた大型車(シボレー・カプリスなどのドンク車)を指すスラング。フッドの若者たちが、スニーカーや車のホイールといった一時的な物質的ステータスに囚われている状況を嘆いている。
Now that I got my own I can hit 'em with a couple
俺は自分のものを手に入れたから、あいつらにいくつか分けてやれる
※成功して得た富や知識を地元に還元するという還元(Give back)の精神。
Cuff my homies so they ain't got no reason to cuff you
仲間たちを囲い込んで、警察がお前を逮捕する理由をなくしてやる
※「Cuff」の極めて秀逸なダブルミーニング。前半の「Cuff」は仲間を経済的に保護する(資金を与えて囲い込む)こと、後半の「Cuff」は手錠をかける(逮捕される)ことを意味する。仲間が犯罪に走る根本原因である貧困を、自らの成功によって断ち切るという力強い宣言である。
That's my plan, if I can, on the Man up above you
それが俺の計画だ、可能ならばな、天にいる神にかけて誓うよ
※「the Man up above you」は神(アッラー)のこと。
[Chorus: Lupe Fiasco & Sarah Green]
That's why, I gotta give 'em something real
だからこそ、俺はあいつらに何か本物を与えなきゃいけないんだ
Real, real, real, real
本物を、本物を
Something they could recognize, something they could feel
あいつらが認識できる何か、あいつらが感じ取れる何かを
Feel, feel, feel, feel
感じ取れるものを
To my homies on the block I gotta give 'em something real
ブロックにいる俺の仲間たちに、何か本物を与えなきゃいけない
Real, real, real, real
本物を、本物を
Something that'll make 'em stop, something they can feel
あいつらの足を止める何か、あいつらが感じ取れる何かを
※「足を止める」とは、自滅的なストリートライフや無意味な争いから身を引かせるほどの影響力を持った言葉を意味する。
Feel, feel, feel
感じ取れるものを
[Outro: Lupe Fiasco & Sarah Green]
Yo! FNF are real; really real, yea
ヨゥ!FNFは本物だ、マジで本物なんだ、イェー
You know what it is, woo
分かってるだろ、ウー
Baby girl said she was in the mood for something real
あの娘も本物を求めている気分だと言っていた
Real, real, real, real
本物を、本物を
Let's go
いくぞ
So real, so real, so real
マジで本物、これぞ本物、真実さ
