Artist: IDK, Conductor Williams & Ogi
Album: E.T.D.S.
Song Title: SCRAMBLED EGGS - TBC :(
概要
メリーランド出身のラッパーIDKが、アルバム『E.T.D.S.』の締めくくり(あるいは次なる章への布石)として提示する本作は、彼自身の過去の罪悪感とストリートで生き抜くための過酷な選択を内省的に綴った一曲だ。Griseldaのプロデューサーとして知られるConductor Williamsによる重厚かつソウルフルなビートの上で、新鋭シンガーOgiの美しいコーラスが響き渡る。タイトルの「SCRAMBLED EGGS」は、ストリートの過酷さによって脳や人生が「スクランブル(かき混ぜられ、めちゃくちゃにされる)」されることの隠喩であり、「TBC」は「To Be Continued(続く)」を意味する。貧困から抜け出すために再びドラッグディール(ホワイト=コカイン)に手を染めそうになる葛藤や、かつて自分が傷つけた人々への深い後悔を赤裸々に吐露しつつも、最後には自身のアーティスト名「IDK(I Don't Know=分からない)」の真の由来と、不確実な未来を受け入れて生き抜く決意がポエトリー・リーディングの形で語られる。
和訳
[Intro: IDK]
Shit crazy, man
マジでクレイジーだぜ
The streets will scramble your eggs if you lookin'—
もしお前がストリートを見くびってたら、ストリートがお前の脳みそをスクランブルエッグにしちまうぜ—
※"scramble your eggs"は、脳(eggs=頭)をかき混ぜる、つまり正気を失わせる、あるいは頭を撃ち抜かれることのメタファー。ストリートの過酷さと容赦のなさを表している。
IDK (Conductor)
IDK (Conductor)
※プロデューサーConductor Williamsのシグネチャータグ。
Check, check, check, uh, yeah
チェック、チェック、チェック、uh、yeah
[Chorus: Ogi]
It's getting quite impossible
かなり不可能になってきているわ
[Verse 1: IDK]
Yeah
I got envy for anybody that never had to worry 'bout the rent
家賃の心配なんて一度もしたことがない奴らが羨ましいよ
Or worry 'bout the AC comin' out the vent
通気口からちゃんとエアコンの風が出るかどうかなんて心配もな
Or worry 'bout the holiday delayin' the check
祝日のせいで小切手(給料)の振込が遅れる心配もないし
Or worry 'bout runnin' into opps at an event
イベントで敵(オップス)に出くわす心配もない奴らがさ
Dreamt of makin' money, got it and spent it all
金を稼ぐことを夢見て、手に入れては全て使い果たした
Thinkin' 'bout gettin' it back with deposits from the withdrawals, huh
引き出した分を、また預金して取り戻すことばかり考えてる、huh
※ハスリングと浪費の無限ループ。稼いでもすぐに消えていくストリート・マネーの虚しさ。
A product of relentlessness, but I would rather live a life of way less stress
容赦のない環境が生み出した産物だが、俺はもっとストレスのない人生を送りたい
Been gettin' way less chеcks like I'm on strike
ストライキでもしてるみたいに、入ってくる小切手(金)がずっと減ってるんだ
Been thinkin' 'bout pedalin', but not on a bikе
またペダルを漕ごうかと考えてる、だが自転車のペダルじゃないぜ
※"pedalin'"(ペダルを漕ぐ)と"peddling"(密売する、売り歩く)のダブルミーニング。金に困り、再びドラッグディールに戻るという危険な誘惑。
Investin' in myself again, but not on a mic
もう一度自分に投資するんだ、だがマイクへの投資じゃない
Before I catch the blues, I take my chances with white
ブルース(憂鬱/警察)に捕まる前に、ホワイト(コカイン)に賭けてみるのさ
※"blues"は憂鬱な気分、または青い制服の警察。"white"は白人、あるいはコカイン(白モノ)。警察に捕まるか貧困で沈む前に、ドラッグの密売で一発逆転を狙うというストリートの心理。
Just to eat more green, take a hell of a bite
もっとグリーン(金/野菜)を食うために、思い切り噛み付いてやる
※"green"は現金の隠語。
But I'm blacker than coal, so the sentence ain't light, huh
だが俺は石炭よりも黒いからな、だから判決(sentence)は決して軽くない(lightじゃない)んだ、huh
※"black"(黒人/暗い)と"light"(軽い/明るい)の対比。同じ罪を犯しても、黒人であるがゆえにアメリカの司法制度において重い刑罰を課されるというSystemic Racism(構造的差別)への痛烈な皮肉。
But you will never see me fall to my knees
でも俺が膝をついて崩れ落ちる姿は、絶対に見られないぜ
I stand on business, so I can never bow to defeat, capisce?
俺はビジネスの場に立ってる(やるべきことをやる)から、敗北に頭を下げることなんて絶対にない、分かったか?
※"stand on business"は「自分の義務を果たす、本気で取り組む、舐められないようにする」という意味の近年のトレンドスラング。"capisce"はイタリア語(マフィア映画などで使われる「分かったか?」の意)。
[Chorus: Ogi]
It's getting quite impossible
かなり不可能になってきているわ
You didn't know, but now you know, yeah, yeah
あなたは知らなかっただろうけど、今なら分かるはずよ、yeah, yeah
[Verse 2: IDK]
Uh, I still feel regret from the people I robbed
Uh、俺はまだ、強盗した人たちへの後悔を感じている
My heart still hurt from the people I've harmed
俺が傷つけた人たちのことを思うと、今でも心が痛むんだ
I still can't sleep from the pain that I've dealt
俺が与えてしまった苦痛のせいで、いまだに眠れない夜がある
And especially can't sleep from the person I—
そして特に、俺が—してしまったあの人のせいで眠れないんだ
※言葉を濁すことで、強盗や傷害以上に重い罪(おそらく殺人や決定的な裏切り)を暗示しており、癒えないトラウマを表現している。
It's clear to me that karma is a real thing
カルマ(因果応報)が本物だってことは、俺には痛いほど分かってる
I just hope it ain't ugly when it come for me
ただ、それが俺の元にやって来る時、あまり酷い形じゃないことを祈るだけさ
I still see visions of mama suffering
ママが苦しんでいる姿が、いまだに目に浮かぶんだ
Just know that even deaf people still feel screams
これだけは知っておいてくれ、耳の聞こえない人間だって、悲鳴を感じ取れるってことを
※物理的な音ではなく、痛みや絶望の波動(バイブス)は誰にでも伝わるという、極めて詩的で重いパンチライン。
Still made a king from the cards I was dealt
それでも配られたカード(運命)から、俺はキングを作り上げたんだ
Heart of a lion, I am too hard to kill
ライオンの心臓を持ってる、俺を殺すのは難しすぎるぜ
Too hard to lose, too woke to snooze
負けるには手強すぎるし、居眠りするには目が覚めすぎてる(woke)
※"woke"は社会の現実や差別に「目覚めている」状態。
Too alive to die, I could barely bruise, mood
死ぬには生きすぎてる、俺にはアザひとつ付けるのもやっとだろうな、そんな気分さ
See, I've been in situations that niggas ain't comin' back from
見ろよ、俺は他の奴らなら生還できないような修羅場をいくつもくぐり抜けてきたんだ
But I've been back more than once, and I'm back once again
だが俺は一度ならず何度も戻ってきた、そして今また戻ってきたのさ
I'm for real, no pretend
俺はマジだ、フリなんかじゃない
Through remorse and regret, I'm my own fuckin' friend, huh
自責の念や後悔を乗り越えて、俺は俺自身のクソ最高の友達なのさ、huh
[Chorus: Ogi]
It's getting quite impossible
かなり不可能になってきているわ
You didn't know, but now you know, yeah
あなたは知らなかっただろうけど、今なら分かるはずよ、yeah
[Outro: IDK]
Even the devil smiles, even the Earth cries
悪魔でさえも微笑み、地球でさえも涙を流す
Evidence that our human characteristics were meant to live side by side
それは、俺たち人間の様々な特性が、隣り合って生きるように運命づけられている証拠だ
I look to the left and the right, the ground and the sky
俺は左と右を、地面と空を見る
Words from my heart skip my brain and pass through my mouth
心からの言葉が、脳を飛び越えて、俺の口から通り抜けていく
As I ask the reason why, the answer's always been IDK
「なぜなんだ?」と理由を尋ねる時、答えはいつだって「IDK(I Don't Know=分からない)」だった
A name I created while the uncertainty that imprisons me while behind bars helped me say
それは、鉄格子の中で俺を閉じ込めていた不確実性が、俺にこう言わせてくれたおかげで作った名前だ
※アーティスト名「IDK」の真のオリジン・ストーリー。「Ignorantly Delivering Knowledge」のアクロニムの根底には、刑務所での先の見えない絶望の中で「分からない(I Don't Know)」という不確実性を受け入れた過去があったことを告白している。
"I'll be forever, okay"
「俺は永遠に大丈夫だ」と
To be continued
つづく
