Artist: Rakim
Album: The 18th Letter
Song Title: New York (Ya Out There?)
概要
1997年リリースのRakimのソロデビューアルバム『The 18th Letter』に収録された「New York (Ya Out There?)」は、ヒップホップ発祥の地であるニューヨークへの究極のラブレターであり、ストリートのリアルな情景を描き出したブーンバップ・クラシックである。プロデュースを手掛けたのは、NYヒップホップのサウンドを定義した最重要プロデューサー、DJ Premierだ。伝説的ヒップホップ映画『Wild Style』のワンシーンをサンプリングしたイントロから始まり、Rakimは5つの行政区(5 boroughs)が持つタフな現実、スポーツチーム、ストリートの掟、そしてファイブ・パーセンターズ(5 Percent Nation)の思想までを淀みなく描写していく。「The God MC」としての威厳を保ちながらも、ブレイクダンスやグラフィティといったカルチャーの原点に立ち返り、ヒップホップという文化を生み出したこの街への深い敬愛を捧げている。Nasの「N.Y. State of Mind」にも通じる、NY賛歌のマスターピースである。
和訳
{*from the movie "Wildstyle"*}
If you was born in New York City, let me hear say "You know that"!
ニューヨーク・シティで生まれたんなら、「間違いない」って言ってみな!
※ヒップホップの黎明期を描いた歴史的映画『Wild Style』からの声ネタのサンプリング。
YOU KNOW THAT
間違いない
[Verse 1: Rakim]
A-yo, once upon a rhyme where the scenery sets, you see stress
エイヨォ、昔々あるライムのところで、その景色が設定されれば、お前にもストレスが見えるだろう
※おとぎ話の決まり文句「Once upon a time」をもじった表現。ニューヨークのストリートの過酷な現実を描き出している。
Street's a matter of life and death, no regrets
ストリートは生死を分ける問題だ、後悔なんてしていられない
Life's a test, it's trife with special effects
人生は試練だ、特殊効果が施された厄介な代物さ
Neighborhood's full of reps, cities are projects
近所にはレペゼンする奴らが溢れ、街全体がプロジェクトだ
※「projects」は低所得者用公営住宅のこと。NYのゲットーのリアルな描写。
Where the young cadets get stripes from the vets
若い士官候補生たちが、退役軍人から階級章を受け取る場所だ
※若いハスラーたちが、ストリートの古株(vets)から認められ、プロップス(stripes)を得るというメタファー。
And comrades to quest to be the next to finesse
そして同志たちは、次にうまく立ち回る者になるために探求を続ける
Collect debts and select bets with death threats
借金を取り立て、殺しの脅しをかけながら賭けの対象を選ぶ
Object — cheddar; better your total net
目的はチェダーだ、お前の純資産を増やした方がいい
※「cheddar」はチーズの一種で、金(現金)を意味するスラング。
Where trends are set from ways to express the outfits
服装の表現方法からトレンドが生み出される場所
Friends get wet tryin' to make ends connect
ダチたちは生活を成り立たせるために血を流す
※「get wet」は血を流すこと、あるいはPCP(エンジェルダスト)を吸うことのダブルミーニング。ストリートで生き残るための過酷な闘争を示している。
Avenues to check, boulevards to sweat
チェックすべきアベニュー、汗水垂らすブルバード
The smell of gunsmoke's more common than cigarettes
銃煙の匂いの方が、タバコの匂いよりもありふれている
(WE GOT) cliques for wreck
(俺たちにはある)ぶっ壊すための徒党が
(WE LIKE) Pits for pets
(俺たちは好きだ)ペットにするならピットブルが
(WE GOT) Giants and Jets, the Knicks, Yanks and Mets
(俺たちにはある)ジャイアンツとジェッツ、ニックス、ヤンクス、そしてメッツが
※すべてニューヨークを本拠地とするプロスポーツチーム。NFLのジャイアンツとジェッツ、NBAのニックス、MLBのヤンキースとメッツ。
(WE LIKE) much respect, the sex extra wet
(俺たちは好きだ)多大なるリスペクト、極上の濡れたセックスが
And high-tech dialect you ain't catch yet
そしてお前にはまだ理解できないハイテクな方言
※ニューヨーク特有の高度なスラングや、Rakim自身の緻密なリリシズムのこと。
The Bronx
ブロンクス
Ya out there?
そこにいるか?
No doubt!
間違いない!
Brooklyn
ブルックリン
Ya out there?
そこにいるか?
[Verse 2: Rakim]
A-yo, we got blocks and blocks
エイヨォ、ここには数え切れないほどのブロックがある
Of big shots with big knots and big props
デカい札束と絶大なプロップスを持つ大物たちのブロックがな
Yo, this is where the bullshit stops
ヨォ、ここがデタラメが通用しなくなる場所だ
Where herbs get got
ハーブどもが狩られる場所だ
※「herbs」は弱者やダサい奴ら、マヌケを指すNY特有のスラング。
If you snitch, you get shot
もし密告すれば、お前は撃たれる
※「Stop Snitching(密告するな)」というストリートの絶対的な掟。
We get down, and leave the town in a state of shock
俺たちは本気でかまし、この街をショック状態に陥れる
(WE GOT) dangerous hang-out spots and slick cops
(俺たちにはある)危険なたまり場と、狡猾なサツが
Place called Rikers Island where kids get locked
ガキどもがぶち込まれる、ライカーズ・アイランドと呼ばれる場所
※ニューヨーク市のイースト川に浮かぶ悪名高い巨大刑務所。
A lotta gear to rock with blocks of clothes shops
洋服屋が並ぶブロックで、着こなすための大量のギアが手に入る
Styles are top notch, this is the place to watch
スタイルは最高級だ、ここが注目すべき場所だ
So blast the box, the radio station is hot
だからラジカセを鳴らせ、ラジオ局は熱気を帯びている
Ease your mind starin' at skylines from rooftops
屋上からスカイラインを見つめて心を落ち着かせな
Flip scripts for chips, and new whips off the lot
金のために台本をひっくり返し、ディーラーの駐車場から新車を引き出す
※「chips」は金、「whips」は高級車のこと。ハッスルして大金を手に入れるストリートドリームの描写。
Quick to call a shot, politic' with thick plots
瞬時に決断を下し、分厚い陰謀と共に駆け引きをする
And the Garden of Eden against the sea that we got
そして俺たちが手に入れた海と対峙する、エデンの園
To make sure the core of the Big Apple don't rot
ビッグ・アップルの芯が腐らないようにするためにな
※「Big Apple」はニューヨーク市の愛称。自分たちがNYのコア(核)を守り続けているという宣言。
Where seeing's believin', we be achievin' a lot
百聞は一見にしかずの場所で、俺たちは多くを成し遂げている
Where disc-jocks created hip-hop, check it out!
DJたちがヒップホップを創り出した場所だ、チェックしな!
(Queens - ya out there? no doubt
(クイーンズ - そこにいるか? 間違いない
Manhattan - no doubt
マンハッタン - 間違いない
New York city, Staten Island
ニューヨーク・シティ、スタテン・アイランド
New York, New York, Long Island
ニューヨーク、ニューヨーク、ロングアイランド
New York - ya out there?)
ニューヨーク - そこにいるか?)
[Verse 3: Rakim]
A-yo, we got five boroughs of ghettos with many places to meet
エイヨォ、ここには5つの区のゲットーがあり、出会う場所は数多くある
You get lost in busy streets, the city that never sleeps
お前は眠らない街の、喧騒のストリートで迷子になる
Mecca, Pelan, Medina, the population increase
メッカ、ペラン、メディナ、人口は増え続けている
※ファイブ・パーセンターズ(5 Percent Nation)の隠語。メッカは「ハーレム」、ペランは「ブロンクス」、メディナは「ブルックリン」を指す。NYの各地域をイスラムの聖地になぞらえている。
The desert and the oasis, New York, the far east
砂漠とオアシス、ニューヨーク、極東の地だ
※同じくファイブ・パーセンターズの文脈で、「クイーンズ」を砂漠(Desert)などと呼ぶ。アメリカの東海岸(far east)であるNYを神聖視している。
With Gods and sheiks, pretty Amazons for weeks
神々と首長たち、数週間も眺めていられる美しいアマゾネスたち
※「Gods」は目覚めた黒人男性(ファイブ・パーセンターズ)、「Amazons」は強く美しい黒人女性たちを意味する。
Player dons that fleece, the family's black sheep
金を巻き上げるプレイヤーのドンたち、一族の厄介者たち
Icons that teach but we all act unique
教えを説くアイコンたち、だが俺たちは皆ユニークに振る舞う
We got stats to reach, so we all have to eat
俺たちには到達すべきスタッツがある、だから皆食っていかなきゃならない
A mass of peeps, with they own masterpiece
大勢の仲間たちが、それぞれ自分自身の傑作を持っている
The crafts' elite, we be goin' past the peak
このクラフトのエリートたち、俺たちは頂点を超えていく
The latest technique no other place get as deep
他のどの場所よりも深く届く、最新のテクニック
Who parks release some of the world's greatest athletes
どこの公園が、世界で最も偉大なアスリートたちを輩出しているって?
※ラッカー・パークなど、ニューヨークの伝説的なストリートバスケの聖地から数々のNBA選手が生まれていることを誇示している。
DJ's and MC's and graffiti artistes
DJたち、MCたち、そしてグラフィティ・アーティストたち
Who use walls and subway trains for marquees
奴らは壁や地下鉄の車両を、自分たちの劇場の看板として使うんだ
※70年代から80年代にかけての、NYグラフィティ・カルチャーへの言及。
We go back to b-boys, breakdancin', breakbeats
俺たちはBボーイ、ブレイクダンス、ブレイクビーツへと立ち返る
And it'll never cease!
そしてそれは決して終わることはない!
And on that note, we say peace
そんなわけで、俺たちはピースと告げるんだ
