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Intro - Lupe Fiasco (feat. Ayesha Jaco) 【和訳・解説】

Artist: Lupe Fiasco (feat. Ayesha Jaco)

Album: Lupe Fiasco’s Food & Liquor

Song Title: Intro

概要

シカゴが誇るリリシスト、Lupe Fiascoの歴史的デビューアルバム『Food & Liquor』(2006年)の幕開けを飾る重要なイントロダクションである。前半のポエトリーリーディングは彼の実姉であるAyesha Jacoが担当し、シカゴのフッドにおける「光と影」のコントラストを鮮烈に描写している。「Food(食料=善・成長)」と「Liquor(酒=悪・堕落)」が同じ街角に共存するゲットーの過酷な現実と二面性を提示し、ヒップホップファンの間でも名盤のテーマを見事に定義づけたポエトリーとして高く評価されている。後半ではLupe自身がマイクを握り、敬虔なムスリムとしてイスラム教の祈りの言葉を捧げつつ、収監された盟友Chillyへのシャウトアウトや自身のレーベル「1st & 15th」の誇りを胸に、自らの魂と経験をリスナーに提示する決意を語る。コンシャス・ヒップホップの金字塔となる作品のコンセプトが凝縮された、極めて文化的意義の深いオープニングである。

和訳

[Intro poem: Ayesha Jaco]

Food and liquor stores rest on every corner
食料品店と酒屋がすべての街角に立ち並んでいる
※アルバムのタイトルでもあり、メインテーマである「善(Food)」と「悪(Liquor)」の共存を示している。

From 45th and State to the last standing Henry Horner
45番地とステイト・ストリートから、最後まで残っているヘンリー・ホーナーまで
※「45th and State」はシカゴの悪名高き公営住宅ロバート・テイラー・ホームズの所在地。「Henry Horner」も同じくシカゴの公営住宅群を指す。シカゴのフッドの現実をマッピングしている。

J&J's, Harold's Chicken, good finger lickin'
J&Jやハロルズ・チキン、指を舐めたくなるほど美味いもの
※「Harold's Chicken」はシカゴの黒人コミュニティで愛される有名なフライドチキン・チェーン。「J&J's」も地元のファストフード店(J&J Fish and Chicken)。これらは「Food(善・生きるための糧)」の象徴である。

While they sin, gin, sin sin at Rothschild's and Kenwood Liquors
その一方で、ロスチャイルズやケンウッド・リカーズでジンをあおり、罪を重ねていく
※「Liquor(悪・堕落)」の象徴。ロスチャイルズやケンウッド・リカーズはシカゴのサウスサイドにある実在の酒屋。食と酒(生と死)が背中合わせにある環境を描写している。

The winos crooked stagger meets the high stride of the youth
アル中の歪んだ千鳥足が、若者たちの堂々とした足取りと交差する
※ドラッグやアルコールに溺れた大人と、まだ未来や希望を持つ若者が同じ道を歩くゲットーの残酷なコントラスト。

Searchin' for the truth
真実を探し求めながら

They rebel and raise hell across alleyways and in classroom settings
彼らは路地裏や教室のあちこちで反抗し、騒ぎを起こしている
※ストリートの混沌が、本来安全であるべき学校という教育の場にまで持ち込まれている様子。

They get, high off that trunk bass and 20/20 rims
トランクから響く重低音と20インチのリムでハイになっている
※「trunk bass」は車に積んだウーファーの低音。「20/20 rims」は20インチの大口径ホイール。シカゴのカーカルチャーにおけるステータスシンボル。

They rock braids, Air Force Ones, and Timbs
ブレイズヘアでキメて、エアフォース1とティンバーランドを履きこなす
※当時のヒップホップ・ストリートカルチャーの典型的なスタイル。

They drink Hennessy, Hypnotiq, and 40's
ヘネシーやヒプノティック、40オンスのモルトリカーを飲み干す
※「40's」は安価でアルコール度数の高い40オンスの瓶ビール。ヒプノティック(Hypnotiq)は2000年代のヒップホップシーンで大流行した青いフルーツリキュール。

They call they women hoes, bust downs, and shorties
女たちのことをホー、バスト・ダウン、ショーティーと呼んでいる
※「bust downs」は性的に奔放な女性、「shorties」は若い女性を指すスラング。ストリートに蔓延するミソジニー(女性蔑視)的な言葉遣いを客観的に指摘している。

They keep funeral homes in business and gunshot wards of hospitals full
彼らが葬儀屋を儲けさせ、病院の銃創病棟をいっぱいにしている
※ギャングの抗争や銃犯罪によって、皮肉にも葬儀ビジネスや医療現場が忙殺されているというフッドの悲惨な現実。

Prisons packed, bubblin' over in brown sugar
刑務所はすし詰め状態で、ブラウンシュガーがそこら中で煮立っている
※「brown sugar」は純度の低いヘロイン(ブラウン・ヘロイン)を指すストリートスラング。麻薬問題と大量投獄(Mass Incarceration)への言及。

They keep empty, Westside lots crowded, hype's powdered
ウェストサイドの空き地に人が群がり、ジャンキーは粉をキメている
※Lupeの地元であるシカゴ・ウェストサイドの描写。「hype」はヘロイン中毒者(ジャンキー)を指すシカゴ特有のスラング。

The well is running dry
井戸は干上がりかけている
※コミュニティの資源や希望、良心が枯渇寸前であることの暗喩。

The days of Malcolm and Martin have ended
マルコムとマーティンの時代は終わってしまった
※マルコム・Xとマーティン・ルーサー・キング・ジュニアという、黒人解放運動の二大指導者が不在の現代を嘆いている。

Our hope has descended and off to the side
私たちの希望は堕ち、脇へと追いやられてしまった

Waiting for the reinstallment of the revolution
革命が再び起こるのをただ待っている

Because we are dying at the cost of our own pollution
なぜなら、私たちは自らが生み出した汚染の代償として死にゆくのだから
※システムによる抑圧だけでなく、ドラッグやギャングスタ・ライフスタイルといったコミュニティ内部の「汚染」によって自滅しているという厳しい自己批判。

But God has another solution, that has evolved from the hood
しかし神は、このフッドから進化したもう一つの解決策を用意していた
※破滅に向かうフッドの環境から、神(アッラー)の導きによって全く新しい希望が生まれたことを示唆。

I present one who turns, the Fiasco to good
フィアスコを善へと変える一人の男を、ここに紹介しよう
※「Fiasco」は元々「大失敗」を意味する言葉。Lupe Fiascoという名前に掛けつつ、ゲットーの悲劇(Fiasco)を希望に変える救世主として彼を呼び込んでいる。

[Interlude: Lupe Fiasco]

A'uzu billahi min ash shaitani r rajimi
アウズ・ビッラーヒ・ミン・アッシュ=シャイターニ・ル=ラジーム
※イスラム教におけるアラビア語の祈り。「呪われた悪魔からアッラーに救いを求めます」の意。Lupe Fiascoは敬虔なムスリムであり、自身の信仰を前面に打ち出している。

Bismi 'llahi 'r-rahmani 'r-rahim
ビスミッラーヒ・ル=ラフマーニ・ル=ラヒーム
※「慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において」。コーランの各章の冒頭に置かれる神聖な言葉(バスマラ)。

Dedicated, to my grandmother
俺の祖母に捧げる

Peace! And much love to you
ピース!そしてありったけの愛を

Yeah! And it start
イェー!さあ、始まるぜ

1st and, 15, proudly present
1st & 15thが誇りを持ってお届けする
※「1st & 15th Entertainment」は、Lupe Fiascoと彼のビジネスパートナーであるChillyが設立したレーベル。名前は生活保護の小切手が支給される日(毎月1日と15日)に由来する。

You know what it is
何だか分かってるだろ

See.. I got this philosophy right
なあ、俺には確固たる哲学があるんだ

I think the world and everything in it
この世界と、そこにあるすべてのものは

Is made up of a mix, of two things
二つのものの混ざり合いでできていると思ってる

You got your good, y'know, and your bad
善があり、そして悪がある

You got your food, and your liquor
「食料」があり、「酒」があるんだ
※アルバムのコンセプチュアルな核心。人間や世界を構成する二面性についてのテーゼ。

That's right...Chilly Chill!
その通りだ…チリー・チル!
※Lupeのレーベル共同設立者であり親友のCharles "Chilly" Pattonへのシャウトアウト。彼はこのアルバムの制作中に麻薬密売の罪で逮捕され、長期刑に服することになった。

You already know, it's a long time comin'
分かってるだろ、長い道のりだったってな
※デビューアルバムのリリースまでにかかった数々の苦労や時間への言及。

I give you my...I give you my heart
お前たちに捧げよう…俺の心を

My soul, my mind, my thoughts, my feelings
俺の魂、俺の精神、俺の思考、俺の感情を

My experience, nothin' more, and nothin' less
俺の経験してきたことのすべてを、それ以上でもそれ以下でもない
※飾り立てたギャングスタのフェイクではなく、ありのままの真実をラップするというマニフェスト。

Yes, F&F, uh-huh! So
そう、F&Fだ、アーハ!だから
※「F&F」はアルバムタイトルの「Food & Liquor」とレーベル名の「First & Fifteenth」の両方の頭文字を指すダブルミーニング。

With no further ado...
前置きはこれくらいにして…

Lupe Fiasco's, "Food & Liquor"
ルーペ・フィアスコの『フード・アンド・リカー』を始めよう
※アルバムのタイトルコール。