\
Artist: Chance the Rapper
Album: 10 Day
Song Title: Missing You
概要
本作「Missing You」は、シカゴ出身のChance the Rapperが2012年にリリースしたブレイクアウト・ミックステープ『10 Day』に収録された、極めてパーソナルで重痛いテーマを孕んだ楽曲である。シカゴは「Chiraq(イラクをも凌ぐ戦場)」と揶揄されるほど銃犯罪が深刻な都市であり、チャンス自身も2011年に親友のRodney Kyles Jr.を目前で刺殺されるという凄惨なトラウマを経験している。本作では、そうした過酷なストリートの現実、幼いまま命を落とす「ブラウンの少年たち」の悲劇、そしてそれを単なるセンセーショナルな消費物として扱うメディアへの痛烈な批判が、魂を削るようなリリシズムで展開されている。悲しみから自己防衛のために銃を買い与える葛藤や、神と運命への怒りを露わにするバースは、彼が単なる明るいコンシャス・ラッパーではなく、シカゴの闇を背負いながらもがき苦しむ一人の青年であることをリスナーに強く印象づけた。シーンにおいても、彼のストーリーテリング能力の深さを示す重要なマイルストーンとして評価されている。
和訳
[Intro]
In the real world, these just people with ideas
現実世界では、こいつらはただアイデアを持った人間にすぎない
※ストリートでギャングスタとして振る舞う者たちも、本質的には何かを信じ込み、理想やイデオロギー(アイデア)に囚われただけのただの人間にすぎないというシニカルな視点。
In the real world, these just people with ideas
現実世界では、こいつらはただアイデアを持った人間にすぎない
In the real world, these just people with ideas
現実世界では、こいつらはただアイデアを持った人間にすぎない
In the real world, these just people with ideas
現実世界では、こいつらはただアイデアを持った人間にすぎない
[Verse]
That shit cray, that shit dead, that shit fake, plastic head
それってクレイジーだ、終わってる、フェイクだ、プラスチックの頭
※「That shit cray」はKanye WestとJay-Zの楽曲「Niggas In Paris」で流行したスラング。虚勢を張るストリートの連中を、中身が空っぽなマネキンのような存在(プラスチックの頭)と揶揄している。
Cassius Clay at his head, atta boy, atta kid
奴の頭にカシアス・クレイをぶち込む、よくやった、いい子だ
※「Cassius Clay」は伝説のボクサー、モハメド・アリの本名。ボクシングの強烈なパンチを頭に見舞うという比喩。周囲の大人たちが暴力を囃し立てる様子を「atta boy(よくやった)」という言葉で冷ややかに表現している。
I'ma need a napkin, cook 'em up
ナプキンが必要になるな、奴らを料理してやる
※マイクスキルで敵対するラッパーたちを完全に打ち負かす(料理する)ため、食後のナプキンが必要だというメタファー。
And he gon' need an Aspirin, hook him up
あいつにはアスピリンが必要になる、処方してやれ
※チャンスのラップを食らった相手は、あまりの凄さに頭痛を引き起こすため、鎮痛剤(アスピリン)が必要になるというパンチライン。
Niggas was busy scrappin', put 'em up
奴らが喧嘩に忙しくしてる間、拳を上げな
※「scrappin'」はストリートでの揉め事や喧嘩のこと。
I was too busy rapping, good as fuck
俺はラップするのに忙しすぎたんだ、最高にな
※周囲がギャングの抗争や無意味な喧嘩に明け暮れる中、自分はストリートの負の連鎖から距離を置き、音楽のスキルを磨くことに専念したというスタンス。
Niggas don't act like grown ups
奴らが大人みたいに振る舞わないのは
When niggas don't get to grow up
大人になるまで生きられないからだ
※ヒップホップファンの間で高く評価される、シカゴの悲惨な現実を突いたライン。若者たちが精神的に未熟で暴力的なのは、そもそも大人になる前に殺されてしまうため、まともな成長過程を踏めないからだという痛烈な社会への指摘。
Niggas don't wanna throw hands
奴らは素手で殴り合おうとはしない
※「throw hands」は素手で喧嘩をすること。昔のように拳ではなく、すぐに銃を使う現代の若者への言及。
That's what made me wanna throw up
だから俺は吐き気がするんだ
But these young gunners ain't nothin' but young stunners
でもこの若きガンナーたちは、ただ見栄を張りたい若者にすぎない
※銃を撃ちまくる若者(gunners)の根底にあるのは、周囲に自分を大きく見せたい(stunners)という虚栄心にすぎないという分析。
And niggas see you as come ups so niggas just wanna run up
そして奴らはお前を獲物だと見なし、ただ襲い掛かろうとする
※「come ups」は金品を奪ってのし上がるチャンス。「run up」は無防備な相手に駆け寄って襲撃すること。
Niggas asking, "What up?" I said on my soul, I'm a hundred
奴らが「調子はどうだ?」って聞いてくる、俺は魂にかけて、100パーセント本物だと答えた
※「I'm a hundred」は「keep it 100(真実でいる、嘘をつかない)」を意味するスラング。どんな過酷な状況でも、自分の信念を曲げないという誓い。
My niggas stay in the low end, the others stay in the hundreds
俺のダチはロー・エンドにいて、他の奴らはサウスサイドの100丁目辺りにいる
※「the low end」はシカゴの低所得層向け住宅(プロジェクト)が密集する地域。「the hundreds」はシカゴ南部の100番台のストリート(ロゼランド地区など)を指し、どちらも非常に危険なエリアであるという地理的コンテクスト。
My daddy throw me the hands and my momma told me to love 'em
親父は俺に拳を向け、母さんは奴らを愛せと言った
※厳格な教育や自己防衛を重んじる父親と、キリスト教的な隣人愛を教える母親という、相反する家庭内の教えの対比。
My neighbors told me they hunting, I hope I make it through summer
近所の連中が狩りをしてるって言ってた、この夏を生き延びられるといいんだが
※シカゴでは毎年夏になると殺人事件が激増する現象が知られている。「狩り(hunting)」はギャングによる敵対組織への報復や無差別な銃撃を示唆している。
They stole one of my niggas, I should have seen that one coming
奴らが俺のダチの一人を奪い去った、こうなることは予想できたはずなのに
※2011年に刺殺されたチャンスの親友、Rodney Kyles Jr.への言及。危険な環境下で、いつ誰が殺されてもおかしくない日常への絶望と後悔。
My priest told me it's angels, my niggas told me its nothing
神父は天使の仕業だと言い、ダチはただの虚無だと言った
※友人の死に対する解釈の相違。教会は「神に召された」と慰めるが、ストリートの仲間たちは「死んだらただの無になるだけだ」とニヒリズムに陥っている。
I'm thinking about my nigga he thinking before he die
俺はダチのことを考えてる、あいつは死ぬ前に何を考えていたのかと
I'm going to war with fate and I'm going to war with God
俺は運命と戦争をし、神と戦争をする
※善良な友人が理不尽に殺される世界に対する、創造主(神)や抗えない運命への強烈な怒りと反逆の宣言。
I'm burning up all the papers 'cause all the reporters lied
新聞を全部燃やしてやる、レポーターたちは全員嘘をついたからだ
※メディアが黒人の若者の死を単なる統計データやギャングの抗争として扱い、彼らの人間性や背景にある真実を歪曲して報道することへの嫌悪感。
I called up my lil' homie, bought him a .45
地元の後輩に電話して、あいつに45口径を買ってやった
※友人を殺された恐怖と悲しみから、自分自身も暴力のサイクルに巻き込まれ、後輩の自己防衛のために銃(.45キャリバーのハンドガン)を手渡してしまうという生々しい葛藤の告白。
Brown boys are dying and none of 'em were for business
ブラウンの少年たちが死んでいく、ビジネスのためなんかじゃなく
※有色人種(Brown boys)の若者たちが、麻薬の縄張り争いといったマフィア的なビジネス上の理由ですらなく、些細なSNSのディスやメンツのためだけに無意味に命を落としている現状。
And all of em' love they momma and all of they mommas miss 'em
あいつらはみんな母親を愛していて、母親たちはみんなあいつらを恋しく思っている
※ニュースでは「凶悪なギャング」として語られる被害者や加害者たちも、実際は皆、母親を愛し、母親から愛される一人の子供にすぎないという人間性の回復を訴えかけている。
And this shit is just stupid, this shit is fucking senseless
こんなのただの馬鹿げたことだ、こんなのクソみたいに無意味だ
The news shouldn't support it, this shit is getting expensive
ニュースはこれを助長するべきじゃない、代償が高くつきすぎている
※メディアがストリートの暴力をエンターテインメントとして消費・報道することで事態を悪化させているという批判。「expensive」は単なる経済的なコストではなく、若者たちの命という取り返しのつかない重い代償を指している。
[Outro]
I don't know why I sleep with my eyes wide
なぜ俺は目を見開いたまま眠るのか分からない
※トラウマやパラノイア(被害妄想)により、寝ている間も常に誰かに襲われるかもしれないという警戒を解くことができない重度のPTSD状態を描写している。
Hoping that I find you
君を見つけられることを願いながら
And I don't know why I sleep with my eyes wide
なぜ俺は目を見開いたまま眠るのか分からない
Hoping that I find you
君を見つけられることを願いながら
And now for something completely different
さて、全く別の話題に移りましょう
※イギリスの有名なコメディ番組「空飛ぶモンティ・パイソン」のキャッチフレーズのサンプリング。シリアスで重いテーマから一転してリスナーを突き放すギミックであり、同時に悲惨な殺人事件の直後に平然とスポーツや天気の話題に移るテレビのニュース番組の冷酷さを皮肉っているという考察が有力である。
And I don't know why I sleep with my eyes wide
なぜ俺は目を見開いたまま眠るのか分からない
Hoping that I find you
君を見つけられることを願いながら
And hoping that I find you
君を見つけられることを願いながら
I been hoping that I find you
ずっと君を見つけられることを願っているんだ
I'm missing you
君がいなくて寂しいよ
I'm missing you
君がいなくて寂しいよ
I'm missing you
君がいなくて寂しいよ
I'm missing you
君がいなくて寂しいよ
I'm missing you
君がいなくて寂しいよ
In the real world, these just people with ideas
現実世界では、こいつらはただアイデアを持った人間にすぎない
In the real world, these just people with ideas
現実世界では、こいつらはただアイデアを持った人間にすぎない
I'm missing you
君がいなくて寂しいよ
In the real world, these just people with ideas
現実世界では、こいつらはただアイデアを持った人間にすぎない
