Artist: Kodak Black
Album: Kodak The Blessing
Song Title: Blessing
概要
本作は、Kodak Blackの自己内省とストリートでのサバイバーズ・ギルトが入り混じった、極めてスピリチュアルな一曲である。プロデューサーにはトラップシーンを代表するBuddah BlessとJabariOnTheBeatを迎え、彼らのシグネチャータグから楽曲が幕を開ける。フロリダのゲットーを抜け出しスターダムにのし上がったKodakだが、本作では自身の成功を単なるフレックス(自慢)として消費するのではなく「神の祝福(Blessing)」として謙虚に受け止めている。同時に、「なぜ自分だけがプロジェクト(公営住宅)を抜け出せたのか」というストリート出身者特有の葛藤を描き出している。幾度もの刑務所暮らしを経験した彼が、高級時計であるスケルトンウォッチを通して「時間」の重みを再評価するなど、深い死生観と宗教観(キリスト教、仏教などの混交)が垣間見える。彼のキャリアにおける「成熟」と「贖罪」のフェーズを象徴する重要なトラックだ。
和訳
[Intro]
(Hit 'em with the Jab)
※プロデューサーであるJabariOnTheBeatのビートタグ。
(Buddah Bless this beat)
※アトランタの大物プロデューサー、Buddah Blessのシグネチャータグ。
[Chorus]
Kodak the blessing, Kodak the boss, Kodak that boy
Kodakは神からの祝福、Kodakはボス、Kodakは特別な存在だ
Kodak the business, gotta get solved
Kodakはビジネスそのもの、問題を片付けねぇとな
※ビジネス上のトラブルやストリートのいざこざを「解決(solve)」しなければならないというハスラーとしての責任と重圧を示している。
Wake up, breakfast, I ain't skippin', take me a walk
目を覚まして朝食を食う、抜かしたりはしねぇ、散歩にも行くぜ
※刑務所での規則正しい生活習慣(朝食と決められた時間の運動)の名残、あるいはシャバでの自由で健康的な日常を満喫する様子を描写している。
There ain't no paper to write these lyrics, I got a hundred dollars
このリリックを書く紙がねぇから、100ドル札に書き留めるんだ
※ストリートで成功し「紙(paper=札束の暗喩)」は腐るほどあるが、文字通りのメモ用紙がないという皮肉とフレックスを掛け合わせた巧妙なライン。
Thanking You, God, not just for the chicken, but also for this pot
神に感謝する、チキンだけじゃなく、このポットにもな
※「chicken」はストリートスラングで「金(札束)」を指す。「pot」は調理鍋のことだが、ストリートの文脈ではドラッグ(クラック・コカイン)を密造するための鍋を意味するダブルミーニング。合法・非合法を問わず、過酷なゲットーで生きる術を与えてくれた神への、ストリートハスラーなりの祈り。
What make me so different from the other jits that's on the block?
ブロックにいる他のガキ共と、俺の何がそんなに違うって言うんだ?
※「jit」はフロリダ特有のスラングで「若い奴、ガキ」を意味し、Kodakの地元ポンパノビーチをはじめ、フロリダのラッパーが頻繁に使用する。自分だけがフッドを抜け出して成功してしまったことへのサバイバーズ・ギルトが表れている。
I ain't sayin' I'm more special than niggas out the projects
プロジェクトの連中より俺の方が特別だなんて言うつもりはねぇ
※「projects」は低所得者向け公営住宅のこと。
'Cause if I deserve a medal, nigga, so do all them
だって俺がメダルを貰えるってんなら、あいつら全員も貰う資格があるからな
※あんな過酷なフッドの環境を生き抜いていること自体がすでに称賛(メダル)に値するという、地元への深いリスペクトと連帯感の表明。
[Verse]
That time in prison made me appreciate these skeleton watches
ムショにいたあの時間が、このスケルトンウォッチの価値を教えてくれた
※スケルトンウォッチは内部の機械の動きが見える高級時計(リシャール・ミルなど)。刑務所で「時間(time)」の重みを知ったからこそ、文字通り「時を刻む構造」が見える時計に魅了されているという深いパンチライン。
It ain't no tellin' how many skulls and bones that's in my closet
俺のクローゼットにどれだけの頭蓋骨と骨が隠されてるか、誰にも分からねぇよ
※「skeleton in the closet(公にできない秘密・過去の罪)」という英語の慣用句を、前の行の「スケルトン(skeleton)」ウォッチに掛けたワードプレイ。ストリートで手を染めてきた暴力や犯罪の記憶を暗示している。
Wake up, do your hallelujah, Buddha, kumbaya then
目を覚まして、ハレルヤを唱え、ブッダに祈り、クンバヤを歌うんだ
※キリスト教(ハレルヤ)、仏教(ブッダ)、黒人霊歌(クンバヤ)など、様々な宗教的モチーフを並列させ、彼自身のスピリチュアルでカオスな精神世界を表現している。また、プロデューサーのBuddah Blessへのネームドロップも兼ねている。
In and out, I sign my will on a dollar bill
中に入ったり出たりしながら、1ドル札に遺言をサインする
※「In and out」は刑務所やストリートの危険な生活への出入りを示す。いつ死ぬか分からないため、手元にある1ドル札に遺書を書くという極限状態の描写であり、ヒップホップファンの間では彼の精神的切迫感が現れた名ラインとして評価されている。
So this 'posed to be that pill you say gon' make me chill?
で、これが俺を落ち着かせてくれるって言う、あのピルなわけ?
※トラウマやプレッシャーから逃れるために、パーコセットやザナックスなどの処方薬に依存するSad Boy的な一面が垣間見える。
You the one keep that shit too real, that's why they ain't call you Kill
お前はマジでリアルすぎる、だから奴らはお前をキルとは呼ばねぇんだ
※Kodakのストリートネームや「Kill Bill」といった別名に関連するライン。本物の殺し屋はわざわざ自分を「Kill(殺し)」と名乗るような安いアピールはしないというストリートの掟、あるいはKodak自身が単なる暴力の象徴以上の「リアル」な存在であることを示している。
Triller (Triller)
トリラー (Triller)
※SNSアプリのTrillerに掛けつつ、「Too real(リアルすぎる)」という意味のヒップホップスラングである「Trill」を強調している。
Pull up for the scrill, scrilla
金のために車を停めるぜ、スクリラ
※「scrill」や「scrilla」は90年代から使われる「金・現金」を意味するストリートスラング。ハッスルを続けるスタンスを再確認している。
[Chorus]
Kodak the blessing, Kodak the boss, Kodak that boy
Kodakは神からの祝福、Kodakはボス、Kodakは特別な存在だ
Kodak the business, gotta get solved
Kodakはビジネスそのもの、問題を片付けねぇとな
Wake up, breakfast, I ain't skippin', take me a walk
目を覚まして朝食を食う、抜かしたりはしねぇ、散歩にも行くぜ
There ain't no paper to write these lyrics, I got a hundred dollars
このリリックを書く紙がねぇから、100ドル札に書き留めるんだ
Thanking You, God, not just for the chicken, but also for this pot
神に感謝する、チキンだけじゃなく、このポットにもな
What make me so different from the other jits that's on the block?
ブロックにいる他のガキ共と、俺の何がそんなに違うって言うんだ?
I ain't sayin' I'm more special than niggas out the projects
プロジェクトの連中より俺の方が特別だなんて言うつもりはねぇ
'Cause if I deserve a medal, nigga, so do all them
だって俺がメダルを貰えるってんなら、あいつら全員も貰う資格があるからな
