Artist: Nicki Minaj
Album: Beam Me Up Scotty
Song Title: Intro
概要
2009年にリリースされたNicki Minajの出世作となるミックステープ『Beam Me Up Scotty』のオープニングを飾るトラックである。本作は彼女がLil Wayne率いるYoung Money Entertainmentと契約し、メインストリームの頂点へと一気に駆け上がる直前の過渡期を象徴する作品だ。このイントロはラップではなく、ニッキー自身によるスポークンワードで構成されており、周囲から「急速に成功した」と見られがちな彼女のキャリアに対する自己評価と、水面下で泥臭く積み上げてきた下積み時代への自負が語られている。同時に、才能やコネクション、ルックス以上に「誰が一番成功を渇望しているか」が勝敗を分けるという、ヒップホップにおける究極のハッスル・マインドセットを力強く提示している。後に「クイーン・オブ・ヒップホップ」として君臨することになる彼女の、初期衝動と確固たる決意が刻まれた重要なマニフェストである。
和訳
[Intro: Nicki Minaj]
You know, a lot of people ask me why I feel that, you know, I've gotten a lot of notoriety so quickly. And I don’t know, people seem to be under the impression that I’ve made it to this point fast
あのね、多くの人が私に聞いてくるの。なぜこんなに早く悪名を手に入れたと思うかって。よくわからないけど、みんな私はあっという間にここまで登り詰めたっていう印象を持ってるみたいね
※「notoriety」は通常「悪名」を意味するが、ここではアンダーグラウンドやミックステープ・シーンにおいて急速に広がったバズと知名度を指している。ヒップホップ・カルチャーにおいて「悪名高き(Notorious)」という言葉は、時にストリート・クレジットを高めるポジティブな要素として機能する。
And, you know, obviously for me, I don’t feel like that. 'Cause it's me, you know? I feel like I’ve been doing it for ten billion years
でもね、当然だけど私自身はそんな風には感じてない。だって私だもん、わかるでしょ? もう100億年くらいやり続けてるような気がしてるわ
※彼女は2007年の『Playtime Is Over』からミックステープを出し続け、それ以前からニューヨークのアンダーグラウンドで活動していた。シーンの外側から見れば一夜にしてスターになったように見えても、当の本人にとっては先の見えない果てしない泥沼の下積み時代であったという、ハスラー特有のリアルな時間感覚が表現されている。
But every time someone says something like that to me. I remember to just thank God for you know getting me this far. 'Cause sometimes you don’t realize how far you’ve gotten
でも、誰かにそういうことを言われるたびに、私をここまで導いてくれた神様にただ感謝することを思い出すの。だって時々、自分がどれだけ遠くまで来たのか気づかないこともあるから
※ストリートから這い上がるラッパー特有の、成功に対する神への感謝のスタンス。目の前のハッスルに没頭するあまり自身の現在地を見失いがちだが、他者からの評価や無責任な声が、皮肉にも彼女に自身の成功のスケールを再認識させるトリガーとなっている。
Until you look around and look at the people who are still trailing so far behind you. And I know that no matter what, in the end, it's not gonna be about my talent, you know? It's not gonna be about connections. It’s not gonna be about my looks. It's gonna be about who wants it the most. And I want it the most
周りを見渡して、自分のはるか後ろを未だに引きずっている連中を見るまではね。それに私にはわかってる。何があっても、結局のところ、それは私の才能についてじゃないの、わかる? コネについてでもないし、ルックスについてでもない。誰が一番それを渇望しているか、それだけよ。そして、私が一番それを渇望してる
※「trailing so far behind you」で、共にスタートラインに立ったはずの同業者やライバル(あるいはヘイター)たちが、すでに自分の背中すら見えない位置に取り残されているという痛烈な事実を冷酷に突きつけている。後半の「who wants it the most」は、ヒップホップにおける究極の実力主義とハングリー精神の提示。女性ラッパーとして常に容姿や業界のコネクションで評価されがちな偏見を自ら否定し、それらの表層的な要素を凌駕する「圧倒的な野心と執念」こそが、自分を絶対的なトップへ押し上げる唯一の力であることを断言している。
