Artist: Chance the Rapper
Album: 10 Day
Song Title: 22 Offs
概要
『10 Day』(2012年)に収録された「22 Offs」は、Flying Lotusの傑作ビート「Camel」をジャックし、1分半強という短いランタイムの中で驚異的な言葉遊びを展開するインタールード的なトラックだ。タイトルの「22 Offs」が示す通り、曲中で「Off」という単語、あるいは「Often」「Officer」「Awful」「Coffin」など「Off」の音を含む言葉が22回以上連続して使用されるという、高度なライミングのギミックが仕掛けられている。リリックでは、アルコールやドラッグでハイになっている状態(Off)から始まり、高校を停学になった(Off campus / 10 days off)経緯、さらには警察の不当な取り調べや暴力に対する怒りへとテーマがシームレスに移行する。短いながらも、彼特有のユーモアとシカゴの警察組織の腐敗に対する痛烈な批判、そして映画的なストーリーテリングが見事に同居しており、チャンスの純粋なラップスキルと作詞の巧みさを凝縮した、ファンから高く評価される一曲である。
和訳
[Verse]
22 Offs
22の「オフ」
I'm off the nog, I'm off the Loko
エッグノッグでハイになり、フォー・ロコで飛んでいる
※「off the 〜」は酒やドラッグで酔っている、ハイになっている状態。「nog」はアルコール入りエッグノッグ。「Loko」は安価でアルコール度数が高く、当時アメリカの若者の間で社会問題化した酒「Four Loko(フォー・ロコ)」のこと。
I'm off that local, I'm on that global
地元のノリから抜け出し、世界的な規模へ向かっている
※「off」を「〜を離れて」という意味で使い、ローカルなラッパーからグローバルなスターへと飛躍する野心を示している。
I often had dreams of being locked in my momma's Volvo
母さんのボルボに閉じ込められる夢をよく見たよ
※「often(よく)」の中に「off」の音が含まれている言葉遊び。
Watching the garage burn down, I'm off the codo
ガレージが燃え落ちるのを見つめながら、コデインで飛んでいる
※「codo」は強力な鎮痛剤であり乱用される「Hydrocodone(ヒドロコドン)」や「Codeine(コデイン)」のこと。
I'm off the top, I'm off some pot, I'm off Ciroc, I'm off a lot
即興でラップし、ハッパを吸い、シロックを飲み、とにかく色々なものでキマっている
※「off the top」は頭に浮かんだ言葉をそのままラップする(フリースタイル)こと。「pot」はマリファナ、「Ciroc」はヒップホップ界隈で人気の高級ウォッカ。
They gave me 10 days off, that's an awful lot
奴らは俺に10日間の休みを与えた、そいつは酷く長いな
※マリファナ所持による「10日間の停学処分」への言及。「awful(酷い・大量の)」にも「off」の音が隠されている。
I was off campus but the officer
俺はキャンパスの外にいたのに、あの警官が
※「off campus」「officer」と「off」の音の連打。
Told the office that he saw me from the parking lot
駐車場から俺を見たって、職員室に報告しやがったんだ
※「office」で再び「off」の音を使用。学校外にいたにもかかわらず、学校付きの警官に見つかってチクられたという、ミックステープの根幹となる実際の停学エピソード。
But it's all good, I'm off that
でも全然構わないぜ、俺はそんなこと気にしてないからな
※「off that」は「そんなことには関心がない、既に乗り越えた」という意味のスラング。
I'm just finna off his ass, off of the Ave while rocking all black
全身黒ずくめでアベニューを離れ、あいつの命を奪ってやるだけさ
※「off his ass」の「off」は「殺す、片付ける」という物騒なストリートスラング。警察への復讐のファンタジー。
Dip off and hide the garbage bags in the dip spot
こっそり抜け出して、ゴミ袋を隠れ家に隠す
※「Dip off」はその場から急いで立ち去ること。死体を詰めたゴミ袋を処理するマフィア映画のような描写。
Just to make sure that I don't get caught
俺が絶対に捕まらないようにするためにな
Buying hella bug spray, making sure I get off
大量の虫除けスプレーを買って、確実に無罪放免になるようにする
※証拠隠滅や匂い消しのために薬品(虫除けスプレー)を買い込む様子。「get off」は裁判などで「処罰を免れる、無罪になる」こと。
They told me gon' rock it, I told them that it's lift off
奴らはぶちかませと言った、俺は離陸の時だと答えた
How all my homies get caught? Picked off by a dick cop
どうして俺のダチらはみんな捕まっちまったんだ? クソ警官に狙い撃ちされたのさ
※「dick」は嫌な奴、クソ野郎。「Picked off」は一つずつ狙い撃ちにされること。シカゴの警察による若者たちへの標的型の不当な取り締まりを批判。
Why you allowing hiccups? Why you just didn't slip off?
どうしてミスなんか許したんだ? なぜさっさと逃げなかった?
※「hiccups」はしゃっくり、転じて一時的な問題やちょっとしたミス。警察に捕まってしまった仲間へのもどかしさ。
And now I'm at the precinct, and I'm off of my square
そして今、俺は警察署にいて、冷静さを失っている
※「precinct」は警察署。「off my square」は「自分の立ち位置を見失う、冷静さを欠く、動揺する」というAAVE/シカゴ特有のスラング。
Having a white cop beat me while he offers me squares
白人警官に殴られながら、奴からタバコを差し出されている
※「offers」に「off」の音。暴力を振るいながら、タバコ(squares)を与えて自白を促すというアメとムチを使った悪質な取り調べの描写。「squares」はタバコを指すスラングであり、前の行の「square」と掛けた高度なダブルミーニング。
You gon' torture me, yeah? Well, that's awfully fair
俺を拷問するつもりか? ああ、そいつは酷く公平だな
※密室での不当な暴力を「公平だ」と強烈に皮肉っている。「awfully」で再び「off」の音。
All for nothing, tryna tweak me like you offering years
全部無駄なことだ、何年もの懲役をチラつかせて、俺を狂わせようとしてるんだろ
※「tweak」は極度のストレスや恐怖でおかしくなること。長期刑(years)を宣告するぞと脅して精神的に追い詰めようとする警察の手口。
Bitch, I ain't scared, I'm already here
ビッチ、俺はビビってないぜ、もうここまで来ちまったんだ
Tell ya partners and ya friends the next coffin is theirs
お前の相棒や友達に伝えておけ、次の棺桶は奴らのものだってな
※「coffin(棺桶)」の中に「off」の音。警察に対する強気な死の宣告。
Guess what, bitch? I'm from internal affairs
どうだビッチ? 俺は内務調査班の人間だぜ
※「internal affairs」は警察内部の不正や汚職を調査する部署。ただ怯える不良少年だと思わせておいて、実は汚職警官を摘発するためのおとり捜査官だったという、映画のようなどんでん返しのギミック。
Looking for crooked cops to tweak so I can offer 'em years
汚職警官たちを狂わせ、奴らに何年もの懲役を突きつけてやるために探してたのさ
※数行前で自分が警官から言われた「offer 'em years(何年もの懲役を突きつける)」というセリフをそっくりそのまま返し、完全に立場を逆転させている鮮やかなパンチライン。
Have me tweaking like I'm all full of fear (Alright, I'm tweaking)
まるで俺が恐怖でいっぱいになって狂いそうなフリをしてな(よし、俺は狂ってるぜ)
※わざと怯えたフリ(tweaking)をして汚職警官の尻尾を掴もうとしていたという種明かし。最後の「(Alright, I'm tweaking)」は、架空の映画的ストーリーから一転して「ラッパーとしてのチャンス」の我に返ったようなアドリブ。
