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Woodchuck - Wu-Tang Killa Beez (feat. Cilvaringz, Black Knights, Timbo King & Meko the Pharaoh) 【和訳・解説】

Artist: Wu-Tang Killa Beez (feat. Cilvaringz, Black Knights, Timbo King & Meko the Pharaoh)

Album: The Sting

Song Title: Woodchuck

概要

Wu-Tang Killa Beezのコンピレーション・アルバム『The Sting』(2002年)に収録された本作は、Wu-Tang帝国の世界的な広がりと、その傘下に潜む多様な才能を見せつけるマイクリレーである。西海岸(カリフォルニア)からBlack KnightsのThe Holocaust(別名:Architect)とMeko the Pharaoh(North Star)、東海岸(ニューヨーク)からRoyal FamのTimbo King、そしてヨーロッパ(オランダ)からCilvaringzという、地理的にもスタイル的にも全く異なるMCたちが集結している。Holocaustのシュールでホラーコア的なポエトリーリーディングから始まり、Timbo Kingの王道なハスラーラップ、Mekoのウェストコースト・バウンス、そしてCilvaringzによる狂信的なWu-Tang神話の世界観へとシームレスに移行する。それぞれのフッドの言語と美学が激しくぶつかり合いながらも、RZAの統率のもとで一つのドープな作品として成立している、アンダーグラウンド・ヒップホップの極北とも言える一曲である。

和訳

[Intro: Holocaust as Architect]

West Coast, West Coast
ウェストコースト、ウェストコースト

Killa Beez
キラ・ビーズ

[Verse 1: Holocaust as Architect]

Antlers, hammers and hacksaws
鹿の角、ハンマー、そして金切り鋸

The withered poetry of a man with no name, America
名もなき男の枯れ果てた詩、アメリカだ
※The Holocaust特有の脈絡のないシュールで暴力的な情景描写の始まり。「名もなき男」はマカロニ・ウェスタン(クリント・イーストウッドなど)のオマージュであり、アメリカの乾いた暴力を象徴する。

Cement mixer fall upon an ice cream
セメントミキサーがアイスクリームの上に落ちる
※冷酷な現実(セメントミキサー)が無垢なもの(アイスクリーム)を押し潰す不条理なメタファー。

Holocaust to many, greet with bloody handshake
多くの者にとってのホロコースト、血まみれの握手で挨拶する
※自身のMCネーム「The Holocaust」のネームドロップ。大虐殺のような圧倒的な恐怖をもたらす存在。

Wu empire and colleagues luxuriant
ウーの帝国と同僚たちは繁栄している

You torn like tape off football helmets, chip
お前はフットボールのヘルメットから剥がされたテープみたいに引き裂かれる、チップ
※「chip」は欠片、あるいは取るに足らない存在の意。

Four cups of crushed bricks, half cup of roses
砕いたレンガを4カップ、バラを半カップ

Smoke egg green and yellow candy cane
卵の緑色と黄色のキャンディケインを吸う
※料理のレシピのようなフォーマットで、ドラッグや狂気を調合している魔術的・サイコパス的な表現。

Zombies still cooped in the cottage with orange tea
ゾンビどもはオレンジティーと共にコテージに閉じこもったままだ

Pistols still pointed at the floor, spinal crumbs
ピストルはまだ床に向けられている、脊髄のパン屑

Blood hits snow in hearts, scoop it up in handfuls
血が心の中の雪に落ちる、それを両手ですくい上げる

Bathe in the river, the waterfall runs red
川で水浴びをしろ、滝は赤く染まって流れる

Sasquatch Yeti, battalion with one head
サスカッチ、イエティ、一つの頭を持つ大隊
※UMA(未確認生物)のような異形のモンスターたちの軍勢を自身のクルーに見立てている。

In a Lonely Place, dollars, razors and marbles
孤独な場所で、ドル紙幣、カミソリ、そしてビー玉
※『In a Lonely Place(孤独な場所で)』は1950年のフィルム・ノワール映画のタイトル。退廃的なアイテムの羅列。

We break open forearms, Earth the last hour
俺たちは前腕を切り開く、地球の最後の1時間

Out in the teahouse playing a hand of spades
外のティーハウスでスペードのゲームをしている
※「spades」は黒人コミュニティで親しまれるトランプゲーム(スペード)。

Fistful of grenades blow out the watch light
一握りの手榴弾が見張りの灯りを吹き飛ばす

Convicts rally at moonset, the last
囚人たちが月の入る頃に集結する、最後の時だ

Flows stay smoggy, old Carnival Witcham
フロウはスモッグに覆われたままだ、古いカーニバルのウィッチャム

Sideshow freaks, belly dancers and gypsies
見世物小屋のフリークス、ベリーダンサー、そしてジプシーたち

One of the woodcutters, village Architect
木こりの一人、村のアーキテクトだ
※タイトルの「Woodchuck(キツツキ / 木こり)」の回収。The Holocaustのもう一つの別名である「Architect(建築家)」のネームドロップ。

Eighty-eight sandwiches, Thermos and a lunch box
88個のサンドイッチ、魔法瓶、そしてランチボックス

In a Harsh Realm viewing the emerald butterflies
過酷な領域の中で、エメラルドの蝶を眺める
※『Harsh Realm(過酷な領域)』はSFコミック/ドラマのタイトル。ディストピアと美しい自然(蝶)の不気味なコントラスト。

Flutter diamond moths, both with dusty wings
ダイヤモンドの蛾が羽ばたく、どちらも埃まみれの羽を持っている

Bodies lay soaked in a desert, throats gouged out
死体は砂漠に浸かり、喉は抉り取られている

Chunks spitting out of their heads, I had a purpose
頭から肉塊が吐き出される、俺には目的があったんだ

Will you still love me tomorrow? Architect
明日もまだ俺を愛してくれるか? アーキテクトだ
※The Shirellesの60年代のクラシック曲「Will You Love Me Tomorrow」の不気味な引用。これほどの惨劇を起こした自分(Architect)を世界は受け入れるかと問いかけている。

Will you still love me tomorrow? Holocaust
明日もまだ俺を愛してくれるか? ホロコーストだ

[Interlude: Timbo King]

Royal Famous, blame us
ロイヤル・フェイマスだ、俺たちを責めな

Yo
ヨォ

[Verse 2: Timbo King]

My first whip be a Chrysler
俺の最初のウィップはクライスラーだ
※「whip」は車のこと。

So when you see me you say, "Chrys' is coming"
だから俺を見たら、お前は「クライスが来る」って言うのさ
※「Chrys'」はクライスラーの略だが、Black Knightsのメンバーである「Crisis(クライシス)」と同音異義語になるダブルミーニング。

Ice numbing your neck, throw one of those
首の感覚を麻痺させるアイス、それを一つ投げな
※「Ice」はダイヤモンドのジュエリー。重くて冷たいため感覚が麻痺するほどだというフレックス。

Strong nose, Indian pose, flat footed
強い鼻、インディアンのポーズ、足の裏をぴったりつけてな

Yo, my back hurts, feel like I'm growing wings
ヨォ、背中が痛てえ、羽が生えてくるみたいだ

Blessed by the Heaven kings, my crown piece seven rings
天の王たちに祝福されている、俺の王冠には7つのリング
※「7」はFive-Percent Nationの教義において「神(God)」を意味する神聖な数字。

Money to earn, money to burn
稼ぐための金、燃やすための金

Give some, lend some, take it
いくらか与え、いくらか貸し、そして奪い取る

Fuck it, be stingy off a stash if you have to
クソ食らえ、必要なら隠し財産をケチケチ守り抜け

Nigga, what? Flip a pack of if you have to
ニガ、なんだって? 必要ならパックを捌いて転がすんだ
※「Flip a pack」はドラッグの束を売って利益を出すこと。

Cash in, pawn that shit, your highest bidder
現金化しろ、そのシットを質に入れな、お前の最高入札者だ

Buy from the streets, cop at wholesale price
ストリートから買い上げ、卸売価格で手に入れる

Motel models, go tell 5-0
モーテルのモデルたち、サツに言いに行きな
※「5-0」は警察(ドラマ『ハワイ5-0』に由来するスラング)。

5-0 follow the black El Dorado
サツは黒のエルドラドを尾行するんだ
※「El Dorado」はキャデラックの高級車。ハスラーの定番。

[Chorus: Crisis & Meko the Pharaoh]

We got that real shit niggas blast to, bitches shake their ass to
俺たちにはニガどもが銃をぶっ放し、ビッチどもがケツを振るリアルなシットがある

Hit you up with the hood when we pass through
俺たちが通り過ぎる時、フッドの流儀でお前をヤるぜ
※「Hit you up」は撃つ、あるいはギャングのサインを見せつけること。

Black Knights, Royal Fam got that hot shit (Yo)
ブラック・ナイツ、ロイヤル・ファムがその熱いシットを持ってるぜ (Yo)

Topless in the cockpit of my drop six
俺のドロップ6のコクピットの中じゃトップレスだ
※「drop six」はBMW 6シリーズのコンバーチブル(オープンカー)。「Topless」は車の屋根がないことと、乗っている女性がトップレスであることのダブルミーニング。

In the cockpit of the drop six (Yeah, yo)
ドロップ6のコクピットの中でな (Yeah, yo)

[Verse 3: Meko the Pharaoh]

Give me beats like this I start burnin'
こういうビートをよこしな、俺は燃やし始めるぜ

Wack MCs, you're still learnin'
ワックなMCども、お前らはまだ学習中だ

Just like punk cops that rotate on your block
お前のブロックを巡回するパンクなサツどもみたいにな

Millions of people is gonna hear the North Star shot
何百万人もの人々が、ノース・スターの銃声を聞くことになる
※「North Star」はMekoが所属する西海岸のWu-Tang関連グループ。

While the worlds rock mental, I hold presidential
世界がメンタルを揺さぶられている間、俺はプレジデンシャルを握る
※「presidential」は大統領のような絶対的な権力、あるいは大統領専用車や高級な葉巻・時計(ロレックスのプレジデントブレスなど)のメタファー。

Bare essentials, Wu-Tang credentials
最低限の必需品、ウータンの証明書だ

Making niggas catch wind chills when my N.S. windmills
俺のN.S.のウィンドミルが回る時、ニガどもに寒気を感じさせてやる
※「N.S.」はNorth Starの略。「windmills」はブレイクダンスの技(風車)、あるいは喧嘩で腕を振り回すこと。その威力で相手が凍りつく(wind chills)というパンチライン。

Niggas better get real
ニガどもは現実を見た方がいいぜ

Even though I stay pissy drunk, bumping Kurupt
たとえ俺が泥酔して、クラプトをガンガン鳴らしていてもな
※「Kurupt」は西海岸の伝説的ラッパー。コンプトン/ロングビーチ周辺のウェストコーストの空気感を示している。

In a red mini van phat tinted
スモークをガッツリ貼った赤いミニバンの中で

Smoking on that spinach, all funny niggas get printed
そのほうれん草を吸う、滑稽なニガどもは全員指紋を採られるんだ
※「spinach」はポパイのほうれん草に例えたマリファナのこと。「printed」は警察に逮捕されて指紋(fingerprint)を採られること。

I got that Long Beach shit like J. Bennett
俺はJ・ベネットみたいなロングビーチのシットを持ってるぜ
※ロングビーチ出身のMekoのローカルなネームドロップ(地元のフッドの有名人やアスリートなどと推測される)。

The rest of y'all niggas sound like women
残りのニガどもは全員女みたいな声を出してやがる

Scared of my sword when it's given, y'all niggas better stop pretending
俺の剣が振り下ろされるのを恐れてな、お前らニガどもは強がるのをやめた方がいい

'Cause the words that I speak is deep imprinted
だって俺の語る言葉は深く刻み込まれるからな

Kill or Be Killed is what I'm representing, representing
「殺るか殺られるか」が俺のレペゼンしているものだ、レペゼンしているものだ
※「Kill or Be Killed」は西海岸のKilla Beez(Black Knightsなど)の共通のモットー。

[Interlude: Cilvaringz]

Yo, yo, check it, yo
ヨォ、ヨォ、チェックしな、ヨォ

[Verse 4: Cilvaringz]

As several clouds form the storm
いくつかの雲が嵐を形成するように

I baffle Gabriel the Archangel with death, death to his first born
俺は大天使ガブリエルを死で困惑させる、奴の長子に死を
※Cilvaringz(モロッコ系オランダ人)特有のイスラム・キリスト教的・終末論的なアプローチ。神の使いである大天使すらも凌駕する力を持つという壮大なメタファー。

Earth moors Wu Killa Beez on The Swarm
地球は『The Swarm』のウー・キラ・ビーズを停泊させる
※「moors」は船を停泊させること。「The Swarm」は1998年にリリースされたWu-Tang Killa Beezの第一弾コンピレーション・アルバムのタイトル。

From the battleship, throw darts that be accurate
戦艦から、正確なダーツを投げ込む
※「darts」はWu-Tangのスラングで「リリック」のこと。

We ninjas, we backflip with tactics of anthrax
俺たちは忍者だ、炭疽菌の戦術でバックフリップを決める
※「anthrax」は炭疽菌。生物兵器のように致死的なラップのスキル。

Arise like the novas from Earth under canvas
キャンバスの下の地球から、新星のように立ち上がる

Of the Clan, fist to fist
クランのな、拳と拳だ

Kamikaze shock this like Nazi documents
神風がこれにショックを与える、ナチスの文書のようにな
※タブーとされる歴史的ワード(Kamikaze, Nazi)をあえて並べ、破壊的で危険な影響力を持つことを強調している。

Apache Helicopters strike down near the bunker of the Glocksmiths
アパッチ・ヘリコプターがグロックスミスのバンカーの近くに攻撃を仕掛ける
※「Glocksmiths」はGlock(拳銃)とGunsmith(ガンスミス/銃職人)を掛け合わせた造語。重武装したストリートの隠れ家(bunker)。

Shop the Dirty Weaponry, TECs from the '70s
汚れた武器を買いな、70年代のTECだ
※「Dirty Weaponry」はKillarmyの1998年のアルバムタイトルの引用。「TEC」はTEC-9などの半自動拳銃。

Gone With the Wind, slung mines within
風と共に去りぬ、内部に地雷を仕掛けた
※映画『風と共に去りぬ』の引用。過ぎ去った後に壊滅的な被害(地雷)を残す。

My men tackle dikes with the seven deadly dicks
俺の仲間は7つの致命的なモノで堤防にタックルする
※キリスト教の「Seven deadly sins(七つの大罪)」の言葉遊び。圧倒的な力(または男根)であらゆる障害(dikes)を突き破るというグロテスクかつ冒涜的な表現。

They claim my covenant, my government enslaves you
奴らは俺の契約を主張するが、俺の政府はお前を奴隷にする

To my Hall of Double Justice and bloodstains your judgement
俺の二重正義の殿堂にな、そしてお前の裁きを血で染める

So prepare to be slained by the truth
だから真実によって殺される覚悟をしろ

It's Blood for Blood When All Hell Breaks Loose, son
地獄の釜の蓋が開く時、それは血には血を、だぜ、サン
※「Blood for Blood」は報復の掟。「When All Hell Breaks Loose」はすべてが崩壊し大混乱に陥る様。Cilvaringzのハードコアな終末論的スタンスの集大成。

[Outro: Cilvaringz]

Wu-Tang Killa Beez from Shaolin, Europe
ウー・タン・キラ・ビーズ、シャオリンからヨーロッパまで

Black Knights, Royal Fam
ブラック・ナイツ、ロイヤル・ファム

Cilvaringz, one
シルヴァリングス、ワン(ピース)