Artist: Nicki Minaj
Album: Beam Me Up Scotty (Streaming Version)
Song Title: Fractions
概要
2009年の名作ミックステープ『Beam Me Up Scotty』が2021年にストリーミング解禁された際、ボーナストラックとして収録された完全新曲である。結婚と出産を経て音楽シーンの第一線から一時的に退いていたNicki Minajが、「やはりこの業界には私(悪役)が必要だ」と宣言する強烈な復帰の狼煙(のろし)となっている。タイトルの「Fractions(分数)」は、ライバルたちを分断・整理して圧倒するという比喩。自身が不在の間に台頭してきた若手女性ラッパーたち(Megan Thee StallionやCardi Bなどが想定される)に対し、才能ではなくSNSでの「バズ(Clout)」やゴシップばかりを追い求める姿勢を痛烈に批判している。母親になっても全く衰えないハードコアなリリシズムと、ヒップホップにおける絶対的な「Queen」としての威厳を見せつける、王者の帰還を象徴するバンガーだ。
和訳
[Intro]
I fell back, I had a baby, you know
私は一歩引いて、子供を産んだのよ、わかるでしょ
I did the mother thing, I did the wife thing
母親業をやって、妻としての務めも果たしたわ
All that, yeah (All that shit)
そういうことを全部ね、そう(そういうことを全部)
But I think it's quite clear now
でも、今はっきりと分かったと思うわ
You's need the bad guy
あんたたちには、悪役(バッドガイ)が必要だってことがね
※映画『スカーフェイス』の有名なセリフ「You need people like me so you can point your fuckin' fingers and say, 'That's the bad guy'(お前らには俺みたいな悪役が必要なんだ)」の引用。自分がシーンのヘイトを一身に背負い、引っ掻き回す絶対的な存在であることを示唆している。
[Verse]
Ayo, I'm the one who run the city where they armed and vicious
エイヨウ、武装して狂暴な奴らがいるこの街を仕切ってるのは私よ
Accusations on them blogs and they all fictitious
ブログに書かれてる告発なんて、どれも全部作り話(フィクション)
I done bent the realest blocks, pushed the hardest sixes
私は一番リアルなブロック(縄張り)を曲がって、一番ハードな6シリーズ(BMW)を走らせてきた
※「bent the blocks」は車で角を曲がる、つまりストリートを流して支配しているという意味。
Keep a couple killers that don't care how far them licks is, look
どんなに遠くの強盗(リック)でも構わないっていう、何人かの殺し屋を連れてるわ、ほらね
Bitches act like they want action
ビッチどもはアクション(抗争)を望んでるようなフリをしてる
Heard they want action
アクションが欲しいって聞いたわよ
Bitch, we ain't duckin' no action
ビッチ、私たちはどんなアクションからも逃げ隠れ(ダック)したりしないわ
I'm 'bout to give them that traction, send a distraction
奴らに牽引力(トラクション)を与えて、陽動(ディストラクション)を送ってやるわ
Then I'ma line 'еm like fractions
そしたら、あいつらを分数(フラクションズ)みたいに一列に並べて処理してやるのよ
※action, traction, distraction, fractionsで踏む完璧なライム。「line 'em(一列に並べる)」は、分数の横線(括線)と、敵を一列に並べて撃ち殺すというマフィア的な比喩を掛けている。
Took a break, I let 'еm live, look at all 'em eatin'
少し休みを取って、あいつらを生かしておいてあげたわ。ほら、みんな美味しそうに食べてるじゃない
But these bitches gon' be mad once I call this meetin'
でも、私がこの会議を招集したら、このビッチどもは腹を立てるでしょうね
'Cause they gotta move around once the queen is queenin'
だって、女王(クイーン)が女王の座に就いたら、あいつらは席を空けなきゃいけないんだから
'Bout to put out all this crack 'cause my fiends is feenin', uh
そろそろこのクラック(ヤバい音楽)を出してあげる、私のジャンキー(ファン)たちが禁断症状を起こしてる(フィーニン)からね、アー
I put these bitches on game, they should be kissin' my feet
私がこのビッチどもにゲーム(業界の戦い方)を教えてあげたのよ、私の足にキスすべきだわ
I tried to give 'em some press, they tried to say it was beef
私が話題作り(プレス)を提供してあげようとしたのに、あいつらはそれをビーフ(抗争)だと言いふらそうとしたの
It's Nicki M, such a little gem
これがニッキー・Mよ、なんて小さな宝石なのかしら
Bitches wanna be around me, but I do not fuck with them
ビッチどもは私の周りに群がりたがるけど、私はあいつらとは絶対に関わらない
All these diamonds on me flooded, I hope nobody gets stuck
私の身につけてるダイヤモンドはすべてフラッデッド(水浸し/埋め尽くされている)、誰も身動きが取れなくならなきゃいいけど
※「flooded」は時計やジュエリーにダイヤが敷き詰められている状態。「stuck」は泥水にハマる、あるいは強盗に遭う(stick up)のダブルミーニング。
If I pull out the Ferrari, then my shooters in the truck
もし私がフェラーリを出したら、私の銃撃手(シューター)たちはトラックに乗って後ろからついてくるわ
I could still go to my hood, they know my body is good
私は未だに自分のフッド(地元)に行けるわ、みんな私の身が潔白(グッド)だって知ってるからね
Two million dollars to party in Saudi Arabian clubs
サウジアラビアのクラブでパーティーをするだけで200万ドルよ
※2019年に実際にサウジアラビアのフェスに出演予定だった(人権問題への抗議でキャンセルした)エピソードや、中東の富豪から巨額のギャラを提示される絶対的なステータス。
Poppin' them things to go up and smokin' Los Angeles bud
アガるためにあのクスリを飲んで、ロサンゼルスの極上のバッズ(大麻)を吸ってるの
These bitches bitin' like Joe; shout out to Kamala, though (What up?)
このビッチどもはジョーみたいに噛み付く(バイト/パクリ)わね。カマラにはシャウトアウトしておくけど(調子どう?)
※「biting」はパクること。「Joe Biden(ジョー・バイデン)」のBidenとBitingを掛けた秀逸なパンチライン。副大統領カマラ・ハリスには黒人/南アジア系のルーツを持つ女性として敬意を示している。
It's them weak bars thinkin' that she dissin' for me
あいつの弱々しいリリックを見て、私へのディスだって思い込んでるんでしょ
I graded your homework, bitch, it's incomplete
あんたの宿題を採点してあげたわよ、ビッチ、不完全(インコンプリート)ね
※Megan Thee Stallionなどの若手ラッパーがニッキーをディスしているとSNSで騒がれたことに対する、「レベルが低すぎてディスにすらなっていない」という冷酷な採点。
If you was tryna be my son, then mission complete
もし私の息子(格下/フォロワー)になろうとしてたなら、ミッション完了よ
I'm the final level bitch they on a mission to beat
私はあいつらが倒そうと躍起になってる、最終レベル(ラスボス)のビッチなの
It's like COVID when the GOAT is on the track, the whole game stop
GOAT(史上最高)がトラックに乗れば、COVID(新型コロナ)みたいにゲーム全体がストップするのよ
But I ain't playin' with these bitches, this ain't GameStop
でも私はこのビッチどもと遊んでるわけじゃない、ここはゲームストップじゃないんだから
※2021年初頭に起きた、個人投資家たちによる「GameStop株騒動」の時事ネタ。素人たちが市場を荒らしたように、若手ラッパーたちが騒いでいる状況を「お遊び」と一蹴している。
If Barbie in the buildin', then she with a gangsta
もしバービーが建物にいるなら、彼女の隣にはギャングスタがいるわ
He ain't gon' hesitate if I tell him to shank sumn
もし私が「誰かを刺せ(シャンク)」って命令したら、彼は躊躇しないわよ
Just put a beauty parlor in my guest house
ゲストハウスの中に、美容室を丸ごと作っちゃった
You mean the pink Lamborghini? That's at the next house
ピンクのランボルギーニのこと? あれは隣の家(別の豪邸)に停めてあるわ
Fuck him so good, I got him walkin' with his chest out
彼と最高にヤッてあげたから、彼は胸を張って歩いてるわよ
※夫のKenneth Pettyのこと。自分が最高の女だから、彼も鼻高々だというアピール。
I wish these bitches wanted more talent and less clout
このビッチどもが、バズ(クラウト)よりももっと才能を欲しがればいいのにって思うわ
I-I fall back, and just give them some space
わ、私は一歩引いて、あいつらに少しスペース(チャンス)を与えてあげてるだけ
'Cause when you already won, what the fuck is a race?
だって、すでに勝負に勝ってるのに、レース(競争)なんてクソほども意味がないでしょ?
Look at them fuckin' for raps, oh, what a disgrace
ラップの恩恵をもらうためにヤッてるあいつらを見てごらんなさい、ああ、なんて恥知らずなのかしら
I put that on A-rod, none of you bitches is safe (Uh)
A-Rodにかけて誓うわ、あんたたちビッチは誰も安全(セーフ)じゃないわよ(アー)
※野球界のレジェンド、アレックス・ロドリゲス(A-Rod)の名前と、野球の「セーフ(safe)」を掛けたワードプレイ。誰も私のベース(王座)に無事には辿り着けないという宣言。
Make his dick get hard soon as I brush up, but we tryna be subtle
私が少し触れただけで彼のモノは硬くなるけど、私たちはなるべくさりげなくしてるのよ
Whole city go up when a bitch touch down like them niggas in a huddle
ビッチがタッチダウン(到着)すれば街全体が熱狂するわ、ハドル(円陣)を組んでるあいつらみたいにね
※前行の野球に続き、アメフトの「タッチダウン」と「ハドル(作戦会議のための円陣)」のメタファー。
Sex game still cold, it's on igloo
セックスのテクは未だに冷酷(コールド)、イグルー(氷の家)レベルよ
Head game slicker than little miss Gorilla Glue
フェラのテクは、あのゴリラグルーの女よりも滑らか(スリッカー)なの
※2021年初頭、髪の毛のセットに強力接着剤「Gorilla Glue」を使ってしまい、病院送りになってネットのミームとなった女性(Tessica Brown)の時事ネタ。
He tryna eat it up, I said, "Come and get it, boo"
彼はそれを食い尽くそうとしてる、私は「さあ、取りに来なさいよ、ベイビー」って言ってやったわ
While I count a mill', jigga what? Jigga who? (What or why?)
私が100万ドルを数えてる間にね。ジガ・ワット? ジガ・フー?(何? なぜって?)
※Jay-Z(Jigga)の1998年のヒット曲「Jigga What, Jigga Who」の有名なフレーズの引用。自分が女性版のJay-Zのような圧倒的なボスであることを示して曲を締めている。
