Artist: Michael Jackson
Album: HIStory: Past, Present And Future - Book I
Song Title: Come Together
概要
1969年のザ・ビートルズの名曲をマイケル・ジャクソンがカバーした本作は、1988年の映画『ムーンウォーカー』のクライマックスを飾る楽曲として初披露され、後に1995年のアルバム『HIStory』に収録された。当時、マイケルはビートルズの楽曲版権を所有するATVミュージックを買収した直後であり、このカバーは自身の音楽的ルーツへの敬意であると同時に、ポップ・ミュージックの歴史を正当に継承する「キング・オブ・ポップ」としての権威を示す象徴的な行為でもあった。オリジナルが持つサイケデリックでルーズな質感を、マイケルは硬質なスラップベースと鋭いシャウト、そして独特のグルーヴを強調したファンク・ロックへと見事にアップデートしている。歌詞のシュールレアリスム的な難解さをあえてそのまま残しつつ、マイケル特有の野性味溢れるペルソナを投影させることで、白人ロックの古典を黒人音楽の文脈で再定義した歴史的意義の深いトラックである。
和訳
[Verse 1]
Here come ol' flat top
さあ、あのお決まりのヘアスタイルの奴がやってくる
※"Flat top"はジョン・レノンが尊敬していたチャック・ベリーの楽曲「You Can't Catch Me」からの引用。マイケルはこのカバーにおいて、ロックンロールの始祖への繋がりを意識して歌っている。
He come groovin' up slowly
ゆっくりとリズムに乗りながら現れる
He's got Joo Joo eyeball
奴の目はまるで呪術師のように怪しい
※"Joo Joo"は西アフリカの呪術や魔術を指す。ここでは不思議な魅力や、人を惹きつけるカリスマ性を備えた人物の描写として機能している。
He one holy roller
奴は熱狂的な狂信者だ
※宗教的な興奮で転げ回る人を指す言葉だが、ここでは社会の常識に縛られない、ある種のエキセントリックな人物像を浮かび上がらせている。
He got hair down to his knees
髪を膝までなびかせて
Got to be a joker, he just do what he please, check
道化師に違いない、奴はただ自分の好きなように振る舞うだけさ、よく見てな
※"Do what he please"というフレーズは、常に周囲の期待や制約と戦ってきたマイケルの生き様とも強く共鳴している。
[Verse 2]
He wear no shoeshine
奴の靴は磨かれちゃいない
He's got toe jam football
足の指には汚れが溜まり、フットボールに興じている
※浮浪者のような風体や、社会の底辺で生きるタフな男のイメージ。マイケルはこうした泥臭い表現を、あえて洗練されたボーカルで歌い上げるギミックを用いている。
He's got monkey finger
指先は猿のように器用だ
He shoot Coca-Cola
コカ・コーラをブチ込むのさ
※オリジナルのジョン・レノンが示唆した薬物文化の隠喩を、マイケルはよりポップなアイコンとしての自分に引き寄せて歌っている。
He say, "I know you, you know me"
奴は言う「俺はお前を知っているし、お前も俺を知っているはずだ」
"One thing I can tell you is you got to be free"
「一つ言えるのは、お前は自由にならなきゃいけないってことだ」
※「自由」を求めるメッセージは、本作においてマイケルが最も強調したかったテーマの一つであり、魂の底からの叫びとしてアウトプットされている。
[Chorus]
Come together right now over me
今すぐ俺のところに集まれ、一つになろう
※"Over me"は「俺を介して」あるいは「俺の頭上で」など多義的だが、マイケルは自分という存在を通じて世界が団結することを願う平和主義的なニュアンスを込めて歌っている。
[Verse 3]
He bag production
奴は袋に荷物を詰め込む
He's got walrus gumbo
セイウチのガンボ料理を抱えて
※"Walrus"はビートルズの楽曲「I Am The Walrus」のリファレンス。マイケルはこうした過去の象徴的なイメージをサンプリングするように配置している。
He's got Ono sideboard
小脇にはオノを抱えている
※オノ・ヨーコへの言及。オリジナルの歌詞を尊重しつつ、複雑な人間関係やパートナーシップの象徴として残されている。
He one spinal clacker
背骨を鳴らすような不気味な奴だ
He's got feet down through his knees
脚は膝の下まで伸びている
Hold you in his arm till you can feel his disease
奴の病を感じるまで、その腕でお前を抱きしめるだろう
※"Disease"(病)は、ここでは異常なまでの情熱や、伝染するカリスマ性の比喩。マイケルは自らの孤独な苦悩を、この言葉に重ね合わせて表現している。
[Chorus]
Come together right now over me
今すぐ俺のところに集まれ、一つになろう
Wow, come together, baby, hoo!
Come together, baby
Come together
Come together
[Verse 4]
He roller coaster
奴はジェットコースターだ
He's got early warning
警報を早々に鳴らしている
He's got muddy water
泥水をすすりながらな
※伝説的ブルースマン、マディ・ウォーターズへのリファレンス。ロックのルーツである黒人音楽への敬意がここに込められている。
He one mojo filter
奴は魔力(モジョ)を濾過するフィルターだ
※"Mojo"はブルースやR&Bの文脈で「性的な魅力」や「不思議な力」を意味する。マイケルは自らをそのパワーを操る媒介者として定義している。
He say "One and one and one is three"
奴は言う「一と一と一を足せば三になる」
Got to be good looking 'cause he's so hard to see
奴は正体不明だから、せめて見た目だけは整えておかなくちゃな
※メディアによって実像を歪められ、本当の姿を見てもらえないマイケルのパブリックイメージに対する自虐的な皮肉としても読み取れる。
[Chorus]
Come together right now over me
今すぐ俺のところに集まれ、一つになろう
[Bridge]
Come together, baby, yeah baby
The filter, got a-mojo
フィルターには魔力が宿っている
So come together
Just come together
Just come together
Muddy water
マディ・ウォーターズ
※ブルースの巨人へのリスペクト。マイケルのルーツ音楽への回帰を象徴する叫び。
Spinal clacker, baby
Mojo filter early warning with a sideboard
魔力のフィルター、警告、そしてサイドボード
A walrus clacker
セイウチが音を立てる
A walrus clacker
セイウチが音を立てる
[Outro]
Come together, yeah
Come together, yeah
Come together
Mojo working, together, mojo filter
魔力が働いている、共に、魔力のフィルターを
※"Mojo working"はマディ・ウォーターズの代表曲「Got My Mojo Working」へのオマージュ。マイケルはロックの名曲を締めくくるにあたり、自らの音楽的起源であるブラック・ミュージックの誇りを強く打ち出している。
