Artist: Ghostface Killah (feat. U-God, Masta Killa, Cappadonna & Raekwon)
Album: Ironman
Song Title: Winter Warz
概要
Wu-Tang ClanのGhostface Killahによるソロデビューアルバム『Ironman』(1996年)に収録された本作は、もともと映画『Don't Be a Menace to South Central While Drinking Your Juice in the Hood』(1996年)のサウンドトラックに提供された楽曲である。RZAの手によるThe Soul Children「I Want to Be Where You Are」をサンプリングした哀愁と熱気を帯びたビート上で、U-God、Ghostface Killah、Masta Killa、そしてCappadonnaが激しいマイク・リレーを展開する。特に注目すべきは、楽曲の後半を丸ごとジャックするCappadonnaの長大なヴァースである。彼はWu-Tangの初期メンバーと同等の実力を持ちながら、服役のためデビューアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』に参加できなかったという背景がある。この「Winter Warz」での圧巻のパフォーマンスは、彼がシーンにおける自身の存在価値と実力を決定づけた伝説的なヴァースとして、コアなヒップホップファンの間で今なお語り草となっている。
和訳
[Intro: Ghostface Killah, Cappadonna & Masta Killa]
It's on
始まるぜ
Where your sparkle at, kid?
お前の輝きはどこにあるんだ、小僧?
(RZArector)
RZArector
※RZAの別名の一つで、死者を蘇らせる者(Resurrector)とRZAを掛けたワードプレイ。
[Chorus: Raekwon & Cappadonna]
Yes, the shit is raw, coming at your door
ああ、このシットは生々しいぜ、お前のドアに迫ってる
Start to scream out loud, "Wu-Tang's back for more"
大声で叫び始めな、「ウータンがまたやって来た」ってな
Yes, the hour's four, I told you before
ああ、時刻は4時だ、前にも言っただろ
※「hour's four(4時)」は、1996年当時Wu-Tang関連のリリースが第4段階に入っていたことを示唆しているとされる。
Prepare for mic fights (and plus the cold war)
マイクファイトの準備をしろ、そして冷戦にもな
[Verse 1: U-God]
This rhyme you digest through the RZA console
お前が消化するこのライムはRZAのコンソールを通したものだ
※プロデューサーであるRZAのミキシングボード(コンソール)を通して生み出される独自のサウンドを強調している。
Ask why I slam Nine Diagram pole
なぜ俺が九極八卦の棒を叩きつけるのか聞いてみろ
※カンフー映画『五郎八卦棍(The Eight Diagram Pole Fighter)』からの引用。Wu-Tangらしい東洋武術のメタファー。
Raekwon dropped the bomb, Hunchback Notre Dame
レイクウォンが爆弾を落とす、ノートルダムのせむし男みたいにな
Golden Arms is bronze Buddha palm hit Qu'ran
ゴールデンアームズは青銅の仏陀の掌、コーランを打ち据える
※「Golden Arms」はU-Godの別名。「Buddha palm(如来神掌)」という武術の技と、イスラムの教典コーランを交差させた神がかり的な破壊力の表現。
It blows extreme, mainstream be the theme, supreme team
極限まで吹き飛ばすぜ、メインストリームがテーマだ、至高のチームさ
America's Cream Team, redeemed
アメリカのクリームチームが、名誉を挽回する
※「Cream」は金(Cash Rules Everything Around Me)の象徴。ストリートからアメリカ全体のトップへと上り詰めた彼らのチーム力を誇示している。
Vidal Sassoon, chrome tones hear the moans of Al Capone
ヴィダル・サスーンみたいに切り刻む、クロームの音色はアル・カポネのうめき声を聞く
※有名なヘアサロンブランド「ヴィダル・サスーン」を「鋭く切り裂く」比喩として使い、銃(chrome)の響きと伝説的マフィアを繋げている。
Gun POW to the dome and split the bone
頭に銃弾をブチ込んで骨を砕く
Wig blown off the ledge by the alleged
容疑者によって頭が崖から吹き飛ばされる
※「Wig blown(カツラが飛ぶ)」は頭を撃ち抜かれることを意味する定番のスラング。
Full-fledged, sledge RZA edge
本格的な、RZAの刃のハンマーだ
One dose of my feroc' handheld trigger cuts
俺の凶暴な手持ちの引き金の一撃が切り裂く
A capella spitting shell paralyse if you get touched
アカペラで吐き出す銃弾、触れれば麻痺するぜ
And critical mic cords, hanging like umbilical
致命的なマイクコードが、へその緒のようにぶら下がる
Cords, dope swords, five star general
コード、ヤバい剣、五つ星の将軍だ
※へその緒(umbilical cords)とマイクコードを掛け、自分たちがヒップホップから生命を授かっている存在であることを暗示。
Raw be the quote, rap style sore throat
引用は生々しく、ラップスタイルで喉が痛くなるぜ
Through the fully operational, hand held tote – mhm
完全稼働する、手持ちの銃を通してな
※「tote」は銃を持ち歩くこと。
[Chorus: Raekwon]
Yes, the shit is raw, coming at your door
ああ、このシットは生々しいぜ、お前のドアに迫ってる
Start to scream out loud, "Wu-Tang's back for more!"
大声で叫び始めな、「ウータンがまたやって来た」ってな
[Verse 2: Ghostface Killah]
A hundred thousand times one, snatch up, my styles get done
10万回に1回、ひったくるぜ、俺のスタイルは完成してる
I hold a title, and here's how my belt was won, check it
俺はタイトルを持ってる、どうやってベルトを勝ち取ったかチェックしな
Slick majestic, broke mics are left infected
なめらかで荘厳だ、壊れたマイクは感染したまま放置される
Germs start to spread through your crew through lack of effort
努力不足のせいで、お前のクルーに細菌が広がり始めるぜ
※フェイクなラッパーたちのスキルの無さを「努力不足」と断じ、それがクルー全体に病気のように蔓延するという強烈なディス。
You asked for it, shot up the jams like syringes
お前が望んだことだ、注射器みたいにジャムを打ち込む
My technique alone blows doors straight off the hinges
俺のテクニックだけで、ドアを蝶番ごと吹き飛ばす
Masked Avenger, I appear to blow your ear like wind
覆面の復讐者だ、風のようにお前の耳を吹き抜けるために現れる
With a freestyle, sharper than the Indian spear
インディアンの槍より鋭いフリースタイルでな
So sit back and let the king explore
だから座って、王の探求を見届けるんだな
Describe me – the kid's nice and he holds swords
俺を描写してみろ、このガキはイケてて剣を持ってるってな
And his name, black attack's the nerve like migraines
そしてあいつの名前は、黒い攻撃が偏頭痛みたいに神経を刺激する
With more gains than beggars on trains, livid sharp pains
電車の物乞いよりも多くを稼ぎ出し、青ざめるほどの鋭い痛みを与える
Poisonous Rebel like Deck, you can't destroy this
デックみたいな毒を持った反逆者だ、お前には破壊できねえ
※Wu-TangのメンバーであるInspectah Deck(別名Rebel INS)へのシャウトアウト。
You get ambushed, skate, try to avoid this
待ち伏せされるぜ、逃げ出せ、これを避けてみろ
Side effects of hot raps and hot tracks
ホットなラップとホットなトラックの副作用だ
A duffel bag full of guns, son dipped in black
銃が詰まったダッフルバッグ、黒ずくめの男だ
My culture, glides and attacks you like a vulture
俺のカルチャーが、ハゲタカみたいに滑空してお前を襲う
Ghostface in Madison Square is on your poster
マディソン・スクエアのゴーストフェイスがお前のポスターになってるぜ
※ニューヨークの音楽の聖殿マディソン・スクエア・ガーデンでの公演を成功させるほどのスターになったという自負。
[Chorus: Raekwon & Cappadonna]
Yes, the shit is raw, coming at your door
ああ、このシットは生々しいぜ、お前のドアに迫ってる
Start to scream out loud, "Wu-Tang's back for more"
大声で叫び始めな、「ウータンがまたやって来た」ってな
Yes, the hour's four, I told you before
ああ、時刻は4時だ、前にも言っただろ
Prepare for mic fights (and plus the cold war)
マイクファイトの準備をしろ、そして冷戦にもな
[Verse 3: Masta Killa]
Be on the lookout for this mass murderous suspect
この大量殺人の容疑者を警戒しろ
That fills more body bags than apartments in projects
プロジェクトのアパートメントよりも多くの死体袋をいっぱいにする奴だ
※「projects」は低所得者公営住宅。ゲットーの人口よりも多い数の敵をリリックで葬り去るという誇張表現。
And as far as the coroners know
検視官が知る限り
The autopsy show it was a Shaolin blow
解剖の結果は少林の一撃だったってことだ
※Wu-Tang Clanが地元のスタテンアイランドを呼ぶ際のスラング「Shaolin(少林)」。彼らのラップが致命傷を与えたという設定。
Put on by my family, brought to the academy
俺のファミリーによって教え込まれ、アカデミーに連れてこられた
Of the Wu, and learnt how to
ウーのアカデミーにな、そして学んだんだ
Fuck up your anatomy steadily, calm and deadly
お前の解剖学的構造を確実におかしくする方法をな、冷静かつ致命的に
Spatter-head lyrics, I lick through your transmit
頭を吹き飛ばすリリックだ、お前の送信機を舐めるように通っていく
MCs submit to the will as I kill your
俺がお前の未熟なフリースタイルを殺す時、MCたちは俺の意志に屈する
Juvenile freestyle, civilize the mental
精神を文明化してやる
※5% Nation(ファイブ・パセンターズ)の教義である「無知な者を教育し、文明化する(civilize)」という思想の引用。
Devils worship this like an icon
悪魔どもはこれを偶像みたいに崇拝する
※ここでの「Devils」は白人至上主義的な体制や、無知な者たちを指す。
Bear-hugging mics with the grips of a python
パイソンの握力でマイクをベアハッグするぜ
[Chorus: Raekwon]
Yes, the shit is raw, coming at your door
ああ、このシットは生々しいぜ、お前のドアに迫ってる
Start to scream out loud, "Wu-Tang's back for more"
大声で叫び始めな、「ウータンがまたやって来た」ってな
[Verse 4: Cappadonna]
You heard other raps before but kept waiting
前にも他のラップを聞いたろうが、待ち続けてただろ
※ここからCappadonnaによる、ヒップホップ史に残る怒涛のロングヴァースが幕を開ける。投獄により遅れをとった彼が、ついにシーンに本格参戦する宣言。
For the Son of Song, I keep dancehalls strong
歌の息子のことをな、俺はダンスホールを強力に保つ
Beats never worthy of my cause, I prolong
ビートは俺の目的に決してふさわしくない、俺は延長する
Extravaganza, time sits still
狂騒劇だ、時間は止まったままだ
No propaganda, be wary of the skill
プロパガンダじゃねえ、このスキルに警戒しな
As I bring forth the music, make love to your eardrum
俺が音楽を生み出し、お前の鼓膜とメイク・ラブするようにな
Dedicated to rap nigga, beware of the fearsome
ラップに献身する黒人たちよ、恐ろしい男に気をつけな
Lebanon Don, Malcolm X beat threat
レバノン・ドンだ、マルコムXのようなビートの脅威だ
※マルコムXの過激で革命的な演説のごとく、ビート上で真実を説き伏せる自身のスタイル。
CD massacre, murder to cassette
CDの大虐殺だ、カセットテープへの殺人だ
I blow the shop up, you ain't seen nothing yet
俺は店を吹き飛ばす、お前はまだ何も見ちゃいねえ
One man ran, tryna get away from it
一人の男が走って、そこから逃げようとした
Put your bifocal on, watch me a-cometh
遠近両用メガネをかけな、俺がやって来るのを見ろ
Into your chamber like Freddy enter dream
フレディが夢に入るみたいに、お前のチェンバーに入り込むぜ
※ホラー映画『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガー。相手の最も無防備な領域(夢=思考)に侵入するというパンチライン。
Discombumberate your technique and your scheme
お前のテクニックと計画を混乱させてやる
Four course applause, like a black DAT to DAT
4つのコースの拍手だ、黒いDATからDATへのようにな
※DATはデジタル・オーディオ・テープの略。当時のレコーディング環境の隠語。
You're stuck on stupid like I'm stuck on the map
俺が地図に張り付いてるみたいに、お前はバカな状態に張り付いてる
Nowhere to go except next show, bro
次のショー以外に行く場所はねえぜ、兄弟
Entertaining motherfuckers can't stop O
エンターテイナーのクソ野郎どもはOを止められねえ
※「O」は金や麻薬(オンス)、または完全なる真理の象徴。
In battling, you don't want me to start tattling
バトルでは、俺に告げ口を始めさせない方がいいぜ
All up on the stage 'cause y'all snakes keep rattling
ステージの上でな、お前ら蛇どもがガラガラ鳴り続けてるからな
※「snakes」は裏切り者やフェイクなラッパーのこと。
Bitch, you ain't got nothing on the rich
ビッチ、お前は金持ちには勝てねえよ
Every other day my whole dress code switch
1日おきに俺のドレスコードは全部切り替わる
So just in case you wanna clock me like Sherry
だからお前がシェリーみたいに俺を監視したい場合に備えてな
All y'all crab bitches ain't got to worry
カニみたいなビッチども、心配する必要はねえよ
Can't get a nigga like Don dime a dozen
ドンみたいな男は1ダース10セントじゃ手に入らねえ
※「dime a dozen」はありふれた、安価なものという意味。自分はそこらのラッパーとは格が違うという誇示。
Even if I'm smoked out, I can't be scoped out
たとえ俺が煙に巻かれても、スコープで捉えることはできねえ
I'm too ill, I represent Park Hill
俺はヤバすぎる、パークヒルをレペゼンしてるぜ
※スタテンアイランド(少林)の中でも、彼らが根城にしていたフッド「Park Hill」への強烈なレペゼン。
See my face on the twenty dollar bill
20ドル札にある俺の顔を見な
Cash it in, and get ten dollars back
換金して、10ドル返してもらいな
The fat LP with Cappachino on the wax
レコード盤にカプチーノが刻まれた分厚いLPだ
※「Cappachino」はCappadonnaの別名。「wax」はアナログレコード。
Pass it in your thing, put valve up to twelve
それをお前の機械にセットして、バルブを12まで上げな
Put all the other LPs back on the shelf
他のすべてのLPは棚に戻しておけ
And smoke a blunt and dial 9-1-7
そしてブラントを吸って、9-1-7をダイヤルしな
1-6-0-4-9-3-11
1-6-0-4-9-3-11 だ
※当時の実際のポケベルや電話番号をリリックに組み込む、90年代特有のストリートのギミック。
And you could get long dick hip-hop affection
そうすれば巨大なヒップホップの愛情を手に入れられるぜ
I damage any MC who step in my direction
俺の方向へ歩み寄るMCは誰でもダメージを与えてやる
I'm Staten Island's best son, fuck what you heard
俺はスタテンアイランドの最高の息子だ、お前が聞いた噂なんてクソ食らえだ
Niggas still talking that shit is absurd
奴らがまだそんなクソみたいな話をしてるなんて馬鹿げてる
My repertoire is U.S.S.R
俺のレパートリーはソビエト連邦だ
P.L.O. Style got thrown out the car
P.L.O.スタイルは車から投げ出されて
※「P.L.O. Style」はMethod Manのソロ曲のタイトル。パレスチナ解放機構(P.L.O.)のゲリラ戦術をラップスタイルに例えたもの。
And ran over by the Method Man Jeep
メソッドマンのジープに轢かれたんだ
Divine can't define my style is so deep
ディヴァインでさえ俺のスタイルを定義できねえ、それほど深いんだ
※「Divine」はWu-Tangのビジネス面を支えたマネージャー(RZAの兄)のこと。身内でさえ全貌を把握できないほど深遠なスタイル。
Like pussy, my low cut fade stay bushy
女のソコみたいに、俺のローカットのフェードはふさふさのままだ
Like a porcupine, I part backs like a spine
ヤマアラシみたいに、俺は背骨のように背中を切り裂く
Gut you like a blunt and reconstruct your design
ブラントみたいにお前の中身を抜き取って、デザインを再構築してやる
※葉巻(ブラント)の中のタバコ葉を抜き取ってマリファナを詰める作業を、相手のMCの解体と再構築に例えている。
I know you want to diss me, but I can read your mind
俺をディスりたいのは分かってるが、俺にはお前の心が読めるぜ
'Cause you Weak in the knees like SWV
なぜならお前はSWVみたいに膝から崩れ落ちてるからな
※90年代のR&BグループSWVの大ヒット曲「Weak」のサビ「I get so weak in the knees」を引用した見事なパンチライン。
Tryna get a title like Wu Killa Bee
ウーのキラービーみたいなタイトルを手に入れようとしてる
Kid, change your habit, you know I'm friends with the Abbott
小僧、習慣を変えな、俺がアボットのダチだって知ってるだろ
※「the Abbott」はWu-Tangの実質的リーダーでありプロデューサーのRZAのこと。
Me and RZA rhyme name printed in the tablet
俺とRZAのライムの名前は石板に刻まれてる
Under vets, we paid our debts for mad years
ベテランの下で、俺たちは狂ったような年月、借りを返してきた
Hibernate the sound and now we out like bears
サウンドを冬眠させて、今俺たちは熊みたいに外に出てきたんだ
In Born Power, born physically, power speaking
ボーン・パワー、肉体を持って生まれ、パワーが語る
The truth in the song be the pro-Black teaching
歌の中の真実が、プロ・ブラックの教えになるんだ
※5% Nationの思想に基づき、自らのラップが黒人コミュニティを啓蒙し、力を与える(Born Power)真実の教えであると宣言して長大なヴァースを締めくくる。
