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Butcher Shop - Awich, A$AP Ferg & RZA 【和訳・解説】

Artist: Awich, A$AP Ferg & RZA

Album: Okinawan Wuman

Song Title: Butcher Shop

概要

本作『Butcher Shop』は、日本のヒップホップクイーンAwichが、A$AP Mobの重鎮A$AP FergとWu-Tang Clanの総帥RZAというUSヒップホップ界の生ける伝説たちを迎え入れた、強烈なポッセカットである。Awichの地元・沖縄の米軍基地と隣り合わせのストリート(ゲート2)で育った背景と、NYハーレム(Ferg)、そしてスタテンアイランド=シャオリン(RZA)という異なるフッドの泥臭い美学が見事に交差している。「Butcher Shop(精肉店)」というタイトルは、偽物たちが蔓延るシーンにおいて、血の滴るような「生」のヒップホップ(Raw Hip-Hop)を提供する場所のメタファーである。Awichがハブ酒や占領下の歴史をスピットし、Fergが特有のバウンスとNYのネームドロップで畳み掛ける。日米のカルチャーが単なるコラボレーションを超え、深い精神性とストリートの作法で結びついたマイルストーン的な一曲である。

和訳

[Verse 1: Awich]

From the far east archipelago
極東の群島から
※日本、特に多くの島々からなるAwichの地元、沖縄のことを指している。

Snakes with the venom, yeah, we put them in the bottle
毒を持つ蛇、そう、うちらはそれをボトルに漬け込むんだ
※沖縄名物の「ハブ酒」のこと。猛毒を持つハブを酒に漬け込み滋養強壮の薬とするように、猛毒(ヘイターからの批判や過酷な環境)を自らのエネルギーに変換するハスラースタンスを表している。

Cheers to the pain, it's a hard pill to swallow
痛みに乾杯、飲み込むのがキツい錠剤だ
※「a hard pill to swallow」は直訳で「飲み込みにくい薬」だが、ここでは「受け入れがたい厳しい現実」を意味する慣用句。

Pop that bitch up and we scream "Arigato!"
それをブチ開けて「アリガトウ!」って叫ぶ
※ボトル(ハブ酒)を開け、痛みに対してすら感謝するAwichのストロングスタイル。

Yo, Tokyo racing, nose congested, nasal spray AG
Yo、東京を駆け抜ける、鼻が詰まる、点鼻薬はエージー
※「AG」は日本の市販薬エージーノーズを指す。多忙なスケジュールや東京の空気の悪さに対するリアルな描写であり、同時にドラッグ(コカイン)のメタファーとしても機能している。

Feeling all these chemistry, boys stay blazing
このケミストリーを感じる、男たちは吸い続けてる
※大麻を吸いながら、日米のレジェンドが交わる化学反応を感じている様子。

And we still having bad trips like the 80's
そしてうちらは80年代みたいに未だにバッドトリップしてる
※80年代のクラック・エピデミック(コカインの蔓延)や日本のバブル期のような狂騒と、それに伴う負の側面を描写している。

Shit, fuck you, pay me
クソ、ふざけんな、金払え
※ギャング映画の金字塔『Goodfellas(グッドフェローズ)』におけるマフィアの掟を表す有名なセリフのリファレンス。どんな言い訳があろうと対価を要求するボスのメンタリティ。

Occupied Japan, nobody gave us guidance
占領下の日本、誰も導いてくれなかった
※戦後の米軍統治下にあった沖縄の歴史的背景。過酷な状況下でも自らの力でサバイブしなければならなかった沖縄の人々のインディペンデントな精神を歌っている。

Now you wanna bitch 'cause you see my good finance
今じゃうちらの稼ぎを見て文句垂れてる

But your daddy in my DM like "Yo' fine ass"
でもあんたの親父は私のDMで「Yo、いいケツしてんな」って言ってくる

Yo, understanding body with the solid mathematic
Yo、確固たる数学で体を理解する
※1960年代にNYのハーレムで発祥した黒人思想「Five-Percent Nation(ファイブ・パーセンターズ)」における「Supreme Mathematics(至高の数学)」への明確なリファレンス。Wu-Tang Clanが深く傾倒している思想であり、客演のRZAへの強烈なリスペクトが込められている。

My aesthetic so poetic haters find it problematic
私の美学はとても詩的、ヘイターはそれを問題視する

Flooded Patek golden chalice, Kanji character with carats
宝石だらけのパテック、黄金の聖杯、カラット入りの漢字
※「Flooded」は時計などにダイヤモンドが敷き詰められている状態。「Patek」は高級時計パテック・フィリップ。「Kanji character」はAwichのシグネチャーである漢字モチーフのジュエリー。

あれ誰? bringing panic, if you want it
あれ誰? パニックを引き起こす、もし欲しいなら

[Chorus: Awich]

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな
※「Butcher Shop」はAwichのクルーや彼女が提供する音楽空間のメタファー。生々しく切り刻まれた「本物」のヒップホップを提供する場所。

We gon' eat tonight
今夜は食い散らかすぜ
※ヒップホップにおける「Eat」は「成功する、大金を稼ぐ」というスラング。

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな

It's do or die
やるか死ぬかだ

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな

What's yours is mine
お前のものは私のもの

Come down, we gone grind to the spine, got the finest of the fine
降りてきな、骨の髄まで挽いてやる、最高級の肉が揃ってる
※「grind」は肉を挽くことと、ストリートで懸命に働くことのダブルミーニング。「finest of the fine」は最上級の品質。

Give it to you raw if it's how you like (Wow)
お望みなら生で提供してやるよ (Wow)
※「raw」は生肉と、加工されていない純粋でハードコアなヒップホップのダブルミーニング。

[Verse 2: A$AP Ferg]

The butcher coming nigga, like I'm Benny the Butcher
肉屋が来たぜ、まるでBenny the Butcherみたいにな
※NYのアンダーグラウンドを席巻するハードコアヒップホップ集団Griseldaのメンバー、Benny the Butcherへの鮮やかなネームドロップ。曲のテーマにかけている。

Pain party at Yankee stadium doing them pull-ups
ヤンキースタジアムでのペイン・パーティー、懸垂してやるぜ
※Fergの出身地であるNYの象徴ヤンキースタジアム。トレーニングの痛みを伴うパーティーという過酷なストリートのハッスルを表現している。

Killa Cam on canal, went and cop me some boogers
キャナルストリートのKilla Cam、巨大なダイヤを買いに行った
※NYハーレムの伝説的ラッパーCam'ron(Killa Cam)へのシャウトアウト。キャナル・ストリートはジュエリー店が立ち並ぶNYの通り。「boogers」は、鼻くそのような巨大な塊のダイヤモンドを指すスラング。

Popular jewels ice cold, got me doing the brook up
ポピュラーな宝石は氷のように冷たい、ブルック・アップを踊っちまうぜ
※「ice cold」はダイヤモンドの輝きのこと。「brook up」はブルックリン発祥のレゲエ/ダンスホールを取り入れたストリートダンスのスタイル。

See my name in the lights every time that I look up
上を見上げるたびに光の中に俺の名前を見る

The Billi is the new Millie, I be getting that muga
ビリオネアが新しいミリオネアの基準だ、その大金を手に入れるぜ
※かつてはMillionaire(百万長者)が成功の証だったが、今はBillionaire(億万長者)が基準になっている。「muga」は「mula(大金)」の派生スラング。

Spitting venom, kill 'em, how could you ever even feel them (When)
毒を吐いて奴らを殺す、お前らが奴らを感じるわけがない (When)

Genes in their DNA got them shittin in their denims?
奴らのDNAの遺伝子のせいで、デニムにクソ漏らしてるんだからな?
※恐怖で漏らしてしまうほど臆病なヘイターたちの本質(DNA)を嘲笑している。

Got a new chick and she ghetto and she fancy
新しい女をゲットした、ゲットーだけどファンシーだ

Like the way I think, and murder inc like Ashanti
俺の考え方が好きなんだ、AshantiみたいなMurder Incだ
※2000年代初頭を席巻したNYのヒップホップレーベルMurder Inc.と、その看板R&BシンガーであるAshantiへのリファレンス。彼女のように美しく、かつストリートのメンタリティを持っている女性だという意味。

Type of bitch to go to fifth just to cop panties
パンティーを買うためだけに5番街に行くような女さ
※NYの高級ブランド店が立ち並ぶ「Fifth Avenue(5番街)」のこと。

Cut a bitch quick if she get a little raunchy
少しでも下品になったら、すぐに縁を切るぜ

Probably posted at the shop with some siamese
たぶん店でシャム猫みたいな双子と一緒にたむろしてる
※「siamese(シャム双生児/シャム猫)」は、見た目がそっくりな美しい女性の二人組や、常に一緒にいる取り巻きを意味する。

You'll get your lamb chopped side eyeing me
俺を横目で見てたら、お前の子羊を切り刻むぞ
※「lamb chopped」はラム肉のチョップ(Butcherにかけている)と、高級車ランボルギーニ(Lamb)を破壊するというダブルミーニング。「side eyeing」は嫉妬や敵意を持って横目で見ること。

I got the fruit punch Rubys like high C
Hi-Cみたいなフルーツポンチ・ルビーを持ってる
※「Hi-C(ハイシー)」はアメリカでポピュラーなフルーツジュースのブランド。そのフルーツポンチ味のように赤く輝く巨大なルビーのジュエリーを持っているというフレックス。

Out in Okinawa please don't try to find me
沖縄にいるんだ、頼むから俺を探そうとしないでくれ
※Awichのフッドである沖縄へのシャウトアウト。

[Chorus: Awich]

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな

We gon' eat tonight
今夜は食い散らかすぜ

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな

It's do or die
やるか死ぬかだ

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな

What's yours is mine
お前のものは私のもの

Come down we gone grind to the spine, got the finest of the fine
降りてきな、骨の髄まで挽いてやる、最高級の肉が揃ってる

Give it to you raw if it's how you like (Wow)
お望みなら生で提供してやるよ (Wow)

[Verse 3: Awich]

Event a vegetarian can fit the criteria
ベジタリアンでさえ条件を満たせる
※「肉屋(Butcher Shop)」という生々しいヒップホップ空間であっても、ベジタリアン(過激な環境に慣れていない者)すら魅了し、適応させてしまうというAwichの実力。※原文の「Event」は「Even」の意図。

Slicing up the barriers, serving up like veterans
障壁を切り刻み、ベテランのように提供する
※言葉の壁やジェンダーの壁を肉のように切り刻む。

I'm from the jungle with the military trenches
私は軍の塹壕があるジャングルの出身だ
※亜熱帯の自然と、在日米軍基地が混在する沖縄の特殊な環境のこと。

Cinderella bitches trying to hop over the fences
シンデレラ・ビッチどもがフェンスを飛び越えようとしてる
※「フェンス」は米軍基地を囲う金網のこと。地元の女の子たちが基地内のアメリカ人と出会い、外の世界や豊かさを夢見て(シンデレラのように)フェンスの向こう側に行こうとする沖縄のリアルなストリートの光景を描写している。

Used to be that girl on the gate two street
かつてはゲート通りにいた女の子だった
※「gate two street(ゲート2ストリート)」は、沖縄の嘉手納基地の第2ゲート前に広がる、米兵向けのバーやクラブが立ち並ぶコザ(沖縄市)の有名な通りのこと。Awichのルーツ。

Now I'm making yens like a real Japanese
今じゃ本物の日本人のように円を稼いでる
※沖縄は1972年の本土復帰まで通貨がUSドルだった。今では「円」を稼ぎ、日本のヒップホップシーンの頂点に立っているという誇り。

Rounding all my numbers to the nearest hundred thousand
すべての数字を十万単位で四捨五入する
※稼ぐ額が大きすぎるため、細かい端数は気にしないというハスラーとしてのフレックス。

I ain't got the time to count the ones who's doubted, bow
私を疑った奴らを数える時間なんてない、バウ
※「bow」は銃声を模したアドリブ。ヘイターを撃ち抜く音。

Bobby got the yacht at the dock, it's the rock
ボビーが波止場にヨットを持ってきた、それがロック
※「Bobby」はこの曲の客演であるWu-Tang ClanのRZAの本名(Robert Diggs)であり、彼のアルターエゴ「Bobby Digital」を指す。「rock」は強固な絆や揺るぎないスタンスのこと。

Bush on the rocks in a clean Bakarat
クリーンなバカラのグラスでブッシュをオン・ザ・ロックで
※「Bush」はアイリッシュ・ウイスキーの「Bushmills(ブッシュミルズ)」。「Bakarat(Baccarat)」は高級クリスタルグラス。

Aston DBX sitting in my lot
駐車場にはアストンマーティン・DBXが停まってる

From Oki to the shaolin' land, it's the bop
オキからシャオリンの地へ、これは極上の曲だ
※「Oki」は沖縄。「shaolin' land(少林)」はWu-Tang Clanのメンバーが自分たちの地元であるNYのスタテンアイランドをカンフー映画にちなんで呼ぶ名称。沖縄とスタテンアイランドを繋ぐアンセムであると宣言している。

Habu sake mixed with the cider
ハブ酒をサイダーで割る

Rally all these drunken monks in the cipher
酔いどれの僧侶たちをサイファーに集める
※「drunken monks(酔拳を使う僧侶)」は、カンフー映画や東洋思想に傾倒するWu-Tang Clanの世界観への完璧なオマージュ。彼らをサイファー(輪になってラップすること)に呼び寄せる。

I be with the shell shock boys from the island
私は島のシェル・ショック・ボーイズと一緒にいる
※「shell shock」は戦争による心的外傷を指すが、ここでは過酷な島の環境(沖縄)で生き抜き、クレイジーになった地元の仲間たちのこと。

If you want it, we can chop it up
もし欲しいなら、切り刻んでやれるぜ
※「chop it up」は「会話する」「ビートを作る」「肉(敵)を切り刻む」のトリプルミーニング。「精肉店」のテーマを見事に回収して曲を締めている。

[Chorus: Awich]

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな

We gon' eat tonight
今夜は食い散らかすぜ

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな

It's do or die
やるか死ぬかだ

Come down to the butcher shop
精肉店に降りてきな

What's yours is mine
お前のものは私のもの

Come down we gone grind to the spine, got the finest of the fine
降りてきな、骨の髄まで挽いてやる、最高級の肉が揃ってる

Give it to you raw if it's how you like (Wow)
お望みなら生で提供してやるよ (Wow)