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Broken - Freddie Gibbs & Madlib (feat. Scarface) 【和訳・解説】

Artist: Freddie Gibbs & Madlib (feat. Scarface)

Album: Piñata

Song Title: Broken

概要

アルバム『Piñata』(2014)に収録された本楽曲は、Freddie Gibbsのキャリアの中でも最もパーソナルで内省的なストーリーテリングが展開される一曲だ。Madlibが提供したThe Momentsの「Wishful Thinking」をサンプリングした哀愁漂うビートに乗せ、Gibbsは自身の犯罪歴やドラッグ密売の過去だけでなく、彼の家族の複雑な闇を赤裸々に語り明かす。特に、法を守るはずの警察官でありながら彼にドラッグ強盗をけしかけたという実の父親との愛憎入り交じる関係や、彼を案じていた祖母の悲しみを描写するバースは、聴く者の心を強く打つ。そして楽曲の後半では、サウスのヒップホップ・レジェンドでありGeto BoysのメンバーであるScarfaceが登場し、ストリートで生き残るための非情なルールと、底辺労働の過酷さを重厚なフロウで説く。世代を超えた二人のストリートの語り部による、ギャングスタ・ラップの裏側にある「壊れた(Broken)」人生の哀哀を見事に描き出した名曲である。

和訳

[Intro: Freddie Gibbs]

Yeah, dig deep
深く掘り下げるぜ
※自分自身の過去や内面を深く掘り下げる(内省する)という意味。

Yeah, uh

Keep it 100, been there, done it
常に100パーセントのリアルでいる、そこを通って、やり遂げてきたんだ
※「Keep it 100」は一切の嘘をつかず、完全にリアルでいることを意味するスラング。「been there, done it」はストリートの過酷な経験をすでに一通り経験済みであることの誇示。

All we do is dig deep, uh
俺たちがやるのは深く掘り下げることだけだ、uh

A-100, been there, done it
100パーセントのリアルだ、経験済みなんだ
※「A-100」は「Keep it 100」のバリエーション。

Uh, uh, uh, yeah

[Verse 1: Freddie Gibbs]

Yeah, Allah the merciful, the beneficent
ああ、慈悲深く慈愛に満ちたアッラーよ
※Gibbsはイスラム教徒(ムスリム)であり、イスラム教の祈りの定型句である「バスマラ(Bismillahir-rahmanir-rahim)」の英訳を用いている。

Curse over blessing, pray it be heaven sent
祝福よりも呪いが上回る、それが天からの授かり物であることを祈るよ

Forgive me, my dirty deeds was desperate
許してくれ、俺の汚い行いは必死さゆえだったんだ

Fuck the government, I got my own deficit
政府なんてクソ食らえだ、俺には俺自身の赤字がある

Death to me the only thing that's definite
俺にとって確実なのは、死だけだ
※ベンジャミン・フランクリンの名言「この世で確実なのは死と税金だけだ」を下敷きにした、ストリートの虚無主義的な人生観。

Money rule the world but when you dead, that shit's irrelevant
金が世界を支配してるが、死んじまえばそんなもんは無関係だ

Fingers numb from coka selling, no vote, but out for presidents
コカインを売りすぎて指は麻痺してる、投票はしないが、大統領を求めてるのさ
※ヒップホップ特有のワードプレイ。「presidents」は紙幣(Dead Presidents=歴代大統領の肖像画が描かれたドル札)を指す。選挙で大統領に投票はしないが、金を稼ぐためにハッスルしているという高度なダブルミーニング。

Granny found my dope, I told her I would stop for selling it
ばあちゃんが俺のドープを見つけた時、俺はもう売るのをやめるって言った

Nigga please -- she knew I was lying before I even spoke it
勘弁してくれよ、俺が口を開く前から、ばあちゃんには俺が嘘をついてることなんてお見通しだった
※「Nigga please」は「冗談じゃない、頼むぜ」といった意味の定型句。

Uh, empty promises left them all broken
ああ、空っぽの約束が、みんなを壊してしまったんだ

She said ''Jamel, I can tell your perspective out of focus
彼女は言った「ジャメル、あんたの視点は焦点がずれてるのが分かるわ
※「Jamel」はFreddie Gibbsのミドルネーム(Fredrick Jamel Tipton)。

You too obsessed with the liquor, bitches and weed smoking''
あんたは酒とビッチとウィードを吸うことに取り憑かれすぎてる」ってな

A young nigga that's been thuggin' since the old days
昔からずっとサグな生き方をしてきた若者さ

Promise I've done seen everything but old age
老後以外は、すべてのものを見てきたって約束するぜ
※ストリートで若くして数々の凄惨な現実を経験してきたため、唯一経験していないのは「老いていくこと」だけだという達観と、若くして死ぬかもしれないという死生観。

Pray my demons never catch up from my old ways
過去の行いから生まれた悪魔が、俺に追いつかないことを祈るよ

Keep the heat cause I was going through a cold phase
熱を帯びたままにしておく、俺は冷たい時期を乗り越えていたからな
※「heat」は銃の隠語。「cold phase」は冷酷で過酷な時期。過酷な環境を生き抜くために、常に銃(熱)を持ち歩かなければならなかったというダブルミーニング。

[Interlude: Freddie Gibbs]

Uh, yeah

Keep the heat cause I was going through a cold phase
熱を帯びたままにしておく、俺は冷たい時期を乗り越えていたからな

Uh, yeah

Promise I've done seen everything but old age
老後以外は、すべてのものを見てきたって約束するぜ

Uh, been there and done it, man
ああ、そこを通って、やり遂げてきたんだ、なあ

100, man, uh, uh, uh, yeah
100パーセントのリアルだ、なあ、uh, uh, uh, yeah

[Verse 2: Freddie Gibbs]

Surviving off cold cuts and cold Spam
冷たいコールドカットと冷たいスパムで生き延びていた
※貧しいゲットーの食生活の描写。「cold」は前バースの「cold phase」から引き継がれている。

Can't see eye to eye with my old man
親父とは意見が合わなかった

Hiding my insecurities with this gang flag
このギャングの旗で、自分の不安を隠していたんだ
※「gang flag」は自身が所属していたギャングのカラーを示すバンダナ。虚勢を張ることで内面の弱さを隠していた過去の告白。

We both despise the police but he wore the same badge
俺たちは二人とも警察を憎んでいたが、親父は奴らと同じバッジをつけていたんだ
※Gibbsの父親はインディアナ州ゲーリーの警察官だった。黒人として人種差別的な警察システムを嫌悪しながらも、そのシステムの一部として働いていた父親の矛盾への指摘。

And as I child I admired that now I wonder how
子供の頃はそれに憧れていたが、今となってはどうしてあんなものをと思っていたのか不思議に思うよ

He was a pig, but you was barely making 20 thou
親父はサツだった、でもあんたはかろうじて2万ドル稼ぐのがやっとだったじゃないか
※「pig」は警察官を侮蔑するストリート・スラング。警察官でありながら年収2万ドル(20 thou)という低賃金で、生活は苦しかった。

I guess that's why you put me on that lick for 20 pounds
だからあんたは、俺に20ポンドの強盗をけしかけたんだろうな
※「lick」は強盗や手っ取り早く金を稼ぐ犯罪行為。「20 pounds」は20ポンド(約9キロ)のマリファナなどのドラッグ。実の父親であり警察官でもある人物が、息子に麻薬強盗を指示したという衝撃的な事実の暴露。

A life of crime is all we ever shared from then to now
犯罪の人生、それだけが当時から今まで、俺たちが共有してきたすべてのものだ

And I'm a crook and you crooked, that's all we got in common
俺は悪党で、あんたは悪徳警官だ、俺たちに共通しているのはそれだけさ
※「crook(犯罪者)」と「crooked(汚職・不正な、crooked cop=悪徳警官)」を掛けた言葉遊び。

He chucked the deuce to my mama, so much for family bonding
親父は母さんにピースサインを出して去っていった、家族の絆なんてそんなもんさ
※「chuck the deuce」は人差し指と中指を立ててピースサイン(Deuces)を作り、別れを告げて去っていくこと。父親が家庭を捨てたことを意味する。

But how could something so destined to be just get demolished?
だが、運命づけられていたはずのものが、どうしてこうも簡単に打ち砕かれてしまうんだ?

Running through groupies and boppers, I guess I got it honest
グルーピーや追っかけの女たちと遊び回ってる、たぶん俺はそれを真っ当に受け継いだんだろうな
※「got it honest」は、女遊びの激しい父親の血を正直に引いているという皮肉めいた自己分析。

And honestly I know I'm out here fucking up
正直言って、俺はここで失敗ばかりしてるって分かってる

Seven grams of rock, I stuff 'em in my nuts
7グラムの石を、俺の股間に詰め込む
※「rock」はクラック・コカイン。「nuts」はタマ袋(パンツの中)。警察の身体検査を逃れるためにドラッグを隠す売人の日常。

And seven bucks an hour wasn't good enough
時給7ドルじゃ、全く足りなかったんだ
※真っ当な仕事の最低賃金(時給7ドル)では生きていけず、7グラムのクラックを売る道を選んだという「7」で韻を踏んだ対比。

Cause seven days a week I'm living in a rush
だって週に7日、俺は常に急かされて生きてるからな

[Interlude: Freddie Gibbs & Scarface]

Seven days a week, I'm living in a rush, uh
週に7日、俺は常に急かされて生きてるんだ、uh

Seven grams of rock, I stuff 'em in my nuts
7グラムの石を、俺の股間に詰め込む

Yeah, know what I'm sayin'? Hahahah
ああ、俺の言ってること分かるか? ハハハ

A-100, man (A-100)
100パーセントのリアルだ、なあ (A-100)

I been there, done it, man
俺はそこを通って、やり遂げてきたんだよ、なあ

Facemob and Gibbs
フェイスモブとギブスだ
※「Facemob」は客演のScarfaceの別名。サウスのレジェンドと中西部のギャングスタの共演を宣言している。

[Verse 3: Scarface]

If money was the root to what the evil is
もし金がすべての悪の根源だとしたら

Is it mandatory for me to live?
俺が生きていく上で、それは必須なものなのか?

I hustle harder than the next dude
俺は隣にいる奴よりも激しくハッスルする

Remember, everybody is out to get you
覚えとけ、誰もがお前を陥れようと狙ってるんだ

Niggas don't respect to live and let live
奴らは「自分も生き、他人も生かす」なんて生き方を尊重しちゃいない

So I pack a .40 caliber cause that's how shit is
だから俺は40口径を持ち歩く、世の中ってのはそういうもんだからな

Out here, no fear, fuck feelings
この場所では、恐怖なんてない、感情なんてクソ食らえだ

Trigger man rule, that's the art of drug dealing
引き金を引く者がルールを作る、それが麻薬密売の芸術だ

I'm trying to stack my money to the ceiling
俺は自分の金を天井まで積み上げようとしてるんだ

No new friends, don't wanna talk about old business
新しい友達はいらない、昔のビジネスの話もしたくない
※ヒップホップのストリート哲学。信用できない新しい人間は入れず、過去の犯罪の話は足を引っ張るため決して口にしない。

Sex on the beach, sipping Guinness
ビーチでセックスして、ギネスビールをすする

With a bitch so thick she can't take no dick, ahh
極太のビッチと一緒にな、あいつは男のモノを受け入れられないくらい肉厚だ、ああ

Imagine working grave-yard shifts
深夜の墓場シフトで働くことを想像してみな
※「grave-yard shift」は深夜勤務(夜勤)のこと。底辺労働の過酷さを表す。

Bossman steady talking that shit
ボスは相変わらずクソみたいな文句ばかり言いやがる

A million a day is for minimum wage
最低賃金のために、一日百万回もこき使われるんだ
※「A million a day」は過酷な労働量や稼げない絶望感を誇張した表現。

Work a nigga like a slave 'til he put him in his grave
黒人を奴隷のように働かせ、墓場に入れるまでこき使うのさ

Fred, I’m on the same page
フレッド、俺も全く同感だぜ
※ScarfaceがGibbsのヴァース(時給7ドルの底辺労働では生きられないという訴え)に深く共鳴し、真っ当な社会の奴隷労働を拒絶するスタンスを共有してヴァースを締めくくる。

[Outro: Freddie Gibbs]

Seven days a week, I'm living in a rush, uh
週に7日、俺は常に急かされて生きてるんだ、uh

Seven grams of rock, I stuff 'em in my nuts
7グラムの石を、俺の股間に詰め込む

Yeah, know what I'm sayin'? Hahahah
ああ、俺の言ってること分かるか? ハハハ

A-100, man (A-100)
100パーセントのリアルだ、なあ (A-100)

I been there, done it, man, you know what I'm sayin'?
俺はそこを通って、やり遂げてきたんだよ、なあ、分かるか?

Uh, yeah