Artist: Ghostface Killah (feat. The Delfonics, RZA & Raekwon)
Album: Ironman
Song Title: After the Smoke is Clear
概要
Ghostface Killahのソロデビューアルバム『Ironman』(1996年)に収録された本作は、Wu-Tang Clanが敬愛してやまない1960〜70年代の伝説的フィリー・ソウル・グループ、The Delfonicsを客演(コーラス)として迎えた記念碑的なトラックである。プロデューサーのRZAは単なるサンプリングにとどまらず、彼らをスタジオに招き、Wu-Tangのための専用フックを歌わせるという画期的な手法をとった。ビートはソウルフルなコーラスと武骨なドラムブレイクが融合し、Ghostface、Raekwon、RZAの三者が、スタテンアイランド(少林)のゲットーでのサバイバルと、そこから頂点へと上り詰めた「帝国」の威信を語る。タイトルの「煙が晴れた後」が示す通り、シーンの混沌や銃撃戦の煙が収まった後、最後に立っているのはWu-Tangだけであるという強烈な自負と、彼らのソウルミュージックへの深いオマージュが同居したクラシックである。
和訳
[Chorus: The Delfonics & Ghostface Killah]
After the smoke is done
煙が晴れた後
(Yo! Yeah)
(ヨォ! ああ)
Wu-Tang, you'll find, is number one
ウータンがナンバーワンだってことに気づくはずさ
(Yeah, what, what, who wanna do it? What, what?!)
(ああ、何だ、何だ、誰がやりたいって? 何だ、何だ?!)
After the smoke is done
煙が晴れた後
(Slap fire out y'all monkey ass niggas)
(お前らマヌケな野郎どもを張り倒して火を出させてやる)
Wu-Tang/Delfonics number one
ウータンとデルフォニックスがナンバーワンさ
(Word up, big dick in the motherfuckin' house
(間違いない、大物たちがこのクソみたいな場所にいるぜ
Word up, we gon' bench press these cats, yo)
マジだぜ、俺たちはこの野郎どもをベンチプレスみたいに持ち上げてやる、ヨォ)
[Verse 1: Ghostface Killah]
Yo, God, show these niggas how we get deep, down and dirty
ヨォ神よ、俺たちがどれだけ深く、どん底で汚くやるか、この野郎どもに見せてやろうぜ
※「God」は5% Nation(ファイブ・パセンターズ)における黒人男性(ここでは自分や仲間)への呼びかけ。
Like Keyon, got his wig pushed back for five birdies
キーオンみたいにな、あいつは5キロのコカインのために頭をブチ抜かれたんだ
※「wig pushed back」は頭を撃ち抜かれる(カツラが吹き飛ぶ)ことを意味するストリートの残酷なスラング。「birdies」はキロ単位のコカインの隠語(bird = コカインの塊)。
Yo, they got a hit placed on my head, what should the God do?
ヨォ、俺の首に懸賞金が懸けられちまった、神(俺)はどうすべきだと思う?
Max out in Spain and do business with the Jews?
スペインで贅沢に暮らしながら、ユダヤ人たちとビジネスでもするか?
※危険な地元を離れ、国際的な規模でシノギを拡大するというマフィオソ的な妄想。
Never that! Don't never look at me out of sync
ありえねえな! 俺が調子を崩してるなんて絶対に見るんじゃねえぞ
The imperial industrial king got wicked
帝国の産業の王は凶悪になったんだ
Don't give a fuck, like the poor part, we watch Hart to Hart
気になんかしねえよ、貧しい地域のようにな、俺たちは『ハート・トゥ・ハート』を見てるぜ
※『Hart to Hart』は80年代の探偵ドラマ。ゲットーの日常風景。
They used to push me in shopping carts, now I'm writin' darts
昔はショッピングカートに乗せられて押されてたが、今じゃ俺はダーツ(鋭いライム)を書いてる
Like Ebenezer, the porno teaser
エベニーザーみたいにな、ポルノの焦らし屋さ
※「Ebenezer」はチャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』の守銭奴スクルージ。ここでは金に執着し、欲望を刺激するラッパーとしての比喩。
Sayin' words like Sheeba, Texaco rapper, valet the Visa
シーバみたいな言葉を口にする、テキサコのラッパー、Visaカードをバレーパーキングに預けるぜ
※「Sheeba」は上質なマリファナ。「Texaco」のガソリンのように爆発的で高価なスタイルを誇示。
My team got rides like Six Flags, plus two Wu labs
俺のチームはシックス・フラッグス(遊園地)みたいな車(乗り物)を持ってる、それに2つのWuのラボ(スタジオ)もな
Cameras in nine bedrooms, we all dazzed
9つのベッドルームにはカメラを仕込み、俺たちはみんな眩いばかりに輝いてる
Don't touch this cracklin' hot shit
このパチパチ音を立てる熱いシットには触るな
I'll snap your shoulder blade in half, laugh and pop shit
お前の肩甲骨を真っ二つにへし折り、笑いながらブッ放してやるよ
Reader's Digest passed my book to L. Ron Hubbard
リーダーズ・ダイジェストが俺の本をL・ロン・ハバードに渡したぜ
※L・ロン・ハバードはサイエントロジーの創始者。自分のリリック(教義)が新興宗教の教祖すらも参考にするほど深遠であるというパンチライン。
It got back that the World Government tried to dub it
それが戻ってきた時、世界政府が俺のテープをダビングしようとしてたんだ
Devils love it, booby-trap raps cover the track like ADAT
悪魔どももこれを愛してる、ブービートラップのようなラップがADATのようにトラックを覆う
※「Devils」は白人社会や抑圧的な体制。「ADAT」は当時の高音質デジタル録音フォーマット。
Sharper than cuts laced on "Marley Scratch"
「マーリー・スクラッチ」に刻まれたカットよりも鋭いぜ
※伝説的プロデューサー/DJのマーリー・マールへのシャウトアウト。
Supreme clientele, my cartel
至高の顧客たち、俺のカルテルだ
※Ghostfaceの後の名盤タイトルとなる『Supreme Clientele』のフレーズがここで登場している。
Willie Stargell passed, this shit is peace, where's the Nobel?
ウィリー・スタージェルがパスした、このシットは平和だ、ノーベル賞はどこだ?
※野球殿堂入りした名選手ウィリー・スタージェルの力強いスイング(ヒット)と、自身のラップの威力を掛けている。
Oh well, signin' off as usual
まあいい、いつものようにサインオフするぜ
The arsonist leavin' niggas lost in the stairwell
放火魔が、野郎どもを階段の踊り場に置き去りにして迷わせるんだ
[Chorus: The Delfonics & Ghostface Killah]
Wu-Tang/Delfonics, number one (Yeah! Yo... yo!)
ウータンとデルフォニックスがナンバーワンさ(ああ!ヨォ...ヨォ!)
Represent my project Stapleton
俺のプロジェクト、ステープルトンをレペゼンするぜ
After the smoke is done
煙が晴れた後
He represent that project Park Hill
あいつはあのプロジェクト、パークヒルをレペゼンしてる
Wu-Tang, you'll find is, number one
ウータンがナンバーワンだってことに気づくはずさ
You represent that project Murder West Brighton, Now Born
お前はあのプロジェクト、マーダー・ウェスト・ブライトン、ニュー・ブライトンをレペゼンしてるんだ
※Stapleton、Park Hill、New Brightonはすべてスタテンアイランド(少林)にある悪名高いゲットー(低所得者公営住宅)。
Harbor, aim your tool at will! Word up
ハーバー、お前の道具(銃)を意のままに狙い定めろ! 間違いない
After the smoke is clear (Yeah! What?! Stapleton!)
煙が完全に晴れた後(ああ!何だ?!ステープルトン!)
Delfonics and Wu-Tang still here (Park Hill! Word up!)
デルフォニックスとウータンはまだここにいるぜ(パークヒル!間違いない!)
(Yeah! Yeah! New York!)
(ああ!ああ!ニューヨーク!)
[Verse 2: Raekwon]
The greatest story ever told by me, precisely
俺によって語られた、史上最高の物語だ、正確にな
Roman numeral IV, plus III, describe me
ローマ数字の4、それに3を足した数字が、俺を表している
※IV + III = 7。5% Nationの思想におけるSupreme Mathematicsで、「7」は「God(神)」を意味する。
My son move like the Toad, get drunk, speak in codes
俺の息子はヒキガエルみたいに動き、酔っ払い、暗号で話す
※「son」は仲間や後輩を指すスラング。
Throw a fiend in the sleeper hold, got beef with the globe
ヤク中をスリーパーホールドで締め落とし、世界全体とビーフ(揉め事)を抱えてる
Meth my comrade, go half on this lab down in Baghdad
メス(メソッドマン)は俺の同志だ、バグダッドにあるこのラボの費用を折半するぜ
※バグダッドは危険地帯の比喩、または彼らの秘密の隠れ家やスタジオのこと。
Flip it like a mess tab, get money like an Arab
LSDのタブみたいに裏返し、アラブの石油王みたいに金を稼ぐ
The type niggas snap, six legs on the crab
キレやすいタイプの野郎ども、カニの6本の足だ
※カニは足が8本または10本だが、ここでは中途半端な偽物、あるいは狭いゲットーのバケツの中で足を引っ張り合う連中(Crab in a barrel mentality)を揶揄している。
Now, hush — you wanna do what? My clique better bust
さあ、黙りな — お前は何がしたいんだ? 俺の仲間がブッ放す前に気をつけな
[Verse 3: RZA]
Underprivileged, grew up in the Stapleton House Village
恵まれない環境、ステープルトン・ハウス・ヴィレッジで育った
Where blood flood the waters of streets like oil spillage
そこは原油流出みたいに、ストリートの水たまりが血で溢れる場所だった
(Wu-Tang, Delfonics number one)
(ウータンとデルフォニックスがナンバーワンさ)
Before dog was growin' at the dusthead spot at 55 Bowen
55ボーウェン・ストリートのヤク中スポットで、犬が育つ前からな
※RZAのフッドでのリアルな記憶。「dusthead」はPCP(天使の粉)の中毒者。
Niggas was still flowin', voice was echoin'
野郎どもはまだフロウしていて、声が響き渡っていた
I rise high like an octave
俺は1オクターブ高く舞い上がる
The Procter wouldn't Gamble to Sample the Doctor
プロクターはドクターをサンプリングするギャンブルには出ないだろうな
※大手日用品メーカー「Procter & Gamble (P&G)」の名前をもじり、安全な道しか選ばない企業やフェイクなプロデューサーたちを揶揄している。
My ninjas run wild like Shaka Zulu
俺の忍者たちはシャカ・ズールーみたいに暴れ回るぜ
※「ninjas(忍者)」はWu-Tangのメンバーや仲間のこと。「Shaka Zulu」は19世紀のアフリカのズールー王国の強力な戦士。
Some play peace like Ganj the guru
ある者はガンの導師のように平和を説く
※インドのガンジーを指している。
Others live to be wise and old like Desmond Tutu
またある者はデズモンド・ツツのように賢く老いるために生きる
※南アフリカの反アパルトヘイト運動の指導者。アフリカの偉人たちを並べて黒人の誇りをレペゼンしている。
Undisputed champion girl holders, shape-and-molders
議論の余地のないチャンピオンの女を抱く者、形を作り出す者たちだ
Soul controller of the lunar, solar and the polar
月、太陽、そして極地の魂のコントローラーだ
※5% Nationにおける「宇宙の法則を支配する黒人男性」の思想。
I blow hash smoke through my nasal, my appraise worth thirty million
俺はハシシの煙を鼻から吐き出し、俺の評価額は3000万ドルだ
Wu-Tang third battalion rush like Hannibal raidin' Sicilians
ウータン第3大隊が、シチリアを急襲するハンニバルのように突撃するぜ
※古代カルタゴの将軍ハンニバルが象を率いてローマ帝国を脅かしたように、Wu-Tangが音楽業界という帝国を蹂躙するという壮大な歴史的比喩。
[Chorus: The Delfonics]
After the smoke is done
煙が晴れた後
Wu-Tang, you'll find, is number one
ウータンがナンバーワンだってことに気づくはずさ
After the smoke is done
煙が晴れた後
Wu-Tang, you'll find, is number one
ウータンがナンバーワンだってことに気づくはずさ
After the smoke is clear
煙が完全に晴れた後
Delfonics and Wu-Tang still here
デルフォニックスとウータンはまだここにいるぜ
After the smoke is done
煙が晴れた後
Wu-Tang/Delfonics, number one
ウータンとデルフォニックスがナンバーワンさ
[Outro: The Delfonics]
Ahhhhh (Wuuuuuu, Wuuuuuu)
アァァァ(ウーゥゥ、ウーゥゥ)
