Artist: Eminem
Album: Encore
Song Title: Ricky Ticky Toc
概要
「Ricky Ticky Toc」は2004年のアルバム『Encore』のデラックス・エディションにボーナストラックとして収録された楽曲である。タイトルとアウトロのフレーズは、ヒップホップの黄金期を支えたSlick RickやDoug E. Freshらのクラシックへのオマージュでありつつ、長年の盟友であるDr. Dre(The D.O.C.の愛称でもあるDiggy Docに掛けている)との揺るぎない絆を示している。リリックの大部分は、エミネムが引き抜いた最強の刺客である50 Centとの運命的な出会いと、彼らが抱える生い立ちのトラウマ(親からの愛情の欠如)という共通の影について語られている。9発の銃弾を浴びてレーベルから見捨てられた50 Centを、エミネムとDr. Dreが救い出してチャートの頂点へと押し上げた歴史的なドラマを振り返りつつ、名声に群がる有象無象の業界人や売名目的のヘイターたちを冷徹に一蹴する。エミネムのキャリアにおけるビジネスと兄弟愛が交差する、ヒップホップ史のドキュメンタリーのような一曲である。
和訳
[Intro]
Once you call my name out, things will never be the same
一度でも俺の名前を口にしたら、事態は二度と元には戻らない
They should've never let us get our foot in this game
奴らは俺たちをこのゲームに足を踏み入れさせるべきじゃなかったんだ
※ヒップホップ・シーンにおいて、自分と仲間たち(Shady/Aftermath)が覇権を握り、もはや誰にも止められない絶対的な存在になったことを宣言している。
[Verse]
Ever since I was introduced to rap music
俺がラップ・ミュージックに出会ってからずっと
I been missing a screw like Bishop in Juice, I could lose it
俺は映画『ジュース』のビショップみたいに頭のネジが外れてるんだ、いつ理性を失ってもおかしくない
※1992年の映画『Juice』で2Pacが演じた狂気的で暴力的なキャラクター「Bishop」への言及。
At any moment, those who know me know it
いつでもな、俺を知ってる奴らなら分かってるはずだ
So they probably told to go with the flow just so that
だから奴らはおそらく、ただ流れに合わせろと言われたんだろうよ
I don't explode, and- have another episode
俺が爆発して、また別のエピソードを起こさないためにな
Where I let it go as far as the one with Benzino did
あのベンジーノとの一件みたいに、極限までやり合うような事態にな
※The Source誌の元共同経営者Benzinoとの、シーンを二分するほど激化した血みどろのビーフのこと。
I'm waiting for that next beef, I'm cocked, locked and loaded
俺はその次のビーフを待ってるんだ、撃鉄を起こし、安全装置を外し、弾は装填済みだ
I'm ready to go so bad
準備は痛いほど万端だぜ
I'm going bananas, my dick's so hard Anna
俺は完全にイカれちまう、俺のチンポはガチガチで、アンナ・
Nicole could use it to fucking pole vault with
ニコルが棒高跳びに使えるくらいにな
※Anna Nicole Smithは当時お騒がせセレブとして有名だったモデル。下品なシモネタジョーク。
Oh shit! I mean when she was still bloated
おっとクソ! 彼女がまだぶくぶくに太っていた頃の話だよ
Before they cut her stomach open and lypo'd it (Heheheh!)
奴らが彼女の腹を切り開いて、脂肪吸引する前のな(ヘヘヘッ!)
Anybody I throw flames at gets a name
俺が炎を投げつけた奴は誰だって名前が売れるんだ
It's a game, 'cause they know that they don't spit the same
これはゲームだ、だって奴らは俺と同じレベルでラップできないって分かってるからな
It's a shame what people do for 10 minutes of fame
たった10分の名声のために人々がやることは、本当に情けないよ
※売名行為のために、自分より格上のエミネムにわざとディスを仕掛けてくる底辺のラッパーたちへの軽蔑。
Every day it's the same thing, people in this game
毎日が同じことの繰り返しだ、このゲームにいる奴らは
Try to buddy-buddy us
俺たちに親しげにすり寄ってこようとする
Just to get close enough to study us, everybody just wants
俺たちを研究できるくらい近づくためだけにな、誰もがただ
To have something to do with that
少しでも俺たちに関わりを持ちたいのさ
They all trying to get that stamp, they after that Shady/Aftermath money
奴らはみんな俺たちの承認のスタンプを欲しがっている、シェイディとアフターマスの金を狙ってるんだ
It's like a monopoly
まるでモノポリー(独占状態)みたいだぜ
They probably just now finally understand "How to Rob" fully
奴らはおそらく今になってようやく、「How to Rob」の意味を完全に理解したんだろうな
※50 Centが1999年にリリースした、業界の有名ラッパーたちを強盗するという内容の過激なデビュー曲「How to Rob」への言及。今や彼らが業界の富を独占しているという皮肉。
50 Cent was like a fucking jackpot for me
50セントは俺にとって、クソみたいな大当たり(ジャックポット)だったよ
And Dre, it's like we hit the fucking lottery
ドレーと俺は、まるで宝くじを当てたようなもんさ
And the damn slot machine at the same time as each other
しかも同時に、あの忌々しいスロットマシンまで引き当てたようなもんだ
Why the fuck you think we ride like we brothers?
なぜ俺たちが兄弟みたいにつるんでると思うんだ?
When we rhyme with each other, in time we discovered
俺たちが互いに韻を踏み合っているうちに、やがて気付いたんだよ
That we had more in common than we thought with each other
俺たちが思っていた以上に、互いに共通点があるってことにな
Both robbed of our mothers, our fathers ain't want us
二人とも母親を奪われ、父親からは望まれなかった
※50 Centの母親は彼が子供の頃に殺害され、エミネムの母親は精神的に機能していなかった。そして両者とも父親に捨てられている。
What was wrong with us, was it our fault?
俺たちの何が間違っていたんだ、俺たちのせいだったのか?
'Cause we started thinking God doesn't love us
俺たちは神様に愛されていないんじゃないかって、そう考え始めていたんだ
Two odd motherfuckers who just happened to meet at the right time
二人の奇妙なクソ野郎どもが、ただ適切なタイミングで偶然出会ったのさ
What a coincidence, 'cause when 50 got shot up in Jamaica
なんて偶然だ、だって50がジャマイカ地区で撃ち蜂の巣にされた時
※2000年、50 Centが地元クイーンズのジャマイカ地区で9発の銃弾を浴びた暗殺未遂事件。
Queens, I still remember the call up at Chung King 'cause
クイーンズでな、俺はチャン・キング・スタジオでの電話を未だに覚えているよ、だって
※「Chung King」はニューヨークに実在した有名なレコーディング・スタジオ。
Big L had just got popped just a month before
ビッグ・Lが撃たれて死んだ、ほんの1ヶ月前のことだったからな
※ニューヨークの伝説的ラッパーBig Lは1999年に銃殺されている。時系列は少し前後しているが、当時のヒップホップシーンを覆っていた暴力と死の恐怖を強調している。
If 50 lives he's getting dropped from Columbia
もし50が生き延びても、コロンビア・レコードから契約を切られる運命だった
Two years later, me and Doc had to come, and, uhh-
その2年後、俺とドックがやって来て、えっと-
Operate, that's when he popped up at number one
手術(プロデュース)しなきゃならなかったんだ、そしたらあいつはナンバーワンに躍り出たのさ
※銃撃されて業界から見捨てられた50 Centを、エミネムとDr. Dreが引き抜き、デビューアルバム『Get Rich or Die Tryin'』を世界的な大ヒットに導いた一連のサクセスストーリー。
And we ain't never gonna stop if you wondering
そしてもし気になってるなら教えてやるが、俺たちは絶対に立ち止まらないぜ
Even if I'm under the gun
たとえ俺が銃を突きつけられて、追い詰められていようともな
You ain't got to agree all the time with me or see eye-to-eye
お前が常に俺に同意する必要はないし、意見を合わせる必要もない
There'll always be animosity between you and I
お前と俺の間には、常に敵意が存在するだろうからな
But see the difference is, if it is, I could give a shit
だが違いを見てみろ、もしそうだとしても、俺はこれっぽっちも気にしねえってことだ
I'm still gonna conduct motherfucking business as usual
俺は未だに、クソみたいなビジネスをいつも通り遂行するだけさ
Egos aside 'fore I bruise 'em all
俺がお前らを全員傷めつける前に、エゴは捨てておけ
Swallow your pride 'fore I step on it with shoes you call
俺がお前らが呼ぶところの靴で踏みにじる前に、プライドを飲み込んでおけ
Nikes, Earthlings, how do you like these?
ナイキ、地球人どもよ、これらはどうだい?
You gotta love 'em, look at the bottom of 'em, they're like cleats
お前らは気に入るはずだ、底を見てみな、まるでスパイクみたいだろ
Stomping, I been romping
踏み鳴らしてるんだ、俺はずっと暴れ回ってきた
Since Tim Dog was hollering "Fuck Compton"
ティム・ドッグが「Fuck Compton」と叫んでいた頃からな
※ブロンクスのラッパーTim Dogが1991年にリリースし、東西抗争の引き金の一つとなった伝説のディス曲への言及。エミネムがどれほど昔からヒップホップに浸かっていたかを示している。
I was whiling, freestyling
俺は羽目を外して、フリースタイルをしていた
Back when they were still making Maxell cassettes
奴らがまだマクセルのカセットテープを作っていたあの頃にな
I wasn't even rap's Elvis yet, that tells us that
俺はまだ、ラップ界のエルヴィスにすらなっていなかった、それが物語っているのは
Any doubts in your head, that seals the shit
お前の頭の中にあるあらゆる疑念を、それで完全に封じ込めるってことだ
※エルヴィス・プレスリーが黒人音楽であるロックンロールで大成功を収めたように、エミネムも「白人でありながら黒人のカルチャーを奪った」という批判を浴びた自身の曲「Without Me」のラインをセルフリファレンスしている。自分が名声のためにラップを始めたのではなく、根っからのヒップホップヘッドであることを証明している。
Ricky ticky toc, ticky ticky toc
リッキー・ティッキー・トック、ティッキー・ティッキー・トック
※Slick Rickの「Mona Lisa」や、Doug E. Freshの名曲からサンプリングされたオールドスクールなフレーズ。
Still with the Diggy Diggy Doc, Diggy Diggy Doc
未だにディギー・ディギー・ドックと一緒にいるぜ、ディギー・ディギー・ドックとな
※The D.O.C.の「It's Funky Enough」などのオマージュでありつつ、ここでは「ドック」ことDr. Dreとの終わらない強力なパートナーシップを示している。
And ya' don't stop
そして、お前らは止まらない
