UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

UGMKM ARCHIVE

Find Music By Artist, Genre.

和訳・解説記事を、アーティスト名・ジャンルから探せます。

Haunted - Laufey 【和訳・解説】

Artist: Laufey

Album: Bewitched

Song Title: Haunted

概要

Laufeyの2ndアルバム『Bewitched』(2023年)に収録された「Haunted」は、ボサノヴァの心地よいリズムとストリングスの艶やかな響きに乗せて、断ち切れない有害な恋愛関係(トキシック・リレーションシップ)を描き出したほろ苦い楽曲である。本作においてLaufeyは、相手の愛情が自分と同等ではないと頭では理解していながらも、夜の孤独と欲望に負けて再び関係を持ってしまう「自己破壊的なロマンチスト」のペルソナを見事に演じ切っている。曲名である「Haunted(憑りつかれている、幽霊が出没する)」が示す通り、この男性は彼女の人生にふらりと現れては朝には姿を消す「幽霊」のような存在としてメタファー化されている。ファンの間では、彼女が描く古き良きジャズ・スタンダードのロマンチックな世界観を、現代の「シチュエーションシップ(曖昧な関係)」の虚無感へと鮮やかに接続した名曲として高く評価されており、成熟した大人の哀愁と官能性が漂う一曲だ。

和訳

[Verse 1]

One more kiss, wine stained lips
もう一度だけキスをして、ワインで染まった唇で
※「wine stained lips」は、夜の逢瀬と官能的なムードを強調する表現。ワインに酔いしれるように、この一時的な関係に陶酔しようとする彼女の切実な願望が読み取れる。

I don't want to go to sleep yet
まだ眠りにつきたくないの
※眠れば朝が来て彼が帰ってしまうため、この幻想的な夜を少しでも引き延ばしたいという心理の表れ。

Pale moonlight, misty eyes
青白い月の光、涙でかすんだ瞳
※「misty eyes」には、ロマンチックな雰囲気に酔う様子と同時に、彼が自分を愛していないという現実に対する悲哀の涙というダブルミーニングが込められている。

I'll allow myself to have him just tonight
今夜だけは、彼を私のものにすることを許して
※「just tonight(今夜だけ)」と自分自身に言い訳をしている時点で、これが何度も繰り返されてきた自己欺瞞であることが暗示されている。

[Chorus]

I hold on to every ounce of sin
罪悪感の一滴残らず、すべてにしがみついているの
※「ounce of sin(わずかな罪)」は、彼との関係が道徳的にも自分自身の心にとっても「良くないこと(罪)」だと自覚していることを示す。それでもその罪にすら縋り付いてしまうほどの強い執着を描いている。

I know he don't love me quite like I love him
私が彼を愛しているほどには、彼は私を愛していないって分かっている
※本作の核となる一節。愛情の不均衡(アンバランス)を残酷なまでに冷静に自覚しており、Laufeyの楽曲に共通する「報われない愛」のモチーフが最も直接的に表現されたラインである。

I swear to myself as he leaves at dawn
夜明けに彼が去っていく時、私は自分自身に誓うの
※夜(二人の幻想)から朝(孤独な現実)への引き戻し。

This will end, 'til he haunts me again
これで終わりにするって、彼がまた私に憑りついてくるまでは
※「haunt」は幽霊が出没する、あるいは記憶などがつきまとうという意味。彼を、忘れた頃に夜の暗闇に紛れて現れる「幽霊」に見立てている。誓いが結局は無意味であり、悪循環から抜け出せない絶望的なループ構造を示唆している。

[Verse 2]

Rose perfume, low-lit room
薔薇の香水、薄暗い部屋
※視覚(low-lit)と嗅覚(Rose perfume)を通して、親密で閉鎖的な空間を演出している。薔薇はロマンスの象徴であると同時に、美しくも棘(痛み)がある関係性の暗示としても機能している。

I'll pretend you'll stay forever
あなたがずっとここにいてくれるんだって、空想のフリをするわ
※「pretend(フリをする)」という言葉選びから、彼女自身がこの関係を「虚構」であると完全に認識していることが分かる。

Lay me down, ghostly sounds
私をベッドに横たえて、幽霊のような気配が
※「ghostly sounds」は、彼が朝になれば音もなく消えてしまう存在であること、あるいは彼女の心の中にだけ響く虚しい余韻を表現している。

Haunt the hallways as he wraps me around
彼が私を抱きしめる間、廊下を亡霊のように彷徨うの
※「wraps me around」は物理的な抱擁を意味するが、同時に彼によって精神的にも絡め取られ、囚われてしまっている状態を描写している。

[Chorus]

And I hold on to every ounce of sin
罪悪感の一滴残らず、すべてにしがみついているの

I know he don't love me quite like I love him
私が彼を愛しているほどには、彼は私を愛していないって分かっている

I swear to myself as he leaves at dawn
夜明けに彼が去っていく時、私は自分自身に誓うの

This will end, 'til he haunts me again
これで終わりにするって、彼がまた私に憑りついてくるまでは
※永遠に続くかのような「haunt(憑依)」の連鎖を繰り返して楽曲は終わる。決して断ち切れないトキシックなループを見事に、そして残酷なまでに美しく表現し切っている。