Artist: Nicki Minaj
Album: Beam Me Up Scotty
Song Title: Keys Under Palm Trees
概要
2009年にリリースされた傑作ミックステープ『Beam Me Up Scotty』に収録された本作は、Nicki Minajがストリートの冷酷なハスラー(麻薬密売人)としてのペルソナを前面に押し出したダークでシリアスな楽曲である。不穏なビートの上で、彼女はジャマイカ(あるいはクイーンズのジャマイカ地区)を拠点にキロ単位のコカイン(Keys)を捌く裏社会のボスを演じきっている。リリックには、マフィア映画の冷徹さ、アジアン・モチーフ(忍者、ブルース・リー)、そしてストリートの裏切り(密告)へのパラノイア(偏執病)が複雑に絡み合い、彼女の卓越したストーリーテリング能力とリリシズムの深さを証明している。単なるポップアイコンではない、ニューヨークのアンダーグラウンドを生き抜いてきた「Nicki the Ninja」の真骨頂とも言えるハードコアな一曲だ。
和訳
[Intro]
Aphilliates!
アフィリエイツ!
※DJ Holidayが所属するDJクルー「The Aphilliates」のシャウトアウト。
[Verse 1]
Hear the Devil callin', I can hear 'em
悪魔が呼んでるのが聞こえる、奴らの声が聞こえるわ
※ストリートライフ(犯罪、麻薬密売)という悪魔からの誘惑。
It's like, I get chills down my spine, when I'm near him
なんというか、奴に近づくと背筋がゾクゾクするの
Man, I'm a tad too bad, I don't fear him
でもね、私はちょっとワルすぎるから、悪魔なんて恐れないわ
I don't need the preachers, I'm the high priestess (Kyuh, kyuh)
牧師なんて必要ない、私自身が大祭司(ハイ・プリーステス)なんだから(ハッ、ハッ)
※男性優位の宗教やストリートのルールに縛られず、自らが頂点に立つ女性指導者であるという宣言。
Everywhere I go, I get "Hi, nice to meet you"
どこへ行っても「やあ、はじめまして」って挨拶される
Bitches know I beast this, I'm the fashionistis
ビッチどもは私がこのゲームの獣(ビースト)だって分かってる、私はファッショニスタよ
And they know, I stay around the white, like a groom (Huh)
それに連中も知ってるわ、私が花婿みたいに「白」のそばにいるってことをね(ハッ)
※「white」はコカインの隠語。花嫁の純白のドレス(white)の横に立つ花婿と、コカインの山を仕切る元締めという完璧なダブルミーニング。
Look up in the sky, I see somebody on a broom (Woah, oh)
空を見上げると、ほうきに乗った誰かが見える(ウォー、オー)
※自身を「魔女(Wicked Witch)」と称する彼女のペルソナ。ハイになって次元を超えている描写。
I think I'm gettin' hi-high-hi-high, on my own supply (Uh-huh)
私、自分の商品(サプライ)で最高にハイになってるみたい(アーハ)
※映画『スカーフェイス』の名台詞「Don't get high on your own supply(自分の売るクスリを吸うな)」のルールを自ら破るほどの狂気。
Yellin' "Rastafari! " when I'm ridin' by
車で通り過ぎる時、「ラスタファーライ!」って叫んでるわ
※ジャマイカ文化、ラスタファリ運動への言及。トリニダード・トバゴ出身の彼女のカリビアン・ルーツ。
See, I used to be the wife, of a king (Yeah)
ねえ、私はかつて王様の妻だったのよ(イェー)
※かつては麻薬王(キングピン)の女だったという過去の設定。
Back when I was smugglin' them things, in the bing (Holiday Season!)
刑務所(ビング)の中に、あのブツを密輸してた頃ね(ホリデイ・シーズン!)
※「the bing」は独房や刑務所(特にNYのライカーズ島刑務所)を指すスラング。
Now that I'm a boss bitch, it's a win-win (Uh-huh)
今じゃ私がボスのビッチよ、ウィン・ウィンな関係ね(アーハ)
※ボスの女から、自らがボスへと成り上がった。
Come to Mr. Chow's, or meet me in Chin-Chin (Okay)
ミスター・チャウに来るか、チン・チンで待ち合わせしましょ(オーケー)
※どちらもニューヨークやビバリーヒルズにある高級中華レストラン。成功したハスラーの会合場所。
Now I get'cha ching & my name bells ring - (What up?)
今じゃあんたの金(チーン)を奪って、私の名前のベルが鳴る...(調子どう?)
Oops, I mean my name ring bells, ding ding! (Kyuh, kyuh)
おっと、つまり私の名前が知れ渡ってる(リング・ベル)ってこと、ディン・ディン!(ハッ、ハッ)
※わざと言葉を詰まらせてから言い直す、余裕の言葉遊び。
[Chorus]
I'm in Jamaica with them keys, under palm trees
私はジャマイカでヤシの木の下、大量のキロ(キーズ)を持ってる
※「Jamaica」はカリブ海のジャマイカ国、またはNYクイーンズのジャマイカ地区。「keys」はキログラム(kilos)単位のコカイン。
The leprechaun sees, what my palm reads
レプラコーンが、私の手のひらの手相(運命)を覗き込んでる
※「leprechaun」はアイルランドの妖精で、金の隠し場所を知っているとされる。ヤシの木(palm trees)と手のひら(palm)を掛けたワードプレイ。富と死が隣り合わせの運命を示唆。
And if my heart seize, please call my aunties
もし私の心臓が止まったら、どうかおばさんたちに電話して
※裏社会でいつ殺されてもおかしくない(あるいはオーバードーズする)という死への覚悟。
I think them girls tellin', I hear them boys yellin'
あの女たちが警察に密告(テリン)してるみたい、男たちが怒鳴り込んでくる声が聞こえる
※「tellin'(snitching)」はストリートの最大のタブー。警察のガサ入れや敵対組織の襲撃が迫っているパラノイア。
I'm in Jamaica with them keys, under palm trees
私はジャマイカでヤシの木の下、大量のキロ(キーズ)を持ってる
The leprechaun sees, what my palm reads
レプラコーンが、私の手のひらの手相(運命)を覗き込んでる
And if my heart seize, please call my aunties
もし私の心臓が止まったら、どうかおばさんたちに電話して
I think them girls tellin', I hear them boys yellin' (Boys yellin', boys yellin')
あの女たちが警察に密告(テリン)してるみたい、男たちが怒鳴り込んでくる声が聞こえる(怒鳴り込んでくる声が)
(Trap-A-Holics)
(トラップ・ア・ホリクス)
[Bridge]
Get down, get down, get down down
伏せろ、伏せろ、下に伏せるんだ
Get d- get down, get down, get down down
ふ、伏せろ、伏せろ、下に伏せるんだ
(I hear them boys yellin')
(男たちが怒鳴り込んでくる声が聞こえる)
Get d- get down, get down, get down down (Yellin', yellin')
ふ、伏せろ、伏せろ、下に伏せるんだ(怒鳴り込んでくる声が)
Get down, get down on the ground
伏せろ、地面に伏せるんだ
Get down, get down on the ground
伏せろ、地面に伏せるんだ
※警察の強制捜査(SWAT部隊の突入)を思わせる緊迫した情景描写。
[Verse 2]
Man, fuck a P-O, and fuck a C-O
ああ、保護観察官(P.O.)なんてクソくらえ、刑務官(C.O.)もクソくらえよ
'Bout to "Set It Off", like Cleo (Uh-huh)
クリオみたいに「セット・イット・オフ(強盗)」をブチかましてやる(アーハ)
※1996年の映画『Set It Off』でクイーン・ラティファが演じた、銀行強盗をするレズビアンのキャラクター「クリオ」の引用。
Mad, they done tapped my Treo (Word)
ムカつくわ、あいつら私のTreoを盗聴しやがった(マジで)
※「Treo」は当時普及していたPalm社のスマートフォン。警察の捜査の手が伸びている。
Bagged my skio (Okay)
私の運び屋(スキオ)もパクられたわ(オーケー)
Heard the bitch lyin' like Leo (Rrah)
あのビッチがレオ(獅子座)みたいに横たわってる(嘘をついてる)って聞いたわよ(ラァッ)
※「lyin'(横たわる/嘘をつく)」と「Leo/Lion(ライオン)」を掛けたワードプレイ。警察に寝返った仲間への怒り。
Anyway, I'm the ninja, Kawasaki blazin' (Uh-huh)
とにかく、私はニンジャよ、カワサキのバイクでぶっ飛ばす(アーハ)
※「Ninja」はカワサキの有名なスポーツバイクの名前であり、彼女のオルターエゴ「Nicki the Ninja」のダブルミーニング。
In a kimono, "Konichiwa" to the Asians
着物を着て、アジア人たちに「コンニチワ」って挨拶するの
I kick, kick, kick it like I'm Bruce Lee's son (Hiyah)
ブルース・リーの息子みたいに、キック、キック、キックをかますわ(ハイヤー)
※ブルース・リーの息子ブランドン・リーへの言及。アジアン・モチーフの連続技。
So all of that yellin' in the street soon done
だから、ストリートのあの怒鳴り声もすぐに終わるはずよ
Cause if I take my ski mask off, then I'm dumbin' (Uh-huh)
だってもし私がスキーマスク(目出し帽)を脱いだら、正気を失って暴れるからね(アーハ)
The young Chaka Khan, yes - "I Am Every Woman"
若きチャカ・カーンよ、そう、「私はすべての女(アイ・アム・エブリ・ウーマン)」なの
※チャカ・カーンの1978年の大ヒット曲のタイトル。自分がすべての女性の顔(ペルソナ)を持っているというアピール。
And I am 'bout that coke, not what'cha put the rum in (No)
私が扱ってるのは「コーク」よ、あんたがラム酒を割るヤツ(コーラ)じゃないわ(ノー)
※「coke」がコカ・コーラではなくコカインであることを冷酷に再確認させるパンチライン。
I say a little prayer, tell the Lord that I'm comin', comin' (Kyuh)
少しだけ祈りを捧げるわ、神様に「今からそっちへ行きます」って伝えてね(ハッ)
※警察との銃撃戦、あるいは裏社会での死を覚悟したハスラーの最後の祈り。
[Chorus]
I'm in Jamaica with them keys, under palm trees
私はジャマイカでヤシの木の下、大量のキロ(キーズ)を持ってる
The leprechaun sees, what my palm reads
レプラコーンが、私の手のひらの手相(運命)を覗き込んでる
And if my heart seize, please call my aunties
もし私の心臓が止まったら、どうかおばさんたちに電話して
I think them girls tellin', I hear them boys yellin'
あの女たちが警察に密告(テリン)してるみたい、男たちが怒鳴り込んでくる声が聞こえる
I'm in Jamaica with them keys, under palm trees
私はジャマイカでヤシの木の下、大量のキロ(キーズ)を持ってる
The leprechaun sees, what my palm reads
レプラコーンが、私の手のひらの手相(運命)を覗き込んでる
And if my heart seize, please call my aunties (Please, call my aunties)
もし私の心臓が止まったら、どうかおばさんたちに電話して(お願い、おばさんたちに電話して)
I think them girls tellin', I hear them boys yellin' (Boys yellin', boys yellin', yellin')
あの女たちが警察に密告(テリン)してるみたい、男たちが怒鳴り込んでくる声が聞こえる(怒鳴り込んでくる声が)
[Outro]
Can you hear them yellin'?
奴らの怒鳴り声が聞こえる?
Comin' for me, comin' for me-e-e-e
私を捕まえに来る、私を狙ってやって来る
Comin' for me, comin' for me, comin' for me
私を捕まえに来る、私を捕まえに、私を捕まえに
