Artist: The Beatles
Album: Please Please Me
Song Title: Chains
概要
ビートルズのデビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』に収録された本楽曲は、アメリカの伝説的なソングライター・チームであるジェリー・ゴフィンとキャロル・キングがペンを執り、ガールズ・グループであるザ・クッキーズ(The Cookies)が1962年に全米ヒットさせたR&Bポップスのカバーである。録音は1963年2月11日、アルバムの大部分が制作された「13時間マラソン・セッション」にて行われ、わずか4テイクで完成に至った。リード・ボーカルはジョージ・ハリスンが担当し、ジョン・レノンとポール・マッカートニーがタイトな3声コーラスで脇を固めている。特筆すべきは、当時のビートルズが「女性グループの楽曲を男性が歌う」という行為をごく自然に行っていた点である。歌詞の代名詞をわずかに変更しただけで、原曲の持つ甘酸っぱさを保ちつつ、ジョンのアーシーなハーモニカとバンドのソリッドなビートによって、見事なマージービートへと昇華させている。彼らのアメリカン・ポップスに対する深い造詣とリスペクトを示す重要なトラックである。
和訳
[Verse 1: George Harrison, John Lennon & Paul McCartney]
Chains, my baby's got me locked up in chains
鎖さ、あの娘は俺を鎖に繋いで閉じ込めているんだ
※ジョンによるブルージーなハーモニカのイントロから一転して始まる、3人による見事なユニゾン・コーラス。リバプールのキャバーン・クラブなどでの下積み時代に、彼らがどれほどこの曲をライブで鍛え上げてきたかが伺える完璧な息の合い方である。
And they ain't the kind that you can see
それは目に見えるような鎖じゃない
Woah, oh, these chains of love got a hold on me, yeah
Woah, oh、この愛の鎖が俺を捕らえて離さないんだ、そうさ
[Verse 2: George Harrison, John Lennon & Paul McCartney]
Chains, well, I can't break away from these chains
鎖さ、そう、俺はこの鎖から逃げ出すことができない
Can't run around, 'cause I'm not free
遊び回ることもできない、俺は自由の身じゃないからね
※「run around」は浮気をする、遊び回るという意味。女性コーラス・グループの曲を男性目線で歌うことで、「恋人に束縛されていて他の女の子と遊べない」という少し情けない男の心情を表現している。ジョージ・ハリスンの少しシャイで朴訥としたボーカルが、この歌詞のキャラクターに絶妙にマッチしている。
Woah, oh, these chains of love won't let me be, yeah
Woah, oh、この愛の鎖が俺を自由にしてくれないんだ、そうさ
[Bridge: George Harrison]
I wanna tell you, pretty baby
可愛い君に伝えたいんだ
※ここで視点が変わり、「今目の前にいる別の魅力的な女の子」に向かって語りかけている。ジョージのソロ・ボーカルになることで、親密な語り口が強調される。
I think you're fine
君はすごく素敵だと思うよ
I'd like to love you
君と恋に落ちたいくらいさ
But darling, I'm imprisoned by these
でもね、愛しい人、俺はこれに囚われているんだ
※「君と遊びたいけれど、本命の彼女に縛られているから手を出せない」という、やや言い訳がましい男の葛藤が描かれる。一説によれば、このブリッジ部分のコード進行とメロディの切なさが、後のジョージ自身のソングライティング(特にマイナーコードを用いたメランコリックなアプローチ)に多大な影響を与えたと解釈する研究者もいる。
[Verse 3: George Harrison, John Lennon & Paul McCartney]
Chains, my baby's got me locked up in chains
鎖さ、あの娘は俺を鎖に繋いで閉じ込めているんだ
And they ain't the kind that you can see
それは目に見えるような鎖じゃない
Woah, oh, these chains of love got a hold on me, yeah
Woah, oh、この愛の鎖が俺を捕らえて離さないんだ、そうさ
[Bridge: George Harrison]
Please believe me when I tell you
君に伝える言葉を信じてほしい
Your lips are sweet
君の唇はとても甘いってね
I'd like to kiss them
その唇にキスをしたいけれど
But I can't break away from all of these
でも、俺はこのすべてから抜け出すことはできないんだ
[Verse 4: George Harrison, John Lennon & Paul McCartney]
Chains, my baby's got me locked up in chains
鎖さ、あの娘は俺を鎖に繋いで閉じ込めているんだ
And they ain't the kind that you can see
それは目に見えるような鎖じゃない
Woah, oh, these chains of love got a hold on me, yeah
Woah, oh、この愛の鎖が俺を捕らえて離さないんだ、そうさ
[Outro: George Harrison, John Lennon & Paul McCartney]
Chains
鎖
Chains of love
愛の鎖
Chains of love
愛の鎖
Chains of love
愛の鎖
※エンディングに向かってフェードアウトしていく中で繰り返されるフレーズ。ジョンのハーモニカが再びブルージーに絡みつく。単なるポップソングのカバーにとどまらず、初期ビートルズならではのR&Bやブラック・ミュージックへの深い憧憬と、それを自分たちのロックンロールとして再構築する圧倒的な演奏力が刻まれて曲は幕を閉じる。
