Artist: Kodak Black
Album: Kodak The Blessing
Song Title: Who What
概要
本作『Who What』は、フロリダのゲットーからスターダムへと上り詰めたKodak Blackが、名声と引き換えに背負った孤独と、周囲からの裏切り、そして警察の執拗な追及に対する鬱屈とした感情を吐露したトラックである。タイトルの「Who What Where When Why(誰が、何を、どこで、いつ、なぜ)」が示す通り、ストリートで起きる殺人事件について常に疑われ、事情聴取を受ける彼自身のパラノイアが主題となっている。リリックでは、OutkastのAndré 3000を用いた秀逸なネームドロップや、Nike Techのアパレルと銃器のTEC-9を掛けたワードプレイが光る一方で、「ただリスペクトが欲しかっただけで、恐れられたかったわけじゃない」という「Sad Boy」としての脆さも克明に描かれている。ハードドラッグ依存からの脱却を誓い、過去の暴力と決別しようともがきながらも、再び引き戻されそうになるハスラーの痛ましい現実を抉り出した内省的な名曲だ。
和訳
[Intro]
(Cosmic got a big blurr on his hands)
Who? What? Where? When? Why?
誰が?何を?どこで?いつ?なぜ?
You ain't gotta feel me, but I'ma go and— nigga, yeah
俺に共感する必要はねぇ、だが俺は行くぜ—なぁ (Yeah)
You ain't gotta feel me, but you wanna be out your feelings, I
俺に共感する必要はねぇ、だがお前は自分の感情から抜け出したいんだろう、俺は
(Castro)
[Verse]
Who? What? Where? When? Why?
誰が?何を?どこで?いつ?なぜ?
They don't know they part of the reason why I be gettin' high
俺がハイになる理由の一部が奴らだってことを、奴らは分かっちゃいねぇ
※周囲の人間からのプレッシャーや裏切りが、自身のドラッグ依存の引き金になっているという悲痛な吐露。
Solvin' everybody problems, but barely gettin' by
みんなの問題を解決してやってるのに、俺自身はかろうじて生きてる状態だ
And treat me like an outcast, André 3000
それなのに俺をアウトキャストみたいに扱いだす、アンドレ・3000みたいにな
※「outcast」はのけ者の意。伝説的ヒップホップデュオ「Outkast」のメンバーであるAndré 3000と掛けたワードプレイ。
How you call a nigga flaw while you were just vouchin'?
さっきまで俺を保証してたのに、どうして俺のことを欠陥品呼ばわりできるんだ?
※「flaw」は欠陥、偽物。「vouch」は本物だと保証すること。手のひらを返す仲間への怒り。
How you gon' cross the only nigga ever step 'bout you?
お前のために一肌脱いだ唯一の男を、どうして裏切れるんだ?
※「step」はストリートで引き金を引く、報復に出るなどの行動を起こすこと。「cross」は裏切り。
Why you gon' step on my head? I'm savin' you from drownin'
どうして俺の頭を踏みつけるんだ? 俺はお前が溺れるのを救ってやってるのに
How it's lookin' out here? Guess ain't no love for a zombie, even the Undertakеr
こっちの状況はどう見える? ゾンビに対する愛なんてないみたいだな、アンダーテイカーでさえも
※ドラッグでゾンビのようになった自分や、ストリートの死に体には誰も愛を向けないという嘆き。プロレスラーであり「墓掘り人」の異名を持つジ・アンダーテイカー(The Undertaker)のネームドロップ。
They need people likе me, but don't appreciate us
奴らは俺みたいな人間を必要としてるくせに、俺たちに感謝しねぇんだ
I just need my respect, I ain't say I'm nobody you should be afraid of
俺はただリスペクトが欲しいだけだ、俺がお前らが恐れるべき人間だなんて言ってねぇだろ
Even though I'm the first nigga you gon' ring, you need a situator
お前が最初に電話をかけてくる相手は俺なのにな、状況を解決できる奴が必要な時には
※トラブル解決のために都合よく利用されるハスラーの哀愁。
Okay, how I'm always in the middle of a damn murder?
オーケー、なんで俺はいつもクソみたいな殺人事件のど真ん中にいるんだ?
The Big Z, last man standin'
ビッグ・Z、最後まで立っている男だ
※「Z」はフロリダのハイチ系コミュニティ「Zoe Pound(Sniper Gang)」を指すと同時に、アルファベットの最後(Z)であることから「最後に生き残る男(last man standin')」というダブルミーニングを形成している。
From the six letters of the alphabet
アルファベットの6つの文字から
※ファンの間では「MURDER(殺人)」の6文字の最後、あるいは彼自身の名前(KODAK)に関連するギミックだと考察されている。
How you be the last man standin'? Biggest Z
どうやって最後まで立っている男になるんだ? 最大のZとしてな
I'ma be the first to pop off before they get me
奴らにやられる前に、俺が最初にぶっ放してやる
And how I'm always in the middle of a damn murder?
それで、なんで俺はいつもクソみたいな殺人事件のど真ん中にいるんだ?
All I wanted was respect, not to be feared
俺が欲しかったのはリスペクトであって、恐れられることじゃなかった
I done gained a lot of both, twenty-six years
この26年で、俺はその両方を嫌というほど手に入れちまったがな
※Kodak Black(1997年生まれ)の年齢。富と名声とともに、ストリートの恐怖の象徴となってしまった葛藤。
Twenty-six, big advances
26歳、デカい前払い金だ
I had told 'em I was sober, now they think I'm lyin'
俺はシラフだって奴らに言ったのに、今じゃ奴らは俺が嘘をついてると思ってる
I been smokin' weed lately, baby, this ain't molly
最近はウィードしか吸ってねぇんだ、ベイビー、これはモリーじゃねぇよ
※MDMA(モリー)などのハードドラッグを断ち切ろうとしている努力の表れ。
Know it's hard to believe a nigga when I say I'm violent
俺が暴力的だと言っても、信じるのが難しいのは分かってる
I been two years straight free, can't you see I'm tryin'?
俺は2年間ずっと自由の身だ、俺が努力してるのが分からないのか?
※刑務所に逆戻りせず、シャバ(free)でまともに生きようと懸命に耐えている姿。
I been tryna move on, put all this shit behind me
前に進もうとしてるんだ、こんなクソみたいなことは全部過去のことにしようと
Every time I go to doin' right, here go the siren
正しいことをしようとする度に、サイレンが鳴り響くのさ
Should've did like my big brother did and went to college
兄貴がしたみたいに、俺も大学に行くべきだったんだ
※ストリートの生活から抜け出せなかった自身の後悔。ヒップホップファンの間で深く共感されるSad Boy的リリシズム。
Stayin' far away from violence, they gon' blame the projects
暴力から遠く離れていても、奴らはプロジェクトのせいにしようとする
Tryna ask me 'bout a body, I don't even know nobody
誰かの死体について俺に尋問しようとするが、俺は誰も知らねぇよ
※「body」は殺人のこと。警察の執拗な捜査と、徹底した「密告しない(No Snitch)」のスタンス。
I'm anti-social as fuck, in my shell like turtle
俺はクソほど反社会的だ、カメみたいに自分の殻に閉じこもってる
Shootout got me jumpin' over corpse just like a hurdle
銃撃戦のせいで、俺は死体をハードルみたいに飛び越えなきゃならねぇ
※ゲットーの凄惨な日常を陸上競技に例えた恐ろしいパンチライン。
Many men got your name tangled in a murder
大勢の奴らが、お前の名前を殺人事件に巻き込もうとする
We gotta watch out for the hop out boys and the swervers
俺たちは飛び出してくるサツと、急カーブを切ってくる連中に気をつけなきゃならねぇ
※「hop out boys」は覆面パトカーから急に飛び出してくる私服警官やギャング対策部隊。「swervers」は車を急接近させてドライブバイ(走行中の銃撃)を行うヒットマン。
Why they tryna murk a nigga? They don't like to me icy
なんで奴らは俺を殺そうとするんだ? 俺がダイヤで輝いてるのが気に入らねぇのさ
※「murk」は殺す。「icy」はジュエリーで着飾っている状態。
Pressure on my chest, I hid the TEC inside my Nike
胸にプレッシャーを感じながら、俺はナイキの中にTECを隠した
In my Nike Tech, I got a real TEC-9
俺のナイキ・テックの中には、本物のTEC-9が入ってるぜ
※スポーツウェアの「Nike Tech Fleece」と、機関拳銃の「TEC-9」を掛けた、ヒップホップ特有の秀逸なワードプレイ。
It's paper on his head, make sure you get a headshot
あいつの頭には札束がかかってる、確実にヘッドショットを決めろよ
※「paper on his head」は懸賞金(暗殺の依頼)が懸けられていること。
Nigga, you ain't my twin, don't give a damn if we Gemini
お前は俺の双子じゃねぇよ、たとえ俺たちが双子座だったとしても知ったことか
※ストリートで親友を「twin」と呼ぶ文化に対する皮肉。「Gemini(双子座)」を用いて、どんなに親しく見えても俺たちは違うという決別を示している。
I don't know who whacked 'em, what happened? When, where, and why?
誰が奴らを消したかなんて知らねぇよ、何が起きたって? いつ、どこで、なぜだ?
※「whack」は殺すこと。イントロの5W1Hに戻り、警察の尋問に対して完全にシラを切り通すストリートの掟(オメルタ)で曲を締めている。
