Artist: Chance the Rapper
Album: 10 Day
Song Title: Prom Night
概要
『10 Day』(2012年)に収録された「Prom Night」は、シカゴの高校生だったChance the Rapperが、アメリカの高校生活における最大のイベントである「プロム(卒業パーティー)」をテーマに描いたノスタルジックな一曲だ。前半から中盤にかけては、リムジンを借りて家族に見送られながらプロムへ向かうという華々しい青春のファンタジーが語られるが、ヴァース2の終盤で「実はプロムには行かず、地元の洋服店で小さなライブをしていた」という衝撃的かつエモーショナルな事実が明かされる。ジョン・ヒューズ監督の青春映画のキャラクターへの自己投影や、コカインに溺れる同級生たちの描写を通じて、メインストリームの青春からドロップアウトし、音楽という独自の道を選んだ若きハスラーの覚悟と少しの寂しさが表現されている。サンプリングや派手なビートに頼らず、彼自身のストーリーテリング能力が光る初期の傑作である。
和訳
[Verse 1]
Charlie Bartlett, John Bender
チャーリー・バートレット、ジョン・ベンダー
※どちらもアメリカの青春映画における象徴的なはぐれ者キャラクター。(前者は『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』、後者は『ブレックファスト・クラブ』の不良少年)
Class switcher, time bender
クラスを抜け出す奴、時間をねじ曲げる奴
Chance Bennett, a peculiar name
チャンス・ベネット、奇妙な名前だ
Graduation night teachers Ferris Bueller'd my name
卒業式の夜、先生たちが俺の名前をフェリス・ビューラーみたいに呼んだんだ
※映画『フェリスはある朝突然に(Ferris Bueller's Day Off)』の有名な出欠確認シーンの引用。彼が学校にいなかったことを示唆している。
You made a mixtape? Good job, I hope you get a good job
「ミックステープを作ったの? よくやったわね、いい仕事に就けるといいわね」
※周囲の大人たちからの、ラッパーという夢を真剣に受け止めていない見下したような称賛の言葉。
We was all outcasts, only listened to Good Mob
俺たちはみんなはぐれ者だった、グッディー・モブばかり聴いていた
※アトランタの伝説的ヒップホップグループ「Goodie Mob」。社会の枠から外れた者たち(アウトキャスト)という言葉で、同郷のグループ「OutKast」とも掛けている。
I performed at fun fair, fun fact
移動遊園地でライブしたんだ、面白い事実だろ
I'm never going back to school, been there, done that
俺はもう二度と学校には戻らない、あそこにはもう行ったし、やることはやった
They see my little 10 Day tape and my dumb raps
奴らは俺のささやかな『10 Day』のテープと、俺のバカげたラップを見る
Don't call it impossible, if you really want that
もし本当にそれを望むなら、不可能だなんて言うな
They send my ass to summer school, don't call it a comeback
奴らは俺をサマースクールに送った、でもこれはカムバックじゃないぜ
※LL Cool Jのクラシック「Mama Said Knock You Out」の有名なラインの引用。
I just came to beat a bully's ass and get my lunch back
いじめっ子をぶちのめして、俺の昼飯を取り返しに来ただけさ
Chano y tequila, you know you know you don't want that
チャノとテキーラ、お前はそんなの食らいたくないって分かってるはずだ
I rap my songs in Spanglish, I wrap my weed in blunt wraps
俺はスパングリッシュでラップし、俺のウィードはブラントの皮でラップする
※「rap」と「wrap(巻く)」の言葉遊び。Spanglishは英語とスペイン語のミックス。
Wrapped up in this one line I hope that shit get unwrapped
この1行に包み込んだものを、誰かが解き明かしてくれるといいんだが
As if niggas was getting signed off of a line off one rap
まるでたった1つのラップの1行で、契約を勝ち取れるかのように
Yo Vic, remember when they called us some freshmen niggas rapping?
なあヴィック、奴らが俺たちのことをラップしてる新入生だって呼んでたのを覚えてるか?
※同郷の盟友Vic Mensaへの呼びかけ。高校に入学したばかりの頃の回想。
Now I ain't gonna be a freshman and I'm rapping
今じゃ俺は大学の新入生になるつもりはないし、それでもラップしてる
I should've learned a lesson from all of this shit happening
これまでに起きたすべてのクソみたいな出来事から、教訓を学ぶべきだった
I just look over to Justin for refreshments of the Captain
俺はただジャスティンの方を見て、キャプテンのおかわりを求める
※「Justin」はチャンスの親友。「Captain」はラム酒のキャプテン・モルガンのこと。
It's sipping when it's weak sauce, it's shots if it's cracking
大したことない時はちびちび飲んで、盛り上がってる時はショットで一気飲みだ
※「weak sauce」はつまらない状況、「cracking」は最高に盛り上がっている状況。
Sip it when we tear up, and chug it if we laughing
涙を流す時はちびちび飲んで、笑い転げる時はがぶ飲みする
Fuck it if we're fucked up I never thought of Chatham
俺たちが酔い潰れてようが知るか、俺はチャタムのことなんて考えたこともなかった
※「Chatham」はシカゴのサウスサイドにある地区。
Until the day they said I would have to chat without 'em
奴ら抜きで語り合わなきゃならないって言われたあの日まではな
※「Chatham」と「chat without 'em(彼らなしで語る)」の言葉遊び。ストリートの暴力等で仲間を失う過酷な現実。
And I'm just in the studio hoping that it sounds right
そして俺はスタジオにいて、良い音になっていることを祈っているだけだ
Here's a brighter bulb for your limelight
君のスポットライトのための、もっと明るい電球をここに用意したぜ
And this is your night, homie, shine bright
そしてこれは君の夜だ、相棒、眩しく輝けよ
This for everybody's fucking prom night
これはみんなの、最高のプロムの夜のための曲だ
[Chorus]
And it's alright, and it's okay
そして、それはそれでいい、大丈夫さ
And we're all good, we're with homies
俺たちはみんな最高だ、仲間と一緒にいるから
Any problems, you can call us
何か問題があったら、俺たちを呼べばいい
It's all love, it's all love
すべては愛だ、愛なんだ
And it's alright, and it's okay
そして、それはそれでいい、大丈夫さ
And we're all good, we're with homies
俺たちはみんな最高だ、仲間と一緒にいるから
Any problems, you can call us
何か問題があったら、俺たちを呼べばいい
It's all love, it's all love
すべては愛だ、愛なんだ
[Verse 2]
Uh, yo, this prom shit feel like the Grammys, yo
あー、なあ、このプロムってやつはグラミー賞みたいに感じるぜ
These pictures Granny took gonna make me ask, "Where'd Granny go?"
おばあちゃんが撮ってくれたこの写真を見たら、「おばあちゃんはどこに行っちゃったの?」って聞くことになりそうだ
So pass the Sanyo to Auntie Jo
だからそのサンヨーのカメラを、ジョーおばさんに渡してくれ
And snap a couple candids to the family, get some cameos
家族の自然な姿を何枚か撮って、カメオ出演させてやってくれ
You can change the clocks but you can't change hours
時計の針は変えられても、過ぎた時間は変えられない
※サマータイムの時計調整と、失われた時間は戻らないという人生の真理を掛けている。
I'm waiting on the day Spring can't bring flowers
春が来ても花を咲かせられない日を待っているんだ
※永遠に冬(ストリートの冷酷さ)が続く日、あるいは死を暗示するメランコリックなライン。
Let me ask for minutes from dad for those campaign hours
親父のあの選挙活動の時間から、少しばかり俺に時間を分けてもらえないか頼ませてくれ
※チャンスの父親はシカゴ市長の側近で政治活動で多忙だった。息子としての寂しさを覗かせている。
And pour these thirsty hoes a couple champagne showers
そしてこの喉の渇いたビッチどもに、シャンパンシャワーを浴びせてやる
And hop up in that limo, the hood going dummy
そしてあのリムジンに飛び乗る、フッドはバカ騒ぎだ
The hood fucking love me, the hood think we lovely
フッドは俺を愛してる、フッドは俺たちを最高だと思ってる
So go and pop some bubbly, this right here's to loyalty
だから行ってシャンパンを開けよう、これは忠誠に乾杯だ
This to a moment's glimpse at royalty
これは一瞬だけ垣間見た、王族のような気分に乾杯だ
This is for my momma Jann who spoiled me
これは俺を甘やかしてくれた、母さんのジャンに捧げる
Look what we've accomplished
俺たちが成し遂げたことを見てくれよ
Time flies, watches look like magnets on a compass
時は飛ぶように過ぎる、時計の針はまるでコンパスの磁石みたいに見える
Before we dip, Gladys said a prayer over the limo
出発する前、グラディスがリムジン越しに祈りを捧げてくれた
※Gladysは彼の亡くなった親族。天国からの加護の表現。
Bumping 10 Day with the angels with Jesus shopping my demo
天使たちと一緒に『10 Day』をガンガン鳴らして、ジーザスが俺のデモを売り込んでくれている
And rode up out of Chatham, the whole hood clapping
そしてチャタムを抜け出して、フッド全体が拍手喝采だ
And damn it would be crazy if any of this shit had happened
クソ、もしこのうちのどれか一つでも本当に起きてたら、ヤバかっただろうな
But it didn't, I missed prom, I missed it to spin
でもそんなことは起きなかった、俺はプロムには行かなかった、曲を流すために欠席したんだ
I did a show at AKIN and I would do it again
俺はAKINでライブをやった、そして俺はもう一度同じことをやるだろう
※「AKIN」はシカゴにあったストリートウェアのブティック。これまでの華やかなプロムの情景がすべて妄想であったという種明かしであり、メインストリームの青春を捨てて音楽の道を選んだ決意の表れ。
[Chorus]
'Cause it's alright, and it's okay
だって、それはそれでいい、大丈夫さ
And we're all good, we're with homies
俺たちはみんな最高だ、仲間と一緒にいるから
Any problems, you can call us
何か問題があったら、俺たちを呼べばいい
It's all love, it's all love
すべては愛だ、愛なんだ
And it's alright, and it's okay
そして、それはそれでいい、大丈夫さ
And we're all good, we're with homies
俺たちはみんな最高だ、仲間と一緒にいるから
Any problems, you can call us
何か問題があったら、俺たちを呼べばいい
It's all love, it's all love
すべては愛だ、愛なんだ
[Verse 3]
Look at, look at your business tux, all night airplane
見ろよ、お前のそのビジネス用のタキシードを、一晩中の飛行機
※「airplane」はドラッグでハイになっている状態の比喩。
Go and get your racist on, all white everything
お前のレイシストぶりを発揮してこいよ、全身白ずくめでな
※プロムの衣装として全身真っ白のタキシードを着ていることを、「all white everything(Young Jeezyの楽曲からの引用)」と表現し、白人至上主義に掛けていじっている。
I'm on my paper now, put that on my heading
俺は今自分の紙に向き合ってる、それを俺の見出しに書いておけ
※「paper」は紙幣(お金)のこと。
I ain't even write this down, I don't write e'rything
俺はこれを書き留めてすらいない、俺はすべてを書くわけじゃないんだ
I know y'all don't like everything
お前らがすべてを気に入るわけじゃないってことは分かってる
She want a night she can call her wedding
彼女は自分の結婚式と呼べるような夜を望んでいる
※プロムの夜を結婚式のように神聖視する女子生徒の描写。
Giving Eskimo kisses, with some Eskimo bitches
エスキモーのビッチたちと、エスキモー・キスをしてる
※「Eskimo kiss」は鼻と鼻をこすり合わせる行為。「Eskimo bitches」は雪(コカインの隠語)を好んで吸う女たちのこと。
Nose diving, going all night sledding
ノーズ・ダイビングして、一晩中ソリ滑りをしてる
※鼻からコカインを吸い込む行為を、雪山をソリで滑るという冬のレジャーのメタファーで描いている。
Coked out like, "Don't change when you grow up
コカインでラリった状態でこう言うんだ、「大人になっても変わらないでね
I hope you get some change when you blow up"
あなたがブレイクした時に、いくらかの小銭を手に入れられるといいわね」
※「change」には「変わること」と「小銭(お金)」のダブルミーニングがある。
'Cause honestly I've always loved the way that you could throw up
だって正直、私はあなたの吐き戻すようなやり方がずっと好きだったから
Rest up on my shoulder, float up, flying lotus
私の肩で休んで、浮かび上がって、フライング・ロータスみたいに
※LAのプロデューサー「Flying Lotus」の名前と、ドラッグで宙に浮くような感覚、あるいは蓮の花のようなサイケデリックな情景を掛けている。
"You deserve a warm towel, you deserve a soda
「あなたは温かいタオルをもらう価値がある、ソーダをもらう価値がある
You deserve a quiet room, you deserve a sofa
静かな部屋をもらう価値がある、ソファをもらう価値がある
You deserve a Ferrari and a matching tiara
フェラーリと、それに合うティアラをもらう価値がある
And a hand to wipe away all that running mascara"
そして、その流れ落ちたマスカラを拭き取ってくれる手をもらう価値があるわ」
※ドラッグでハイになり、感情的になって化粧が崩れた状態の介抱の描写。
But I, I want to thank you for this prom night
でも俺は、俺はこのプロムの夜を君に感謝したいんだ
Thank you for this prom night
このプロムの夜をありがとう
Thank you for this prom night
このプロムの夜をありがとう
I really enjoyed my prom night
俺は本当に自分のプロムの夜を楽しんだよ
[Chorus]
It's alright, and it's okay
それはそれでいい、大丈夫さ
And we're all good, we're with homies
俺たちはみんな最高だ、仲間と一緒にいるから
Any problems, you can call us
何か問題があったら、俺たちを呼べばいい
It's all love, it's all love
すべては愛だ、愛なんだ
[Outro]
So good, so right, hey baby
すごくいい、すごく正しい、なあベイビー
So good, so right
すごくいい、すごく正しい
You know it feels so good
すごくいい気分だって分かるだろ
So good, so right
すごくいい、すごく正しい
To be with you tonight
今夜、君と一緒にいられることが
So good, so right
すごくいい、すごく正しい
To be with you tonight
今夜、君と一緒にいられることが
So good, so right
すごくいい、すごく正しい
To be with you tonight
今夜、君と一緒にいられることが
