Artist: Raekwon (feat. Ghostface Killah)
Album: Only Built 4 Cuban Linx...
Song Title: Criminology
概要
Raekwonの歴史的傑作『Only Built 4 Cuban Linx...』(1995年)に収録された、マフィオソ・ラップの真髄を提示するクラシック・トラック。プロデューサーのRZAは、Black Ivoryの「I Keep Asking You Questions」のホーンとボーカルを切り刻み、重厚で緊迫感のあるバンガー・ビートを錬成した。冒頭にはマフィア映画の金字塔『スカーフェイス』(1983年)から、アル・パチーノ演じるトニー・モンタナがかつてのボスを処刑する直前の決定的なダイアログがサンプリングされており、RaekwonとGhostface Killahが自らをストリートの冷酷なドンに重ね合わせていることを宣言している。「犯罪学(Criminology)」というタイトルの通り、Ghostfaceの狂気じみた鮮烈なワードプレイと、Raekwonの極めてニューヨーク的なブランド志向(PoloやTommy Hilfiger)とストリートの生々しいスラングが交差する、90年代東海岸ハードコア・ヒップホップの最高峰に位置する一曲である。
和訳
[Intro: Sample + Raekwon]
I told you a long time ago, you fucking little monkey, not to fuck me
昔から言ってたはずだ、このクソ猿め、俺に盾突くなんてな
※映画『スカーフェイス』で主人公トニー・モンタナが、自分を裏切ったボスであるフランク・ロペスに対して銃を向けるシーンのサンプリング。ストリートでの下剋上と冷酷な処刑を象徴している。
Ayy, ayy, who the fuck you think you talkin' to, huh? You wanna fuck with—
おい、おい、お前は誰と話してると思ってるんだ、あ? 俺に喧嘩を売りたいのか—
※フランクの命乞いのセリフ。
Who the fuck you think I am, your fuckin' bellboy?
俺を誰だと思ってる、お前のクソみたいなベルボーイだとでも思ってんのか?
D'you wanna go to war? D'you wanna go to war? We'll take you to war, okay? (Coming up on half a mil, we build)
戦争がしたいのか? 戦争がしたいのか? なら戦争に連れてってやるよ、いいな?(50万ドルに手が届きそうだ、俺たちは築き上げる)
For real, y'all
マジだぜ、お前ら
Takin' you on another one, son
お前らを別次元へ連れて行ってやるよ、兄弟
Uh, Julio Iglesias
あー、フリオ・イグレシアスさ
Makin' C.R.E.A.M. like that nigga
あいつみたいにクリームを稼ぐのさ
※世界的歌手フリオ・イグレシアスを引き合いに出し、莫大な富を築くマフィアのボスの野望を掲げている。「C.R.E.A.M.」はWu-Tangの代名詞である金(Cash Rules Everything Around Me)のこと。
[Verse 1: Ghostface Killah]
Yo, (Blaow) first of all, son, peep the arson
ヨォ、(ブラウ)まず第一にな兄弟、この放火(熱気)を見てみな
Many brothers I be sparkin' and bustin' mad light inside the dark
俺は何人もの兄弟たちに火をつけ、暗闇の中で狂ったような光を放つんだ
Call me dough snatcher, just the brother for the rapture
俺を金(ドウ)を奪う者と呼びな、まさに携挙(ラプチャー)をもたらす兄弟さ
※「rapture」はキリスト教における終末の携挙(救済)の意味だが、ここでは敵を死の世界へ送ることや、音楽による圧倒的な熱狂を意味している。
I hang glide, holdin' on strong, hard to capture
ハンググライダーみたいに滑空し、強くしがみつく、俺を捕まえるのは困難だぜ
Extravagant, RZA bake the track and it's militant
贅沢だ、RZAがこのトラックを焼き上げ、それは軍事的なまでに過激だ
Then I react like a convict and start killin' shit
そして俺は囚人のように反応し、このシットを殺し(圧倒し)始める
It's manifested, the gods work like appliances
はっきりと示されてる、神々(俺たち)は電化製品みたいに確実に作動する
※「gods」は5% Nationにおける黒人男性(自分たち)のこと。確実に電源が入り機能する電化製品のように、彼らの行動にブレはない。
Dealin' in my cypher I revolve around sciences
俺のサイファーの中で取引をし、俺は科学(サイエンス)を中心に回転する
※「sciences」は5% Nationの高度な知識体系と真理のこと。
The 9th chamber, leave you trapped inside my hallway
第9の房だ、お前を俺の廊下の中に閉じ込めたままにしてやる
※Wu-Tangの「36 Chambers(少林三十六房)」や、ストリートのテリトリー(プロジェクトの廊下)での待ち伏せを掛けている。
You try to flee but you got smoked up by the doorway (Blaow)
お前は逃げようとするが、戸口のところで撃ち殺され(煙に巻かれ)ちまうんだ(ブラウ)
No question, I send your ass back right to the essence
疑いの余地はねえ、お前のケツを直接エッセンス(本質)へと送り返してやる
※「essence」は死んで土(万物の根源)に還ること、つまり殺害の隠語。
Your whole frame is smothered in dirt, now how you restin'?
お前の骨組み(肉体)は完全に泥に埋もれちまった、さて、どんな気分で眠ってる?
While I'll be trapped by sounds, locked behind loops
その間、俺はサウンドに囚われ、ループの裏側に閉じ込められているのさ
Throwin' niggas off airplanes 'cause cash rules (Cash rules)
飛行機から野郎どもを放り投げる、なぜなら金(キャッシュ)が支配してるからな(キャッシュが支配してる)
※麻薬カルテルが裏切り者を飛行機から海やジャングルへ突き落とすという、マフィア映画や南米カルテルの残虐な処刑方法の描写。
Everything around me, black, as you can see
俺の周りのすべてをな、黒人(ブラック)、お前にも見えるだろ
※「Cash Rules Everything Around Me」の頭文字と、「black」という呼びかけを繋げている。
Swallow this murder one verse like god degree
この第一級殺人(マーダー・ワン)のヴァースを、神の学位みたいに飲み込みな
※「god degree」は5% Nationにおける知識の最高段階。
Then analyze my soundtrack for satisfaction
それから満足するまで、俺のサウンドトラックを分析してみろ
You adapt like a flashback, chain reaction
お前はフラッシュバックみたいに適応し、連鎖反応を起こすのさ
[Interlude: Raekwon]
Lace them niggas, son
奴らを仕留めてやれ、兄弟
※「lace」は靴紐を結ぶ以外に、銃弾を浴びせる(蜂の巣にする)、またはドラッグを混ぜるという意味のストリート・スラング。
[Verse 2: Raekwon]
AK's black, bust back like seventy MACs
黒のAK-47だ、70丁のMAC-10みたいに撃ち返してやる
I'm all that, street niggas knowin' my steez, black
俺はそういうヤバい男だ、ストリートの野郎どもは俺のスタイル(steez)を知ってるぜ、ブラザー
Ron G, you know he coincide with me, see
ロン・G、奴が俺と一致(共鳴)してるのは知ってるだろ、ほらな
※Ron Gはニューヨークの伝説的なミックステープDJ。自分の曲が常にストリートのテープで掛かっていることのボースト。
Marvelous menace for society
社会にとっての、驚異的な脅威(メナス)さ
※1993年の過酷なフッド映画『Menace II Society(ポケットいっぱいの涙)』のタイトルからの引用。
But anyway, let's toast, champagne thoughts with Ghost
だがとにかく、乾杯しようぜ、ゴーストと一緒にシャンパンの思考をな
I max the most shotguns through the nose
俺は鼻から最高のショットガン(煙)を限界まで吸い込む
※「shotgun」は他人の口や鼻にマリファナの煙を吹き込む吸い方、またはコカインの吸引。ここでは贅沢にドラッグを嗜むマフィアのボスの姿。
Fuck rap, hip-hop put me on top
ラップなんてクソ食らえだ、ヒップホップが俺を頂点に押し上げたんだ
'Lo wears and Tommy Hil' fly shit with a knot
ポロ(ラルフローレン)の服とトミー・ヒルフィガー、札束(ノット)を持ったイカしたシットさ
※90年代のニューヨークのストリート・ファッションを象徴するブランド('Lo = Polo、Tommy Hil' = Tommy Hilfiger)と、ポケットの丸めた札束(knot)によるハスラーの美学。
The witty unpredictable live shit, drive-by shit
機知に富んだ、予測不能な生のシット、ドライブバイ(車からの銃撃)のシットだ
※Wu-Tangの初期のキャッチフレーズ「Witty Unpredictable Talent And Natural Game(知性的で予測不可能な才能と天性のゲーム)」への言及。
Do-or-die shit, I'll take your lye and shit
やるかやられるかのシットだ、お前の極上のウィード(ライ)も何もかも奪ってやる
※「lye」は元々水酸化ナトリウムなどを指すが、ここでは強烈なマリファナの隠語。
And then you know I'm runnin' through the penal
それから俺が刑務所(ペナル)のシステムをくぐり抜けてるってことは知ってるだろ
Foul, fall through, child was wild
ファウル(反則)だ、計画は頓挫し、あのガキはワイルドだった
The old lady snitched, but fuck it, you know what?
ババアがサツにチクりやがった、だがクソ食らえだ、あのな?
One love, kid, no, I'm not doin' a bid
ワン・ラブだ小僧、いや、俺はムショ務め(bid)なんかするつもりはねえよ
Too much to get, for what, 'cause six niggas got stuck
手に入れるべきものが多すぎる、何のためだ? 6人の野郎どもが強盗に遭って
And the nigga chain was truck?
その野郎のチェーンがトラックみたいにデカかったからか?
※「truck」はトラック(車)のように巨大で派手なジュエリーのこと。チンピラ同士の些細な強盗やチンコロでムショに入るのは御免だという、大物ハスラーとしての現実的な視点。
Yo, fuck that, criminology rap, sneakers stay
ヨォ、そんなのクソ食らえだ、犯罪学(クリミノロジー)のラップさ、スニーカーは常に
Jet-black floatin' in the flyest Ac', nigga
漆黒のままで、最高にイカしたアキュラ(Ac')の中で浮遊してるんだよ、野郎
※泥にまみれない真っ黒な新品のスニーカーと、日本の高級車アキュラ(Acura)に乗るストリートの成功者の姿。ストリートの汚れ仕事を離れ、優雅に犯罪を指揮するマフィアのボスの余裕を表現している。
(Bring it, yeah)
(持ってこい、ああ)
[Outro: Raekwon]
Much love go to New York City
ニューヨーク・シティに多大な愛を
All my Tommy Hil', ice-rockin' niggas
俺のトミー・ヒルを着て、アイス(ダイヤモンド)を輝かせてるすべての野郎どもにな
