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Go! Go! Gorilla - Vince Staples 【和訳・解説】

Artist: Vince Staples

Album: Cry Baby

Song Title: Go! Go! Gorilla

概要

カリフォルニア州ロングビーチ出身のラッパー、ヴィンス・ステイプルズによる本楽曲「Go! Go! Gorilla」は、アメリカ社会における警察の暴力(ポリス・ブルータリティ)や構造的な人種差別に対する冷徹かつ痛烈な告発である。ギャングの日常を無機質かつ写実的に描いてきたヴィンスだが、本作では国家権力という「最大の敵」を前にした黒人青年の恐怖とパラノイアを、極めて生々しい一人称視点で描写している。「ゴリラ」というセンセーショナルなタイトルとコーラスは、歴史的に黒人を類人猿に例えてきた白人至上主義的な非人間化(Dehumanization)を逆手に取ったものであり、警察による職務質問や追跡がまるで「野生動物の狩り」のように扱われている現実をシニカルに浮き彫りにしている。レッドライニングから刑務所ビジネスへと続く搾取の歴史や、2Pac、フォンスワース・ベントレーなどのヒップホップ・リファレンスを高度なワードプレイで織り交ぜた、極めて知的で重厚なプロテスト・ソングである。

和訳

[Verse 1]

Damn, why you gotta be like that?
クソ、なんでそんな態度をとる必要があるんだ?
※日常的な交通違反の取り締まりがいきなり暴力的な制圧に発展する、アメリカの警察の過剰防衛に対するやり場のない怒りと恐怖。

Slammed with my hands behind my back
両手を後ろ手に縛られ、地面に叩きつけられる

I know my tags are not updated, but I don't think you need that strap
車の登録タグが更新されてないのは分かってる、でもお前が銃を抜く必要はないはずだ
※「tags」は車のナンバープレートの登録シール。こうした微罪(軽微な交通違反)を口実に黒人ドライバーを車から引きずり下ろし、最悪の場合は射殺に至るケース(レイシャル・プロファイリング)が後を絶たない現実を指摘している。「strap」は銃器の隠語。

Why can't you just talk to me? My life is inside your hands
なぜ普通に話せないんだ? 俺の命はお前らの手の中にあるんだぜ

Can you protect it? Am I being harassed or arrested?
お前らはそれを守れるのか? 俺は嫌がらせを受けてるのか、それとも逮捕されてるのか?

I just wanna know, I know how the story go either way
ただ知りたいだけだ、どっちに転ぼうと結末がどうなるかは分かってる

On the news, said, "He had a gun," got a grave
ニュースじゃ「彼が銃を持っていた」と報じられ、あいつらは墓に入るだけだ
※丸腰の黒人が警官に射殺されても、警察側が「銃を持っているように見えた」と証言すれば正当防衛が成立し、被害者は死に損になるという絶望的な社会構造。

Every nigga is a mother's son that she raised tryna shape the way he see the world
どの黒人も母親の息子だ、母親は彼が世界をどう見るか形作ろうと育ててきたのに

Now he can't and I can't help but shed a tear
今じゃ彼は何も見ることができず、俺は涙を流さずにはいられない

Stomach drop every time that I see 'em near
奴らが近づくのを見るたびに、胃が縮み上がるんだ

Why do I live in fear of a gun and badge?
なぜ俺は、銃とバッジに怯えながら生きなきゃならないんだ?

That's the strongest enemy that we done ever had, yeah
奴らこそ、俺たちが直面した中で最強の敵だからさ

[Pre-Chorus]

Red, white and blue lights flashin'
赤、白、青のライトが点滅する
※アメリカのパトカーのサイレンの光。星条旗のカラーリング(赤・白・青)とも重なり、国家というシステムそのものが脅威であることを暗示している。

One-way trip to thugs' mansion
サグズ・マンションへの片道切符だ
※「Thugz Mansion」は2Pacの楽曲タイトルで、ストリートで命を落としたギャングや黒人たちが安らかに過ごせる「天国」のメタファー。警察に捕まること=死への直行便であるという諦念。

Somebody call 911, I just seen a 187
誰か911に電話してくれ、たった今187を目撃した
※「911」は警察への緊急通報番号。「187」はカリフォルニア州刑法で「殺人」を意味するスラング。警官が殺人を犯しているのに、助けを求める先がその警察組織しか存在しないという強烈なアイロニー。

Who can I trust when I need help? Who can I trust for protection?
助けが欲しい時、誰を信じればいい? 守ってほしい時、誰を信じればいいんだ?

Pigs flyin' high, joyride to heaven
豚どもが空高く飛んでいく、天国へのジョイライドさ
※「Pigs」は警察を侮蔑するスラング。「When pigs fly(豚が空を飛ぶ=絶対にあり得ないこと)」という英語の慣用句を掛け、正義を執行するはずの警察が罪のない市民を殺すという「あり得ない現実」を表現している。

[Chorus]

Gorilla, gorilla, go, go, gorilla
ゴリラ、ゴリラ、行け、行け、ゴリラ
※逃げる黒人を野生の類人猿(ゴリラ)に見立てて追い詰める、白人警官のレイシズムに満ちた視点を表現。人間としての尊厳を剥奪された狩りの描写。

Gorilla, gorilla, catch that gorilla
ゴリラ、ゴリラ、あのゴリラを捕まえろ

Gorilla, gorilla, go, go, gorilla
ゴリラ、ゴリラ、行け、行け、ゴリラ

Gorilla, gorilla, catch that gorilla
ゴリラ、ゴリラ、あのゴリラを捕まえろ

[Verse 2]

Red line, gentrified, they give wrist slaps to them and sentenced mines
レッドライン、ジェントリフィケーション、奴らには手首を軽く叩く程度の罰で、俺の仲間には実刑判決だ
※「Red line(レッドライニング)」はかつて黒人居住区を不動産投資の対象外とした制度的差別。「gentrified」は地域の高級化により有色人種が追い出される現象。白人の犯罪には「wrist slaps(手首を軽く叩く程度=極めて軽い罰)」で済むのに対し、黒人には重い刑罰が下される司法の二重基準(ダブルスタンダード)を告発している。

Went from bread lines to picket lines to main line prison time for the crimes that we commit
配給の列からストライキの列へ、そして俺たちが犯した罪で刑務所の本棟送りになる
※貧困(配給)から始まり、権利を求める抗議(ピケット・ライン)、そして最終的に刑務所(メインライン)へと送り込まれる黒人の人生のパイプライン(システム化された搾取構造)を描写。

But genocide don't mean nothin' to Uncle Sam
だがアンクル・サムにとって、ジェノサイドなんて何の意味もない
※「Uncle Sam」はアメリカ政府の擬人化。政府にとって黒人の大量投獄や死(ジェノサイド)は歯牙にも掛けない問題であるという達観。

Guess it's dignified in America, probably just dreamed that they were sellin' us
アメリカじゃそれが立派なことなんだろうな、たぶん奴らが俺たちを売り捌いていた頃の夢でも見てたんだろ
※黒人を奴隷として売買していた時代から、現代の刑務所ビジネス(囚人労働)に至るまで、アメリカの「名誉(dignified)」が黒人の搾取の上に成り立っているという鋭い歴史的視座。

Terror rain on our parade, keepin' them umbrellas up
恐怖の雨が俺たちのパレードに降り注ぐ、あの傘を差し続けなきゃならない
※「Terror rain」は「恐怖の雨」だが、同時に「Reign of terror(恐怖政治)」との高度な同音異義語のワードプレイ。警察の恐怖政治から身を守るために傘(警戒心)を張り続ける日常。

Gotta dance with it like Mr. Bentley
ミスター・ベントレーみたいに、一緒に踊りこなさなきゃならないのさ
※「Mr. Bentley」は、Diddy(P. Diddy)の付き人として常に傘(umbrella)を差し、軽快に踊っていたことで有名なフォンスワース・ベントレー(Fonzworth Bentley)のこと。前行の「傘(umbrella)」の比喩を受け、命の危険が迫る「恐怖の雨(Terror rain)」の中でも、黒人は気丈にスマートに立ち振る舞わなければ(dance with it)生き残れないという、ヒップホップIQの極めて高い見事なリファレンス。

If I get pulled over, Lord be with me
もし車を止められたら、神よ俺と共にあってくれ

If I do the dash, then Lord, forgive me
もし車で逃げ飛ばしたら、神よ俺を許してくれ
※「do the dash」はスピードメーターのダッシュボードを振り切るほど猛スピードで逃走すること。止まれば殺されるかもしれない恐怖ゆえに、逃走という罪を犯す心情。

I was twelve years old when they tried to ship me
奴らが俺をブタ箱に送ろうとした時、俺はまだ12歳だった

On the curb, I got choke slammed for resisting arrest from a grown man
縁石の上で、大人の男から「逮捕に抵抗した」って理由でチョークスラムを食らった
※12歳の子供に対しても、プロレス技(チョークスラム)のような過剰な暴力を平然と振るう警察の狂気。ヴィンス自身のトラウマ的な実体験を暗示している。

I ain't even tell my mama what happened
何があったか、お袋にすら言わなかった

She the one that put me on to they program
お袋こそ、奴らのプログラムを俺に教えてくれた張本人だからな
※「they program」は警察や白人社会の非情なシステムのこと。幼い頃から「警察には逆らうな、殺されるぞ」と教え込んでくれた母親に、自分が暴力を受けたことを伝えて心配させたくなかったという切ない親子の背景。

[Pre-Chorus]

Red, white and blue lights flashin'
赤、白、青のライトが点滅する

One-way trip to thugs' mansion
サグズ・マンションへの片道切符だ

Somebody call 911, I just seen a 187
誰か911に電話してくれ、たった今187を目撃した

Who can I call when I need help? Who can I call for protection?
助けが欲しい時、誰を呼べばいい? 守ってほしい時、誰を呼べばいいんだ?

Pigs flyin' high, joyride to heaven
豚どもが空高く飛んでいく、天国へのジョイライドさ

[Chorus]

Gorilla, gorilla, go, go, gorilla
ゴリラ、ゴリラ、行け、行け、ゴリラ

Gorilla, gorilla, catch that gorilla
ゴリラ、ゴリラ、あのゴリラを捕まえろ

Gorilla, gorilla, go, go, gorilla
ゴリラ、ゴリラ、行け、行け、ゴリラ

Gorilla, gorilla, catch that gorilla
ゴリラ、ゴリラ、あのゴリラを捕まえろ

Gorilla, gorilla, go, go, gorilla
ゴリラ、ゴリラ、行け、行け、ゴリラ

Gorilla, gorilla, catch that gorilla
ゴリラ、ゴリラ、あのゴリラを捕まえろ

Gorilla, gorilla, go, go, gorilla
ゴリラ、ゴリラ、行け、行け、ゴリラ

Gorilla, gorilla, catch that gorilla
ゴリラ、ゴリラ、あのゴリラを捕まえろ