Artist: Kendrick Lamar (feat. Dr. Dre)
Album: good kid, m.A.A.d city
Song Title: Compton
概要
Kendrick Lamarの歴史的名盤『good kid, m.A.A.d city』(2012年)のスタンダード版を締めくくる、地元コンプトンへの壮大な凱旋歌である。西海岸の伝説的プロデューサーであり、ケンドリックをメインストリームへと引き上げた恩師Dr. Dreを大々的にフィーチャーしている。興味深いのは、N.W.A.から続くコンプトンの系譜を祝祭するこの楽曲のビートを、東海岸を代表する重鎮プロデューサーであるJust Blazeが手掛けている点である。Just Blazeは、西海岸のGファンクをオーケストラのように壮大に再解釈し、王の戴冠式にふさわしいサウンドスケープを作り上げた。リリックでは、Dr. Dreからケンドリックへと正式に西海岸の「松明(王冠)」が引き継がれる様子が力強く描かれている。そして曲の最後には、アルバムの1曲目である「Sherane」の冒頭へと繋がるスキットが挿入されており、狂った街の物語が永遠に繰り返される見事な円環構造を完成させている。
和訳
[Verse 1: Kendrick Lamar]
Now everybody serenade the new faith of Kendrick Lamar
さあ、みんな、ケンドリック・ラマーという新たな信仰にセレナーデを捧げな
This is King Kendrick Lamar
これがキング・ケンドリック・ラマーだ
※西海岸の新たな「王」としての宣言。
King Kendrick and I meant it, my point intended is raw
キング・ケンドリック、本気で言ってるぜ、俺の意図するポイントは生々しい
Fix your lenses forensics would've told you Kendrick had killed it
お前らのレンズを直せ、鑑識がケンドリックが殺したって教えてくれたはずだ
※「kill it(見事にやってのける)」と文字通りの「殺害する」のダブルミーニング。鑑識(forensics)が調べるほどの見事なラップスキル。
Pretend it's a massacre and the masses upon us
それが大虐殺で、大衆が俺たちに迫ってきているかのように振る舞いな
And I mastered being the master at dodging your honor
そして俺は、裁判長をかわすことにおいてマスター(達人)になった
※「Your Honor(裁判長)」を避ける=刑務所行きを免れる。ストリートの罠を避け、ラッパーとして成功したこと。
And the chapter that read at 25 I would live dormant like five in the morning
25歳で迎えたこの章で、俺は朝の5時のように静かに生きていただろう
※Kendrickはこのアルバムリリース時25歳。
They raid your spot while Kendrick's performing
ケンドリックがパフォーマンスしている間に、奴らはお前の場所をガサ入れする
And if they take everything, know I got
もし奴らがすべてを奪っていったとしても、知っておけ、俺にはあるんだ
[Chorus: Sly Pyper]
Compton, Compton
コンプトン、コンプトン
Ain't no city quite like mine
俺の街みたいな場所は他にない
[Verse 2: Dr. Dre & Kendrick Lamar]
Ay, Dre what's happening wit' it, my nigga?
おい、ドレ、調子はどうだ、ダチよ?
Still I'm at it, peel the plastic off it, you can feel the magic
俺はまだやってるぜ、プラスチックの包装を剥がせば、魔法を感じるだろ
※CDのシュリンクラップを剥がすことと、コカインのパッケージを剥がすことのダブルミーニング。Dr. Dreの音楽がドラッグのように中毒性があるという比喩。
Still I'm laughing at the critics talking, I can see 'em gagging
俺は今でも批評家たちの戯言を笑ってる、奴らが吐き気を催してるのが見えるぜ
When I'm back in the back of my city, back in the 'bach
俺の街の奥深く、マイバッハの後部座席に戻ってきた時に
※「'bach」は高級車Maybachのこと。
With a batch of them banging Dre Beats with me, look where I'm at
ヤバいドレ・ビーツの束を抱えてな、俺がどこにいるか見てみろ
※「Dre Beats」は自身が手掛ける大ヒットヘッドホンブランド「Beats by Dre」、またはDr. Dreのビートそのもの。
It's the murder cap and I'm captain at birthin' this gangsta rap
ここは殺人の首都だ、そして俺はこのギャングスタ・ラップを生み出したキャプテンだ
※「murder cap」は「murder capital(殺人の首都)」のこと。かつてのコンプトンの悪名高い異名。
It's a wrap when I'm done and I come a long way from a hundred dollars a month
俺が終わらせたらそれで幕引きだ、月に100ドルぽっちの時代から遠くまで来たもんだ
To a hundred mil' in a day, bitch I'm from
今じゃ1日で1億ドルだ、ビッチ、俺の出身は
[Chorus: Sly Pyper]
Compton, Compton
コンプトン、コンプトン
Ain't no city quite like mine
俺の街みたいな場所は他にない
[Verse 3: Kendrick Lamar]
So come and visit the tire screeching, ambulance, policeman
だからタイヤのきしむ音、救急車、そして警察に会いに来いよ
Won't you spend a weekend on Rosecrans, nigga?
ローズクランズで週末を過ごしてみないか、ダチよ?
Khaki creasing, crime increasing on Rosecrans, nigga
カーキの折り目をつけ、犯罪が増え続けるローズクランズでな、ダチよ
※「Khaki creasing」はディッキーズなどのワークパンツにセンタープレスを入れるチカーノやギャングのファッションスタイル。「Rosecrans」はコンプトンを東西に貫く主要な大通り。
Kendrick Conan, nigga
ケンドリック・コナンだぜ、ダチよ
※映画『コナン・ザ・グレート』の屈強な戦士に自分を重ね合わせている。
Where you sword at, hand on the cross and swore that
お前の剣はどこだ、十字架に手を当てて誓ったんだ
I do it big as Rasputia for them shooters
あのシューターたちのために、ラスプーシャみたいにデカくやってやるってな
※「Rasputia」は映画『マッド・ファット・ワイフ(原題: Norbit)』に登場する超肥満の女性キャラクター。「do it big(デカく成功する)」のユーモラスな比喩。
Kama Sutra scream fuck your position and make you hold that
カーマスートラのように、お前のポジションをファックして、それを維持させるって叫ぶんだ
※「position」は性行為の体位(カーマスートラ)と、ラップゲームにおける「地位」。ヒップホップシーンの序列をぶち壊すという宣言。
I'm trying to stay grounded like four flats
俺は4つのパンクしたタイヤみたいに、地に足をつけていようとしてる
But I know flats and Piru Crip tats
だが俺はフラットと、パイルズやクリップスのタトゥーを知っている
※「flats」はパンクしたタイヤと、低所得者向け集合住宅のダブルミーニング。「Piru」はブラッズ系ギャング。
[Bridge: Sly Pyper]
Will swarm on me like a beehive
蜂の巣みたいに俺に群がってくるだろう
Hop in the G ride
Gライドに飛び乗れ
From the West to the Eastside
ウェストからイーストサイドまで
Know that's how Compton roll
それがコンプトンのやり方だってことを知れ
[Verse 4: Dr. Dre, Kendrick Lamar, Both]
And that's a given
そしてそれは当然のことだ
I pass the blunt then pass the torch of course that's my decision
俺はブラントを回し、そして松明を渡す、もちろんそれは俺の決定だ
※Dr. Dreが西海岸の王冠(松明)を次世代のKendrickへと正式に継承する歴史的宣言。
I crash the Porsche then you report that you see me in Benzes
俺がポルシェをクラッシュさせたら、お前らは俺がベンツに乗ってるのを見たと報告する
I must report that we import the narcotics you bought it
俺が報告しなきゃならないのは、俺たちが輸入した麻薬をお前らが買ったってことだ
Then talked about it when crack hit the speakers, the music business
そしてクラックがスピーカーを打った時にそのことを話した、この音楽ビジネスでな
※「crack」はクラック・コカイン。それがスピーカーを打つ=中毒性のある「ドープな音楽」として発信されること。麻薬密売から音楽ビジネスへとシノギを変えたDr. Dreのキャリア。
I blow up every time we throw up a record
俺たちがレコードを出すたびに、俺は爆発する
Depending on what you expecting, I'm sure it's bigger than your religion
お前らが何を期待しているかにもよるが、お前らの宗教よりもデカいのは確かだ
Perfected by niggas that manifested music to live in
音楽を生きる場所に変えた黒人たちによって完璧に仕上げられたのさ
[Chorus: Sly Pyper]
Compton, Compton
コンプトン、コンプトン
Ain't no city quite like mine
俺の街みたいな場所は他にない
[Verse 5: Dr. Dre]
So tell that gangster throw his set high
だからあのギャングスターに、自分のセットを高く掲げろって伝えてくれ
※「set」は自分が所属するギャングのセット。ハンドサインを高く掲げること。
Roll it up in a blunt, I'ma take you on the next high
ブラントに巻きな、俺がお前を次の次元のハイへ連れて行ってやる
I did exactly what I wanted that's what made them checks fly
俺は自分のやりたいことだけを正確にやってきた、それが小切手を俺の方向に飛ばしてきたんだ
In my direction, you never questioned when I said I
俺が言った時、お前は決して疑わなかっただろ
Would be a mogul before I visit 2Pac and Left-Eye
2Pacやレフト・アイに会いに行く前に、大物になってやるってな
※すでにこの世を去ったヒップホップ/R&Bの伝説的なアーティストたち(2Pac、TLCのLisa "Left Eye" Lopes)へのシャウトアウト。
Eazy and Aaliyah when I see you we gon' test drive
イージーとアリーヤ、お前らに会う時はテストドライブしようぜ
※N.W.A.の盟友Eazy-Eと、R&BシンガーAaliyahへの言及。
A Lambo in heaven but for now I'm on the redeye
天国でランボルギーニをな、だが今の俺はレッドアイに乗っている
※「redeye」は深夜の長距離フライト(レッドアイ便)。
Flying back to my city cuz I'll forever standby
自分の街へ飛び帰っているところさ、俺は永遠にスタンバイしているからな
[Chorus: Sly Pyper]
Compton, Compton
コンプトン、コンプトン
Ain't no city quite like mine
俺の街みたいな場所は他にない
[Verse 6: Kendrick Lamar, Dr. Dre & Sly Pyper, Dr. Dre, Sly Pyper]
Now we can all celebrate
さあ、俺たちはみんなで祝杯をあげることができる
We can all harvest the rap artists of N.W.A
俺たちはみんな、N.W.A.のラップアーティストたちの実りを収穫できるんだ
※Dr. Dreが所属した伝説的グループN.W.A.が蒔いた種を、Kendrickの世代が収穫(大成功)しているという西海岸のヒップホップの系譜。
America target our rap market, as controversy and hate
アメリカは俺たちのラップ市場を標的にした、論争と憎悪としてな
Harsh realities we in made our music translate
俺たちが生きる過酷な現実が、俺たちの音楽を翻訳させたんだ
To the coke dealers, the hood rich and the broke niggas that play
コカインの売人、フッドの金持ち、そして遊んでいる文無しの黒人たちにな
With them gorillas that know killers that know where you stay
お前の住処を知っている殺人鬼を知っている、あのゴリラどもと一緒にな
Roll that kush, crack that case, ten bottles of rosé
そのクッシュを巻き、そのケースを開けろ、ロゼを10本だ
This was brought to you by Dre, now every motherfucker in here say:
こいつはドレからの贈り物だ、さあここにいるすべてのマザーファッカーは言え:
"Look who's responsible
「誰が責任者か見てみろよ
For taking Compton international
コンプトンを国際的なものにしたのは
I make 'em holla"
俺が奴らを叫ばせてやる」
Ooh
[Outro: Kendrick Lamar & Sly Pyper]
Ayo, Just Blaze, good lookin' homie
エイヨ、ジャスト・ブレイズ、見事だったぜ、相棒
※東海岸を代表するプロデューサーであるJust Blazeへのシャウトアウト。西海岸の王位継承のアンセムを東海岸の重鎮が手掛けているという、ヒップホップの地域的対立を超えた記念碑的コラボレーション。
Just Blaze
ジャスト・ブレイズ
Ain't no city quite like mine, yeah
俺の街みたいな場所は他にない (Yeah)
In the city of Compton
コンプトンの街には
Ain't no city quite like mine
俺の街みたいな場所は他にない
[Skit: Kendrick Lamar]
Mom, I finna use the van real quick
母さん、ちょっとバンを使わせてもらうよ
Be back fifteen minutes
15分で戻るから
※アルバムの冒頭曲「Sherane a.k.a Master Splinter's Daughter」で、シェレーンに会いに行くために母親のバンを借りるシーンへと時間が巻き戻る。王として凱旋した現在のKendrickの姿から、再び「狂った街(m.A.A.d city)」に囚われていた無知な16歳の少年の1日へとループし、アルバムが永遠の円環構造を形成する。
