Artist: Kodak Black
Album: Kodak The Blessing
Song Title: Chicken And Waffles
概要
本作『Chicken And Waffles』は、Kodak Blackの波乱万丈なキャリアとストリートの死生観、そして莫大な富が交差する内省的かつアグレッシブなトラックだ。トラップシーンを代表する名プロデューサーBuddah Blessのビート上で、Kodakは黒人のソウルフードである「チキン&ワッフル」をドラッグビジネス(チキン=金や麻薬、ワッフル=密造のための調理)のメタファーとして巧みに昇華している。リリックでは、The Notorious B.I.G.の名曲からの引用や、R&BシンガーOmarionへの言及を通し、ストリートで心が凍りついてしまったサバイバーとしての痛みを吐露。同時に、ドナルド・トランプ元大統領から特赦を受けた彼が、ホワイトハウスの敷地内ですらフッドの流儀を貫いたことを明かすなど、ヒップホップ史に残る特異なエピソードも織り込まれている。父親としての葛藤と、武闘派ハスラーとしての凶暴性が同居する、彼特有の複雑なペルソナが濃縮された一曲である。
和訳
[Intro]
(Buddah Bless this beat)
(Buddahがこのビートを祝福するぜ)
※アトランタの大物プロデューサー、Buddah Blessのシグネチャータグ。
Sure did
確かにそうした
Watch how I glitch, hold on
俺のバグったような動きを見な、待てよ
Watch how a bitch, hold up
ビッチの様子を見な、待てよ
Yeah
And I shredded
そして俺は切り裂いてやった
Yeah
[Chorus]
Get to that chicken, whippin' waffles, luxury
あのチキンを手に入れろ、ワッフルをかき混ぜる、ラグジュアリーだ
※「chicken」はヒップホップスラングで「金」や「キロ単位のコカイン」を意味する。「whippin' waffles」は朝食のワッフル生地を混ぜる様子と、キッチンでクラック・コカインを調理(whip)するストリートのハッスルを掛け合わせた巧みな隠喩。
Ain't sip, but that's an awful lot of cough syrup, cuz
飲んじゃいねぇが、こいつはものすごい量の咳止めシロップだぜ、兄弟
※LAのストリートウェアブランド「That's a Awful Lot of Cough Syrup」へのシャウトアウトでありつつ、彼自身が過剰な量のリーン(咳止めシロップベースのドラッグ)に囲まれている現状を描写しているワードプレイ。
Sendin' dealies like a boss, ain't gettin' nothin', just here for the month
ボスのごとく取引を回す、何も得ちゃいねぇ、ただ今月を乗り切るためだけにここにいる
※「dealies」は麻薬のパケや取引のこと。大金を動かしても虚無感が付き纏い、ただ生き延びるためだけにハッスルを続けているというストリートの現実。
Dentist put my money for where my mouth once was
俺の口があった場所に、歯医者が俺の金を突っ込んだんだ
※「Put your money where your mouth is(口先だけでなく金を出して証明しろ)」という英語の慣用句を文字通りに解釈し、大金を費やして口内をダイヤモンドのグリルズ(差し歯)で埋め尽くしたフレックス。
Got an icebox where my heart used to live
かつて心があった場所には、今じゃアイスボックスがある
※R&BシンガーOmarionの2006年のヒット曲「Ice Box」からの直接的な引用。ストリートの過酷な経験や裏切りにより、感情が冷酷に凍りついてしまったSad Boy的なトラウマを表現している。
From the projects, you ain't nobody 'til somebody get you killed
プロジェクト出身じゃ、誰かに殺されるまでお前は何者でもない
※「projects」は低所得者向け公営住宅。The Notorious B.I.G.の名曲「You're Nobody (Til Somebody Kills You)」へのオマージュ。ゲットーでは死んで初めて伝説として語り継がれるという残酷な真理。
Get who killed? Get who killed? Who, me, him?
誰が殺されるって? 誰が殺される? 誰だ、俺か、あいつか?
※前行の「殺される」という言葉に過敏に反応し、いつ命を狙われるか分からないパラノイア的な疑心暗鬼に陥っている描写。
Buddah blessed this beat and then I preached like we Quran
Buddahがこのビートを祝福し、それから俺たちはコーランのように説教を垂れたのさ
※プロデューサーBuddah Blessの名前(仏教)と、イスラム教の聖典コーランを並列させ、自身のストリートの生々しい教訓を神聖な教えに昇華させている。
[Verse]
Steady sayin' you gon' spin, so go'n 'head spin, nigga, damn
スピンするってずっと言ってるよな、ならさっさとスピンしに来いよ、クソが
※「spin」は敵のブロック(縄張り)に車で乗り込んで銃撃(ドライブバイ)すること。SNS等で口先だけの脅しをしてくる敵に対する余裕の挑発。
Soon as it's time to drill, these niggas ain't never got no wheels
いざドリルする時間になると、あいつらは決して車を持ってねぇんだ
※「drill」は殺し・襲撃のこと。いざ行動を起こす場面になると、逃走用の車(wheels)すら用意できずに逃げ腰になるフェイクなギャングたちへの冷笑。
Bum-ass nigga dug up through my trash to find a gem
ホームレスみてぇなクソ野郎が、宝石を見つけようと俺のゴミを漁りやがる
※Kodakの捨てたアイデアや残りカス(フロウやスタイル)ですら、他の底辺ラッパーにとっては宝(gem)になるという痛烈なディス。
Gold twenty-sixes look like honey drippin' off my rim
26インチのゴールドホイールは、リムから滴るハチミツみたいに見えるぜ
Only goal is to get paid like Mitch
唯一の目標は、ミッチみたいに稼ぐことだ
※2002年のフッド映画の金字塔『Paid in Full』の登場人物であり、大金を手にするハスラーの象徴「Money Making Mitch」へのリファレンス。
Boy, you know get low, I'm 'bout to wave my stick
ボーイ、身を屈めろよ、俺がこれからスティックを振り回すからな
※「stick」は拡張マガジンを付けたアサルトライフルなどの大型銃器を指すスラング。
Stop runnin', ho, bitch, you 'bout to take my dick
逃げるのはやめな、ビッチ、これから俺のモノを喰らわせてやる
※銃を乱射する暴力的な文脈から、突如として性的な文脈へとシームレスに切り替わるKodak特有の変則的なリリシズム。
You gon' lie, her pussy bitin' like a canine bit
お前は嘘をつくんだろうな、あいつのプッシーは軍用犬に噛まれたみたいに食いついてくるぜ
※「canine」は警察犬や軍用犬(K-9)。強烈な性描写をストリートの荒々しい比喩で表現している。
Soon as he looked up, sniped him and then K5 dip
奴が顔を上げた瞬間に狙撃して、K5でずらかる
※「sniped」は自身のクルー「Sniper Gang」に掛けた表現。「K5」はシボレー・K5ブレイザーなどの大型SUVを指し、暗殺直後に素早く逃走(dip)する情景を描いている。
I gotta take care of my hygiene too to pay my wrist
手首に払うために、俺は衛生状態にも気を遣わなきゃならねぇ
※手首の超高級時計に見合うように身なり(hygiene)を清潔に保つというフレックス。または、ドラッグの調理(密造)の際に手を洗う行為の隠喩。
Diamonds hittin', it's like bling, blaow, blip
ダイヤモンドが光を放つ、ブリン、ブラウ、ブリップって感じにな
Please don't wake up the devil, I'm tryna raise my jit
どうか俺の中の悪魔を起こさないでくれ、俺は自分のガキを育てようとしてるんだ
※「jit」はフロリダ特有のスラングで「若い奴、子供」。ストリートの暴力的な過去や悪魔的な衝動から離れ、父親として真っ当に子供を養おうとする切実な葛藤。
Niggas said you a stepper, whatever, hey, bye, bitch
お前はステッパーだなんて奴らは言うが、どうでもいい、じゃあな、ビッチ
※「stepper」はストリートで引き金を引く武闘派のこと。相手の評判など意に介さず、あっさりと一蹴する絶対的な強者のスタンス。
Spun a molly black in the White House, ain't no shame in my shit
ホワイトハウスでもモリーをキメて真っ黒にやったぜ、自分のやり方に恥じることなんて一つもねぇ
※Kodakはドナルド・トランプ元大統領から恩赦を受けてホワイトハウスを訪れた歴史を持つ。「molly」はMDMA(エクスタシー)。国の最高機関に呼ばれても媚びることなく、ストリートの流儀(ドラッグやゲットーの振る舞い=black)を貫き通したという伝説的なパンチライン。一説によれば、この行はファンコミュニティで彼のリリシズムの最高到達点の一つとして高く評価されている。
[Chorus]
Get to that chicken, whippin' waffles, luxury
あのチキンを手に入れろ、ワッフルをかき混ぜる、ラグジュアリーだ
Ain't sip, but that's an awful lot of cough syrup, cuz
飲んじゃいねぇが、こいつはものすごい量の咳止めシロップだぜ、兄弟
Sendin' dealies like a boss, ain't gettin' nothin', just here for the month
ボスのごとく取引を回す、何も得ちゃいねぇ、ただ今月を乗り切るためだけにここにいる
Dentist put my money for where my mouth once was
俺の口があった場所に、歯医者が俺の金を突っ込んだんだ
Got an icebox where my heart used to live
かつて心があった場所には、今じゃアイスボックスがある
From the projects, you ain't nobody 'til somebody get you killed
プロジェクト出身じゃ、誰かに殺されるまでお前は何者でもない
Get who killed? Get who killed? Who, me, him?
誰が殺されるって? 誰が殺される? 誰だ、俺か、あいつか?
Buddah blessed this beat and then I preached like we Quran
Buddahがこのビートを祝福し、それから俺たちはコーランのように説教を垂れたのさ
