Artist: The Beatles
Album: With the Beatles
Song Title: Not a Second Time
概要
ビートルズのセカンド・アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』(1963年)に収録された、ジョン・レノンによる単独作である。音楽史においてこの楽曲を極めて特異な存在にしているのは、イギリスの高級紙「タイムズ」のクラシック音楽評論家であるウィリアム・マンが、本作のエンディングのコード進行を「マーラーの『大地の歌』を思わせるエオリアン・カデンツ(Aeolian cadence)」と評し、ビートルズの音楽性をアカデミズムの観点から高く評価したという歴史的エピソードである。ジョン自身は後年、「当時はエオリアン・カデンツなんて異国の鳥の名前か何かだと思っていた」と冗談めかして語っているが、彼が無意識のうちに西洋音楽の伝統的な終止形に辿り着いていたという事実は、彼が持つ天才的な直感と天性のメロディ・センスを裏付けている。音楽的には、ジョンが当時敬愛していたスモーキー・ロビンソンからの影響が色濃く、プロデューサーのジョージ・マーティンによる抑制の効いたピアノが、失恋と拒絶のメランコリーを際立たせている。
和訳
[Verse 1]
You know you made me cry
君のせいで俺が泣いたこと、わかってるだろ
I see no use in wondering why
どうしてなのか、今さら考えたって無駄なことさ
I cry for you
俺は君のために泣くんだ
※「泣く(cry)」という感情の吐露は、タフなロックンローラーを気取っていた当時の若者文化においては弱さの露呈とみなされがちだが、ジョンは初期からこうした自らの脆さを隠すことなく歌詞に織り込んでいる。幼少期の両親との離別から生じた「見捨てられ不安」が、こうしたラブソングの根底に流れていると解釈するファンや研究者は多い。
[Verse 2]
And now, you've changed your mind
そして今になって、君は心変わりをした
I see no reason to change mine
俺の方まで気持ちを変える理由なんてないさ
I cry, it's through, oh
俺は泣く、もうすべて終わったんだ、oh
[Chorus]
You're giving me the same old line
君はいつもの使い古された言い訳を並べている
I'm wondering why
どうしてなんだろうな
You hurt me then, you're back again
あの時俺を傷つけたくせに、また戻ってくるなんて
No, no, no, not a second time
いや、いや、いや、二度目はないぜ
※ジョンの特徴である「怒りと拒絶」がストレートに表現されたフック。気まぐれな相手に対する冷淡な突き放しの中にも、裏切られた痛みが滲み出ている。ジョン自身のダブルトラック・ボーカルが、この孤独な決意をより重層的に響かせている。
[Piano Solo]
※ジョージ・マーティンによるピアノ・ソロ。ロックンロールの激しいギター・ソロではなく、あえてジャジーで落ち着いたピアノを配置することで、この曲の持つ大人の憂鬱さやR&B的な質感が強調されている。初期ビートルズにおけるマーティンの優れたアレンジ感覚が発揮された箇所である。
[Verse 1]
You know you made me cry
君のせいで俺が泣いたこと、わかってるだろ
I see no use in wondering why
どうしてなのか、今さら考えたって無駄なことさ
I cry for you, yeah
俺は君のために泣くんだ、yeah
[Verse 2]
And now, you've changed your mind
そして今になって、君は心変わりをした
I see no reason to change mine
俺の方まで気持ちを変える理由なんてないさ
I cry, it's through, oh
俺は泣く、もうすべて終わったんだ、oh
[Chorus]
You're giving me the same old line
君はいつもの使い古された言い訳を並べている
I'm wondering why
どうしてなんだろうな
You hurt me then, you're back again
あの時俺を傷つけたくせに、また戻ってくるなんて
No, no, no, not a second time
いや、いや、いや、二度目はないぜ
[Outro]
Not a second time
二度目はないぜ
Not a second time
二度目はないぜ
No, no, no, no
いや、いや、いや、いや
Not a second time (No, no, no)
二度目はないぜ(いや、いや、いや)
※ここで音楽評論家ウィリアム・マンを驚嘆させた、Gメジャー(ト長調)の楽曲が突然Eマイナー(ホ短調)の和音へと移行してフェードアウトしていく有名な「エオリアン・カデンツ」が登場する。理論を全く学んでいないリバプールの若者が、直感だけでこの美しくも解決しないミステリアスな終止法を選択したことは、彼らが単なるアイドルではなく、西洋音楽の歴史に名を刻む天賦の才を持っていたことを象徴している。
