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I Get Crazy - Nicki Minaj (feat. Lil Wayne) 【和訳・解説】

Artist: Nicki Minaj (feat. Lil Wayne)

Album: Beam Me Up Scotty

Song Title: I Get Crazy

概要

2009年にリリースされた歴史的ミックステープ『Beam Me Up Scotty』に収録された本作は、Nicki Minajがメインストリームを制覇する直前の圧倒的な勢いと底知れぬポテンシャルを証明する重要曲である。恩師でありYoung Moneyの首領であるLil Wayneを客演に迎え、ヒップホップシーンにおける彼女の特異な立ち位置を決定づけた。「狂気(Crazy)」をテーマに、精神病棟や拘束衣といったメタファーを用いて自身の常軌を逸したラップスキルとワーカホリックな姿勢を誇示。さらに、「Nicki Lewinsky」や「Wicked Witch」といった彼女を象徴する数々のオルターエゴ(別人格)を巧みに操りながら、高度なダブルミーニングやコミカルなパンチラインを連発している。当時の画一的だったフィメールラップの枠組みを破壊し、新たな時代の幕開けを告げたマスターピースだ。

和訳

[Chorus: Bianca Bonnie]

I get crazy
アタシはイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

[Intro: Nicki Minaj]

I mean, you know
つまりさ、わかるでしょ

It's like when I feel really crazy
本当に自分がおかしくなっちゃったって感じた時みたいに

I just get my broom and fly away
ほうきを手にとって、遠くへ飛んでいくの
※「魔女」という自身のオルターエゴ(Wicked Witch)の伏線。シーンの常識に縛られず、次元の違う場所へと飛翔していく比喩。

I go real, real far away
ずっと、ずっと遠くまでね

Young Money
ヤング・マネー

That's-that's-that's just what we do
それが、それが私たちのやり方なの

You know, I mean we-we wear straightjackets
つまり、私たちは拘束衣を着てるってこと
※「straightjacket(拘束衣)」は精神病棟で暴れる患者に着せる服。ヤング・マネーのクルー全員が常軌を逸した才能とエネルギーを持っていることを「狂気」として表現している。

And we-we-we-we stay in, you know, padded rooms
それで、防音パッドが貼られた部屋に閉じこもってるの
※「padded room」も精神病棟の保護室を指す。同時に、ラッパーたちが日々こもって狂ったように名作を生み出す「レコーディングスタジオ」の秀逸なメタファーでもある。

And, you know, and we fly away
それから、どこかへ飛んでいくの

[Verse 1: Nicki Minaj]

I just came out of the motherfuckin' old school
クソみたいなオールドスクールから抜け出してきたところよ

Got my Mac Notebook with the Pro Tools
Pro Toolsを入れたMacのノートパソコンを持ってるわ
※Pro Toolsは業界標準の音楽制作ソフト。過去の古いやり方(old school)を抜け出し、最新の機材で自らヒットを生み出す新世代のラッパーとしてのスタンスの提示。

You bitches ain't ready for Nicki Lewinsky
あんたたちビッチは、ニッキー・ルインスキーを迎える準備なんてできてないでしょ
※ビル・クリントン元大統領とのスキャンダルで知られるモニカ・ルインスキーと自身の名を掛け合わせたオルターエゴ「Nicki Lewinsky」のネームドロップ。後述のVerse 2での「大統領」や「オーバル・オフィス(大統領執務室)」での性的なラインへの緻密な伏線となっている。

Bad woof woof, flyer than a Frisbee
極上のワンワン、フリスビーよりも高く飛ぶわ
※「woof woof」は犬の鳴き声だが、ここでは「Bad Bitch(最高にイケてる女)」を犬(Dog/Bitch)になぞらえたユーモア。フリスビーのように誰よりも「Fly(かっこいい/飛んでいる)」であることを示している。

So I'm up in Mandalay, eating mangos
だからマンダレイの上の階で、マンゴーを食べてるの
※「Mandalay」はラスベガスの最高級ホテル、マンダレイ・ベイ・リゾートのこと。成功者の優雅なライフスタイルをアピールしている。

Keep a couple pink toes in my sandals
サンダルからはピンクに塗ったつま先を覗かせてね
※「pink toes」は白人女性を指すスラングでもあるが、ここでは文字通りペディキュアを塗った美しい足元を指し、彼女のフェミニンな魅力と余裕を表現している。

Got some bangles all over my ankles
足首にはジャラジャラとバングルをつけてるわ

Such a star, they singing the “Star Spangled
私は正真正銘のスター、みんなが「星条旗」を歌うくらいにね

Ba-ba-ba-ba-ba-banner,” and I, I am the rap Hannah
「星条旗」をね、そして私はラップ界のハンナ

Mo-Mon-Montana, so fix your antenna
ハンナ・モンタナよ、だからアンテナの向きを直しなさい
※マイリー・サイラス演じるディズニーの国民的キャラクター「ハンナ・モンタナ」を引き合いに出し、昼と夜(あるいは普通の女の子とスーパースター)の二つの顔を持つ自身のペルソナの多様性をアピール。「アンテナを直せ」は「私にしっかりチャンネルを合わせろ(注目しろ)」という意味。

I keep three hoes, but don't call me Santa
3人の女を連れてるけど、サンタなんて呼ばないで
※サンタクロースの笑い声「Ho, ho, ho」と、女性を指すスラング「Hoe」を掛けたクラシックなワードプレイ。

A-And I’m, and I’m flyer then reindeers in the winter
私は冬のトナカイよりも高く飛ぶんだから
※「Fly」には「空を飛ぶ」と「かっこいい/リッチ」のダブルミーニングがある。前のラインのサンタからの見事な連想ゲーム。

[Chorus: Bianca Bonnie]

I get crazy
アタシはイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

[Verse 2: Nicki Minaj]

So I got a bad-bitch mentality
アタシはバッド・ビッチのメンタリティを持ってる

'Cause I just came from another galaxy
だって別の銀河からやって来たばかりだから
※アルバムタイトル『Beam Me Up Scotty』(スタートレックの転送時のセリフ)に通じる、宇宙人や異次元の存在としての自己表現。他のフィメールラッパーとは次元が違うという宣言。

I be with the president up in the White House
ホワイトハウスで大統領と一緒にいるわ

If we in the Oval Office, then the lights out
オーバル・オフィスに入ったら、電気を消すの
※Verse 1で提示した「Nicki Lewinsky」のギミックの鮮やかな回収。オーバル・オフィス(大統領執務室)での暗がりというシチュエーションは、モニカ・ルインスキーの有名なスキャンダル(オーラルセックス)をあからさまに仄めかした強烈なパンチライン。

'Cause I am the Wicked Witch, I'm the Nickster
だって私は西の悪い魔女、あだ名はニックスター
※「Wicked Witch」は『オズの魔法使い』に登場する悪い魔女。ここでは彼女の持つ凶悪なラップスキルと、アンチを蹴散らすヴィラン(悪役)的なアティチュードを象徴している。

And I keep a bad bitch on my GSX-R
私のGSX-Rの後ろにはイイ女を乗せてるわ
※「GSX-R」はスズキの大型スポーツバイク。彼女はデビュー初期からバイセクシュアル的なイメージを戦略的に用いており、女性ファン層の獲得と男性ファンへのアピールを同時に行っていた。

But I leave her in a second for a thicker
でも、もっと肉付きのいい女がいれば一瞬で乗り換えるけどね
※「Thick」はヒップホップ界隈で極めて高く評価される、カーヴィーで肉感的な体型を指す褒め言葉。

Rockstar little mama with a guitar
ギターを持ったロックスターみたいな可愛い子にね

I mean, I'm Nicki L-M-N-O-winsky
つまり、私はニッキー・L-M-N-O-ウィンスキー
※アルファベットの「L-M-N-O」を名前に組み込むことで、リズミカルなフロウを生み出すと同時に、彼女の持つ言葉遊びのセンスを誇示している。

I mean, my name ring bells like Tinky
つまり、私の名前はティンキーみたいにベルを鳴らすの
※「ring bells」はストリートのスラングで「名前が知れ渡っている」「有名である」という意味。

I mean Tinker, tell that nigga link her
ティンカー・ベルのことよ、あの男に彼女と連絡を取れって伝えて
※前の行の「Tinky」を「ティンカー・ベル」に繋げ、妖精のように飛び回る(Fly)イメージを再度強調。「link」は会う、連絡を取るの意味。

'Cause I'm looking for some good brains from a thinker
だって私は、頭の良い奴から最高のブレインをもらいたいから
※「Brain」は「知性」という意味と同時に、ヒップホップ・スラングで「オーラルセックス(フェラチオ)」を意味する強力なダブルミーニング。知的な男(Thinker)から極上のフェラ(Brain)を受けたいという、男性ラッパーがよく使うミソジニー的な表現を反転させた女性優位の挑発的なライン。

[Bridge: Nicki Minaj]

Uh, thinker
頭の良い奴

Thinker... Thinker
賢い男からのね...

[Chorus: Bianca Bonnie]

I get crazy
アタシはイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

[Verse 3: Lil Wayne & Bianca Bonnie]

1, 2, 3rd floor, hospital bound
1階、2階、3階、病院へ一直線だ

Niggas is doors and I knock niggas down
雑魚どもはドアみたいなもん、俺がブチ破ってやる
※精神病院に収容されるシチュエーション。邪魔なラッパーたちを障害物(ドア)に見立ててなぎ倒す、リル・ウェインらしい破天荒な表現。

Straightjacket crooked, I hear you lookin
拘束衣はひん曲がってる、お前らが見てるのはわかってるぜ

I promise I'm hard and I swear you pussy
誓って言うが俺はハードだ、そしてお前らは間違いなくプッシー野郎だ
※「pussy」は臆病者、弱虫を意味するスラング。俺のラップ(あるいはモノ)は硬いが、お前らは軟弱だという対比。

I ain't crazy, no, yes, I am
俺はイカれてなんかいない、いや、イカれてるな
※自己矛盾をリアルタイムで吐き出すことで、精神の不安定さ(Crazy)を見事に演じている。

Right up in the cuckoo nest I land
カッコーの巣のど真ん中に着地してやる
※「cuckoo nest」は名作映画『カッコーの巣の上で』に由来する精神病棟の隠語。

I'm fly, now eat my bird shit
俺は飛んでる、だから俺の鳥の糞でも食ってろ
※「Fly(かっこいい/空を飛ぶ)」から「鳥」へと連想し、下の者(ヘイター)へ糞を落とすという強烈なディス。

Yeah, I'm crazy, crazy 'bout your bitch
ああ、俺は狂ってるよ、お前のビッチに夢中なのさ

Wild animal on my bewildered shit
野生動物みたいに困惑させるような真似をしてやる
※「bewildered」は当惑した、という意味。予測不能な野性の獣のような振る舞いを指す。

I love brain so I'm lookin' for a nerd bitch
俺はブレインが大好きだ、だからガリ勉のビッチを探してる
※ニッキーのVerse 2のパンチライン「Brain」に対するアンサー。ウェインは男性目線で「頭の良い(Nerd)女」から「フェラ(Brain)」を求めている。師弟間の見事なリリックの呼応。

It's Nicki Minaj, the superb witch
これがニッキー・ミナージュ、最高の魔女だ

And Weezy F Baby, no, Weezy F Crazy
そしてウィージー・F・ベイビー、いや、ウィージー・F・クレイジーだ
※リル・ウェインの有名なキャッチフレーズ「Weezy F Baby」のFの部分を、曲のテーマに合わせて「Crazy」に置き換えた完璧な締めくくり。

[Chorus: Bianca Bonnie]

I get crazy
アタシはイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

I-I get crazy
アタシはマジでイカれてる

[Outro: Nicki Minaj]

When I do it, it get did-ed, I was fixing my fitted
私がやれば必ず成し遂げられる、私はフィッテッド・キャップを直してたの
※「fitted」はニューエラなどのサイズ固定キャップ(Fitted cap)。ヒップホップ・ファッションの定番であり、キャップのツバを直す仕草はゲームを支配する者の余裕の表れ。

Pull up in a 6 Series, she was fixing your Civic
6シリーズで乗りつけるわ、彼女はあんたのシビックを修理してたね
※BMW 6シリーズ(高級車)とホンダ・シビック(大衆車)の対比で格の違いを見せつけている。「彼女」は相手の女のこと。

When I do it, it gets done, 2 sticks in my bun
私がやれば必ず終わらせる、お団子ヘアには2本の箸を挿してるわ
※「bun」はお団子ヘア。そこにかんざし(chopsticks)を挿すアジアンテイストなスタイルは、ニッキーが初期から好んで取り入れていた「Harajuku Barbie(原宿バービー)」というオルターエゴや、ニンジャのモチーフに由来する。

Pull up in a 6, hun, you was fixing to run, hoe
6シリーズで乗りつけるわ、ハニー、あんたは逃げようとしてたわね、このビッチ

(Uh-huh, uh-huh, uh-huh, uh-huh)

(You know, you know my name is Nicki Minaj, trick)
(わかるでしょ、私の名前はニッキー・ミナージュよ、マヌケ)
※「trick」はだまされやすい奴や売春婦の客を指すスラングだが、ここでは単に相手を見下す呼称として使われている。

(Let's get it)
(行くわよ)

I get crazy, I get crazy
私はイカれるの、狂っちゃうの

I get motherfuckin', motherfuckin' crazy
マジで、マジで最高にイカれちゃうの

Crazy, crazy, that's what my name is
クレイジー、クレイジー、それが私の名前よ

My name means crazy in cr-crazy language
私の名前はイカれた国の言葉で「クレイジー」って意味なのよ
※最後の最後まで「Crazy」というテーマを押し通し、自身の常軌を逸した才能とキャラクターを決定づけている。