Artist: The Beatles
Album: With the Beatles
Song Title: You Really Got a Hold on Me
概要
ビートルズのセカンド・アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』(1963年)に収録された本作は、モータウン・レコードを代表するスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズが1962年に大ヒットさせたR&Bナンバーのカバーである。ジョン・レノンはスモーキー・ロビンソンを熱狂的に敬愛しており、このカバーでも原曲への深いリスペクトを捧げている。録音は1963年7月に行われ、ジョンとジョージ・ハリスンによる緊密なデュエット形式のボーカル、そしてプロデューサーのジョージ・マーティンによる堅実なピアノが楽曲の屋台骨を支えている。好ましくない相手だと頭では理解しながらも、理屈を超えた愛情で縛られてしまうという「愛憎のジレンマ」を描いた歌詞は、ジョンの情念に満ちた生々しいボーカル・スタイルと完璧に共鳴している。初期ビートルズが単なるロックンロール・バンドから、ブラック・ミュージックの深いグルーヴを体現するグループへと進化を遂げていたことを証明する、歴史的に重要なトラックである。
和訳
[Verse 1]
I don't like you, but I love you
君のことは好きじゃない、だけど愛しているんだ
※愛憎のジレンマを端的に表したモータウン屈指のパンチライン。幼少期の複雑な家庭環境から愛情に対して強い不信感と執着を同時に抱えていたジョンのパーソナリティが、この矛盾したフレーズに圧倒的な説得力を与えている。
Seems that I'm always thinking of you
いつも君のことばかり考えているみたいだ
Oh, oh, oh
You treat me badly, I love you madly
君は俺を酷く扱うけれど、俺は狂おしいほど君を愛している
[Chorus]
You've really got a hold on me (You've really got a hold on me)
君は俺を完全に支配している(君は俺を完全に支配している)
※「get a hold on」は「〜を掴んで離さない、支配する」の意。ジョンとジョージ、ポールによるバックコーラスとの掛け合いが、自らを束縛する鎖の重さを強調するような呪術的なループを生み出している。
You've really got a hold on me (You've really got a hold on me), baby
君は俺を完全に支配している(君は俺を完全に支配している)、ベイビー
[Verse 2]
I don't want you, but I need you
君なんて欲しくない、だけど君が必要なんだ
Don't want to kiss you, but I need to
君にキスなんてしたくない、だけどそうせずにはいられない
Oh, oh, oh
You do me wrong now, my love is strong now
君は俺を裏切るけれど、俺の愛は今や確固たるものなんだ
[Chorus]
You've really got a hold on me (You've really got a hold on me)
君は俺を完全に支配している(君は俺を完全に支配している)
You've really got a hold on me (You've really got a hold on me), baby
君は俺を完全に支配している(君は俺を完全に支配している)、ベイビー
[Bridge]
I love you, and all I want you to do
君を愛している、そして君に望むのはただ一つ
Is just hold me, hold me, hold me, hold me
ただ俺を抱きしめて、抱きしめて、抱きしめて、抱きしめてほしい
※徐々に熱を帯びていくジョンのシャウト。モータウンの洗練されたソウル・ミュージックを、リバプールの荒削りな若者がパッションの限界まで引き上げている歴史的瞬間である。
Tighter
もっときつく
Tighter
もっときつく
[Verse 3]
I want to leave you, don't want to stay here
君から離れたい、ここには留まりたくない
Don't want to spend another day here
これ以上一日たりとも、ここで過ごしたくないんだ
Oh, oh, oh
I want to split now, I just can't quit now
今すぐ別れたい、でもどうしてもやめられないんだ
※「split」は当時の若者言葉で「立ち去る、別れる」の意。理性を凌駕する抗いがたい欲望の告白であり、ジョンのざらついた声がその絶望的な情動を見事に表現している。
[Chorus]
You've really got a hold on me (You've really got a hold on me)
君は俺を完全に支配している(君は俺を完全に支配している)
You've really got a hold on me (You've really got a hold on me), baby (Baby)
君は俺を完全に支配している(君は俺を完全に支配している)、ベイビー(ベイビー)
[Bridge]
I love you, and all I want you to do
君を愛している、そして君に望むのはただ一つ
Is just hold me (Please), hold me (Squeeze), hold me, hold me
ただ俺を抱きしめて(お願いだ)、抱きしめて(きつく)、抱きしめて、抱きしめてほしい
※コーラスの(Please)と(Squeeze)はポールとジョージによる絶妙な合いの手。原曲のテイストをリスペクトしつつ、ビートルズ特有のタイトなコーラス・ワークが存分に発揮されている。
[Outro]
You've really got a hold on me (You've really got a hold on me)
君は俺を完全に支配している(君は俺を完全に支配している)
You've really got a hold on me (You've really got a hold on me)
君は俺を完全に支配している(君は俺を完全に支配している)
※プロデューサーであるジョージ・マーティンの弾くピアノと、ジョージ・ハリスンの鋭いギターが絡み合いながらフェードアウトしていく。アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』が単なるアイドル・ポップスの枠を大きく逸脱し、黒人音楽の魂(ソウル)に深く肉薄していたことを証明して曲は終わる。
