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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

The Faster Blade - Ghostface Killah (feat. Raekwon) 【和訳・解説】

Artist: Ghostface Killah (feat. Raekwon)

Album: Ironman

Song Title: The Faster Blade

概要

Wu-Tang Clanの特攻隊長ことGhostface Killahの記念すべきソロデビューアルバム『Ironman』(1996年)に収録された本作は、ヒップホップ史上でも極めて特異な構造を持つトラックである。自身の冠アルバムでありながら、Ghostface本人は一言も声を発さず、盟友Raekwonが全編のラップを一人で担う「完全なソロ曲」として収録されているのだ。これは前年にリリースされたRaekwonのソロ名盤『Only Built 4 Cuban Linx...』において、Ghostfaceが実質的なダブルネーム作品と言えるほど全編にわたって深く関与したことへの「返礼」であり、Wu-Tang一族の血より濃い兄弟の絆と、既成概念に縛られない自由なアルバム制作のあり方を示している。RZAが手掛けた、不穏にループするストリングスと重圧感のあるドラムスが特徴のビート上で、Raekwonは彼特有のマフィオソ・ラップ(マフィア映画の美学を取り入れたスタイル)を存分に展開し、暗号めいたストリート・スラングと5% Nation(ファイブ・パセンターズ)の教えを織り交ぜながら、冷酷なハスラーの情景を鮮やかに描き出している。

和訳

[Intro: Raekwon]

You know what I'm sayin'? We're on them corners and shit, ya know?
言ってることわかるか? 俺たちはあの角に立ってるってことだ、わかるだろ?
※「corners」はストリートの角、つまりドラッグディーラーたちがシノギを削る縄張りを指す。

Just gotta be on some, hands-down shit, you know what I mean?
間違いなく確実なやり方でやらなきゃならねえ、意味わかるか?

Just keepin' ya eyes and ears open at all times
常に目と耳を開いて警戒しておくんだ

While we rhyme and shine
俺たちがライムして輝く間にな

For my dedicated niggas who love this shit, we doin' this like this
このシットを愛する献身的なダチのために、俺たちはこうやってやってる

Word up, what's the phenomenon?
間違いない、この現象はどうだ?

Carry on, Don, tranquilizin'
続けようぜ、ドン、落ち着いてな
※「Don」はマフィアのボスを意味する称号。Raekwon自身のペルソナ(Lex Diamond)の風格を示している。

[Verse: Raekwon]

Ayo! Movin' on these niggas like they owe, so, bro
エイヨ! 借金を取り立てるみたいに奴らに迫るぜ、なあ兄弟

You know how we go, we go, shift 'em out like perico
俺たちのやり方を知ってるだろ、ペリコみたいに捌いていくんだ
※「perico」はスペイン語のスラングで「コカイン」を意味する。ドラッグのパケを捌くように敵を排除していく様を描写。

Fine protégés, off top, connect and lock a buildin'
優秀な子分たちよ、即座にコネを作ってビルを制圧しろ

Four dollar whylin' niggas buildin', savin' the children
小銭で暴れ回る奴らが立ち上がり、子供たちを救う
※「buildin'」や「savin' the children」はThe Nation of Gods and Earths(5% Nation)の教義である「Build(知識を構築し精神を高める)」や「Save the babies(無知な若者を教え導く)」という宗教的な概念を引用している。

Come on now, check out the view like a oceanfront
さあ来い、オーシャンフロントのような景色をチェックしな

Slow-motion in cunt, takin' what we want, you know it, kid
女の中にスローモーションで入り込み、欲しいものを奪う、わかってるだろ

Asiatic, holdin' power like a Craftmatic
アジアンティック、クラフトマティックみたいにパワーを握ってる
※「Asiatic」は5% Nationにおける「Asiatic Black Man(地球の原住民たる黒人)」を指す。「Craftmatic」は電動リクライニングベッドの有名ブランドであり、ボタン一つで全てをコントロールできる権力をベッドに喩えた巧みなワードプレイ。

You like your fish fried or battered?, that day, he ratted
魚はフライがいいか、衣揚げがいいか? あの日、あいつはチクりやがった
※「fish」はマフィア用語で裏切り者や標的を意味する。警察に密告した(ratted)裏切り者をどう料理して(始末して)やろうかという冷酷なマフィオソ・ジョーク。

Check out the rubies from Diana, jet-skiin' in Atlanta
ダイアナから奪ったルビーを見てみろ、アトランタでジェットスキーを乗り回すぜ

Makin' some power moves out of Savannah, yeah
サバンナから権力を拡大する動きを見せるんだ
※ジョージア州のサバンナやアトランタなど、ニューヨークを飛び出して南部へビジネス(麻薬取引)を拡大しているマフィアのストーリー。

Rock them niggas like jewelry, Arabics movin' blow—
奴らをジュエリーみたいに見せつけ、アラブ人がコカインを動かす

Like aerobics, that's when his nose itch, yeah
エアロビクスみたいにな、そいつの鼻が痒くなる時だ
※「blow(コカイン)」を激しく売り捌く様子を「aerobics(エアロビクス)」の運動量に掛け、さらにコカインを吸った者が鼻をこする仕草(nose itch)を描写した高度な押韻と連想ゲーム。

That means it's dough in effect, I'm hittin' you, I'm hittin' Buddha
つまり金が動いてるってことだ、俺はお前を撃ち、ブッダを吸う
※「Buddha」は上質なマリファナ(ブッダ・ウィード)のこと。

Out in Bermuda, send that twenty-shot Ruger
バミューダで、20発装填のルガーを送り込む

Continue to slam and mend you like a venue
叩き潰し続け、会場みたいにお前を修繕してやる

Get all up in you, oh yeah, your friend too, respect Wu, yeah
お前の中に完全に入り込むぜ、そうさ、お前のダチにもな、Wuをリスペクトしろ

Keep them faggot niggas watery
あの軟弱な野郎どもを水浸しにしておけ
※恐怖で冷や汗をかかせる、または血の海に沈める、あるいは水に沈めて始末することを暗示している。

Rhyme for rich niggas who supported me, shorty pussy extorted me
俺をサポートしてくれた金持ちの奴らのためにライムする、あの女に搾取されたぜ

So what's the science now, RZA, cuttin' their pockets like scissors
それで今のサイエンスは何だ、RZA、ハサミみたいに奴らのポケットを切り裂くぜ
※「science」は5% Nationの用語で「真理」や「現状の深い分析」を意味する。プロデューサーのRZAに語りかけ、連帯を強調しつつ、敵の資金源を絶つ(ポケットを切る)と宣言している。

Cindafella found him a Wally slipper
シンデレラ野郎がワラビーのスリッパを見つけた
※「Cindafella」はジェリー・ルイスのコメディ映画、またはシンデレラをもじった表現。Wu-Tangのアイコン的アイテムであるクラークスのワラビー(Wallabee)ブーツを、ガラスの靴に見立てたユーモア溢れるメタファー。

Splashin' ends in the glass Benz in Nevada
ネバダのガラス張りのベンツで大金を散財する

Flashin' gems, eight-and-a-half Timbs, state robber
宝石をひけらかし、8.5サイズのティンバーランドを履く、州をまたぐ強盗だ
※ニューヨーク・ストリートの必須アイテムであるティンバーランドのブーツ。8.5はRaekwon自身の足のサイズと思われる。

All my life been on some foul shit, besides kidnap a child shit
俺の人生はずっとヤバいことばかりだった、子供を誘拐する以外はな
※強盗や麻薬売買などあらゆる悪事(foul shit)に手を染めてきても、無実の子供に手を出すという一線だけは絶対に越えないという、ストリート・ハスラーとしての確固たる掟と誇り。

Get on some foul and proud shit
汚くて誇り高いやり方でいくぜ

Cheatin' many Koreans, bein' all that I can be an'
多くの韓国人を騙し、俺がなれる最高の存在になる
※当時ニューヨークのゲットー地域でグロサリーストアやランドリーなどを経営していた韓国系移民との摩擦や、リアルなフッドの日常風景を切り取ったライン。

Put down on thirty keys an' get to fleein', light up a tree an'
30キロのコカインを下ろし、逃走する、マリファナに火をつけてな
※「keys」はキログラムの略で、大量のコカインを取引する大物としての描写。

Don't be breezin' like a blow dryer
ヘアドライヤーみたいに吹き飛ばすんじゃねえ

Yo, you's a liar, like Jeremiah gamin' on the flyer, yo
ヨォ、お前は嘘つきだ、チラシで騙すジェレマイアみたいにな
※ストリートにいる怪しげな詐欺師やいかさま師の比喩として用いられている。

Barbarian niggas is carryin', thug drug marryin'
野蛮な奴らが銃を持ち歩き、サグとドラッグが結びつく

Hittin' Marion off at the Clarion
クラリオンホテルでマリオンをヤる
※「Clarion」は実在するホテルチェーン。「Marion」という女性との情事を通じた、享楽的なライフスタイルの描写。

All my Spanish niggas love us, we movin' like Russia
スパニッシュのダチはみんな俺たちを愛してる、俺たちはロシアみたいに動く
※ラテン系(プエルトリカンやドミニカンなど)のハスラーとの強力な同盟関係。さらに自らの組織の強大さと冷酷さをロシア(あるいはロシアンマフィア)に例えている。

Bone crusher, at the flick, stick the usher
骨を砕く者、映画館で案内人を刺す
※「flick」は映画のこと。映画館の暗闇に紛れて凶行に及ぶ、マフィア映画さながらのバイオレンス描写。

Broke niggas, spot 'em like Cascade, in the street
一文無しの奴ら、カスカードみたいに奴らのシミを見つける、ストリートでな
※「Cascade」はアメリカで有名な食器洗い機用洗剤のブランド。「spot」には「見つける」と「シミ・汚れ」という二つの意味があり、洗剤が食器の汚れを浮き彫りにするように、ストリートで偽物や貧乏人(Broke niggas)を瞬時に見抜くという、Raekwon特有のキレのあるパンチライン。

Masquerade, Faster Blade
仮面舞踏会、より速い刃