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TOTEM - Tierra Whack 【和訳・解説】

Artist: Tierra Whack

Album: Whack’s Museum

Song Title: TOTEM

概要

Tierra Whackの「TOTEM」は、彼女がフィラデルフィア出身の生粋のMCとしての圧倒的なスキルと、シーンにおける孤高のスタンスを完璧に証明したマスターピースである。現在の女性ラップシーンにおいて「過激な性的アピール」がセールスに直結する風潮に対し、彼女は露出を拒み、純粋なリリシズムとストリートの嗅覚だけで「トーテムポール(階層の頂点)」に君臨する姿勢を提示している。フィラデルフィアの深刻な社会問題を切り取った「ケンジントン(Kenzo)のゾンビ」といった生々しい描写から、NFL選手ステフォン・ディグスの奇抜なファッション、そしてミッシー・エリオットを引用した巧みなパンチラインに至るまで、全編にわたって高度なダブルミーニングが張り巡らされている。単なる「風変わりなアーティスト」というレッテルを実力でねじ伏せる、ヒップホップヘッズ必聴の一曲である。

和訳

[Intro]

I tote 'em, mhm, mhm
奴らを携帯してるのさ、mhm、mhm
※「tote」は「銃を携帯する」という意味のストリートスラングだが、ここではシーンや他のラッパーを背負っている(圧倒している)というニュアンス。タイトル「TOTEM(トーテムポール=階層の頂点)」との同音異義語を用いた遊び。

I told 'em
言ってやったよ

I tote 'em
奴らを携帯してるのさ

Yeah, I told 'em
Yeah、言ってやったよ

[Verse]

Keep the peace, if they need a pose
奴らがポーズを求めてくるなら、ピースをキープする
※「keep the peace(平和を保つ)」と「peace(写真用のピースサインのポーズ)」を掛けたライン。同時に、銃(ピース)を隠し持つという意味も示唆している。

Yeah, niggas square like Kia Souls
Yeah、あいつらはKia Soulみたいにスクエアなんだ
※「square」はストリートスラングで「真面目すぎる、つまらない、ダサい奴」のこと。起亜自動車の車種「Kia Soul」が四角い(square)箱型のデザインをしていることと掛けている。

He only feeling froggy because he toad
あいつがイキってるのは、そう仕向けられたからさ
※「feeling froggy」は「喧嘩腰になる、飛びかかろうとする」というAAVEのイディオム。「toad(ヒキガエル)」と「told(言われた)」の同音を利用し、誰かに操られているだけのフェイクな態度をカエル尽くしのワードプレイで嘲笑っている。

Niggas knowing where I’m at, they never need the lo'
アタシがどこにいるか奴らは知ってる、居場所なんて必要ない
※「lo'」は「location(位置情報)」の略。自分が常にトップにいるため、探すまでもないというボースト。

Yeah, yeah, you rappers need some goals
Yeah、yeah、あんたらラッパーにはゴールが必要だね

Hah, like a garden 'cause you be with hoes
Hah、まるで庭みたいにね、あんたはホウと一緒にいるから
※「hoes」は「複数のビッチ」と、庭造りに使う「hoe(クワ)」のダブルミーニング。「garden(庭)」にかけて見事に韻を踏んでいる。

Yeah, in the hood like Nazzi Twazzi
Yeah、Nazzi Twazziみたいにフッドにいる
※Nazzi Twazziはフィラデルフィアのローカルな人物・ネットミーム的存在。地元フィリーに深く根付いていることを強調している。

Heard they robbin' like Jumanji, I'm in Kenzo, like thе zombies
ジュマンジみたいにロビンしてるらしいね、アタシはゾンビみたいにKenzoにいるよ
※「robbin'(強盗)」と映画『ジュマンジ』の主演俳優「ロビン・ウィリアムズ(Robin Williams)」を掛けた秀逸なパンチライン。「Kenzo」は高級ブランド名であると同時に、フィラデルフィアのケンジントン(Kensington)地区の略称。同地区は薬物問題で深刻な被害を受けており、中毒者が「ゾンビ」のように立ち尽くす姿が社会問題化している。その過酷なストリートの現実とハイファッションを対比させたダークなライン。

When you winnin' and you blackin', they gon' say, "Illuminati"
勝ち続けてブチかましてると、奴らは「イルミナティだ」って騒ぎ出す
※「blackin'」は「ヤバい勢いでラップする、ブチギレる」というスラング。黒人アーティストが異常な成功を収めると、すぐに秘密結社(イルミナティ)に魂を売ったからだと陰謀論を唱えられる業界の奇妙な風潮を皮肉っている。

Gеt you scratched like a disc jockey, straight from Barney’s right to Bali
DJみたいにスクラッチしてやる、バーニーズからバリ島へ直行さ
※「Barney's」は高級デパートのバーニーズ・ニューヨーク。「Bali」はリゾート地のバリ島。相手を傷だらけ(スクラッチ)にして、自分は悠々と豪遊する様子を描いている。

Just from singing like I’m Dolly, a legend I embody
ドリーみたいに歌うだけでね、アタシはレジェンドを体現してるのさ
※「Dolly」はカントリーミュージックの伝説的歌手、ドリー・パートン(Dolly Parton)。

Painting pictures like Gianni, gettin' green okay wasabi, uh
ジャンニみたいに絵を描き、ワサビみたいにグリーンを手に入れる、uh
※「Gianni」はファッションデザイナーのジャンニ・ヴェルサーチェ(Gianni Versace)。「green」は金やマリファナを表し、緑色の「wasabi(ワサビ)」と掛けている。

Dear God, I need more rappers to step on
神様、踏みつけるためのラッパーがもっと必要だよ
※「step on」は相手を圧倒する、完膚なきまでに叩きのめすこと。

Digg’ like Stefon, Thom Browne, dress on
ステフォンみたいにディグしな、トム・ブラウンのドレスを着てね
※「Digg'」は「Dig(理解する、掘る)」とNFLのスター選手「ステフォン・ディグス(Stefon Diggs)」を掛けている。ディグスは試合前にハイブランドの「Thom Browne」のスカートやドレス風の斬新なファッションを取り入れたことで話題になった。

I would win more if I chose to put less on
もし露出を増やすことを選べば、もっと勝てるんだろうけどね
※現在の女性ラップシーンにおける「過激な性的アピール(肌の露出)」がセールスに直結するメタへの痛烈な批判。Tierraは常に奇抜だが露出の少ないファッションで、純粋なアートとスキルだけで勝負しているというプライドの表れ。

But I was born a stepper, so I'll take the stairs
でもアタシは生まれながらのステッパーだから、階段を登る道を選ぶよ
※「stepper」はストリートスラングで「行動部隊、やる時はやる武闘派」を意味するが、それを文字通りの「階段を登る人(stepper)」に掛け、安易な近道(エレベーター=性的アピール)を使わず、実力で困難な道(stairs)を自力で登るという完璧なスタンス表明。

Yeah, aura so bright, it could light arenas
Yeah、オーラが眩しすぎて、アリーナだって照らせるよ

Getting paper, never get court up in them subpoenas
ペーパーを稼ぐ、召喚状なんかで法廷に立たされることは絶対にない
※「Getting paper」は金を稼ぐこと。「caught up(巻き込まれる)」と「court up(法廷に引きずり出される)」を同音で掛け、「subpoenas(裁判所の召喚状)」と「paper(書類)」を繋げた高度なワードプレイ。

A succeeder, never pressed because I'm cleaner
アタシは成功者、クリーナーだからプレスされることなんてないのさ
※「pressed」は「焦る、プレッシャーを感じる」と「服にアイロンをかける(プレスする)」のダブルミーニング。「cleaner」は「よりクリーン(完璧)な存在」と「クリーニング屋」を掛けており、クリーニングの文脈で見事に韻を踏んでいる。

My new name is Felony, I'm not a misdemeanor
アタシの新しい名前はフェロニー、ミスディミーナーじゃないよ
※ヒップホップ界の偉大な女王、ミッシー・エリオット(Missy "Misdemeanor" Elliott)へのリスペクトを含んだパンチライン。彼女の「Misdemeanor(軽犯罪)」を超えて、自分は「Felony(重罪)」級のヤバい存在だという宣言。

[Outro]

I get what I want (What I want)
欲しいものは手に入れる(欲しいものを)

Each day, I’ma stunt (I'ma stunt)
毎日、アタシは見せつける(見せつける)
※「stunt」はスラングで「見せびらかす、フレックスする」の意味。

Get paid, go up (Yes, sir)
金を稼いで、上へ行く(イエス・サー)

How they say I couldn't do it? But I got it done
奴らはアタシには無理だって言ったけど? きっちりやり遂げたよ