Artist: JPEGMAFIA
Album: EXPERIMENTAL RAP
Song Title: Pop this Heat
概要
JPEGMAFIA(通称ペギー)の真骨頂とも言える、メロウなサンプリングと極めて暴力的で冷酷なリリシズムが交差する一曲である。プロレスラーのエッジ(WWE)の入場曲からサンプリングされたお馴染みのプロデューサータグから幕を開け、R&B調の甘いイントロから一転、敵対するフェイクなラッパーたちを嘲笑う凄惨なストリートの描写へとシームレスに移行する。歌詞にはジャ・ルールと50セントの歴史的ビーフを引合いに出したヒップホップIQの高いディスや、メキシコ料理のビリア(Birria)を用いたゴア表現、さらにギリシャ神話のメドゥーサと宝石(ダイヤモンド)を掛け合わせた高度なダブルミーニングが詰め込まれている。自身の熱狂的なファンダムを「カルト」と称し、インダストリーの枠に収まらない教祖的でアンタッチャブルなペルソナを見事に提示した傑作だ。
和訳
[Intro]
(You think you know me)
(俺のことを知ってるつもりか)
※JPEGMAFIAのシグネチャーであるプロデューサータグ。元ネタはプロレス団体WWEの伝説的レスラー、エッジ(Edge)の入場曲のイントロであり、ペギーのオタク気質とプロレス愛を象徴している。
I've been waiting for you
ずっとお前を待っていたんだ
Patiently
辛抱強くな
All of my life
俺のこれまでの人生ずっと
I've been waiting for you
お前を待ち続けていた
How long was the wait for you
お前が真実を俺に告げるまで
To tell me the truth?
どれだけの時間待たせたと思ってる?
Everybody knows that you're mine
お前が俺のものだってことは、誰もが知ってる
For life (For life)
一生な(一生だ)
You're mine
お前は俺のものだ
Comfy
居心地が良いぜ
Everyday
毎日な
We're gon' get through it
俺たちはこれを乗り越えていくんだ
[Chorus]
Man, these niggas so sweet (So sweet)
なあ、この野郎どもはマジで甘っちょろいな(軟弱すぎるぜ)
※「sweet」はストリートスラングで「軟弱な、女々しい、簡単にやられる」という意味。ハードコアを気取っている同業者たちを見下している。
Man, these hoes so weak, on my niece
なあ、このビッチどもはマジで弱すぎる、姪っ子に誓って言うぜ
※「on my niece」は「on my momma(母に誓って)」等のバリエーション。自分の家族にかけて嘘偽りがないことを強調する表現。
He ain't gon' pop this heat (Pop this heat)
あいつはこの銃をぶっ放す度胸なんてねえよ(この銃をぶっ放す)
※「heat」は銃器を指すスラング。
He ain't gon' tweak, he don't got hands or feet
あいつがおかしくなることなんてねえ、手も足も出ないんだからな
※「tweak」は恐怖や薬物でパニックになること、あるいは狂ったように暴れること。
Blood won't leak, bitch, I'm sittin' here comfortably
血が流れることもねえよ、ビッチ、俺はここで快適に座ってるんだ
※敵が弱すぎるため、自分が怪我をして血を流す(blood leak)リスクは皆無であり、完全にリラックスした状態(comfortably)で勝てるというフレックス。
Now, what's your beef?
さあ、お前の不満は何だ?
Baby, get rocked to sleep
ベイビー、永遠の眠りにつかせてやるよ
※「rocked to sleep」は本来「(赤ん坊などを)揺すって寝かしつける」という意味だが、ストリートの文脈では「殴り倒して失神させる」「銃で撃って殺す」という残酷なメタファーとして使われる。
[Verse]
One in the sock, tucked in the crotch
靴下に1丁、股間にも隠し持ってる
Two in the Jeep, three under the seat
ジープの中に2丁、シートの下に3丁だ
※あらゆる場所に銃を隠し持ち、常に武装している極度のパラノイアと臨戦態勢を描写している。
7.62, get to turnin' all beef to birria meat
7.62ミリ弾で、すべてのビーフをビリア・ミートに変えてやる
※「7.62」はAK-47などのアサルトライフルに使用される弾薬。「beef(敵対関係/牛肉)」を、メキシコ料理の「Birria(肉をスパイスで原型がなくなるまでホロホロに煮込んだシチューのような料理)」に変える、つまり敵を粉微塵の挽肉にしてやるという、ユーモアと残虐性が入り混じった強烈なパンチライン。
I got your bitch some new Prada, no Hyundai Sonatas, she flyin' charter for the week
お前のビッチに新しいプラダを買ってやった、ヒョンデ・ソナタじゃねえ、彼女は今週チャーター機で飛んでるぜ
※大衆車であるヒョンデ・ソナタを引き合いに出し、敵の安っぽい生活水準を嘲笑。自分はプライベートジェット(charter)で女を遊ばせているという格の違いを誇示している。
I got some niggas that clip your propellers
お前のプロペラを切り落とす仲間が俺にはいる
※「プロペラを切り落とす」=調子に乗って空を飛んでいる(成功している)敵を撃ち落とし、地に引きずり下ろすという意味。
You thinkin' you gonna be flyin' around me
俺の周りを飛び回れるとでも思ってるのか
Never changed from the minute that I came in the game
俺がこのゲームに足を踏み入れた瞬間から、何も変わっちゃいない
Niggas tank they career and then shiftin' the blame
野郎どもは自分のキャリアを自滅させておいて、責任転嫁してやがる
※「tank」は意図的に負ける、または台無しにするという意味。
Goin' out like Ja, they don't want no more pain
ジャのように消えていく、あいつらはもう痛みを望んじゃいないんだ
※2000年代初頭にシーンを席巻したラッパー、ジャ・ルール(Ja Rule)への痛烈なネームドロップ。彼は50セントとの大規模なビーフに敗北し、業界の表舞台から姿を消した(goin' out)。また、ジャ・ルールの代表作『Pain Is Love』と掛けて「あいつらはこれ以上の痛みに耐えられない」と皮肉っている。
Niggas broke your jaw, you ain't talkin' the same
野郎どもにお前の顎を砕かれて、もう前みたいには喋れねえだろ
※物理的な暴力によってトラッシュトークを黙らせるという警告。
But I stay on call like twenty-four hours a day
だが俺は1日24時間、いつでも電話に出れる態勢だぜ
※ストリートのハスラーとして、あるいはヒットマンとして、常にビジネス(抗争)の準備ができている状態。
We don't got nothin' to prove, I be fuckin' with you
俺たちには証明することなんて何もない、俺はお前とヤッてるんだ
While I'm fuckin' your boos every day
俺が毎日お前の女たちとヤッてる間にな
※「boo」は恋人や愛人。敵を挑発する定番のNTR(寝取り)フレックス。
Bitch, I be clutchin' the Ruger, the Kimber Medusa
ビッチ、俺はルガーを、キンバーのメドゥーサを握りしめてる
※「Ruger」も「Kimber」も有名な銃器メーカー。キンバーのカスタムモデルなどを指しているか、あるいは単に銃とギリシャ神話の怪物「メドゥーサ」を並列させている。
The look is outlastin' the pain
このルックスは痛みよりも長続きする
You get blinded, all these stones in my face
俺の顔にあるこの石の数々で、お前は目を潰される
※前のラインの「メドゥーサ(見た者を石に変える怪物)」というワードに続く見事なダブルミーニング。「顔にある石(stones)」とは、歯に装着したダイヤモンドのグリルズや高価なジュエリーのこと。その眩い輝きで敵を盲目にさせる(=メドゥーサのように石にして無力化する)というヒップホップ特有の言葉遊び。
Even though I'm behind her, I'm winning the race
俺は彼女の後ろにいるのに、レースには勝ってるんだ
※性的な体位(バックを取る)と、競争における順位(レースで勝利する)を掛けた表現。
We melted your house, turned it to a face
俺たちはお前の家を溶かして、顔に変えてやった
※「家(house)」は全財産や家そのものの価値の比喩。強盗などで奪い取った敵の全財産を溶かし、巨大なジーザス・ピースや顔型のカスタム・ペンダント(face)に作り変えて首から下げているという、極めてマフィア的で残酷なフレックス。
We savin' your bitch, we don't need a cape
お前のビッチを救ってやるよ、マントなんて必要ねえ
※ヒーロー気取りで女を奪うのではなく、単にストリートの勝者として女が勝手になびいてくるだけだという余裕。「cape(マントを着る=スーパーヒーローのように女を過剰に擁護する男)」を揶揄するスラング表現。
I'm up at the Ritz, she takin' her place, you throwin' a fit
俺はリッツに泊まり、彼女は自分の居場所を見つける、お前は癇癪を起こしてる
※「Ritz」は最高級ホテルのリッツ・カールトン。
I thought I said that I don't need a cape
マントなんて必要ねえって言ったはずだぜ
Smokin' on something, it feel like it's laced
何かを吸ってるが、混ぜ物をされてるような気分だ
※「laced」は大麻などにフェンタニルや他の強力なドラッグが混入されていること。強烈なハイ状態を描写している。
Shorty want Denny's, she don't got no taste
あの女はデニーズに行きたがる、センスが欠片もねえな
※高級志向のペギーに対して、大衆的なファミレスであるデニーズで満足してしまう安っぽい女を冷笑している。
Shorty want me, but she don't know her place
あの女は俺を欲しがるが、自分の立場をわかっちゃいない
She wanna trap me, but I'm in the states
彼女は俺を罠にハメようとするが、俺はアメリカにいるんだ
※「trap」は妊娠させて逃げられないようにすること(Baby trap)などを指すが、ペギーは広大なアメリカ(the states)を飛び回っており、一人の女に縛られるような存在ではないという宣言。
I give her dick, I do not give her dates
ディックはくれてやるが、デートはしてやらねえ
※肉体関係以上のロマンチックなつながりは一切持たないというハスラーの掟。
I can't be playin' position, my niggas be itchin', I'm running a cult
特定のポジションにおさまってる暇はねえ、俺の仲間はウズウズしてる、俺はカルトを束ねてるんだからな
※「itchin'」は指がウズウズしている=いつでも引き金を引く準備ができている凶暴な仲間たちを指す。「カルト」は、音楽業界の枠を飛び越えて熱狂的にペギーを支持するファンベース、あるいは自らが率いるギャング/クルーをカルト宗教の信者のように例えている。
I can't be doin' these missions, your bitch in the field, and she gave it her all
こんなミッションをやってる暇はねえ、お前のビッチは現場に出て、全身全霊を捧げてたぜ
※敵の女がストリート(field)でペギーたちのために懸命に身を粉にして尽くしている(性的な意味も含めて)という最後の屈辱的なディス。
[Chorus]
Man, these niggas so sweet (So sweet)
なあ、この野郎どもはマジで甘っちょろいな(軟弱すぎるぜ)
Man, these hoes so weak, on my niece
なあ、このビッチどもはマジで弱すぎる、姪っ子に誓って言うぜ
He ain't gon' pop this heat (Pop this heat)
あいつはこの銃をぶっ放す度胸なんてねえよ(この銃をぶっ放す)
He ain't gon' tweak, he don't got hands or feet
あいつがおかしくなることなんてねえ、手も足も出ないんだからな
Blood won't leak, bitch, I'm sittin' here comfortably
血が流れることもねえよ、ビッチ、俺はここで快適に座ってるんだ
Now, what's your beef?
さあ、お前の不満は何だ?
Baby, get rocked to sleep
ベイビー、永遠の眠りにつかせてやるよ
