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Brain Cells - Chance the Rapper 【和訳・解説】

Artist: Chance the Rapper

Album: 10 Day

Song Title: Brain Cells

概要

「Brain Cells」は、Chance the Rapperの画期的なデビュー・ミックステープ『10 Day』(2012年)に収録された、彼の初期の代表曲の一つである。プロデューサーのPeter Cottontaleが手がけたメロウでジャジーなビートに乗せ、チャンスはタイトルの通り「マリファナを吸い過ぎて脳細胞を焼き尽くしてしまった」という自虐的なテーマを歌っている。しかし、単なるストリートのウィード・アンセムにとどまらず、その裏にはシカゴの過酷な現実や人間関係の煩わしさから逃避するための防衛機制としての側面が隠されている。リリック面では、のちの『Acid Rap』へと繋がる幻覚剤のメタファーや、映画『フック』などの90年代ポップカルチャーの引用、そして「i」や「r」の音を執拗に重ねる超絶的な言葉遊びが展開されており、彼の特異なストーリーテリングと作詞能力の高さがすでに完成の域に達していたことを証明する一曲である。ヒップホップファンの間では、シカゴ産ラップの系譜における重要なクラシックとして語り継がれている。

和訳

[Verse 1]

Here's a tab of acid for your ear
お前の耳のためのアシッドのタブだ
※「tab of acid」はLSD(幻覚剤)を染み込ませた紙片のこと。自身の音楽がドラッグのようにリスナーの脳を直接トリップさせるという比喩であり、次作『Acid Rap』のコンセプトを予見させるライン。

You're the plastic, I'm the passion and the magic in the air
お前はプラスチック、俺は情熱、そして空中の魔法だ
※「plastic」は中身のないフェイクなラッパーたちを指す。対して自分には本物の熱量と、場を支配する魔法(オーラ)があるという対比。

The flabbergasted avalanche of ambulances near
度肝を抜かれた救急車の雪崩が迫ってくる
※自身の圧倒的なライミングによって周囲が驚愕(flabbergasted)し、倒れたリスナーや同業者を運ぶために救急車が雪崩のように殺到するというメタファー。

The labyrinth of Pan's Lab is adamantly here
パンズ・ラビリンスの迷宮は断固としてここに存在する
※映画『パンズ・ラビリンス』の引用。過酷な現実とダークファンタジーが交差する同作の世界観を、暴力と隣り合わせのシカゴのストリート・ライフに重ね合わせている。

No assignments, book of rhyming and I'm drawing doodles
課題はなし、ライミングのノート、そして俺は落書きを描いている
※『10 Day』のコンセプトである10日間の停学期間中の様子。学校の宿題ではなく、リリック帳に向かい暇を持て余している。

I should rhyme rhyme with Ramen Noodles
俺はライムとラーメン・ヌードルで韻を踏むべきだな
※「rhyme(ライム)」と「Ramen(ラーメン)」で韻を踏むという自己言及的な言葉遊び。

Ramadan, I'm the Don of the diamond jewels
ラマダン、俺はダイヤモンドの宝石のドンだ
※イスラム教の断食月「Ramadan(ラマダン)」。前行の「Ramen」からR音とD音の響きを連続させて言葉を紡いでいる。

Fond of finding a way to kindly tell these toddlers toodles
この幼児たちに優しくさよならを言う方法を見つけるのが好きなんだ
※「toddlers」は赤ん坊、転じてレベルの低いラッパーたちのこと。「toodles」は別れの挨拶。FとTの頭韻(Fond, finding... / tell, toddlers, toodles)を連続させる高度なライミング。

I'm a kamikaze and I'm a kinda cuckoo
俺はカミカゼ、それに俺はちょっとイカれてる
※「cuckoo」はカッコウだが、スラングで「狂っている、頭がおかしい」を意味する。

I could write a fucking book, non-kamasutral
俺は本だって書ける、カーマスートラじゃないやつをな
※「kamasutral(カーマスートラ)」は古代インドの性愛の書。セックスや女の話ばかりしている他のラッパーとは違い、自分はもっと深みのある本(リリック)を書けるというアピール。

You niggas goofies, it's a conflict that is kinda crucial
お前らはマヌケだ、これはかなり重大な対立だぜ
※「goofies」はシカゴ特有のスラングで、ダサい奴やフェイクな不良を指す。

Caught you on the nine in all blue, yelling, "I'm a neutral"
全身青を着て9番通りで捕まったお前は、「俺は中立だ」と叫んでいる
※「the nine」はシカゴの危険なサウスサイド(79丁目周辺など)。「all blue」は特定のストリートギャングのカラー。普段はギャングの格好をしてイキっているのに、いざ敵対組織に囲まれると「俺は無関係だ」と命乞いをするストリートの偽物たちを嘲笑している。

But I'ma let the bull pass like matadors
でも俺はマタドールのようにその牛をやり過ごす
※「bull」は「bullshit(戯言)」の略と、闘牛の「雄牛」のダブルミーニング。ストリートのくだらない揉め事を闘牛士のように華麗にかわすスタンス。

Versus a Minotaur, verse is a metaphor
ミノタウロスと対峙し、ヴァースはメタファーだ
※ギリシャ神話の迷宮に住む牛頭人身の怪物ミノタウロス。前の行の闘牛士から連想ゲームのように言葉を繋ぎ、自身のラップ(ヴァース)が神話的な隠喩に満ちていることを示している。

Metamorphoses and I'ma fuckin animorph
変身する、俺はアニモルフだ
※「animorph」は90年代にアメリカの子供たちの間で流行した、動物に変身する少年たちを描いたSF児童文学『Animorphs(アニモルフ)』シリーズの引用。

I used to go to school with Anna Fedele & Danny Whorf
俺はアンナ・フェデーレやダニー・ウォーフと同じ学校に通っていた
※チャンスの実際の同級生や地元関係者の具体的なネームドロップ。等身大のシカゴの学生としてのリアリティを持たせている。

Remember I used to bang with the bad ones
俺が昔、不良たちとつるんでたのを覚えてるか
※「bang」はギャングに関わることや、ストリートで悪さをすること。

'Til my grandmama told on her grandson
おばあちゃんが孫の悪事を告げ口するまでな
※ストリートでギャングごっこをしていたが、祖母にバレて怒られたというローカルで微笑ましいエピソード。自身の非ギャングスタな一面を正直に語っている。

Mama said that I was way too handsome
母さんは俺がハンサムすぎると言った

To be throwing the hands, son, breaking walls like Samson
拳を振り回したり、サムソンのように壁を壊すにはな、息子よ
※「throwing the hands」は喧嘩をすること。「Samson(サムソン)」は旧約聖書に登場する怪力を持つ英雄で、神殿の柱を倒して建物を崩落させた。母から「顔に傷がつくから喧嘩はやめなさい」と諭された回想。

But I'ma throw a tantrum 'til I'm on every Samsung
でも俺はすべてのサムスンの画面に映るまで、癇癪を起こし続ける
※「tantrum」は派手に暴れ回ること。「Samsung(サムスン)」は韓国の電子機器メーカー。前行の「Samson」と語感を掛けつつ、世界中のテレビやスマホの画面に自分が映る(大スターになる)まで音楽業界で暴れてやるという野心。

Sanyo and handheld and handgun
サンヨー、携帯ゲーム機、そして拳銃にも
※三洋電機(Sanyo)のテレビ画面。「handheld」から「handgun」へと頭韻を繋いでいる。

Please put ya lighters up 'til life is up and light it up
命が尽きるまでライターを掲げて、火を点けてくれ

And slice a cut, the night is young, it's nice enough
そしてカットを切り分ける、夜はまだ早い、それで十分だ

The nicest blunt, the nicest stuff
極上のブラント、極上のネタ

My niggas out here trapping a lot
俺のダチらはここで盛んにハスリングしてる
※「trapping」はストリートでのドラッグ密売のこと。

I know you think you on, hiding Reggie sacks in your socks
自分がいけてると思ってるんだろ、靴下の中にレジーの袋を隠してな
※「Reggie」は質の低いレギュラー・ウィード(大麻)のこと。安物のネタを靴下に隠し持って、本物のハスラー気取りでいる若者たちを鼻で笑っている。

I hang with niggas, whole jab in the jock
俺はダチらとつるむ、股間にジャブを丸ごと隠して
※「jab」はシカゴのスラングで大量のドラッグ(主にヘロインやコカイン)の束のこと。「jock」はジョックストラップ(股間)。本物の売人たちと行動を共にしているというストリートの証明。

.44's for 15, yeah my nigga, we be taxing a lot
44を15で売る、そうさマイ・ニガ、俺たちはがっつり税金を取るぜ
※「.44's for 15」はドラッグの価格設定、あるいは44口径の銃器の取引に関する隠語。「taxing」はストリートで相手から法外な値段をぼったくること。

Only the goofies though, choking on a doobie though
マヌケな奴らからだけだけどな、ドゥービーでむせながら
※「doobie」はマリファナを巻いたジョイント。ストリートの掟として、仲間からは搾取せず、フェイクなカモ(goofies)からだけ金を巻き上げるというスタンス。

My eyes do be low, two be rolled, remember days of the Rufio
俺の目はマジでトロンとしてる、2本巻かれている、ルフィオの時代を思い出す
※「do be」は前行の「doobie」に掛けた言葉遊び。「Rufio」は1991年の映画『フック』に登場する、ピーター・パン不在のネバーランドでロストボーイたちのリーダーとなった少年の名前。無邪気だった子供時代への強いノスタルジー。

Remember the Days of Chan-Man and the Skeeter Man
チャン・マンとスキーター・マンの時代を思い出す
※「Chan-Man」はチャンス自身の幼少期のニックネーム。「Skeeter Man」はおそらく彼の幼馴染み。

Brrang dang to Lil' B and bang a-rang to Peter Pan
リル・Bへのブラン・ダン、そしてピーター・パンへのバン・ア・ラン
※「Brrang dang」はBay AreaのラッパーLil Bが多用するアドリブ。「bang a-rang(バンガラン)」は前述の映画『フック』でロストボーイたちが放つ戦いの雄叫び。現行のヒップホップカルチャーと子供時代のポップカルチャーをシームレスに同列に並べる、ブログ・エラ世代特有のリファレンス。

Igh! Nigga
イギィ! ニガ

I burned, I, I bu-, I bu-, I burned
俺は燃やした、俺は、俺は、俺は燃やした

I burned, I, I, I burned
俺は燃やした、俺は、俺は燃やした

(Br-br-br, hahahaha)

[Chorus]

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

To be worried 'bout my brain cells now, nigga
今さら自分の脳細胞の心配をするためにな、ニガ
※マリファナの吸い過ぎで脳細胞が死滅してしまったが、もはや「脳細胞の心配をするための脳細胞」すら残っていないという、ブラックジョーク的なパンチラインのフック。

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

To be worried 'bout my brain cells now, now, now, now
今さら自分の脳細胞の心配をするためにな、今さらな

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

To be worried 'bout my brain cells now, igh
今さら自分の脳細胞の心配をするためにな、イギィ

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

Down, down, down, down, down
完全に焼き尽くしたんだ

[Verse 2]

Light a joint, or spliff it if you classy
ジョイントに火を点けな、上品にいくならスプリフにしろ
※「joint」は大麻のみを巻いたもの。「spliff」はタバコの葉と大麻を混ぜて巻いたもので、ヨーロッパやカリブ海圏で好まれるため「上品(classy)」と表現している。

Split a swisha witcha nigga if you ask me
俺に言わせりゃ、ダチと一緒にスウィッシャーを分け合えよ
※「swisha」は安価な葉巻ブランドSwisher Sweetsのこと。中身のタバコ葉を抜いて大麻を詰め直す(ブラントにする)のがストリートの定番。

Ain't no questions hit it vividly and pass me
文句なしに豪快に吸い込んで、俺に回せ
※「hit it vividly」は深く吸い込んでハイになること。

Don't answer about your problems
お前の抱える問題について答えるな

Or your issues or your Ashleys
お前のトラブルや、お前のアシュリーたちのことなんか
※「Ashleys」は特定の女性の名前だが、ここでは「面倒くさいドラマを持ち込む女たち」の代名詞として使われている。ウィードを吸っている間は現実の煩わしい人間関係をシャットアウトしたいという願望。

It's a quarter to imminent, ten minutes to infinite
差し迫った瞬間まであと15分、永遠まであと10分
※ドラッグが効いてきて、時間の感覚が歪み、永遠のトリップに落ちていくサイケデリックな描写。

Rims, Henny, and reminisce, nostalgia and M&M's
リム、ヘネシー、そして回想、ノスタルジーとM&M's
※「Rims(車のホイール)」「Henny(高級酒)」というステレオタイプなヒップホップの成功の象徴と、「M&M's(子供向けチョコ)」という純粋なノスタルジーの象徴を並べ、大人になる過程でのアイデンティティの揺らぎを表現している。

Cinnamon tone women and feminines getting intimate
シナモン色の肌の女たちと女らしい子たちが親密になっていく

All broads is frivolous, homies could get they dividends
女たちはみんな軽薄で、ダチらは配当金を手にすることができる
※「dividends」は利益や分け前のこと。

Is he illiterate? Literal syndicate
あいつは読み書きができないのか? 文字通りのシンジケート

Illegitimate, idiot, gangbanger affiliate
非嫡出子、馬鹿野郎、ギャングの構成員
※「illiterate」「literal」「illegitimate」「idiot」「affiliate」と、執拗に「i」の短い母音で韻を踏みまくるパート。社会から見放されたストリートの若者に貼られるネガティブなレッテルを次々と羅列している。

Sick twisted prick, sick sadistic
病んだひねくれ者のクソ野郎、病的なサディスト

Son of a biscuit, man, fuck this shit
ビスケットの息子、なあ、こんなのクソ食らえだ
※「Son of a biscuit」は「Son of a bitch」をマイルドにした言い回し。レッテルを貼ってくる社会や、複雑すぎる現実のすべてに対して嫌気が差し、投げ遣りになっている。

Igh, I burned too many brain cells down
イギィ、俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

I burned, I burned, haha
俺は燃やした、燃やした、ハハ

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

Burned too many brain cells down, sing it with me
脳細胞を焼き尽くしすぎたんだ、一緒に歌ってくれ

[Chorus]

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

To be worried 'bout my brain cells now
今さら自分の脳細胞の心配をするためにな

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

Burned too many brain cells down, no, no
脳細胞を完全に焼き尽くしたんだ、ノー、ノー

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

To be worried 'bout my brain cells now, nigga
今さら自分の脳細胞の心配をするためにな、ニガ

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

Burned too many brain cells down
脳細胞を完全に焼き尽くしたんだ

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

To be worried 'bout my brain cells now, oh, no
今さら自分の脳細胞の心配をするためにな、オー、ノー

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

To be worried 'bout my brain cells now, fuck 'em
今さら自分の脳細胞の心配をするためにな、クソ食らえだ

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

To be worried 'bout my brain cells now
今さら自分の脳細胞の心配をするためにな

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた

I burned too many brain cells down
俺は脳細胞を焼き尽くしすぎた